光線

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163815503

作品紹介・あらすじ

東日本の大地が鳴動した数日後、ガンの疑いが現われる。日本列島の南端の町で、放射線治療を受ける一ヶ月余のあいだ、震災と原発をめぐる騒動をテレビで繰り返し見つめつづけた。治療を終え、ガンが消えた身体になった著者は、「自分も今一度生きよう」と心に決める-。一国の災厄と自らの身に起きた変動を、見事に文学へと昇華した稀有の連作小説。

感想・レビュー・書評

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  • 村田喜代子 著「光線」2012.7発行、短編8話です。太陽は核融合する巨大な裸の原子炉、火山の噴火が示すように地球の深部は核分裂の火、地上では人間の手で造られた原発の炉(3.11で一大事に)また、がん細胞を自滅させる放射線治療・・・、最初の4話はこれらの関連作品です。「3.11」は国民全員に自然の驚異と放射線の脅威を見せつけ、そして多くの作家の創作活動に影響を与えましたね。

  • 後半飛ばし読み。
    癌の治療法、放射線、東日本大震災。

  • 原発事故と放射線治療

  • ガン患者だったら、もっと詳しい話を!と望むだろう。

  • 光線 / 村田 喜代子 / 2012.8.29(40/119)
     発電利用と医療利用、両方とも原子力の技術。3.11の最中、中性子がん治療を受ける人の話。技術があって、それをどう利用するか問われる。

  • 小説 
    ゲニウスロキとはまた少し趣の違う土地の力を感じる
    がんの治療と福島と 
    不安のちから

  • 村田喜代子『光線』文藝春秋、読了。とにかく読んで欲しいから外堀を埋める。連作の執筆中に著者は3.11を迎え、同時に癌を宣告された。放射能禍が人々を苦しめる中、放射線治療を受けるという矛盾。震災は多くの作家の「言葉」を奪うことになった。言葉を再び紡ぐ本書は一条の希望を照らす。

  • あとがきによると当初の構想は"土地の力、地の霊力をテーマとした短編連作"。それが311の震災と作者自身のガン放射能治療の経験を対比、通過することで、人間と世界をめぐるより深淵な物語となっています。自然に対する人間の無力と強さを感じさせます。

  • 3.11直後に自身ががんと診断され、放射線治療を受けることになった著者の体験が色濃く反映された作品がメインの短編集。
    がんも津波も、本人に選べない災難であり、「偶然」によって生死を分かたれる点で同じものだという、主人公の妻の述懐。生き延びたことを「バンザイ」と喜ぶことができないと。
    バンザイをしないでただ感謝して生きて行こうという主人公妻のがん友だち。刻苦を生き延びた人の優しさには、一瞬言葉を失います。
    日本という国にこの責め苦を課した「運命」に対し、すべてを奪わず、この人たちを残してくれてありがとうと言いたいです。

  • 子宮癌治療の放射線(「光線」)から3・11の原発事故の放射能につながる「原子海岸」。東日本大震災のときの幼い子どもをかかえた女性の一人称で語られる「ばあば神」や日暮れ時道に迷っていく「夕暮れの菜の花の真ん中」などどれも今を生きる人々を描く。
    著者の体験に基づいた放射線治療を読むと、癌になることを考えて貯金しとかないととてもこの治療は受けられない、と現実的なことを考えてしまった。
    鍾乳洞の洞窟に入る「楽園」の洞窟潜水には震えたが、希望の残る結末がよかった。

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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