幻影の星

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 307
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163810904

感想・レビュー・書評

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  • 未来の出来事の写真が保存されたメモリーチップや携帯電話を、そうとは知らずに受け取った男女のストーリーと要約してしまうと、そこから漏れるものが多過ぎる。この未来から来たチップや携帯という部分以外は極めてリアルな現代の社会や世相を描いた小説と言え、東日本大震災による大量の死や放射能のリスクといったものを強く意識して書かれている。特に、人が外界を認知する方法とか、人にとっての死の意味といった点については、現象学的な観点を含めた哲学的切り口から掘り下げられている。
    しかし、本書は難解な小説ではない。むしろ、さわやかで、真っ直ぐに一生懸命生きる人に対するエールのようなものを感じる。もっとも、一言で説明できるほど単純なものではなく、だからこそ味わい深いのかもしれない。不思議な読後感に浸っている。

  • よかった。
    イリュージョン。
    ありえない話は基本好きじゃないんだけど、これはありそうな?気がしたし、あってもいいような気がしたからかなぁ。
    この人の書く男女は影があるというか、日陰の人が多い気がするけど、確かな愛情を感じるし、納得できる流れ。

    たぶん自分にはあってた本。

  • 白石さん特有のくどくどとした文章に辟易しつつも、なお読後感は良かった。作者の作品にしては珍しく癖のない爽やかな青年が主人公になっているせいだろうか。東京と長崎を舞台にし震災後の作者の死生観を余すことなく描いている重い作品ではあるけれど、武夫とるり子の恋愛作品として読むこともできる。
    二人が時を超えて再会する展開は、1Q84の天吾と青豆を彷彿とさせると感じたのは私だけだろうか。

  • そんな中でも健ちゃんのことばには救われた。

  • また奇天烈現象シリーズでした。
    そして主人公がもやもや考えるところが、よくわかんないけどいいのかもしれない。
    変な恋人堀江さんはなんなのか?確かにイリュージョン。
    途中唐突なルルドの話が何故か良かったけど、最後がまたいい。こういうことある。
    写真の意味に気づいて、るり子が現れるあたりから面白くなった。前半はもやもやとした幻影。後半は幻影がストーリーになって楽しめた。

  • 東日本大震災を扱っていてとても不思議な設定を使ったとりわけ冷静な文章が頭に染みこんだ。

  • 永遠のループ

    この世界は無限にループしている
    本書を読み終えてそんな感覚を覚えた

    白石さんの描く人物はどこか達観していて、
    世の中を斜に見ている
    こんな言い方をするとおこがましいが
    自分もそういう生き方をしているので、そんな登場人物たちとシンクロしながら
    読み進めることができる

    今回の主人公 武夫も達観しているにはいるのだが
    酒屋の老夫婦の人生を「素敵だ」と感じれるところに
    なんだかほっとする

    武夫とるり子の未来を見守りたい

  • とてもおもしろく読みました。
    イリュージョンの考え方はしっくりきたし、
    SDカードや携帯のミステリー要素も気になって、
    すいすい読んでしまったよ。

    堀江さん魅力的でした。
    自然体で生きてる感じがよかった。
    私堀江さんと同い年なんだなー

  • 郷里にあった古びたレインコート。買ったばかりのものが今手元にあるのに。時間の観念がずれて起こるさまざまなこと。

    不思議な小説。

  • 311以降、小説家が何を感じどんな作品を書くのかとても興味があった。この本は一応小説の形になってるけど、時間とか死とかをテーマにした哲学的なエッセイみたいな感じ。以下引用「絶望や希望といった言葉は、そうした超越的な現実の前ではもはやなんの意味もなさないことを僕は感じた。今回の大地震や大津波のあと、巷に氾濫する「祈り」や「希望」といった言葉にどうしても自分が同調できなかった理由が、その時僕にははっきりと理解できた。僕達は、あの大地震と大津波の光景を目の当たりにすることで、死の恐怖や絶望ではなく、実際は死の永遠性を垣間見たのである。」未来から忘れ物のレインコートが届けられるのはソフィーの世界に似てるし、主人公が男女二人なところは1Q84っぽい。

著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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