かわいそうだね?

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163809502

作品紹介・あらすじ

同情は美しい、それとも卑しい?美人の親友のこと、本当に好き?誰もが心に押しこめている本音がこぼれる瞬間をとらえた二篇を収録。デビューから10年、綿矢りさが繰り広げる愛しくて滑稽でブラックな"女子"の世界。

感想・レビュー・書評

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  • そんな男別れなさいな、
    と思いつつ頁を捲って
    いくと

    ほら、言わんこっちゃ
    ない・・・、という展開。

    人生はアップで見ると
    悲劇で

    引いて見ればコメディ
    と言いますが、

    この物語も当事者たち
    からすれば悲劇で

    読者からすればまさに
    「かわいそうだね」と
    憐れむ場末のラブコメ。

    でも、この主人公なら
    大丈夫。

    悲劇だろうがコメディ
    だろうが、

    彼女はこの失恋を糧に
    成長していきます。

    その成長は、このあと
    良き恋愛とパートナー
    を呼び込むに違いない
    と、

    はっきり予感する凛と
    した幕切れでした。

  • 表題作のかわいそうだね?は
    女性の賢さずるさしたたかさ臆病さ
    色んな見せたくない面を文字で見せつけてくる。
    関西弁を解き放つ展開も、そこまで爆発するのもわかるよ…という気持ちになって苦しくもなった。

    亜美ちゃんは美人 は
    誰もが認める美人って周りからチヤホヤされて
    勝ち組な感情を抱きがちだけど
    その人にも周りが理解し難い孤独があるんだということが突きつけられる。
    美人であることが幸せでは全くない。

  • 綿矢りささん、女性の複雑な内面をなんて素敵に、おもしろく表現してくれるんだろう。

    『かわいそうだね?』
    樹理恵の脳内独り言、理性と感情の葛藤を追いながら、「そうそう分かるよ」「ちがうでしょう、それ」「しょうがないよね~」とこちらも独り言。時には共感し、時には笑いながら読み、最後は爆笑、喝采。
    樹理恵の真剣さ、抜け加減、全てが可愛いと思えた。
    恋敵のアキヨの回りが見えない程の隆大への一途さもまた可愛い、仕方ないなぁと。
    男性の庇護欲は、動物の性なのか。
    それにしても…だが。

    『亜美ちゃんは美人』
    主人公さかきちゃんの親友、美人の亜美ちゃんに対する複雑な気持ちを見事に表現している。
    分かるよ、その気持ち。
    女性へエールを送る綿矢りささん、素敵な話をありがとう。

  • 「かわいそうだね?」は最後まで読んでほっと一息。
    あ~、良かった。

    主人公の恋人が出てきてすぐ(要するに最初から)彼が主張する「樹理恵への愛情とアキヨへの友情」に苛立ち、必死で彼の言葉を信じようとする樹理恵さんにまでだんだんムカつき始め、早くどうにかしてくれ状態になってしまっていた。
    樹理恵さんの憎しみは当然のようにアキヨさんに注がれるのだけど、私の憎しみは隆大に注がれていた。
    こういうケースは100%男性が悪いと思う。
    「優しい俺」に酔って、ややこしい状況を自分から作り出し、苦しんでるとかストレスがたまってるとか愚痴り、しかも全く誠実じゃない。

    こんな男性をちょっとでも美化したままで別れて、いつまでも「私の心が狭かったのかも」なんて悩むより見るもの全部見て、言いたいこと言えて良かったのかもしれない。
    かわいそうだからとか、育った文化の違いとか、いろいろ考えて自分を納得させようとする樹理恵さんの気持ちも分かる。
    アキヨさんをあつかましいと思う気持ちも分かる。
    でもあなたを1番蔑にしてるのは隆大では?
    ほとんど接点もない女性よりも、あなたのことを好きだと言い恋人でいることを望んでいる(らしき)男性に対してもっと行動を起こすべきではない?
    本当に私の気持ちを考えているのか、と。
    まぁ、隆大には何を言っても無駄でしょうが…。

    ムカムカ、グルグルしてた気持ちがラストですっきり。
    後悔する必要なし。

    樹理恵さん、むしろ別れられて良かったんですよ。
    「しゃーない。」なんてとんでもない。
    おめでとうございます。危なかったですね。

    「亜美ちゃんは美人」もラストが鮮やか。

    自分を好きだと言ってくれた人と結婚するさかきちゃん。
    自分を好きではない人と結婚する亜美ちゃん。

    どっちが幸せを感じて生きていくかなんて本当に分からない。
    何気ない一瞬を宝物に出来たものの勝ちなんだなぁ。

  • 実は、著者さん初読みです

    こんなにリアルに女性の内面を描ける人なんですね
    定期的に読みたくなる作家さんになりそうな予感しかしません
    読書友達に勧めたくなりました

    それにしても最低な男たちがでてきますね
    私だったらとっくに別れてる…と思いつつも当事者にしかわからないことってあるから一概にも言えないのかな

    なんでそんな人が好きなんだろう

    そう友達に思っていたこともあるし、たぶん逆も然り

  • 住むところがないからと、7年付き合った元彼女のアキヨさんを住まわせる決断をした隆大。当然、現彼女の樹里絵は心中穏やかではない。

    綺麗売りとばかりに、アキヨさんと打ち解けてみたり隆大の寛大さを認めようとする樹里絵だが・・・。

    「同棲」じゃなく「同居」、とは言えアキヨさんはまだ隆大に未練たらたら。彼が愛してるのは自分だと分かっていても、そりゃなぁ~。。。

    同時収録の『亜美ちゃんは美人』
    スカウトがくるほど美しく、周りの人を虜にする亜美ちゃん。彼女の「親友」さかきは、常に彼女と比較され損ばかり。正直、亜美ちゃんのことも苦手だ。

    しかし、選りすぐりの恋人と付き合ってきた亜美ちゃんが最後に選んだのは、どう見てもろくでもない男で、、

    愛されすぎた亜美ちゃんの心の闇。

    両編とも、ガールズトークの毒っ気にあてられて育った女子校出身者には「あるある」と共感しきりなのでありました。

  • ──悶々、鬱々、そして突然ぶちキレる。
    そのぶち切れ方が、抱腹絶倒、前代未聞、暴走列車。
    そこまでに至る静かな語り口が一転して、罵詈雑言に。

    綿矢りさの書く主人公はそういう女性が多い。
    肥大した自意識で、悶々と悩み、鬱々として苦しむ。
    でも、そんな思いは心の内に押し込めて外には微塵も見せない。
    ひたすら悶々、鬱々が続く。
    そしてあるとき、その抑制した意識はプチン──と音を立てて切れる。
    いや、この作品の表現を借りれば、
    「今まで故意につなげずにおいた線が、遂につながって電流が行き渡り、充電完了」
    と言うべきか。

    元カノのアキヨと一緒に住むと言い出す隆大。
    愛しているが故に、それを許してしまう樹里恵。
    隆大もアキヨもアメリカナイズされているから、ルームシェア感覚でたいしたことじゃないんだ、と自分に言い聞かせる。
    でも疑心暗鬼はやはり捨てきれない。
    そこでふと見てしまったアキヨの本当の姿。
    ついに切れた。
    この切れっぷりの爽快さが綿矢りさの独壇場である。

    「さあ、なにか気分転換を。ていうか気分どころか、私の人生を変えるくらいの圧倒的にスカッとした電気ショック的転換を」
    「彼らをお焚き上げして煙を天へ返すことで私はいま抱えているすべての問題、災厄から解放されるのです」
    「突撃、開始。再始動だ」
    「アキヨのこわばった表情を見て、自分が一瞬借金取りにでもなった気がした」
    「どないせっちゅうねん!」
    「お客様もしかして関西のお生まれなんですか? 偶然、私もなんですと頭のなかで接客しているうちに、私はテーブルの湯呑みを手でなぎ倒していた」
    “「なにが冷静になれ、や。そんな言葉しか思い浮かばへんのか。アキヨ安心しろ。こんな男なんかくれてやる」ああ、くれてやるもなにも元から私のものではなったのに。”
    「しゃーない」

    もう、大笑いです。大爆笑。この弾けっぷり。綿矢節満開宣言。
    ほんとに、あんな可愛い顔して、どうしてこここまで書けるのだろう。すごいなあ。
    とにかく面白いです。比喩や表現はいつものように彼女ならではのものだし。
    ほかの誰にも真似のできない綿矢りさオリジナルがここにあります。
    是非、ご一読を。といっても、ストーリーを楽しむような小説ではありませんが。
    あくまでも、日本語、言葉、表現を楽しむ小説です。
    あらためて第6回「大江健三郎賞受賞」おめでとうございます

    二作目の「亜美ちゃんは美人」のレビューは「文學界」のほうに書いたのでそちらをご覧ください。
    http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/B0051P5G9E

  • 表題の「かわいそうだね?」と「亜美ちゃんは美人」の2作品収録。

    「かわいそうだね?」の方は、江國香織さんの「落下する夕方」に似ていて、こちらが大好きすぎるので、面白かったけど下位互換的な感じに読めてしまった。タイトルは面白くて惹かれてつい手にとってしまったけど…。

    個人的には、「亜美ちゃんは美人」がとてもツボで良かった。
    容姿端麗、誰からもチヤホヤされる亜美ちゃんと、その美貌に嫉妬しながらも自分のステータスを守るために亜美ちゃんと表面的に仲良くし続ける主人公の話。

    こういうのって、女子あるあるだと思うし、学生時代のことを思い返したりしながら読了したけど、なんだかんだありながら大切に思ってる感じが伝わってきて、あー良いな、と思った。

  • 【おすすめの人】
    女の嫉妬を読みたい人
    女社会あるあるが面白い人

    【感想】
    かわいそうだね?と亜美ちゃんは美人の2編
    かわいそうだね?は彼氏彼女と元カノの3人の三角関係と彼女独特な世界観が面白い☺️
    か弱く女らしいが難しい私にはとっても共感だった
    ☺️
    亜美ちゃんは美人は女同士の嫉妬や美人ならではの悩みがわかりやすく描かれていてこれも独特だと思いつつも共感☺️

  • これを読んだ直後から始まったドラマが、表題作品と設定が似ており、未だに設定をごっちゃにしてしまう弊害(笑)
    だが、表題作品ももう一本の作品も、清々しいハッピーエンドだ。
    初めてこの方の作品を読んだが、とても好みだった。
    読み終わったあと、表装の様なさわやかな青空が心の中に広がる様な二作品です。
    自分の両足で立ちたい、と思ったタイミングで出会えたので本当に良かった!

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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