長嶋少年

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163812007

作品紹介・あらすじ

小学五年生のノブオは、誰もが一目おく野球少年。詩人である父は行方不明、母は働くことにも子どもにも無関心という悲惨な状況のなか、ひたすら長嶋に憧れ野球に打ち込みます。友との別れや理不尽に負った怪我、出生の秘密やほろ苦い初恋も、「長嶋」を心の支えに、ぜんぶぜんぶ乗り切るのです。

感想・レビュー・書評

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  • こんな母親いるか?なぜ、そこまでになるのかの説明も無く、後味悪い。

  •  昭和40年代。敗戦の失意から立ち直り、大量生産・大量消費・いけいけどんどんだった高度経済成長の最中にある日本。大衆の娯楽、希望の光はプロ野球だった。今や地上波で放送されることのほとんどない野球中継だけど、本著を読むといかにその人気がすごかったか少し想像できた気がする。
     長島茂雄といえば、「あの呂律のまわってないおじいさん?」くらいの感覚でしかなかった(ごめん)けど、プロ野球人気を激しく支えていた、らしい。イチローの記録のほうがすごいやんとおもってまうけど、きっと記録より記憶に残る選手やったんやろう。うちの両親は阪神ファンやけど。

     恵まれた体躯と野球センスを持つ野球少年・ノブオ。しかしその家庭環境は、決して恵まれたものではなかった。物語は彼の父親の失踪シーンから始まる。ノブオ、小学2年生の頃の話である。母親は子に無関心で、金に汚い。大事に取ってあった長島の記事の切り抜きノートをめためたにしてしまうシーンなんかは、胸糞悪いったらありゃしない。親友でありライバルだったナルシゲくんとは、大人の勝手な行動で別れを余儀なくされる。中学生にいじめられたり、野球チームでも理不尽な扱いを受けたり、失恋したり、踏んだり蹴ったりである。
     これはグレるやろ、と思うけど、彼には長島がいた。否、彼は長島だった。長島であることで、崇高な精神を持ち、困難に立ち向かう勇気を持てる。こどもの頃の、「何にでもなれた感覚」の尊さを思い出し、鼻の奥がツンとした。
     母親のクソっぷりは変わらないままだし、ノブオくんの今後はもっと苦しい出来事が起こるかもしれない。「諦め」を知るのも時間の問題かもしれない。でも、物事をまっすぐ見る眼差し、長島の精神だけは失わないでいてほしいと願わずにはいられない。

  • お父さんがいなくなった長嶋大好き少年の物語。つらいことを長嶋を励みにのりこえて強くなっていく。
    おもったより壮絶な内容で苦しくなった。男の子。
    C0093

  • 又吉直樹おすすめの中に入っていて、タイトルからなんとなく想像した内容と違った。お母さんとおばさんの書かれ方がすごい。

  • 長嶋に憧れ自らも長嶋を目指す男の子の物語。

    複雑な家庭環境に悩みながら、ときに野球と長嶋への情熱を失いかけながらも、周囲に励まされ強い想いを貫こうとする。


    2015.7.17

  • 長嶋茂雄と野球が何よりも大好きな、小学5年のノブオを語り手とし、作文調で書かれています。冒頭から、父親が失踪。母親はノブオに全くの無関心で、お金に大変な執着があり、ノブオの心を傷つける。そして相次ぐケガや野球友達とのショッキングな別れ。不幸が降りかかる度に、「もし長嶋なら…」と長嶋を心の支えに乗り越えるノブオ。それでも、どうしようもなく捻くれてしまう事もありながらも、どこまでも健気なノブオに感動しました!とても良かったです。

  • ねじめさんにとって長嶋さんは神なんだな。 

  • 昔にこんな少年がいたいた(^-^)/ 好きな事に向かって一生懸命な少年が、、
    しかし、こんな母親がいてもいいのだろうか? そんなモヤモヤが、また一層物語を面白く読ませてくれた。

  • 高度成長期、この時代の日本プロ野球界最大のスーパースター・長嶋茂雄
    野球少年たちは背番号3を付けサードを守ことが最大の喜びであったであろうこの時代の物語です
    けいたはリアルタイムで長嶋茂雄の現役時代を知りません
    小学校低学年の頃に王貞治が引退しました
    王さんの引退セレモニーはなんとなく覚えています
    一塁ベースにファーストミットを置く王さん・・このシーンは憶えてます
    たぶんTVを見ていたんだと思います
    でも、長嶋さんの現役時代の人気は凄かったんでしょうね
    時代ともマッチして多くの人々に勇気や希望を与えたことでしょう
    http://momokeita.blog.fc2.com/blog-entry-135.htmlより

  • 往時のノブオの日常がせつないほどに程に共感できます。
    私も同世代・・当時の子供たちの憧れと好きなものは「大鵬・長嶋・卵焼き」です。
    長嶋の活躍に一喜一憂し憧れと羨望が野球につながっていきました。
    当時は高度成長期の走りで建築予定地と言いますか、あちこちにグランドでも広場でもない「空き地=原っぱ」があり野球少年が何人か集まると三角ベースで野球をやっていたものです。長嶋の一挙一動まで知り尽くした長嶋少年だらけでした。
    家庭環境も昭和中期のそれにありがちな一家と取り巻き・・胸がキュンとしてしまいます。
    少年時代が遠からず似ている私にとっては、「長嶋の活躍が自分の自慢」、「子供社会の四方山ごと」、「胸焦がす幼い恋心」と読みどころ一杯でした。

    読後感=切ない懐古・・少年時代に触れる・・

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著者プロフィール

ねじめ正一
1948年東京都生まれ。詩人、作家。 
詩集『ふ』(櫓人出版会)でH氏賞、『高円寺純情商店街』(新潮社)で直木賞、『荒地の恋』(文藝春秋)で中央公論文芸賞、『商人』(集英社)で舟橋聖一文学賞、『まいごのことり』(佼成出版社)でひろすけ童話賞、『ひゃくえんだま』(鈴木出版)でけんぶち絵本の里大賞びばからす賞を受賞。
主な児童作品に『ぞうさんうんちしょうてんがい』(くもん出版)、『ずんずんばたばたおるすばん』(福音館書店)、『みどりバアバ』(童心社)など多数ある。

「2022年 『たんていベイビー きえたヤギのおばあさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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