孤愁―サウダーデ

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  • 文藝春秋 (2012年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (668ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163817408

孤愁―サウダーデの感想・レビュー・書評

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  • 新田次郎の遺作である作品を、子息である藤原正彦氏が書き継いで完成させた作品。
    20年前に出版された藤原氏のエッセイ「数学者の休憩時間」で本作品に触れていて、私自身もずっと気になっていたのだが、必ず書き継ぐと宣言していたのを遂に実現したものである。
    しかも新田氏が本作を書くのに読んだ文献、行った場所、会った人々、飲んだお酒、食べた食事をすべてなぞり、亡くなった年齢になったところから書きだしたという話を知って藤原氏の執念を感じた。

    ポルトガルからマカオ経由で来日し、神戸でポルトガル領事を努め、日本人を妻に娶った実在の人物モラエスが日本で生活した日清戦争の少し前から亡くなる昭和四年の間、彼の眼から見た日本の姿、文化、思想、人々の生活を題材としている。
    題名でもあるサウダーデ(孤愁)とは、モラエスは「わかれた恋人、死んだ人のこと、下記の訪れた景色を思い出すこと、十年前に大儲けをした日のことを懐かしく思い出すこと、そしてそういった過去を思い出すことによっって、甘く悲しい切ない感情に浸りこみ、その感情の中に生きることを発見する」事なのだと言う。
    ポルトガル人特有に使われるこの言葉が本書の底辺を貫いて流れるテーマであり、帰ることを止めた故国ポルトガル、別れてきた中国人との間に生まれた子供たち、そして最愛の妻およね、などとモラエスの言うサウダーデがそこかしこに顔を出す。
    読み終えてみればサウダーデは決してポルトガルの人たちだけのものではなく、間違いなく日本人の心のなかにもあるものだとも実感する。

    そしてポルトガル人であるモラエスの描写は、武士道の精神を備えた古き日本人そのものであり、藤原氏は父上の遺恨を果たしたく書き綴っただけではなく、昨今の著作でも言及している日本人が失いつつあるものを確かに持っていた外国人を描きたかったのではないのだろうか。
    後半の藤原氏が書いた部分を読むに連れて、そんな思いがひしひしと伝わってくるのだ。
    サウダーデという感情、父の遺志に寄せる息子の想い、失いつつある古き良き日本人の心、を感じさせてくれる類まれな小説ではないだろうか。

  • 久々に続きが楽しみに読める1冊でした。
    新田次郎・藤原正彦親子がリレーで書き綴ったのはお見事。
    後半も違和感無く読めました。
    モラエスさんの日本での滞在は非常に面白く、明治期のポルトガルから見た日本がうまく描写された1冊だと思います。
    読み応え特大でした♪

  • 長編だった。久しぶりに、どっしりとした読み応えを感じた。

  • 知らずに使ってる自分達の中にあるボルトガル。
    ・capa → 合羽(カッパ)
    ・confeito → 金平糖
    ・jarro → 如雨露(じょうろ)
    ・ombro → おんぶ
    ・sabão → シャボン(石けん・シャボン)
    ・tabaco → 煙草(タバコ)
    ・tempêro → 天麩羅(天ぷら)
    ・vidro → ビードロ(ガラス玉)
    ・carta → 歌留多(カルタ)
    ・croquete → コロッケ
    これらをポルトガルの外交官モラエスは日本の中に発見する。そして題名の「孤愁サウダーデ」と言う感情もと新田次郎氏もその息子藤原正彦氏も語り継ぐ。およねを愛したモラエスはおよねの死後
    およねが育った徳島をも愛し死ぬまで暮らす。サウダーデを感じながら。やはり後半3分の一の藤原正彦氏パートになると父親の年齢まで書くのを待ちポルトガルに行き同じ酒を飲み同じ料理を食べ同じHotelに泊まった意気込みからもわかるように渾身の力で書いているのがわかった。

  • 過剰な日本礼賛に辟易する。
    文学を期待してもダメ。
    綿密な調査と研究による伝記ということでしょう。
    特に、息子の正彦は時系列過ぎて、おもしろくない。

  • 20140324読了
    日本を愛して移住し、日本人女性と結婚し、徳島に骨をうずめたポルトガル人、モラエスを描いた小説。ポルトガル領事として神戸に住み、外国人の目で明治から大正にかけての日本を見つめ、日本に関する書籍を母国に発表した作家としての側面も持つ人物。●16世紀にポルトガルが種子島へたどり着いたのだから、日本にとってポルトガルは関係性の深い国。さらに、食べ物にも共通点があって驚く。味噌汁に似た料理がポルトガルにある。いわしを焼いて食べるのも海洋国ならでは。カステラも金平糖も、南蛮渡来のお菓子はポルトガルのものだ。食生活が似通った国が初めに日本に辿り着いてくれてよかった。●前半三分の二が新田次郎(父)、残る三分の一が藤原正彦(子)の筆によるもの。文章が違いすぎる。藤原氏のエッセイは好きで楽しく読むのだが、やはりエッセイと小説は別ものだと思った。文章のうまい下手ではない。登場人物と筆者の距離が近すぎて、人物のキャラクターまでもが変わってしまったとさえ感じられ、読みにくくて何度か休憩を入れた。父が亡くなるときに打ち込んでいた未完成の作品を完成させたいという子としての情愛から、この作品への思い入れが強いのはひしひしと伝わる。●実在した人物を描くのだから、小説家はその人物に関するあらゆる情報を集めるだけ集め、綿密な取材のもとに作品が生み出されるのだろう。しかしこれだけ調べましたと全部見せてしまったら、それは小説ではなく記録である。新田氏の簡潔で読みやすい文章は、多量な情報から精製された結晶。削ぎ落とされるから読ませる作品になるのだと思う。

  • 読み応えがありました。面白かった!

  • 正彦のモラエスのほうが、実際に近かったのかもしれない。しかしながら引き継ぎに成功しているとは思えません。そっけない新田次郎の文体に比して、正彦の説明は冗長です。そもそも、二人とも、サウダーデの感覚を押し付けすぎかと。

  • サウダーデって、Le mal du paysにも似ている感情かな?
    わかる気もするけど、ピッタリの言葉は見つからない。
    息子の筆はなんだかブツブツと細切れで、半端なメモを見ながら書いたレポートみたい。
    ちゃんと小説かけばいいと思います。

  • 新田次郎の遺作を息子藤原雅彦が書き継いで完成させたものだとか。
    著者が替わった違和感を感じなかったのは、親子ゆえだろうか。

    これまで(たぶんこれからも)モラエスそのものに興味を持ったことはなかったので、史実がどうこうということは考えず、ただ「物語」として楽しんだ。読み応えのあるものだった。
    モラエスの持つ『孤愁』という感情が全編に流れているが、息子藤原の父に対する思いも底にあったような気がする。

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孤愁―サウダーデの作品紹介

外交官モラエスが発見した日本の美と誇り。妻・およねへの愛に彩られた激動の生涯-。新田次郎未完の絶筆を、息子・藤原正彦が書き継いだ。

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