孤独な放火魔

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163819105

作品紹介・あらすじ

幼馴染みに長年抱いていた恨みが発端の、すぐ解決すると思われた放火事件。夫をアイロンで殴打した主婦が、自分はDVを受けていたと主張。夫の愛人が出産した子供に、虐待の痕を見つけた妻がとった行動とは?左陪席をつとめる新米裁判官・久保珠実は、かつて裁判長にいわれた「裁判は最後まで何が起こるかわからない」の言葉を何度も反芻する-。現代の日本を象徴するかのような三つの事件。悩み議論する裁判員たちをリアルに描く著者迫真のミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 新米裁判官の視点で描く。
    面白かった。
    ひとつひとつの手続きが、丁寧に描かれていて、リアル。
    絶対的な証拠が見つかり、すべての伏線がうまく回収されるような、ミステリ的なすっきり感はない。
    むしろ、絶対的な証明ができない、現実の裁判員裁判の難しさを感じた。

  • 新米裁判官久保珠実が左陪席をつとめる裁判員裁判を描いた作品。
    若年性アルツハイマー症である妻の介護疲れの鬱憤と、昔いじめられた腹いせから、少年時代の友人の家に放火した裁判。
    DVから身を守ろうと、アイロンで夫をなぐり殺してしまった主婦の裁判。
    夫と愛人の間にできた子供を一時預かり育てるうちに愛情がわき、愛人に子供を戻したが「子供が虐待されている」と、子供を守るために愛人を殺害した主婦の裁判。
    ミステリーなのだから、一筋縄では終わらない裁判なのだけれど…。

    ミステリーやサスペンスドラマとは違い、実際に裁判で提示されるのは形のある証拠だけで、被害者や犯人の心境などは想像するしかない。事件の動機は、検察側と弁護側の陳述や証人尋問から推し量るしかないのだ。裁判員裁判の評議では、そんな不確かなものから事実を“断定”してしまうわけで、「本当にこれが真実なのだろうか?」という疑問が私にはどうしてもぬぐえない。

    帯に「裁判はいつも、無数の人生を浮き彫りにする」とあるけれど、本当にそうなのだろうか?
    簡単に見えた裁判が、意外な方向へ進んでいくことを描いているのだろうけれど、私には「人を裁く」ことの難しさを強く感じた作品だった。

  • なかなか興味深い事件3つなんだけど、なんだか物足りなかった。
    大倉大和出てこなくても別によくない?

  • 孤独な放火魔・DVのゆくえ・二人の母の裁判記録のような内容で裁判員制度でどのように量刑や刑罰の判定が行われるのかが分かる内容で、興味深かった。

  • 【手に汗にぎる迫真の裁判員ミステリー】新米裁判官の久保珠美は放火、DV事件の裁判を担当する。判決の責任はどこまで負うべきか。悩み議論する裁判員たちをリアルに描く。

  • 短編集ってよりも中編なんですけどうまいカテゴリがありませんでした。困ったときの短編集。
    タイトルからして「これはミステリだろ!!」と楽しみにしてたのにまたもや法律もの…(;_;)裁判員裁判についてよく知ることができます。ただし、それだけです。実録と言われても信じるかもしれない。歌舞伎やペンダントの話なんて何のためにあるのかわかりません。期待しすぎちゃったのかなあ。ミステリ要素はありません。淡々と裁判。裁判員に選ばれちゃったら読んでもいいかもしれないですけど、似たような作品が読みたいとも思わないです。

  • (収録作品)孤独な放火魔/DVのゆくえ/二人の母

  • つまり何?

  • 裁判員裁判では、こんな風に話し合われているのか。だけど作者は取材できたのかな。

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    幼馴染みに長年抱いていた恨みが発端の、すぐ解決すると思われた放火事件。夫をアイロンで殴打した主婦が、自分はDVを受けていたと主張。夫の愛人が出産した子供に、虐待の痕を見つけた妻がとった行動とは?左陪席をつとめる新米裁判官・久保珠実は、かつて裁判長にいわれた「裁判は最後まで何が起こるかわからない」の言葉を何度も反芻する―。現代の日本を象徴するかのような三つの事件。悩み議論する裁判員たちをリアルに描く著者迫真のミステリー。
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    表題作のほか、「DVのゆくえ」 「二人の母」
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    裁判員裁判が舞台である。裁判官たち、とりわけ裁判官になりたての新人・珠実の、いまだに一般人の感覚を忘れていない判断や、裁判員たちの緊張感や戸惑い、責任の重さを実感する様子など、裁判員裁判の裏表がよくわかる。三つの物語の題材となった事件は、どれも判断が難しく、どこからどう考えていけばいいのか一般人には見当もつかないが、裁判官たちが上手く個人個人の考えを引き出しているのも印象的である。判決シーンまで描かれていないのがもやもやさせられるが、だからこそなおさら考えさせられる一冊になっていることも確かである。

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著者プロフィール

一九三八(昭和一三)年東京都生まれ。慶応大学在学中に長編『すれ違った死』が江戸川乱歩賞候補に選ばれる。七〇年『天使が消えていく』が再び同賞の候補になり、単行本化され作家デビューを果たす。七三年『蒸発』で日本推理作家協会賞、八九年に仏訳『第三の女』でフランス犯罪小説大賞、二〇〇七年日本ミステリー文学大賞を受賞。主な著書に『Wの悲劇』『』や「検事 霞夕子」シリーズなどがある。二〇一六年没。

「2018年 『77便に何が起きたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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