二十五の瞳

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163814407

感想・レビュー・書評

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  • 二十五だよ…
    奇数だよ…
    嫌な予感しかしないよね…
    そして、それ、当たってるし。

  • 『地球上の生物の歴史を見てもわかる。強いものが生き延びたのではない。危機察知能力が高いものが生き残ってきたのだからと、僕は自分に言い聞かせた。』

    「少しでも社会を良くしたかった。そうしなければ、この狂った世界に折り合いをつけることができなかった。こんな言葉を知らないか? 世界を変えられなかったら、自分を変えろ。自分を変えられなかったら、世界を変えろ。 ーー私は、後者を選択した」

    「愛ちゃんもトランプやらない? ちょっと田山くん、ババ抜きやりましょうって誰がババアやねんー

    「私どもが売っているのは安心です。月々の支払いで、平穏無事な将来が買えると思って下さい。残念なのは万が一あなたが亡くなった後、路頭に迷うことなくそれまで通りの生活を過ごすご家族の様子をお見せできないことです。」

  •  やっぱりやってくれた、この作家。鬼才、あるいは奇才などという表現ではまだ足りない。美しくもおぞましい物語の数々を書き続け、常に読者の側の予測を拒むアイディアに満ちた、異郷や異形の樋口ワールドといった、如何にもケレン味たっぷりの一冊が、またもここに登場した。

     読書当時、ぼくは二度ほど小豆島を訪れることになっていた。小豆島の知識を仕入れるのに通常の観光本を思い描く前に、読み残しのこの一冊が念頭にあった。果たして小豆島の、文字通り「豆」知識の役に立つかどうかは期待の埒外に置くとして。

     内容を見て驚く。私小説? と思わせるプロローグに始まるが、それはエピローグとともに、四つの短編小説を挟む作者のモノローグ。ローグ、ローグと、五月蝿くなってしまいました、失礼! 

     さて四つの短編小説は、平成、昭和、大正、明治とそれぞれ時代を異にした文体も内容もまるで別作者が書いたような物語の数々。樋口文学のテクニックの冴えは各所に見られるし、彼の作風の異常ぶりも、徐々に極まってゆくので、ご安心を。そして誰もが予想をしなかった結末にて、この作品はこういう作品だったのか、と唸らされることになる。

     干潮の時だけ姿を現わす天使の散歩道(エンジェルロード)を二人で歩くと愛が成就するというスポットが実際に小豆島にある。夕陽の時にはとても美しい場所である。しかし、樋口ワールドの小豆島では、海から浮上するニジコという怪物が存在し、その正体は何なのかわからない。ニジコを見ると別れるという小豆島別離伝説も、秘薬薯という特有の芋も、嘘くさいものばかりである。史実と幻想とを混沌の中に投入しつつ、この連作短編集は終わってゆく。

     尾崎放哉、渋沢栄一、斎藤実など実在の人物が登場したかと思うと、肝心の『二十四の瞳』のヒロイン高峰秀子は高稲愛子という別の名前で登場し、別の映画を子供たちと撮影している。この統一のない奔放性が自由自在に小豆島を料理してしまった、これは奇怪異形の書なのである。

  • 時代を変えて語られそれがいまいち分かりづらかったが、終章とあとがきを読むとせつなくいい余韻があった。
    木下恵介監督の二十四の瞳を観ようと思った。

  • 相変わらず元作品に対する知識がなさすぎたけど、これも面白かったです。樋口さんってきっと男前でいい人なんじゃないでしょうか。あ、登場人物のね。

  • やっと読めた!小山田健二!笑。プロローグとエピローグはホントの話なのかな?意外だった。二十四の瞳、尾崎放哉、著者がどれだけ思い入れがあるかヒシヒシ伝わってくる。どっちも知らないので、読まなきゃ!それからまた読みたい一冊。

  • 3.11以降に書かれた作品。一人の小説家が
    出来る事がもの凄い熱量で詰まっている気がします。
    今作では毒が少ない...という評も目にしますが
    毒以上のものが濃縮されている気がします。

    小豆島を舞台に、平成、昭和、大正、明治と
    異なる時代に島で起きた事件が遡って最終話で
    繋がる小説としての完成度。ゾクゾクします。
    さらに過去、島に関わった史実上の人物を
    それぞれの主人公に据えて展開する、フィクションと
    ノンフィクションが入り混じったストーリー。
    そこに効果的に鳴り響く音楽。
    樋口さんにしか出来ない手法と、センスで
    対象物に対する愛がヒシヒシと伝わる。
    そして対象物に対する嘲笑は青白い炎のように
    高温度で揺らめく快作。自分は好きな作品です。

    いつか...樋口さんの作品の装丁を
    ガキヤイサム氏が手掛けた本が欲しいなーと切に思います。

  • 序章「小豆島に行くつもりじゃなかった」ではダメトレンディドラマ的ATM夫の悲哀
    第一話「あらかじめ失われた恋人たち」はトンデモ的エンタメ小説
    第二話「『二十五の瞳』殺人事件」はウルトラセブンの子供向け風大人ドラマで悲劇を
    第三話「酔漢が最後に観たもの」では無頼詩人のダメっぷりで笑い
    第四話「二十五の瞳」はデビルマンに出てきそうな奇形でオエッてなりそうだった
    馳星周の暗黒力と町山智浩の情報知識とクエンティン・タランティーノサンプリング&オマージュ力で読みやすいくせに灰汁のある物語を書かせたら世界一じゃなかろうか
    今回もシリアスなくせにおちゃらけるビートたけし的な構成で楽しめました



  • エピローグとプロローグがコアの部分。
    妻と別れ自らの傷心を癒すため、木下恵介や高橋秀子等の存在を広めるためなのか、厭世観とオザケンよろしく人生肯定の間でゆれる作者の愛とアイロニーなのか、どれともとれる。

    1・2話は文芸誌で読んでいたから「あぁそうだったよね」と軽く読み進めた。
    結果失敗で単行本一気に読んで一気に読後感を味わいたかったよ。
    すげぇよこれ。
    小説が娯楽のトップでないことは分かっているけど、それにしても騒がれなさすぎ!
    2012年こそ読むべき小説でしょう。
    図書館なんかで借りてごめんなさい。
    次の新刊からはきちんと書店で買います。

  • やっぱり樋口氏。期待を裏切りません。。本当に面白かった。元ネタはいつもながら凄く有名なのだけれど、中途半端にしか理解できていないものばかりだったので、いい意味で復習出来たように思う。
    それに、311をこういった視点で描けるのは、彼ならではだと思う。やっぱり本質的に人は不愉快で陰湿で身勝手だから。何かよくわからないもの(放射能)から逃げた人たちを責めることは出来ないと思う。そもそも、私たちが攻め立てねばならないのは、何かよくわからないものを金儲けの為に作ってしまったお偉いさんたちだ。

著者プロフィール

東京都豊島区雑司ヶ谷生まれ。出版社に勤務したのち、2009年『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。11年『民宿雪国』が山本周五郎賞と山田風太郎賞の候補作となり話題に。著書に『日本のセックス』『テロルのすべて』『二十五の瞳』『タモリ論』『ドルフィン・ソングを救え!』などがある。

「2023年 『無法の世界 Dear Mom, Fuck You』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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