ときぐすり まんまことシリーズ 4

著者 :
  • 文藝春秋
3.60
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163821702

作品紹介・あらすじ

女房のお寿ずと娘のお咲を亡くし、しばらくは魂が抜けたようだった麻之助。それでも町名主・高橋家の跡取りとして、もめごとの裁定の仕事はしなければなりません――。そして幼馴染で親友の八木清十郎と相馬吉五郎の絶妙な(?)助けもあって、少しずつ麻之助は回復してゆくのでした……。「人が人を、大事だって思う気持ちにつけ込んで、下司なことをするんじゃねえよ」前作で悲劇に見舞われた麻之助が捨て身で啖呵を切る『朝を覚えず』、色男の清十郎がすべてを投げ出し、謎の失踪をとげる『たからづくし』、突然三人の娘から好意を寄せられて困惑する吉五郎を描く『きんこんかん』など、「まんまこと」シリーズ第四弾の本作には、傑作連作小説六編を収録。お寿ずの又従姉妹の子で、最近不思議なほどお寿ずと面差しがそっくりになってきた「おこ乃」の存在感が増しているのも本作の大きな魅力です!(収録作)『朝を覚えず』『たからづくし』『きんこんかん』『すこたん』『ともすぎ』『ときぐすり』傷心の麻之助が、復活の時を迎える――恋女房のお寿ずを亡くし、放心と傷心の日々に沈む麻之助。親友たちの助けで、少しずつ心身を回復させてゆく。感動のシリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 「まんまこと」の麻之助シリーズも4冊目。
    「しゃばけ」と違って妖怪は出てこないけど~幼馴染の若者3人組が助け合います。
    感じのいい、お江戸の人情事件帖です。

    高橋麻之助は、神田町名主・高橋宗右衛門の跡取り息子。
    お気楽者と評判でのらりくらりと遊び暮らしていましたが、謎解きには才覚がありました。
    前作で妻を亡くし、気が抜けたようになって過ごして1年。
    見かねた父親に仕事を回されて、忙しく過ごしていました。

    亡き「お寿ず」の遠縁にあたる「おこ乃」は、何かと麻之助の家に出入りしています。
    14になり、最近急に娘らしくなってきたおこ乃をお寿ずと見間違えてしまう麻之助。
    そっくりな少女の出入りを誰も止めないのかなとちょっと謎でしたが、疑問を投げかける人がやはり出てきて、それは‥?

    麻之助の幼なじみの八木清十郎は同じ町名主の家で、既に跡を継いでいます。
    女にもてるいい男だけど、自分から惚れた話は聞かない。
    その清十郎が見合いを迫る親戚達の前から姿を消し、そのまま行方不明に。
    別な出来事がしだいに結びついていきます。

    やはり幼なじみの相馬吉五郎は侍で、堅物の見習い同心。両国橋界隈の若い者から慕われています。
    同心の家に養子に入っていて、まだ十歳のそこの娘と許婚の身。
    その吉五郎が三人の娘に恋されているというあらぬ噂が立ち‥?
    店を出している町娘達もいきいきしています。

    それぞれの設定を生かしたエピソードなので、わかりやすい構成。
    前作で「お寿ず」さんが命を落としてしまうショッキングなラストだったため、少しずつ立ち直るんだろうなあと思いつつも、ちょっとはらはら。
    麻之助の体調が悪いと「しゃばけ」とだぶっちゃいますね。
    そこはかとない哀しさが時に漂うのはどちらにもあるし。
    清十郎と吉五郎ははっきりした輪郭のある男性なんだけど、その割には前に出てこない印象。
    物柔らかな作風なので、これはどうしてもそうなるのかな。

    町名主が扱うちょっと困った揉め事や謎めいた出来事というのは、とっつきやすくて良いんですけど。
    まだ少女の「おこ乃」ちゃんのほのかなエピソードが一番恋愛っぽいというか、印象に残りました。

    盗賊の一味の下っ端だった少年を麻之助が助ける展開が、一番事態を動かす内容だったかな。
    人助けをしながら、自分も元気を取り戻していくのでしょうね。
    麻之助を見守っている人たちの優しい空気で~心地よく読めました。

  • 前回「こいわすれ」がつらい話で終わってしまったので、その後の麻之助が心配でねぇ。

    いわくつきの眠り薬を調べてお寿ずの夢を見る「朝を覚えず」は辛く切ない話で、麻之助が病みがちで寝込んでばかりの某若だんなのように見えました。
    でも、その後、幼馴染の清十郎と吉五郎の騒動を解決してあげたり、友情ややさしさを感じるエピソードがつづき、少しずつ元気を取り戻していきます。

    そしてラストのときぐすり。
    時は薬になる。
    いい流れですね。しみじみよかった。

    おこ乃ちゃん、やっぱりそうなるか。
    次回の展開が気になります。

  • 最初は、麻之助、生きることが嫌になっているのでは?と思いましたが、何とか大丈夫そうです。

    まさに、時間が薬ですね。(ただ、相変わらず忙しそう)

  • 妖の出ない畠中恵のシリーズ4作目。「まんまこと」は期待させたが、続編が出るたびに評価を下げている。まったり、ほのぼのは好きなんだけど、ワンパターンになって設定の甘さ、人物の個性の弱さが面白みを削ぐ。好みなんだろうなぁ、個人的には飽きて、シリーズだから一応ってとこ。まぁ、女子中高生対象の作品って気がするし(笑)

  • まんまことシリーズ第4弾。
    前作では愛妻を亡くした麻之助がどうなるか心配でしたが、表題を見て、少しずつ元気を取り戻していく話かなと期待。
    内容は期待していた通りだったのですが、どの話も心温まるいい話ばかりでした。
    特に最後の「ときぐすり」がよかったです。

  • +++
    やんちゃ二人に堅物ひとり。麻之助・清十郎・吉五郎が江戸は神田で活躍する。傷心のなか、町名主名代のお役目はどうにか務めている麻之助。揉めごと諍い悩みの相談、いつもの裁定の仕事をするうちに、過ぎた時間がいつしか薬となってゆく…。新展開の『まんまこと』ワールド、感動の第四弾!
    +++

    麻之助、清十郎、吉五郎トリオもすっかりお馴染みになった四作目である。今回の麻之助は、なにやらばかに忙しそうである。あとからあとから厄介事が舞い込み、しかも、なんだかんだと言いながら、躰を張って解決へと努力しているのである。それでもまだお気楽だ、いい加減だと言われるのだから可哀想な気さえしてくる。麻之助の忙しさの理由のひとつは、愛妻・お寿ずと愛娘・お咲を亡くした空虚を埋めようという町名主である父の計らいもあるのだが、麻之介も口には出さないが、きっとわかっていることだろう。幼馴染三人の絆の強さも相変わらずで――それ故の行き違いなどもあるが――何よりも心強い。高利貸しの丸三がいい味を出していた一冊でもある。

  • しかし,お由有の結婚とともにお気楽人間になってしまった町名主の跡取り麻之助は,頼りない怠け者と街の人に評判だが,ここまでこれだけ無理難題を解決してきてそのいわれ様は流石に無理があるのではないだろうか,と思う。

    「朝を覚えず」
    八木家の支配町に太源という若い医者が越してきた。そしてその太源が自身で調合したよく眠れるという薬を安く売っていて評判になっているという。しかしその薬を飲んで死んだという人が2人も出てきた。どちらも病気だったり高齢だったりしたために本当に薬のせいだとは言い切れないようだ。

    「たからづくし」
    清十郎が突然姿を消したらしい。親戚筋がこぞって嫁探しを始めて縁談を押し付けようとするのに嫌気が差してということのようだ。清十郎の文机の横の籠に謎の書付が残されており,清十郎の伯父は謎解きをして解けたら清十郎に縁談を迫るつもりらしい。そこで麻之助たちは先に謎を解いて,清十郎に猶予をやろうと考える。

    「きんこんかん」
    両国橋橋詰の繁華街で可愛い娘たち3人がそれぞれ葭簀張りの小さな店を開いて評判を呼んでいるという。そしてどういうわけか堅物の吉五郎が3人娘と懇意にしているという噂が立っているらしい。吉五郎は養子に入っている相馬家の娘と言う許嫁がいる身であり浮いた噂はよろしくない。麻之助と清十郎が吉五郎を連れて件の店を回ってみると,吉五郎はどの娘も知らないというのに,店の娘たちは吉五郎にだけ試食を勧める。これは一体どういうわけか。

    「すこたん」
    高橋家支配町の瀬戸物問屋小西屋と茶問屋増田屋のそれぞれの跡取り息子が言い争いを始めたという。菓子を食べる時どちらの店の品がより必要かという不毛な言い争いである。麻之助はその裁定を父から押し付けられる。なんとかその話をやり過ごすと,両家は今度嫁取り争いを始める。どちらが持参金の多い嫁を取れるかというこれも不毛な争いだ。そしてそこにとんでもない嫁候補が現れる。

    「ともすぎ」
    金貸しの丸三が最近の吉五郎の行動を心配して麻之助に相談に来る。どうも吉五郎は同心見習いの仕事の合間に誰にも告げずに何処かへ消えるらしい。麻之助は清十郎と丸三を伴って吉五郎の跡を付けるが,見失ってしまう。色々苦労して船で市ヶ谷御門の辺りまで行っていることを突き止める。町方の管轄外の武家地で何をしているのかといぶかる。船を降りた先で同じように吉五郎に用があるという武家に出会う。その武家は麻之助たちを引き連れ,徒目付の屋敷を訪れる。
    「ときぐすり」
    猫のふにが迷子になり麻之助が探していると木の上で烏に囲まれているふにを見つけるも,烏は追い払っても,ふにが高すぎて怖くて降りてこられない。それを救ってくれた滝助という少年は無一文で行くところもないという。しかも江戸に来る前は盗賊の仲間で飯炊きなどをしていたらしい。滝助は悪事には関わっておらず手配もされていなかったが,一味の幹部が江戸に逃げてきているらしく手配書が回っている。そんなわけで滝助の所在を大っぴらにはできず困った麻之助は一人暮らしのむめ婆さんに滝助を預け,息子を亡くしたばかりの袋物職人の数吉に仕事の手伝いに使ってくれるように頼み込む。

  • きんこんかん、男も女も、器量がいいと、そんなに得して傲慢になるものなのか、不思議〜。世界中のみんなが自分を好きなわけじゃないからね。

  • まんまことシリーズ4冊目。亡くなった妻が忘れられないが、立ち直りつつある麻之助は大忙し。清十郎の出番はちょっと少なかったが、吉五郎の出番が多くて満足、満足。
    表題作「ときぐすり」は、お寿ずとの一つの区切りでもある。今作は、幼馴染3人組のみならず、丸三や貞たちも含めた友情がクローズアップされていたかな。吉五郎がモテたりモテなかったり、しかし最後はバシッと決めてくれて格好良かった。

  • 2018.8.16読了。「朝を覚えず」で麻之助の無茶がいつにも増して結構無茶で思ってたより重症って感じだった。今回意外だったのはおこ乃の気持ちについてだ。これからどう転ぶかな?仕組まれた芝居だったとはいえ春之助やるぅ!緒すなも水に落ちずに恋に落ちて丸くなって一件落着かぁ。六と七はどうしようもないがな。にしても吉五郎はその堅物さゆえに信頼されて回り回って色事もどきに巻き込まれて難儀だな。本人気づいてない時もあるからいいのか?吉五郎は巻き込まれで隠し事じゃなかったけど今回は3人それぞれが互いに隠し事してるって点が面白い。特にときぐすりで清十郎が麻之助に隠し事されて殴るところはそうか前回と立場が逆かと面白かった。時薬は知らなかった。でも「じやく」より私も「ときぐすり」の方が気にいるな。解きぐすりとも思えるし。あと全体を通してふにが意外と出てきてるのが嬉しい。今回は単行本で読んだので解説がない。表紙は金魚鉢を運ぶ麻之助だろうか。猫じゃらしのようなものが落ちている。紙の風合いがいいな。

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著者プロフィール

高知県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、小説家デビュー。「しゃばけ」シリーズは、新しい妖怪時代小説として読者の支持を受け、一大人気シリーズに。16年、同シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。他に『つくもがみ笑います』『かわたれどき』『てんげんつう』『わが殿』などがある。

「2023年 『あしたの華姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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