菩提樹荘の殺人

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163824000

作品紹介・あらすじ

若き日の火村、そして若さゆえの犯罪――シューベルトの調べにのり高校生・アリスの悲恋が明かされる表題作、学生時代の火村英生の名推理が光る「探偵、青の時代」、若いお笑い芸人たちの野心の悲劇「雛人形を笑え」など、青春の明と暗を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 有栖川有栖さんの短編作品はテーマがあって好きだ。この作品も同様で、「若さ」がテーマであり、でも作品ごとにカラーは異なっていて面白い。
    『雛人形を笑え』『探偵、青の時代』が好き。

  • あとがきにあるように『若さ』をモチーフにした四編。
    「アポロンのナイフ」「菩提樹荘の殺人」は動機の面白さがあった。
    「探偵、青の時代」はシリーズでは珍しい大学時代の火村の話だが、当時から切れ味抜群だった。

  • 火村シリーズ。あとがきにもあるように、「若さ」をテーマにした中編集で、火村の大学時代のエピソードも含まれる。相変わらずの安定感。以前気になっていた、アリスの見当違いの推理も以前ほど気にならなくなって来たのは、慣れ?それとも年を取ったから?最初の作品を読んだのは、20代中盤。永遠に34歳の二人の年齢はとっくに超えた…

  • 学生時代の火村が語られる作品もはいった短編集。
    少年犯罪や実名報道についての考察も興味深い。
    「若さ」がテーマの作品集ということですが、ついに火村とアリスの年齢に追いついてしまったなあ…。

  • 作家シリーズ短編集。
    著者はシリーズ初読みでも問題ないように書いていると思いますが、シリーズを追っかけてきた人の方が楽しめる内容かと思います。

    今回のテーマは「若さ」ということで、主役の二人が老いを考えたり、過去を振り返ってみたり、都合上歳をとらない二人が時間を感じているというのは、シリーズの中でも新鮮さがあります。

    一番ボリュームのある「菩提樹荘の殺人」がオーソドックスなミステリで、あとの3編は変わり種。
    「雛人形を笑え」だけはどうかと思うものの、意外な展開を見せるものもあり、楽しく読みました。

    ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
















    【アポロンのナイフ】若い男女の死体発見の事件に、巷で騒ぎになっている少年による無差別殺人が見え隠れし不穏な空気が漂います。
    こういった大きな事件の片隅で、火村とアリスが誰も注目していなかった事件に気づくというのが良いです。あまり壮大にせず、一犯罪学者の立場を超えない展開に好感。実名報道についても興味深かったです。
    凶器が少年の手に握られていたとはいえ、すぐに少女殺害事件と結びつけてあんな行動をとるとはこのおじさんは凄い。少年が本当に殺人犯でなかったらどうするんだ。
    そして、おじさんの未成年者犯罪についての持論を聞いた上で、ビニール袋の不在から真相を見抜いた火村の思考も凄いです。
    逃走中の少年と繋げるのかと思いきや、少年犯罪を軸に全くの別方向から解決を持ってくるとは。
    アリスが出会った少年が何者だったのか、重要じゃないけどちょっと気になる事柄が未解決で終わるのにも想像を掻き立てられ余韻を残します。
    それにしても、ついでだからといってもコインを拭いてあげるアリスは優しい。

    【雛人形を笑え】新人漫才師コンビの一人が殺害されるという事件。漫才師コンビだけでなく、火村とアリスも漫才を披露しており「笑い芸」に統一された1編。
    とはいえ、事件の解決や物語のラストまで下手な漫才のごとく滑った印象。
    論理も推理もあったもんじゃありません。
    死んでいた被害者の奇怪な態勢が、どういった状況下だったのかいろいろと考えを巡らせており、ダイイングメッセージだと結びつくのは良いとしてもガッカリ感は否めない。
    これ、自白以外で立証できるのかな。
    関西を舞台とする作品を多く書く著者が、大阪の名物でもある漫才師を題材にしたのは楽しい。淡泊そうなコマチさんのマニアックぶりにもニヤリとしました。

    【探偵、青の時代】探偵の片鱗を覗かせた火村の大学生時代のお話。
    こういう共通の秘密を抱える集団の中に紛れ込んだ一人の探偵、という構図はとてもワクワクします。全員で協力して隠蔽する秘密を暴くことにゲーム性があり、阿川さんが言う通り危険な楽しさ。
    事件自体は些細なものの、自転車の危険運転や飲酒が問題になっている昨今、大したことじゃないで済まされなのかも。
    火村はついでに3台全部の車の下を見たと言っていますが、ついでにそんなところを3台分も見ないだろうと思ったので猫というのにはなるほど。
    おそらく、猫の鳴き声を聞いて車の下は全部みて回ったに違いありません。1台目に見た車の下に猫をみつけたとしても、猫が動いたら追いかけたり、他にもいるかもしれないと一応全部の車の下を覗くことは猫好きなら納得。

    【菩提樹荘の殺人】さらりと菩提樹のメロディーとタイトルを一致させるあたり、流石学者と作家だなと音楽に疎い私は感服。
    トランクス一枚で上半身を湖に浸した死体という状況がおもしろいです。
    またまた被害者は有名人ということですが、女性との交際の精算でこじれた場合、本来世間体などで脅迫される立場になりがちな有名人が、逆に脅迫していたというのはおもしろい。
    犯人の動機も今回は特殊です。容疑者が4人に絞られていたからこそ判明しましたが。
    死体を異様な状況にして服に自分の痕跡を残してまで、鞄をあの場所に戻すのには疑問があるものの、じゃあどうすればよかったか、というのはやはり結果論なのでしょうか。
    アリスと火村のドイツ語のやりとりには笑いました。
    わたしは女ですが、火村が指摘するまで髪や化粧というのには全く気付きませんでした。コマチさんなら気付きそうだから、今回は兵庫県警なのかな。最近大阪府警ばかりが登場していたので野上さんの嫌そうな顔が見られて嬉しいです。

  • 短篇が好き。学生時代のはなしもでてくる。

  • 【図書館本】やっぱりこの作者は安心して読める。そしてヒムアリ大好きだ。一番印象に残ったのは表題作。次いで『雛人形~』。でも4作品とも好き。ミステリとしては少し物足りないけど、ヒムアリ要素的な意味で。ま、短編ってそんなものか。 あとがきに“キャラの過去は考え出すのではなく、知る瞬間がある”とあった。ヒムアリは作者が作ったキャラだけど、友人とか知人とか、一人の人間として生きてると感じた。ヒムアリも生きてる! サザエさん軸だけどwww

    アポロン:そういう犯罪もありなのか……。事件自体はシンプルでわかりやすかったけど、動機……。アリスの鎖国読書月間ちょっと羨ましいw
    雛人形:お笑い(笑芸?)がテーマにあって、ちゃんと(?)ヒムアリで漫才してくれる辺りさすが有栖川さん(作者)。関西人の血、ですかねw
    青の時代:タイトルでKinKi Kidsの某曲がぐるぐる。全然合わないw 火村先生可愛い。冒頭の猫がどう絡むのかと思いきや、見事w さすが火村先生。可愛いよ可愛い。
    菩提樹:『百年法 上/山田宗樹』の内容がまだ頭に残ってる状態だったので、火村があの世界にいたら……と考えた。無駄に老いたくはないけど、価値のある老い方が出来たらいいな、万年青年は……ねぇ? 青いままじゃ色々痛いしw アリス処女作にまつわる話を火村にしたのは衝撃的だった。火村の謎と同様話さないものだと(勝手に)思っていたので。それでも火村は明かさない。個人的に、それが明らかになればシリーズが終わってしまう気がするので、気にはなるけど謎のままでいい……。

    とか大筋に関係ない感想w やっぱりこのシリーズヒムアリで読んでるな。キャラ読み万歳\(^o^)/

  • 「探偵、青の時代」火村ファンとしては、想像通りの学生時代でちょっとうれしかったですが、終盤がせつな過ぎます。アリスと出会ってよかったね。表題作は、なにやら無理矢理感があちこちに感じられたのは私だけでしょうか。。。

  • 臨床犯罪学者・火村英生と推理作家・有栖川有栖のシリーズ短編集。
    「アポロンのナイフ」「雛人形を笑え」「探偵、青の時代」「菩提樹荘の殺人」
    の4編収録。

    うん、いつも通り!以上!

    ってな感じの、良くも悪くも抜群の安定感。

    あとがきで、二人は年を取らない「サザエさん方式」ということに触れられていましたが。
    でも時代は移っていくからかな。
    今回は動機がとても今どきっぽい印象を受けました。
    未成熟な利己主義
    まぁ、殺人ってのは自分勝手なもんなんだけれども。
    その辺もこの短編集のテーマの「若さ」にかけてあるのか。

    そうだといいな。こういう犯人は今回だけにして、次はもっと頭のいい犯人と火村とのバトルを読みたいです。
    じっくり長編でね。

  • 何度も言ってますが、有栖川作品は僕にとってミステリの教科書なんです。今作も地味ではありますが、本格ミステリの核となる部分を内包していて面白かったです。
    少年法とマスコミを扱った「アポロンのナイフ」は、動機に戦慄しました。お笑いの世界を舞台とした「雛人形を笑え」は、後味悪いのに爽やかというこの作家ならではの読後感でした。火村准教授の大学時代を描いた「探偵、青の時代」はシリーズ物ならではの面白味です。表題作「菩提樹荘の殺人」はオーソドックスなフーダニットだけにミステリの面白みに満ちています。
    帯に「火村英生シリーズ」とありますが、これには違和感。やはり「作家アリスしりーず」でしょう。とか思うのですが。そろそろ長編も読みたいですね。長編は国名シリーズになるのかな。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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