鍵のない夢を見る

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 998
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163813509

感想・レビュー・書評

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  •  短編集。わたしそんなに短編集って好きじゃないかも、ってときどき思ったりもするんだけど、辻村深月にじゃっかん強い興味を持っている最近なので借りてみた。
     ついでにいうと単行本で読むことにもハマっている。あとがきがない、解説がない。だから自分でいろいろ考えたり調べたりしてなんとか理解するしかない。あと表紙のデザインも楽しい。買うなら文庫、借りるなら単行本。でも重い。

     身に覚えがある、というか、特定の人や記憶を否応なしに思い出させるような話が多かった。うわぁぁぁ

     わたしの人生のいろーんなタイミングで、わりかし頻繁に、ともすれば奈落の底に落ちたかもしれない可能性に出くわしつつ、最終的には落ちなかったからこその今があるに違いないと思った。それは自分だけの力ではなくて。何事においてもわたしの勇気が足りなかったっていうのもあるけど。それより、奈落の方向へわたしを引きずろうとする人やものが現れて、わたしがそれに翻弄されるたび、それ以上の強さで、逆方向に引っ張り続けてくれた人とかものとかがその都度あって、常識に溢れたその引っ張りの有り難さとか大変さに気付かなくて、ふざけんなってわりと最近まで反抗的に思ってたけど、大きく踏み外すことなくここまで来られたのは、結局、すごく幸福なことだったと今は思う。今の感じ、けっこう好きだし。

     ③④⑤の話はまじで身に覚えがありすぎて怖かった。わたしの体験や記憶を余すところなく文字に興してくださってありがとうございますって感じだった。

  • 彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい―女性たちのそんな願いが転落を呼び込む、5つの短編集。

    誰もが抱く願いから犯罪へ巻き込まれる女性たちを描いている。主人公の女性たち自らが罪を犯すわけではない。しかし自分と犯罪との関係を悟り、それが自分の欲望から生まれたものなのではないかと恐怖に駆られる様がスリリングだった。幸せを望むはずなのに、彼女たちの前には皮肉にも真っ黒な闇が待ち受けている。物語の主人公たちが異常だったわけではなく、女としての普通の幸せを願う、どこにでもいる女性である。誰もが闇と背中合わせの日常を送っていて、いつそちら側へ回ったとしてもおかしくはない、そういう恐れを示唆した物語なのかもしれない、と思った。

  • 第147回直木賞受賞作。
    辻村深月さんの本は好みのものとそうでない物にくっきりわかれてしまう。
    この本は後者で…

  • 辻村さんの本、すごく好きでこの本は直木賞受賞ということで楽しみにして読んだのに今まで読んできた彼女の作品の方が断然おもしろくて好きだった。
    女性主人公の5編の短編集で、
    ①仲良しだった友達の母親が泥棒癖があり、友達本人も万引きしようとして幻滅して疎遠になったのに高校の時再会したら友達だったことを忘れられて(忘れたふり?)屈辱!
    ②昔はそこそこモテてたのに働き出してから出会いがなく職場後輩にバカにされたくなくて自分をデートに誘っただけの男が放火犯で捕まると動機は私に会いたかったからだ!と勘違いする痛い女!
    ③小学校からの冴えない仲良し三人組の中でも自分が一番かわいいしちやほやされたいからって出会い系サイトで出会った相田みつをが好きなメンヘル男と付き合い、しかもDVだし別れりゃいいのにでも私のこと好きだし!と馬鹿なことを思ってたら母親殺されて逃亡!ああ怖かった
    ④大学時代から付き合ってた男に依存されたいのにしてくれなくて悶々!殺人犯の貴方も愛してる!とかいっちゃう痛さ!からの自殺未遂!
    ⑤育児ノイローゼで赤ちゃんが誘拐されたと大騒ぎするけどただの勘違い!
    という本当に痛くて可哀想で悲しい女性の話なのだけど、やっぱり女性の描写は上手で、あぁこういう女の人いるよねー と思いながら読めてそこは好きなんだけど物語りじたいがそこまで盛り上がりもなく。感動も特になかったのが残念。

  • 2013.10月。
    んー。ストーリー自体はおもしろかったと思う。読後の気分が救いがないというか。こどもや学校ものの辻村作品がわたしは好きみたいです。

  • 普通の幸せを望みながら、どこかで捻れて袋小路に飛び込むことになる5人の女たちの物語。
    読後感は非常に良くない。けど、その救いのなさというか、確かな粘度を持って描かれる「現実」の生々しさはすごいと思う。

    いつもながら、辻村作品の主人公は露悪的だ。
    今回も一段と女性のイヤラシさ、狡さ、弱さが強く表れていて、
    特に真ん中3篇における、つまらない男に振り回されながらも淡い夢に縋らずにいられない主人公たちの心情描写は、読んでいてかなりこたえる。

    彼女たちが垣間見せる「自己愛」は、自分を守る大切な鎧であり、毒でもあるのだろう。

  • 「鍵のない夢を見る」というタイトル通り、まさに現実には行き場のない、どうしようもないことがたくさんあって、人間はそれぞれ色んなことを考えていて、それは醜いことが多くて、すべてを一気に解決してくれるようなものはない。鍵はない。現実を生きるのは、鍵のない夢を見るようなもの。人のことを散々分析したあげく、自己批判に至り、理屈ではわかっていてもどうにもならないことに身を委ねる、っていうそのかんじ、すごくよくわかる。辻村深月の言うことは最もだ。ただそれでも、こういう世界は、嫌だなあ。秀逸ではあるけれど、後味の悪い一冊。

  • 遅ればせながら、祝★直木賞受賞!
    でも考えてしまう。辻村作品にはもっともっと評価されても
    よい素敵な作品があるのに。
    直木賞受賞作品ということで初めて辻村作品として読む人も居るだろう。そこでこんなもんかと思われないだろうか。
    作品は短編5作のミステリー要素強い大衆小説。

  • 家族や恋人や友達と過ごしながらも孤独感から抜け出せない女たちが、日常に潜む犯罪に巻き込まれていく。

    直木賞作品であるこの物語に共感する人が多いということは、みんな大なり小なり似たような孤独を感じているのかしら?

    私としては、感動したとかグッときたとかいう場面はなく、淡々と読み進めた感じ。

  • つまらないとは思わなかったけど、なぜ直木賞かわからなかった。
    特に最後の話なんて、子育て経験のある人が読めば「分かるなぁ」って共感するかもしれないが、子育て経験のある私の感想は「そうよね、子供ってそうよね。。・・・だから?」って全く何にも思わなかった。
    好きな作家さんだけに何だかモヤモヤ感が残ってしまった。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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