水色の娼婦

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163823102

作品紹介・あらすじ

日露戦争で活躍した軍艦「日進」と「春日」。この二隻はアルゼンチンから日本に寄贈されたもので、その縁で来日したアルゼンチンの海軍軍人と知り合った一人の日本人女性が、ブエノスアイレスへと渡ったことは歴史上の事実である。そのふたりの間に生まれた、エヴァ・ロドリゲスが本書の主人公。早くに母を亡くした彼女は、ある事件をきっかけに自身の出生の秘密を知り、タンゴ・ダンサーとして、娼婦として生きていくことを決めた。 やがてエヴァは活躍の場を、ベルリンへと移し、老舗のタンゴ・バー「エル・スール」を拠点に踊り、国内外の要人たちと夜を共にする。そこで出会ったのが、昭和通商なる会社に勤める吉川公夫だった。日本陸軍の予備役であるという彼に運命を感じたエヴァは、その関係にのめりこんでいくが……実は、吉川の正体は諜報員であり、国際社会から孤立を深め、対ソ連、対アメリカとの戦争へと突っ走る勢力に必死の工作を繰り返し、時には多重スパイも辞さない危険な男だった。 愛する吉川のため、あるいは母のルーツで祖国・日本のため、エヴァは時にナチス政府の要人から、時にゲシュタポ(秘密警察)の高官から、ベッドの中で偽りの愛をささやき、情報を引き出すようなる。エヴァだけではなく、他にも同じような女スパイが、当時のヨーロッパでは暗躍していた。また吉川は、同じ志を持つ者たちと密かに通じ、エヴァにさえ知らせず、ドイツ国外でも精力的に活動を行うが、日本の対ソ・対米戦争への流れを止めることができず、やがて二人に別れが――。 そして半世紀を経て、ベルリンの壁の崩壊後、年老いたエヴァから、その驚くべき人生を聞き取ることになったのは、ある日本人男性ジャーナリスト。その姿は近代史の闇をノンフィクション・ノベルに仕立て、世に問うてきた著者自身の姿にも重なる。エヴァが、吉川が本当に守ろうとしたものは何だったのか? 改めて平和な現代に問いかける傑作長編!

感想・レビュー・書評

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  • 淡々と始まり、淡々と進んで、淡々と終わった。

  • 【戦争に翻弄された美貌の混血ダンサー波乱の生涯】日本人の母を持つタンゴの名手・エヴァは日本陸軍の諜報員・吉川に魅入られ、スパイとして欧州での諜報・謀略に加担させられていく。

  • 戦争中のドラマが、セピア色につむぎ出されてる。それを演出する為に、年老いた現代のエバァから話しを聞き出す手法をとっているが、ここが少し空回りしているのが残念。

  • 第二次世界大戦下のベルリン。
    タンゴダンサーのエヴァは、吉川公夫と出会う。
    祖国の為に水面下で働く者たちの悲哀。
    「ごく普通の男女のように幸せな時間が持てた」
    エヴァ、吉川に取って忘れられない時間となった。
    ジャーナリストが年老いたエヴァから話を聞く形でストーリーは進む。
    時代を追うだけではなく
    恋愛模様も織り込み、ストーリーに華が添えられた。

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著者プロフィール

1940年秋田県生まれ。出版社の雑誌編集を経て、作家活動に入る。88年『凍れる瞳』「端島の女」で直木賞、95年『夢幻の山旅』で新田次郎文学賞、2000年『夢顔さんによろしく』で柴田錬三郎賞を受賞。

「2011年 『ウェルカム トゥ パールハーバー(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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