二十五の瞳

著者 :
  • 文藝春秋
3.35
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163814407

作品紹介・あらすじ

「二十四の瞳」の舞台で有名な小豆島。平成、昭和、大正、明治、4つの時代に島で起きた事件と悲恋の背後には因縁の物語があった

感想・レビュー・書評

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  • 24の瞳と戦前文学?等々を盛り込みつつ風刺する作品。ストーリーとしては面白いんだけど、時代の暗部が受け入れがたい。
    ニジコと小豆島がキーなのだけど、ファンタジーな要素は少なく、人間のダメっぷりが強調されている。個々のダメさ加減は受け入れられるけれど、戦争や地震、津波、工業天災なとどは夫婦であっても価値観、捉え方が異なるのかな。というよりもともと違っていたものが、生きるか死ぬかのところで白日に晒されるのだろうか。震災離婚とかあったな。そんなことを考えさせられる作品。

  • 二十五だよ…
    奇数だよ…
    嫌な予感しかしないよね…
    そして、それ、当たってるし。

  • 樋口毅宏は文学にヒップホップの方法論持ち込む。
    言うなればタランティーノが映画でやっていることを小説でやっているのだ。

    今回は壺井栄『二十四の瞳』、高峰秀子『私の渡世日記』という大ネタ勝負といったところだろうか。

    平成、昭和、大正、明治、四つの時代を四話に渡って描くが、微妙に文体のグルーヴを変えてきている。
    まるでジャズDJが年代がバラバラで音質にも隔たりがある音源をスムーズに混ぜるかのようにそれらは繋がっていく。

  • 『地球上の生物の歴史を見てもわかる。強いものが生き延びたのではない。危機察知能力が高いものが生き残ってきたのだからと、僕は自分に言い聞かせた。』

    「少しでも社会を良くしたかった。そうしなければ、この狂った世界に折り合いをつけることができなかった。こんな言葉を知らないか? 世界を変えられなかったら、自分を変えろ。自分を変えられなかったら、世界を変えろ。 ーー私は、後者を選択した」

    「愛ちゃんもトランプやらない? ちょっと田山くん、ババ抜きやりましょうって誰がババアやねんー

    「私どもが売っているのは安心です。月々の支払いで、平穏無事な将来が買えると思って下さい。残念なのは万が一あなたが亡くなった後、路頭に迷うことなくそれまで通りの生活を過ごすご家族の様子をお見せできないことです。」

  • この本は雑誌の連載と前後にちょっとした書下ろしを付け加えてある。根底にあるのは二十四の瞳なのであるが、福島第一原発の事故も大きく関わってくるのである。登場人物も実に多彩で、壺井栄から高峰秀子、木下恵介監督、黒沢明監督、渋沢栄一、邱永漢にはては著者に至るまでそれぞれが重要な役割を担っている。アイディアが面白く、実に不思議な小説だ。WOWOWで今月やる七人の侍は見てみよう。

  •  やっぱりやってくれた、この作家。鬼才、あるいは奇才などという表現ではまだ足りない。美しくもおぞましい物語の数々を書き続け、常に読者の側の予測を拒むアイディアに満ちた、異郷や異形の樋口ワールドといった、如何にもケレン味たっぷりの一冊が、またもここに登場した。

     読書当時、ぼくは二度ほど小豆島を訪れることになっていた。小豆島の知識を仕入れるのに通常の観光本を思い描く前に、読み残しのこの一冊が念頭にあった。果たして小豆島の、文字通り「豆」知識の役に立つかどうかは期待の埒外に置くとして。

     内容を見て驚く。私小説? と思わせるプロローグに始まるが、それはエピローグとともに、四つの短編小説を挟む作者のモノローグ。ローグ、ローグと、五月蝿くなってしまいました、失礼! 

     さて四つの短編小説は、平成、昭和、大正、明治とそれぞれ時代を異にした文体も内容もまるで別作者が書いたような物語の数々。樋口文学のテクニックの冴えは各所に見られるし、彼の作風の異常ぶりも、徐々に極まってゆくので、ご安心を。そして誰もが予想をしなかった結末にて、この作品はこういう作品だったのか、と唸らされることになる。

     干潮の時だけ姿を現わす天使の散歩道(エンジェルロード)を二人で歩くと愛が成就するというスポットが実際に小豆島にある。夕陽の時にはとても美しい場所である。しかし、樋口ワールドの小豆島では、海から浮上するニジコという怪物が存在し、その正体は何なのかわからない。ニジコを見ると別れるという小豆島別離伝説も、秘薬薯という特有の芋も、嘘くさいものばかりである。史実と幻想とを混沌の中に投入しつつ、この連作短編集は終わってゆく。

     尾崎放哉、渋沢栄一、斎藤実など実在の人物が登場したかと思うと、肝心の『二十四の瞳』のヒロイン高峰秀子は高稲愛子という別の名前で登場し、別の映画を子供たちと撮影している。この統一のない奔放性が自由自在に小豆島を料理してしまった、これは奇怪異形の書なのである。

  • 二十四の瞳を軸として小豆島を舞台とした短編が四つ平成から明治にかけて時代をさかのぼって収められています。

    特に尾崎放哉を描いた第三話「酔漢が最後にみたもの」は夢中に読むことができました。
    尾崎放哉の自由律俳句における知名度は種田山頭火と肩を並べる印象ですが、その生涯を追って残された作品を味わうと、これが一人の男の人生かと疑うほど波瀾に満ち、そしてその激烈な人生だからこそ今も多くの人を魅了する作品が生まれたのだと思いました。

    第四話にいくと、著者の独特な表現で空海と大石先生と小豆島と原発事故を繋ぎ、皮肉な内容としては面白いのですが、やはりボクは尾崎放哉に惹かれました。

    小豆島の歴史的な背景や縁のある人物など予備知識なく読みましたが、意外な人物や地理上の特異さからドラマが生まれやすい風土なのだと感じました。

  • 時代を変えて語られそれがいまいち分かりづらかったが、終章とあとがきを読むとせつなくいい余韻があった。
    木下恵介監督の二十四の瞳を観ようと思った。

  • 中原昌也をマイルドにした感じになってきた〜

    エピローグの自分語りてきなところ
    いらなくない?

  • 2013/05/22
    移動中

  • 相変わらず元作品に対する知識がなさすぎたけど、これも面白かったです。樋口さんってきっと男前でいい人なんじゃないでしょうか。あ、登場人物のね。

  • 小豆島に行きたくなりました。
    フィクションに思えないフィクションなのが好き。

  • あとがきに「僕も木下恵介や高峰秀子を次の世代に紹介したかった」とあるのに当該章の人物名がその通りでなく、次章の尾崎放哉が実名ママなのがなんだか。

    &ヒップホップはオリジナル制作者に許諾をとることになってると思うが、文学は「やったもの勝ち」なのかぬ。

  • やっと読めた!小山田健二!笑。プロローグとエピローグはホントの話なのかな?意外だった。二十四の瞳、尾崎放哉、著者がどれだけ思い入れがあるかヒシヒシ伝わってくる。どっちも知らないので、読まなきゃ!それからまた読みたい一冊。

  • 3.11以降に書かれた作品。一人の小説家が
    出来る事がもの凄い熱量で詰まっている気がします。
    今作では毒が少ない...という評も目にしますが
    毒以上のものが濃縮されている気がします。

    小豆島を舞台に、平成、昭和、大正、明治と
    異なる時代に島で起きた事件が遡って最終話で
    繋がる小説としての完成度。ゾクゾクします。
    さらに過去、島に関わった史実上の人物を
    それぞれの主人公に据えて展開する、フィクションと
    ノンフィクションが入り混じったストーリー。
    そこに効果的に鳴り響く音楽。
    樋口さんにしか出来ない手法と、センスで
    対象物に対する愛がヒシヒシと伝わる。
    そして対象物に対する嘲笑は青白い炎のように
    高温度で揺らめく快作。自分は好きな作品です。

    いつか...樋口さんの作品の装丁を
    ガキヤイサム氏が手掛けた本が欲しいなーと切に思います。

  • 自分が書いたものを読むような気恥ずかしさがあった。だからこそ一気に読んでしまった。

  • ■小豆島が舞台の「二十四の瞳」ならぬ「二十五の瞳」で瞳がひとつ多いのは...。(笑)

    ■読み始めたら面白くてグリグリとストーリに引き込まれてしまい、「お、これは当たりかも?」と思った途端にあっけない幕切れ。「えー、それはないでしょー」って声に出しちゃったぐらい。

    ■そこで初めてこの作品がオムニバスなことに気付く。どの短編?も面白くて、1日で読んでしまったんだけど、共通項が「小豆島」しかないので、全体を通すとっ散らかった感があるのが惜しかった。(まして1日で一気読みしたのでなおさらだったかも。

    ■それがなければ★★★★だったんだけど。(笑

  • 摂津 王貞治 レディオヘッド OKコンピュータ マーク・ザッカーバーク スティーブ・ジョブズ ビル・ゲイツ アイリッシュ系 スコットランド系 ビートルズ 蛍の光 滝廉太郎 小豆島しょうどしま 空海 お遍路 阿部総裁 オバマ ブッシュ 原子力 石油 オリーブオイル ナベツネ 宗 お局 毒殺 浜田省吾 ニジコ 秘薬薯 黒澤明 いきる 蜘蛛の巣城 マクベス シェークスピア 小林多喜二 一生子供でいても怒られることのない社会 マタギ 悪いやつほどよく眠るまあだだよ 所ジョージ トラトラトラ 白痴 どですかでん 影武者 キャメラ シャシン "夢は必ず叶う"…?そんな言葉が声高に叫ばれるほうが、いくら物質に囲まれていても、ずっと絶望が深い
    小豆島(しょうどしま)は、瀬戸内海・播磨灘にある島。香川県に属する。素麺、醤油、佃煮、胡麻油、オリーブなどの生産が盛んであり、いずれも日本有数の生産地となっている。特にオリーブは国内栽培の発祥地として広く知られる。壺井栄の小説『二十四の瞳』の舞台であり、島をロケ地として二度映画化されている。
    尾崎放哉 インフラ 朝鮮 大石 田中正造 足尾銅山 緑色 二十五 ニジコ 水母銃 三つ目が通る 民宿雪国 離婚届 高峰秀子 木下恵介 町山智浩 リンプ・ビズキット 小沢健二

  • 「別冊文藝春秋」(2011年9月号~2012年3月号)に掲載された4編に、この作品が生まれたきっかけでもある樋口さん自身のプライベートな状況を詳細に記しているところが異色。発表するたびにセンセーショナルな話題を提供してくれる樋口さんの作品。はたして今回も賛否両論、喧々諤々の評価となっているようだ。

    このたびの作品の舞台は瀬戸内の「小豆島」。この島で生まれた過去の名作「二十四の瞳」とその映画化作品からインスパイアされた発想で、映画の主演女優や監督、あるいは島ゆかりの文人に地元の歌舞伎など、ありとあらゆる地のものを取り込んで、変幻自在の読み物に仕立て上げている。

    東日本大震災や福島原発事故がなければ生まれなかった作品で、樋口さん自身はこれらの悲惨な出来事を茶化して作品化したわけではないと思うが、むちゃくちゃなストーリー展開の一端に事故の片鱗が色濃くうかがわれる。

    読み手としては、本家本元のオリジナル作品を徹底してパロディ化して嘘八百の一大物語に作り変えた、樋口さんの作家としての創作の才能に敬意を表するところだ。しかしながら、残念なことにこうした自在の作り込みが、真面目じゃないとか、島が笑いものにされてしまったとか、不謹慎のそしりを免れない側面を持っていることは否定できない。

    小豆島に伝わる伝説上の生き物(?)「ニジコ」が、重要な役回りを演じているが、私自身はこの作品のタイトルは「ニジコの瞳」のもじりだと信じている。

  • 序章「小豆島に行くつもりじゃなかった」ではダメトレンディドラマ的ATM夫の悲哀
    第一話「あらかじめ失われた恋人たち」はトンデモ的エンタメ小説
    第二話「『二十五の瞳』殺人事件」はウルトラセブンの子供向け風大人ドラマで悲劇を
    第三話「酔漢が最後に観たもの」では無頼詩人のダメっぷりで笑い
    第四話「二十五の瞳」はデビルマンに出てきそうな奇形でオエッてなりそうだった
    馳星周の暗黒力と町山智浩の情報知識とクエンティン・タランティーノサンプリング&オマージュ力で読みやすいくせに灰汁のある物語を書かせたら世界一じゃなかろうか
    今回もシリアスなくせにおちゃらけるビートたけし的な構成で楽しめました



  • エピローグとプロローグがコアの部分。
    妻と別れ自らの傷心を癒すため、木下恵介や高橋秀子等の存在を広めるためなのか、厭世観とオザケンよろしく人生肯定の間でゆれる作者の愛とアイロニーなのか、どれともとれる。

    1・2話は文芸誌で読んでいたから「あぁそうだったよね」と軽く読み進めた。
    結果失敗で単行本一気に読んで一気に読後感を味わいたかったよ。
    すげぇよこれ。
    小説が娯楽のトップでないことは分かっているけど、それにしても騒がれなさすぎ!
    2012年こそ読むべき小説でしょう。
    図書館なんかで借りてごめんなさい。
    次の新刊からはきちんと書店で買います。

  • やっぱり樋口氏。期待を裏切りません。。本当に面白かった。元ネタはいつもながら凄く有名なのだけれど、中途半端にしか理解できていないものばかりだったので、いい意味で復習出来たように思う。
    それに、311をこういった視点で描けるのは、彼ならではだと思う。やっぱり本質的に人は不愉快で陰湿で身勝手だから。何かよくわからないもの(放射能)から逃げた人たちを責めることは出来ないと思う。そもそも、私たちが攻め立てねばならないのは、何かよくわからないものを金儲けの為に作ってしまったお偉いさんたちだ。

  • プロローグとエピローグのためにある、妻へのラブレター。

  • 序章と終章のための四つのお話。悲しくも残酷な小豆島に伝わる恋人たちの為の伝説。ニジコそのなぞが時代をさかのぼるごとに明らかになり、現代とつながる。

  •  往年の名作『二十四の瞳』へのオマージュ作品。
     ノスタルジックな小豆島を舞台に、虚実入り交じった不思議な因縁話が4編展開される。ただ、著者の私的な出来事と、原作への思い入れが強すぎるのか、いつものハードさもバイオレンスも抑え気味で、時代を斜めから切り取る視線もピントが合っていない気がした。対象が好きすぎて周りが見えなくなっている状態。

  • この人の主張は気持ちいいです。大好き。

  • デコちゃんへの愛の賛歌!!

  • 小豆島には、ある言い伝えがある。
    「ニジコ」という化け物を目撃した人は、愛する人と別れるという。
    けれども「ニジコ」は、自分が認めたカップルは、助けてくれるらしい。

    2010年、小豆島出身のキャスター大石久子は、小豆島を買収した
    中国人実業家、宋永漢の単独インタビューを任された。
    実は、宋と久子は10年前は恋人同士で、小豆島は二人にとって
    想い出の地だった。
    現在、世界を駆けめぐる実業家になった宋と、トップキャスターになった
    久子は、それぞれ口外できない重い役割を背負っていた。
    再び出会った二人に、あの「ニジコ」の言い伝えがよみがえる。

    小豆島とその伝説をめぐる短編が、他に3編。
    一編づつ過去にさかのぼり、「ニジコ」の謎が解ける。

  • 著者は近代の映画史・文学史・音楽史に豊富な知識をもっているのだろう。
    随所にそうした知識に基づく遊び心があって、虚実織り交ぜた話となっており、「本当にそうだったけ?」と読みながらネットで小豆島や二十四の瞳などについて検索してしまった。
    あとがきには高峰秀子や木下恵介などの自分が好きな人たちを再評価してほしかったとある。
    興味をもったという意味では、うまくはめられた~という感じ。

    あまりに虚実入り乱れているので、離婚も本当かどうかわからないのだが、別れ話をいろいろ書いて、奥さんとの別れを消化しているような印象。

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著者プロフィール

東京都豊島区雑司ヶ谷生まれ。出版社に勤務したのち、2009年『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。11年『民宿雪国』が山本周五郎賞と山田風太郎賞の候補作となり話題に。著書に『日本のセックス』『テロルのすべて』『二十五の瞳』『タモリ論』『ドルフィン・ソングを救え!』などがある。

「2023年 『無法の世界 Dear Mom, Fuck You』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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