とっぴんぱらりの風太郎

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著者 : 万城目学
  • 文藝春秋 (2013年9月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163825007

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とっぴんぱらりの風太郎の感想・レビュー・書評

  • マキメ流・時代小説。
    ひょうたんの神様?というファンタジックな要素も絡めつつ、落ちこぼれ忍者の若者が命がけで豊臣家の最後に立ち会うまで。

    忍者として育てられた孤児の「風太郎(ぷうたろう)」。
    ところが、試験のときに失敗して一人前と認められず、主君の藤堂の怒りを買って追放されてしまう。
    藤堂家では忍者を擁していたが、戦国時代も終わりかけ、忍びの役割もまた終わりかけていた‥

    ひなびた村のボロ家でごろごろ暮らしていた風太郎を、「黒弓」が尋ねてくる。
    とぼけた顔つきで、この男が現れると何かの不運を運んでくると決まっているのだが‥
    実は海外の生まれで、日本人はほとんど奴隷という環境で育ち、爆弾の専門家でもあった。

    優秀な忍者の「常世」は、侍女として大坂城に入り込んでいる。
    黒弓は美女と思って憧れているが、実は女装の麗人。
    常世と共に、とある公家のおぼっちゃまの町見物を護衛することになった二人。
    「ひさご様」と仮の名で呼ぶ、そのおぼっちゃまとは。
    派手な歌舞伎者らに目をつけられて襲われ、「残菊」と名乗る異様に強い男に出会う。

    秀吉の正妻・ねねは、出家して高台院となっている。
    ひょうたんに宿っている神様?に見込まれた風太郎は、ねねが神様の片割れを豊臣家の守り神としたいきさつを知ることに。
    老いてなお存在感のあるねね。

    風太郎は何をする気も起こらず、渋々、ひょうたん屋の手伝いをしたり。
    武家たちも忍者たちも騙し騙されながら、徳川は豊臣を追い詰めていく。
    忍者としての出世を目指していた「蝉」。
    女を武器にたくましく生きていた「百」。
    そして、風太郎は‥
    何も深く考えていなかった若者が戦闘に巻き込まれる様子がありありと描かれます。
    厳しい時代の中、自分の行き方を選んでいくことに。
    後半の戦うシーンはリアルでいてわかりやすく、迫力があります。
    命をかける思いが切ない。

    ただ、このタイトルで、この結末はないんじゃない?
    鮮烈な終わり方にする意図はまったくわからないわけではありませんが。
    「プリンセス・トヨトミ」に続く!
    ‥にしてはちょっと距離感ありすぎ。
    危機に際してのほんの数人の熱い思いが、後々あそこまで大勢の人々と共有されるようになるのだろうか?
    そう思うと、感慨があります。
    なかなか力作ではありました☆

  • ひょうたんがひとつ、ひょうたんがふたつ、ひょうたんがみっつ…

    いやぁ~、読んでる間中、何度ひょうたんに追いかけられる夢を見たことか(汗)。
    相変わらず破天荒でワケが分からんストーリーやけど(笑)、
    それでも毎作品ごとに面白いと思わせてくれるんやから、しょうがない。

    万城目さん初の時代小説ながら、『徳川家康』『三国志』『宮本武蔵』などの歴史小説を中学までに読みハマってたという著者だけに、
    嘘を巧みに織り交ぜながら史実を描いていく手法で、
    あたかも本当にあった話のようにリアリティを感じさせてくれる。

    冒頭の殿様のいる天守への侵入シーンからして
    一気に引き込まれた。
    万城目さんの作品はその卓抜な文章力によって、
    導入部からその物語世界に一気に連れて行ってくれるのだ。

    時は戦国末期。
    とんでもない失態をやらかし伊賀を追われた若き忍者の風太郎と黒弓は、なりゆきで京の町で暮らすことに。
    しかし、黒弓が商売を始める一方、風太郎は京の町が醸し出す不思議な居心地の良さにぼんくらな日々を送るニート忍者と化していた。
    ところが黒弓からの依頼で不思議なひょうたんと出会ったことから運命の歯車は回り始め、風太郎は豊臣方と徳川方の戦いに、 否応なしに巻き込まれていく…。


    主人公は誰よりも長く息を止められる18歳の伊賀の忍者、風太郎(ぷうたろう)。
    茶や壺を愛し、とんでもない身の軽さと火薬の扱いに長けた
    17歳の南蛮帰りのマイペース忍者、黒弓(くろゆみ)。
    (脳内では万城目作品の映像化作品には欠かせない濱田岳くんに自動変換されて読んでた笑)
    狡猾で抜け目ない性格の20歳のくのいち、百市(ももいち)。
    風太郎の忍仲間で大坂城に潜伏中の
    麗しき美貌を持った、常世(とこよ)。
    気配を完全に消すことのできる謎の老人、因心居士(いんしんこじ)。
    風太郎のライバル忍者で
    口の端からドジョウ髭を生やした20歳の蝉左右衛門(せみざえもん)。
    ひょうたん屋で働く、化粧っ気なくぶっきらぼうな物言いの18歳の少女、 芥下(げげ)。
    (この子がホント、不器用ながらいい子なんですよ)。
    そして凄まじい抜刀術のかぶき者の頭領、残菊(ざんきく)などなど、魅力的な登場人物達が所狭しと躍動し、壮大な物語を盛り上げていく。
    中でも病弱ゆえに屋敷の外に出られず、京の町を一度しか歩いたことがない公家の御曹司ひさご様とののんびりとした京都散策と蹴鞠のラリーの場面は
    印象的で胸にジーンとくる記憶に残る名シーンだ。

    そして南蛮物の商いをしながら毎日美味い物を食べ悠々自適に暮らす黒弓と、商才も愛想もなく
    その日の食うものにも困るぷー太郎の風太郎(ダジャレかいな!)、
    この凸凹コンビがホントいい味出してるし、
    口下手だがいつも風太郎を気にかけるひょうたん屋の少女・芥下や
    辛い過去を背負い風太郎に憎まれながらも
    彼を陰ながらサポートする美貌の女忍者・百市らの女心に胸が締めつけられる。

    やがて戦が始まり、幼い子供を誤って殺してしまったことへの後悔に苛まれる風太郎。
    忍者が必要とされぬ世の流れの中、自分のアイデンティティに思い悩みながらも
    ようやく自分の進むべき道を見つけ、今度は命を奪うのではなく
    誰かを救うために風太郎は自らの意志で動き出す。

    それにしてもなんと胸を打つラストシーンか。
    万城目さんの魔法は、読後も僕たちをとらえて離さない。
    切ない読後感であるにも関わらず、生き生きとした登場人物たちが読む者の心に住み着き、
    切に再会を願わずにはいられなくなる。

    万城目作品には珍しくシリアスで残酷描写も多い今作だけど、
    シンガーソングライターの秦基博もハマった見事なアクションシーンは一読の価値はあるし、... 続きを読む

  • 万城目さんの好きそうなモチーフ全部乗せな作品。
    まだ物語の余韻から抜け出せない。
    いろんな想いがどっと流れ込んでくるラストシーンに飲み込まれてしまった。

    思えば「約束」について、万城目さんは繰り返し繰り返し書いて来たのではなかっただろうか。
    それがこの物語を読見終わって真っ先に思ったこと。
    風太郎が交わす約束の重さをどうしたって感じずにはいられなかった。
    正しいとか、間違っているとか、いいとか、悪いとかじゃない。
    ただただ約束を果たそうとする姿に我が身を振り返る。
    風太郎だけじゃない。
    皆がいろんな約束によって立たされてるようにも思える。
    もう嫌だ、駄目だ、と思った時に私を動かすのはいったい何か。
    それが「約束」なのではないか。

    まだ今はここまで。
    でも万城目さんの書く物語がまた次の場所に連れて行ってくれる。
    そんな気がするから今は日々の想いを掬いながら待ちたいと思う。

  • なんにしても圧巻であった。
    平和な時代になってしまい、用なしになった忍者。それでも身についた忍びの生き方は捨てられなかったのだな。
    ぼんくらで鈍い風太郎が、ようやくすとんと腑に落ちて、「俺は約束したのだ」と言い切るところで胸が熱くなる。
    赤子を連れて城を脱出するくだりは、ドキドキしながら読んだ。
    日本にも、戦に明け暮れる時代があって、たくさんの人が殺しあって死んだ。そんなことを思い起こさせる。「生きたい」という個人の思いと、どうしようもない世の中の流れのせめぎあいの中で、否応なしに戦って、死んでいく。蝉や常世の死に様な壮絶であった。
    残菊とはいったい何者だったのだろう。作者の意図はわからぬけれども、しんと心の底に余韻の残るキャラクターであった。
    それにしても。冒頭の一文が意味するところが、700ページ余りを読み進めてようやくつながるとは、壮大すぎてため息が出る。おそらくそうであろうとはわかっていても、やはりあの結末は切ない。思わず風太郎の名を呼び、涙してしまった。
    「プリンセス・トヨトミ」との関連に言及するレビューも多いようだが、果たしてどうなのであろうか。あえてそうやって深読みさせる、というお楽しみなのかもしれぬ。
    ひょうたんの絡みが、物語に飄々とした雰囲気を添えていてとてもよかった。
    まったく、凶器にもなりかねないほどの厚みであるのに、ページを捲る手を止めることが難しく、気がつけば物語の世界にどっぷり入り込んでいるさまは、あたかも因心居士のひょうたんワールドに取り込まれた如くで、己の立つ場所がいずこなのか、判別しがたくなる。
    大変魅力的な時代小説であった。

  • はー、もうすごいというか、すばらしいというか
    なんて言ったもんだろう。
    しばし、心が持ってかれて放心状態でした。

    この厚さに重さにして、いつも通りの奇っ怪で妙ちきりんなタイトル
    初の時代小説に、主人公はニート忍者の風太郎(プータロー)。
    不思議可笑しい万城目ワールドにわくわくしながら読みはじめました。

    序盤はなかなか話が見えてこず、残りページの多さに
    いったいこの先どんな展開を見せどんな結末に行きつくのか、さっぱりでした。
    でも黙々と読み進むうちにだんだん輪郭が見えてきました。
    そこにつながるのかーと思うと、
    ずっとこの話を書きたかったんだなぁとしみじみ実感してしまった。

    忍びの生き方や時代のドラマチックな変化にも、
    ドキドキして気がついたらどっぷりはまっていました。
    そして、第6章の最後の
    「ああ、俺はすっかり変わってしまったのだ、と気がついた。」
    の一行で、突然涙腺が決壊してしまって。

    もう後半は、終わりが見えてきたのが悲しくなって
    あまりに壮大な物語に感銘を受けるとともに
    風太郎とはじめとする忍びの面々、ひさご様とねね様、
    それぞれの生き様にハラハラして、時に涙して噛みしめるように読みました。

    最後、こうなるしかないの?という展開が立て続けで
    でもこうなるしかない展開でもあり、ほんとうに切なくて悲しくて胸がいっぱいになりました。
    救いも希望もあり、とても満ち足りた読後感でしたが、やっぱり悲しいよぉ。

    とっぴんぱらりとは、「とっぴんぱらりのぷう」という言い回しが秋田あたりの方言にあるようで、民話や昔話の〆の一言として用いられるそうです。
    「これでおしまい」「めでたしめでたし」みたいな感じでしょうか。

  • まさかひょうたんに泣かされるとは!
    風太郎と、その「仲間」たちの駆け抜けるような「生」に身体ごと持って行かれました。ええ、心も身体も、まさにそんな感じの読後感。

    伊賀忍者、今まで見て来たその姿は、本来彼らが見せてはいけない「姿」だったのだとつくづく思いました。
    どんなに活躍しても、どんなに役に立っても、表だってその手柄を示せない存在。
    自分の意思さえ、そこに存在させてはいけない。そこに必ずあるのに、ないもの。それが忍び。

    前半の落ちこぼれニートダメダメ忍者風太郎の日々は微笑ましくさえあるが、後半、思ってもみなかった「任務」を引き受けてからの怒涛の展開に、ページをめくる手が震えるほど興奮しました。
    結末がわかっていても、もしかすると、とかすかな望みを抱いて読んでしまう、みんなが幸せになって終わる、そんな夢を見てしまう。いや、祈ってしまう。
    何かを成し遂げること、そこに「命」をかけること、それはあるいみ「生」への絶対的肯定なのかもしれないですね。

    登場人物それぞれの生き様にほれぼれしました。

  • この結末は予想できなかった。
    万城目作品でこんなに深い感動を味わうことができるなんて。

    この作品で万城目は化けましたね……
    彼の作品が大好きで、小説もエッセイも本当に好きなのだが、
    いつもの彼のテイストとは異なる作品だった。
    もちろん、ところどころでクスッとさせられるが、それだけではない。普段、温和な人がいったん牙をむいたら、とんでもない凄絶な物語になるという、一つの例がここにある。

    戦国末期の大阪冬の陣・夏の陣を背景に、生きる目的を失い、日々を無駄に過ごすプータロー忍者の「風太郎」(ぷうたろうと読む)が、些細な事件を発端に、次第に豊臣と徳川の争いの中に放り込まれるというのが大まかな物語だ。
    緩い前半から、後半は加速度的に緊張感を高めていくその過程にゾクゾクさせられる。
    クライマックスに向けて、自分の生き様を見つめ直し成長していく風太郎もかっこいい。さらに敵役の描き方が素晴らしい。ここまで強いと物語の緊張がひとときも削がれない。本当に今作の敵は強い!一筋縄では行かない手強さだ。

    手に汗握りっぱなしの740ページ、長い物語の最後はまさかの万城目作品で涙ぐむことになるなんて想像もつかなかった。

  • 装画が中川学さん…ということに惹かれて、久しぶりに万城目作品を読みました。

    伊賀の落ちこぼれ忍者の風太郎と、その忍び仲間たちの活躍を描いた作品です。
    最初のうちは伊賀を追い出された風太郎が、ヘンテコなひょうたんを手に入れたことから、なぜかひょうたんの栽培を始めることになり…と、展開が全く予想できませんでした。
    でもきっとコメディタッチで進むのだろうなぁ…とぼんやりしているうちに、物語はどんどん不穏な空気が満ちてきて、最後のページは半ば呆然としながら読み終えたのでした。

    大坂夏の陣で燃え盛る天守閣の周りで起こったドラマに胸が熱くなりつつも、同時に悔しさも残る読後でした。
    けれど、この物語の何百年か先に『プリンセス・トヨトミ』があるのだと気付いたとき、すうっと救いの風が吹いてきたような明るい気持ちになれたのでした。

    余談ですが、最後まで風太郎を「ぷうたろう」と読むことに馴染めなかったのは私だけでしょうか…

  • 急遽、チビちゃんの卒園式でスピーチを頼まれて、読書を封印。終わったらこの本を読むぞ!とそれを目指してやってきてようやく解禁~!
    でも、この巨大弁当箱はいったい。通勤読書に対する挑戦?

    伊賀の柘植屋敷で忍びとして育った風太郎は伊賀を追い出され京へ。
    いつの時代か文禄生まれって言われてもピンと来なくて、モヤモヤしながら話が進む。
    だんだんと明かされる風太郎の過去。
    生きている時代の背景。
    「まったく、あの屋敷の生き残りは皆、頭がどうかしておるの。風太郎、百市、おぬし、ーー、まともな忍びはひとりだっておらぬではないか。」
    と怒鳴らせるほど、蝉、百市、黒弓、常世、伊賀の忍びの面々が個性的で魅力的。
    誰が敵で誰が味方か。
    最後までハラハラが止まらない。
    まさに忍びの駆け引き。

    主人公が毎度このキャラなのか、って気もしてきたけど、因心居士とか万城目ワールドも飛び出す。
    瓢箪を育てる過程とか、我が家も瓢箪を作ったことがあり、ニヤニヤする。

    登場人物が面白いので、ニヤニヤしたり、ホロリとしたりこの厚さだけど、あっという間に読む。
    最後は寂しい。
    忍びって、やはり物悲しい。
    こんな風に名も残さずに死んでいった人々で現在はあるんだな。

    「儂はとてもうれしかったのだよ、風太郎。人として見られて、とてもうれしかった。ただーー、それだけじゃ」

    さて、これがプリンセス・トヨトミにつながるのかな。
    いろんな本を読んだけれど、家康はどうも好きになれない。
    この家康をあそこまで描いた大河ドラマって凄いと改めて感じる。

  • ☆5
    超大傑作忍者小説である。
    今までのマキメの作風とはガラリと変わって、これわ本格時代劇(っつー言葉は無いカモ。としたら今作ったw)である。なんてったって切られて刺されて人がバタバタと死んでいくのだから。これ以上書いてると物語の肝心な部分に触れたくなってしまうのでよす。
    しかして、この作品はまたもや映像化されるであろう。あまり書きたくないが、どうやらそれを非常に意識して書いているような節がうかがえる。いや別にそれでも物語は面白いのだから特に問題はなぁんにも無いのだけれどね。なんとなく小賢しいというかね。あ、すまぬ。
    (物語終盤でなんども「すまぬ」という言葉が風太郎の口から吐き出される。うーむ、俺の方がはるかに前から頻繁に使っていたが、よもや真似された・・・訳は無いか。すまぬ。)

  • 万城目さんの真骨頂。待っていた甲斐がありました。

    とくに後半は万城目さんの小説を読んでいるのに苦しいという不思議な感覚が訪れ、いい意味で裏切られた。

    そして相変わらず登場人物のキャラがいい。
    風太郎、黒弓、蝉、常世、残菊...
    なによりひさご様が最高だった。まんかか様もすき。

  • 読み終えてしまうのが寂しい!もったいない!と感じる作品に年にいくつか出会うけど、これもそんな作品のひとつ。
    本の分厚さにたじろいでしまって、図書館の貸し出し期間・2週間で読みきれるか心配したけど、そんな懸念はよそにあっという間に読んでしまった。

    「忍びをクビになった “ ニート忍者 ” の風太郎の物語」

    最初はコメディかと思ったけど、とんでもない!
    大スペクタクルの映画を観ているかのような、壮大なアクション作品。
    一方で、人物の心の機微が細やかに描かれたヒューマンドラマ。
    ぷっと笑ってしまうコメディ要素があちこちに散りばめられているけど、次第に物語はシリアスな状況へと進んでいく。

    風太郎をはじめ、愛すべきキャラクターたち。
    彼らのバックグラウンドをもっと知りたい。

    私が今まで読んだ中でもトップ5に入る名作。

  • 初出 週刊文春 2011年6月23日-2013年5月30日 連載

    みんな書いてるけれど746ページの大長編
    伊賀の柘植屋敷でものごころつくころから忍びとして育った風太郎は、修練中のほんのわずかのことが原因で伊賀を放逐されてしまう。
    忍者には戻れず 京都吉田山のあばらやで気ままに暮らすが、もとのしがらみからも抜けられない。
    そうこうするうちに妖しい瓢箪に取り憑かれ、とんでもない役目を負わされて 冬の陣へ 夏の陣へととびこんでいく。

    とっぴんぱらりのぷぅ なんて言うから、ひょうげた話であろうと読み進めると 豈はからんや いち下っ端・タダの駒 の哀しき人生物語。
    しかも、命のやりとりを生業とする忍びの話だから、血も流れるし首もとぶ。
    結構なグロさを入念に描き込んでいるのは、傷つけられるものの辛さに共感しているからなのか?
    一方で ロクでもない登場人物のウソ偽らざる姿の面白さと、奇想天外な瓢箪話のたくみさが、グロさエグさを中和してくれる。
    愛想がなく、キレもなく、術も凡庸、美味しい話にはすぐだまされる風太郎(ふうたろうではない、プータロー)だが、人の話はちゃんと聞くし、泣く泣くやらされる仕事でも真面目にやる。
    なんとも可愛気がある。
    でも、本当にワリに合わない、つまりはただの駒という存り様は多くの人が身につまされ、応援したくなる姿だろう。

    そのしょうもない風太郎が最後は立派に男である。
    万城目作品のパターンっちゃパターンだけれど、やっぱり良い。
    ひさご様も良い。

    映像化するなら山田孝之さんかな。

  • これで(アンソロジーを除く)万城目氏の今現在の全作品を読み終わった。
    しかも最後はこれ。ものすごい達成感。
    表紙も挿絵もステキ。

    でも重い!内容ではなく言葉通りの意味で重い。
    キッチンスケールで重さを量ってみるつもりだったけれど、図書館の返却期日に焦り、忘れてしまった。

    地理的なこと、歴史的なこと、どちらにおいても京都・大阪の方にはわかりやすくて羨ましい。
    祇園祭をどこでやるかとか、祇園社って今のどこのことなのかっていう、地元の方にとっては当たり前であろうことが、さっぱりわからなくて、また一々調べながら読んだ。

    自分の一番好きな、思わず涙ぐんだシーンは引用に残すとネタバレになってしまうので非公開メモに。
    ちなみに429ページの後ろの9行。(^^;;

    きっと映画化されるんじゃないかと思う。
    読んでる分には大丈夫だけれど、ちょっとグロすぎて私は観られないかも。

  • 大作であった。
    はぁ〜、読み終えてのこの感じ。
    放心しました。文句なしに面白かったです。

    風太郎、とっぴんぱらりの超人ぶりや人間臭さがいい。
    会話のおかしさにくすりと笑い、ひょうたん作りやひさご様との出会いなど、わくわくする思いで読んだ。何より風太郎が大好きになっている。
    個性的な登場人物の誰もが欠くことのできない者ばかり。
    その絡み合いの妙がみっちりと詰まっているこの長編にぐんぐん引き込まれていった。
    芥下の生い立ちに涙し、ひさご様の運命と風太郎とのやりとりに涙し、忍びの仲間たちに涙しと、時おり胸がいっぱいになるシーンにぐっとくる。
    息を凝らして読んだ終盤、なんとか修羅場をくぐり抜けてくれとただただ祈り続けた。
    忍びとして育てられた者の運命は胸に重苦しく迫る。
    斬って斬られての凄惨さはもう言葉にならない。
    まさかこんなにこころが締めつけられるラストとは思いもしませんでした。とても良かったです。

    鹿男を読んだきりの万城目学さんでしたが、スケールが大きくなって、すごい作家さんだったのだと敬服いたします

  • キャラクターがいきいき描かれいる時代小説。風太郎、黒弓、蝉みんなカッケー。そういえば、グラスホッパーでも蝉がいたなあ。

  • 伊賀の忍び・風太郎のぼやき満載の変化球“忍者小説”。 万城目さん久々の長編はホントに凄い厚さの物語でしたが、妙に冷静な風太郎&とんでもない仲間たちに引っ張られ、あっという間に読了です! (#^.^#).



    幼いころから忍者として成育された風太郎。
    ただ、本人はそんな訓練の成果より肺の容量の大きさ(いかに息をとめていられるか、ということですね)のおかげで生き延びられた、と自認する若者です。

    時は関ヶ原の戦いを過ぎ、江戸幕府が始まったばかりのころ。
    戦国の気風は残しながらも、もう忍者はいらない、と時代が告げていた…なんていうと、ちょっとハードボイルド系の時代物?となりそうだけど、それこそ、とっぴんばらりのぷうっ!ってなもんで、(昔話の終わりによくこう言ったよね。(#^.^#))とぼけた味わい&現代の若者に通じるアイデンティティ探し&人間以外の大きな力&歴史を新角度から見る! とまぁ、盛りだくさんでホント、たっぷり楽しめました。

    そもそも、私、時代ものは好きで結構読むのですけど、一番の好みは江戸の市井ものOR地方の下級武士もの。城を攻めるとか、権力とか、忍者とか、というのはあまり・・・なんですよね。
    歴史上の実在人物、特に武将とか、政治に絡む有名人の話はその行く末が決まっているだけに始めからネタバレ感があって敬遠してしまうという…。(あはは・・・なんてざっくりした姿勢だぁ~~。汗)

    でも、このお話には超々メジャーな人物が出ているというのに、その造形がとても新鮮、かつ優しくてすっごくよかったんですよ。

    風太郎や仲間の忍者たち(特に南蛮生まれの黒弓の人の好さと空気の読めなさに時にイラッとしつつ、忘れたころに出てくると、待ってたよ!なんて思う)、それぞれの思いや駆け引きも楽しめたし、特に、風太郎が忍者を離れて、商売や瓢箪づくりに精出すところなんかが面白かった!

    大きな流れに巻き込まれる人間の哀れさ、滑稽さも丁寧に描かれていて、そこがこの物語の主眼だとは思いつつ、笑ったり、おいおい、なんとかしてよ!と思ったり。

    また、そっか、そうだったのか、という仕掛けもあちこちに用意されていて、これはもう一度読まなくちゃ、という一冊でありました。(#^.^#)

  •  この大たわけめが。まったくどうしようもない大馬鹿者だなわれは。やっとのことでたどり着いたそこでゲームオーバーかよ。残された者はどうなるんだよ。目から汗が流れ落ちて止まらぬわ。
     大坂びいきのストーリーテラー万城目学の面目躍如。手に取ったときは、こ、この厚さ、とたじろいだが、さすがの筆力で一気に読ませる。落ちこぼれ忍者風太郎が人のよさにつけこまれて次々に事件に巻き込まれてゆく。盟友黒弓は別として、一癖も二癖もある忍者仲間たち、蝉、百、常世、に翻弄され、手だれのかぶき者残菊にはつけねらわれ、はたまたひょうたんの精にいいように使われ、最後は密使となって大坂城へ潜入するはめに。凄惨な忍者の世界から足を洗ってひょうたん屋として暮してゆこう、とちらとでも考えたかどうか。叫ぶ芥下の声を背に大坂へ向かう風太郎。どうなるんだろうとハラハラしながら読み進む読者を納得させる結末を考えるのは難しい。ここで主人公が死んでしまうわけがないよな、最後はめでたしめでたしで終わるんだよな、そのはずなのに...。芥下が不憫でならぬ。いかん、また目から汗が。

  • 風太郎と黒弓の組み合わせが最高。
    黒弓がくると厄介事に巻き込まれているけれど、ちゃんと力にもなってくれてるし、無くてはならない相棒って感じ。

    ひょうたんを水に漬けて―という部分は小学生の頃を思い出した。同じようにひょうたんを育てて中身を腐らせて出し、ニスを塗ったことアリ。
    考えたら、あれ、とてもいい水筒になるよなぁ。
    最初に作った人スゴイ。

    赤子を置いて逃げたくなるような場面でも約束を守りぬく風太郎。どこまでいっても憎めない奴だわ。

  • ここのところ色々あって、かなりの期間読書から遠ざかっていたのだが、ようやく本を手にした。挑んだのは万城目さんのこの本。しばらくぶりに厚さのある本に挑んでみたかった。

    最初、店頭に並んだ時のコピーは「今度の主人公はニート忍者?」とか、そんな感じだったように覚えている。また万城目さんらしく奇想天外で愉快な物語だと思っていた。

    が。これは…、違う。

    確かに奇想天外な部分はある。大阪冬の陣から夏の陣、徳川方と豊臣方の攻防を背景に、忍びの道を絶たれた男。そこに現れる「ひょうたん」。

    私が読んだこれまでの万城目さんとの一番の違いは「哀しさ」だろうか。奇想天外、ユーモアもある。だが、哀しい物語、であった。

    現代物、時代物問わず、まだまだ万城目さんの本を読んでいきたい。

  • 長さと重さ(内容の方じゃなく重量)がハンパない。万城目さん頑張ったなぁと、まずはそう感じた。

    ひょうたん、大阪城ときたのであぁ「プリンセストヨトミな」とは思ったのだけど、なるほどエピソード0ってことな。そら気合も入るわ。しかしまさか忍○乱太郎のシチュエーション(相当血なまぐさい乱太郎やけど俺にはどうもそう思えてならなかった)で、これを描くとはさすがというかスゲエというか…。

    ラストはジーンとくる。まさか百とのシーンで締めくくるとはなぁ。そこまでの手に汗握る展開に心奪われてたので泣くほどのことはなかったけど、あーいうラブシーンにもっていけるんやなぁと感動の中で関心もしてしもた。

    物語の展開もそれほどダレ場なく、一定のペースで走り続けるので厚さと長さのわりには早く読めたかな。さすがに連日腕筋張りっぱなしやったけど(別趣味のせいなんですけどね)

    …ん、まてよ。この物語ってしゅららぼんともつながる可能性あるんやないか?まさかひさご様のお祭りシーンにホルモーにつながるなにかもあったのか?…万城目め、ひょっとすると壮大なサーガを構想してるとかあるんやないのか?

  • 娯楽超大作!
    マキメさんらしい飄々とした持ち味もありつつ、忍者たちが飛んだり跳ねたり出し抜いたり出し抜かれたりする、めっちゃエンターテイメント。
    分厚いですが、一気読みできるくらいの面白さです。

    戦国時代の終わり、忍者たちが次第に活躍の場を失いはじめている時代。
    主人公の風太郎、ささいなことから殿の怒りを買い、忍者の里を追われて京都に流れ着く。
    そこでニートみたいな暮らしをしているとき、ひょうたんの中に住む奇妙な神さまに目をつけられたことから、次第に大きな運命に身を投じることに。

    らっきょうだのにんにくだのひょうたんだの言って騒いでるうちに、だんだんシリアスな展開に巻き込まれ、やがて命がけの勝ち目のない戦いに挑むことになります。

    もともとはみなしごだった主人公の風太郎、己を殺し、上司の命令に従うことしか知らなかったけれど、最後は自分の意思で戦うことを選ぶ、そのさまがたのもしい。

    キャラクターたちも立っていて、忍者たちみんな過去を抱えてる。

    疫病神で腐れ縁の黒弓が、どんな修羅場でもいつもけろっとしていてたくましくて、とっても好きだあー。
    黒弓があらわれるとなんかホッとします。
    でもこの黒弓も重い事情を抱えてるんだよね。

    以下ネタバレ。


    「13人の刺客」みたいな感じで、もう最初から勝ち目はほとんどない。
    果心居士とか出てくるので、ガンダルフみたいにものっすごい奇跡を起こしてくれるかと思ったけど、最後はそうなっちゃうのかーという感じで、キャラクターたち全員にすっごい感情移入してるだけにせつなくて。
    ひさご様の正体はわりと最初から予想つくので、史実の通りになるのはわかってるんですけど。
    それでも、最後に「蹴鞠たのしかったなあ」って純粋に言っちゃうとこでうるる、ってきました。
    618回・・・。

    キャラクターの中でも最も重い罪を背負っている百が最も大切なものを託されて生き残る。
    償いながら生きなければならない。命を救うことでしか償えない。

    大団円が好きなので、あああ、って最後はかなしかったんですけど。

    よくがんばったよ、風太郎。えらかったよ。

    スピンオフとか読みたいなあ。

  • ひょんなことから、伊賀を追われた忍・風太郎が大阪で活躍する時代小説。
    登場人物は、誰しもがこんなはずじゃなかったという思いを抱え、色々なものに縛られている。自由に生きることは、平和な時代にのみ許された身に余る幸福なのだろうかと感じさせる。忍として与えられた任務を全うするため、友との約束を果たすため、友を生かすために、自分の命を捨て投げ出す。コミカルな作品が多い万城目さん作品の中で、突拍子もない設定はとても少ない。そこにいわゆる“万城目作品”を期待した読者で、残念に思った人もいるのでは。
    文藝春秋12月号内のエッセイで、万城目さんは早乙女貢さんの「歴史小説を書くとき、資料は捨てるべき」という言葉を引用して時代小説に対する考えを語っている。

    資料を調べなければ小説は書けない。資料を調べるには手間がかかる。人間、手間をかけて知った内容を、どうしても作品の中に取り入れたくなる。俺はこれだけ知っているのだと誇示したくなる。でも、それは小説のためにならない。

    この言葉の通り、本作ではまどろっこしい時代背景の説明等をほとんど省いているように感じた。登場人物についての描写が多く、とてもキャラクターが立っている。時代小説であっても、読みやすく誰にでも読みほぐすことが可能なエンターテインメント作品であった。(それにしても前半部が長すぎですが…)

  • 万城目さんの時代物ファンタジー!
    今までとは一味異なるストリー!
    忍者の落ちこぼれから、ひょうんなことで 、ひょうたんとの出会いから奇怪な展開へと話は進む。

    後半のニート風太郎の活躍に涙!!
    あっぱれ、風太郎!!

  • 泣きました、結構。
    ひとり、ひとり単独で生きてるような人々が、結局心の底ではつながってて、つながりを求めてて、そこに温かいものが流れてて…。
    最後は、予想とはちょっと違ったけど、あぁ、そうきましたか・・・って感じです。

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とっぴんぱらりの風太郎の作品紹介

著者二年ぶりのスペクタクル長編!天下は豊臣から徳川へ――伊賀を追い出された“ニート忍者”風太郎の運命は、ひょうたんのみぞ知る? 万城目ワールド全開の大長編

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