棺に跨がる

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 188
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163820705

作品紹介・あらすじ

私小説を再生させた著者による非道の連作集。貫多こそ人間の生の姿だ!哄笑、破裂する文学

感想・レビュー・書評

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  • おそらく一連の私小説があるんだと思うけど、タイトルに惹かれて読んでみた。苦役列車の作者、西村賢太さんの私小説。ただ私小説とは知らずに読んだので、読後に彼のWikipediaを見たらほとんど事実でびっくりした。
    典型的なDV男と共依存の女の話なんだけど、途方もない寂しさに覆われている。見えてくる景色は全てモノクロで、夏の湿度だけが不快にリアル。
    これを読んで、夫の感覚を追体験したような気持ちになった。夫にとっても私は、身勝手なことに「最後の砦」だったのだろう。
    文体が古めかしいというか厳ついので昭和初期とかそんな時代の話かと思っていたら割と近い年代の話だった。「未練の手コキリクエスト」とか、厳しい文章の中に突然放り込まれる言葉が少しおかしかった。
    読むのにエネルギーが必要なので、他の作品を読むかどうかはわからない。

  • なんかクセになる西村さんの本。破天荒な人生を生き若くして亡くなったという事実が興味をひくのかもしれない。この小説は同棲していた彼女との生活、自身の心境が詳しく書かれた私小説。主人公の貫多が別れたくないためにあれこれ手を尽くす、対して暴力を受けた彼女はどこまでも冷たい、がそのまま男女の姓差だと思う。同性として彼女の主人公への対応の変化は何の為か、はよくわかり結末は読めてしまった。ダメ男を知りたいなら西村さんの本、オススメ。

  • 秋恵との破局、想像通りの展開だった。

  • 図書館借り出し

    棺に跨る
    脳中の冥路
    豚の鮮血
    破鏡前夜

    秋恵ものの随筆って感じで貫多のDV、身勝手な行動がよく書かれている

  •  西村賢太「棺に跨る」、2013.4発行。棺に跨る、脳中の冥路、豚の鮮血、破鏡前夜の連作4話。北町貫多、秋恵と同居9ヶ月、これまでも暴言暴行し放題の彼であったが、今回はカツカレーが原因(豚みたいな食べっぷりと言われ)で肋骨にひびが入る暴力行為を。修復努力をあれこれするも、秋恵の態度は軟化せず、ついに破局に。秋恵、家を出る。

  • 相変わらず安心して読める。人間の業など変わらないのだと。もの悲しいその小説の結でさえ、偉大なるマンネリとして「いつも通り」の結句。だけどその人間の出自から色染めるでなくこうあった主人公の貫多の様は綺麗事に染まるでなく黒色や灰色の体を僕たちに対峙させてくれ、そこが僕にはスッと等身大のまま読める数少ない作家の一人なのだ。

  • 2019/2/1購入
    2019/2/3読了

  •  「秋恵もの」ばかりが4編並んだ最新短編集。

     今回はわりと正攻法で作られていて、4つの短編が時系列順に並んでいる。
     その4編を通して、秋恵の肋骨にヒビが入るほどのひどいDVで2人に決定的な亀裂が入り、ついに秋恵が貫多(西村の分身)のもとを去るまでが描かれている。

     西村作品の大きな柱となってきた「秋恵もの」も、いよいよクライマックスを迎えたわけだ。
     あとは、出て行った秋恵がほかの男のもとに走っていた(それでも西村に彼女を責める資格などないが)ことを知り、修羅場になる顛末が描かれる作品を残すのみか。

     別離に至る経緯が描かれた作品集だけに、本書のトーンはほかの「秋恵もの」より陰鬱だ。
     それでも、西村は相変わらずサービス精神旺盛で、笑いを誘うギャグ的フレーズが随所にちりばめてある。救いのない話なのに、私は読みながら何度も声を上げて笑った。

     あと、西村は相変わらずタイトルづけがバツグンにうまい。
     本書所収の4編はそれぞれ、「棺(かん)に跨がる」「脳中の冥路」「豚の鮮血」「破鏡前夜」というタイトルで、どれもイメージ豊かだし、古典的名作のような風格があり、強い印象を残す。

  • 同棲相手の秋恵と繰り広げる人間模様。人間存在の情なさと愛おしさに迫る。表題作をはじめ「脳中の冥路」「豚の鮮血」など、全4編からなる連作小説。

    全く共感できない情けない男が主人公なのは、約5年前に読んだ芥川賞作「苦役列車」と同じ。そしてそれなのにズルズル最後まで読まされてしまうのも同じ。「極」私小説の毒にやられるのだろうか。
    (C)

  • 「秋恵もの」。北町貫多に暴行を加えられ、秋恵が部屋を出て行くまでの話。
    これが主観だけで書かれていたら毒が溜まりそうなものだけれど、同じくらい客観的にしかもユーモラスに書かれているので、なんだか救いようのない内容でありながら、一度読み出したら止まらない。突然用いられる横文字にも笑ってしまう。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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