まほろ駅前狂騒曲

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著者 : 三浦しをん
  • 文藝春秋 (2013年10月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163825809

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まほろ駅前狂騒曲の感想・レビュー・書評

  •  まほろシリーズ第三弾。

     行天が多田便利軒に転がり込んできて3年目の正月から物語は始まる。もう三年目・・・多田は行天に「そろそろ出てけよ」とことあるごとに言うが、まいにち「おやすみ」を言い合える、ゆるゆると繋がっている日常が続いている。いいな。

     そんな二人の日常を変えるのは、やっぱり女。

     特に、行天の遺伝子上の娘である、はるが多田と行天の日常に大いなる変化を与える。行天の過去も明らかになる。「高校に上がるころには部屋にいくつものカギをつけた。母親が部屋に入ってこられないように」
     これだけの描写で、何が起きたのか、容易に想像できてしまう。行天の過去がすさまじかったことを。、

     小さいものに暴力をふるってしまうことを極端なほど恐れる行天。そんな行天と、はるちゃんを一晩二人きりにしようとする多田がよかった。その多田の覚悟もよかった。
    「はるちゃんに何かあったら、俺は死ぬことにするよ」
     この殺し文句は、多田にしか言えないことだ。行天を信じる、多田にしか言えないことだ。

     はるのことを、「あれ」「あのガキ」と呼んでいた行天が、段々やわらかくなっていったのもよかった。行天がはるを「このひと」と呼んで、はるが差し出した手を握り返すのもよかった。

     人は、こうやって繋がっていくんだな。生きていれば、こうやって人と人とは関わっていけるんだな。心がじわっとなった作品。

     ぜひとも、まだまだ続編が出てほしい。

  • 三浦しをんの作り出す小説世界の住人たちは、とても魅力的だ。
    主人公である多田啓介と行天春彦はもちろん、彼らを取り巻く岡、ルル、ハイシー、凪子、はる、亜沙子から星や由良や裕弥まで。
    それぞれのキャラクタに深みがあり、絵に描いたようにくっきりとイメージできる。

    「まほろ駅前」シリーズ三作目となるこの最新刊では、多田と亜沙子の恋物語に胸ときめき、謎の農業団体との騒動にハラハラドキドキさせられ、時には大笑いしながら、物語は進んでいく。
    今回の様々な経験を経たことで、多田も行天もようやく自分たちの葛藤や悩みを乗り越えることができ、一回り大きくなっていく。

    終盤では、行天の失踪によってこのシリーズも今回が最後かと思わされるが、誰も想像しなかった展開によって、今後に含みを持たせる。

    ところどころに散りばめられた作者特有のユーモアセンスに頬を緩めながら、最後までとても面白く読まされる。
    まさに小説の醍醐味を十分に味わえる作品だ。

    多田が便利屋稼業を営む限り、どんな事件に関わっても違和感はない。
    これからも長期に渡って続編を期待したいシリーズだ。
    多田、行天のハチャメチャコンビは永遠に不滅なのである。

  • まほろシリーズ3作目。いつもの岡さんの横中バス間引き運転話、無農薬野菜を売る怪しげな団体…落ち着く事のないまほろで、一ヵ月半子供(はるちゃん)を預かる事になってしまった多田と行天。はるちゃんを交えてのドタバタな日々が始まる。
    色々な事が良い方向に進展し、驚きの連続だった。特に行天は最初の頃とイメージが一変。登場人物の意外な一面(多田が甲斐甲斐しくはるちゃんのお世話をしたり…)も見れて、このシリーズに対する見方がかなり変わった一冊になった。

  • 「まほろ駅前」シリーズ3冊目。

    新年を迎えた多田便利軒。
    相変わらず、多田と行天の男二人住まいです。
    しかし、この1年は曽根田のばあちゃんが予言したとおり、波乱に満ちた1年となるのです…。

    まほろのオールスター勢ぞろいで、読者にはうれしい限りです。
    特に岡老人の暴走っぷりに磨きがかかっていて、呆れつつも笑いがこぼれてしまいました。
    謎に包まれていた行天の過去も、少しずつ明らかになっていきます。

    しをんちゃんの小説を読んでいると、いつのまにか登場人物たちのファンになってしまっていることが多いです。
    多田にも行天にも、心に変化があった1年だった様子。
    このあと、彼らがどんな風に暮らしていくのか、ぜひこの先もまほろ町の面々を見守っていきたくなりました。

  • まさに「狂騒曲」。
    皆が皆思い思いに生きていて、それぞれのパワーがぶつかってあちこちで騒動が勃発して、傷ついたり、愛し合ったり、もう何が何だかなのがこの世界。
    そんな混沌とした世界の中で出会った多田さんと行天さんと、友人達。
    これが幸せってことなんだなと思えた。

    「大事なのはさ、正気でいるってことだ。おかしいと思ったら引きずられず、期待しすぎず、常に自分の正気を疑うってことだ」

    行天さんのこの言葉がぐさっと刺さった。
    「正気でいる」
    「自分の正気を疑う」
    その通りだなと思う。
    でもこれが難しい。
    どうしても思いつめてしまう。「こうしなきゃ」と。
    それが狂気の最初の一歩のような気がする。
    でもこの一歩は頑張っている時に踏み出してしまう一歩だし、前向きでいたいと思っている時に踏み出してしまう一歩なんだ。
    日々を生きていくにはそういう気持ちも必要だと思う。
    だから「常に疑う」ってことなんだろうな。
    頑張ってしまっている(と言うのもなんだかな…だけど)時、「今私が見ているものは何か?」「今目指しているものは何か?」と問いかける。
    それが自分にとって大切なことなのか。
    その行いを心から肯定できるのか。
    余裕を失っていないか。
    利害ではないところで笑っていられているか。

    うぅむ…問いかけ方が難しい…。
    その辺はもう少し考えます。

  • え?まほろってこんなに切なく哀しい話だった?
    多田も行天も重すぎる過去を背負っているけど、ダラダラ脱力系のちょっとミステリーみたいなかんじじゃなかったっけ?
    と思うくらい、多田と行天の関係と行天の過去が直球で描かれている。
    うわー、前の2作読み直したい。

    思わず何度も読みなおしてしまうくらい、ぐっとくる語りが何箇所もあり、ふいに涙がにじむ。
    その倍くらい吹き出してしまうところがあるんですが。

    信じること、覚えていること、正しいと感じることをすること、正しいと感じる自分が正しいのかいつも疑うこと、厄介ごとを抱え込み人々の暮らしの中で生きていく。

    行天の元パートナー・凪子から突然娘のはるを1か月半預かってほしいと頼まれ、微妙な3人のひと夏の生活がはじまります。
    HHFAなる無農薬野菜を作り売る団体やら、横中バスの間引き運転に断固として糾弾する岡さんたち老人御一行やら、ルル&ハイシーに星に由良公たちおなじみメンバーも絡んできて、なかなかの騒動になるも、切なく苦しい彼らの想いが絶えず付き纏います。
    「キッチンまほろ」の美人女社長・亜沙子との関係も、傷のなめあいではなくお互いを思い遣っているところがいいですな。

    いやー、最後はもしやシリーズ完結?と心配になったけど、よかったよかった。
    多田と行天の同居生活も丸3年となり、4年目を新たな年と共に迎えました。
    次のハッピーな展開を思うと楽しみで仕方ない。

  • いつもの奴らがなぜか集結―?まほろ駅前は大騒ぎさ!四歳の女の子「はる」を預かることになった多田と行天。その後なんとバスジャック(?)に巻き込まれることに―。
    「Bookデータベース」より

    今回は大きな騒動が起こった(笑. (笑とつくところがしをんさんだから?ヤクザが出てくるのに深刻にならずカラッとしていて、行天の指が再びふっとんだのに、これまたあまり深刻にならず…多田サン、指冷静に拾っている場合では…と思いつつも、これまでのハチャメチャを見ていたら、そうなるわな、という納得.おもしろかったです.

  • まったりと過ごすお正月にルルとハイシーが乱入し、岡老人からまたもや横中の間引き運転調査の依頼。
    行天は相変わらず「口と鼻から白い煙を出して、妙な声で笑って、自分の腹をカブトムシの腹みたいにしようと運動」している。
    いつもの幕開けと思いきや「ハイブリッド車なみに音のしないブルドーザー」三峯凪子からとんでもない依頼が舞い込む。
    戸惑う暇もなく星さんから無農薬が売りの怪しい野菜団体の畑の監視に駆り出される多田。
    曽根田のおばあちゃんのお見舞いにも行きたいし、「キッチンまほろ」の亜沙子も気になる。
    多田の多忙さ絶好調。

    それにしても、もうン十年も横中のお世話になってますが、実家の近くも、今のとこも単線なだけに値上げも本数減らすのも一方的で、岡老人に内心エールを送ってしまった。
    「横中の横暴許すまじ」

    子どもの親への気持ちが今回も切ない。
    「正しいと感じることをしろ、だけど、正しいと感じる自分が正しいのか、いつも疑え」
    薄暗いものはつきまとうものの、今回は全体を通して明るくて、噴き出す箇所満載。電車で読むのは要注意!
    多田の幸せにカンパーイ!行天の未来にカンパーイ!
    ちょっとえ?っとも思うけど、華やかなグランドフィナーレだった。

  • シリーズ3作目。であってる!?
    忙しすぎるでもなく地区の人たちとの付き合いもあって毎日が充実してそうな多田と行天コンビが魅力的。
    行天の娘さんをあずかる生活というのも刺激になって良かったのではないかしら。
    こう色々なことがあると、
    つまんない
    という日はないだろうな。
    それにしても、行天の飄々とした生き方が素敵。
    あまり気にせず、気の向くままに生活してみるのもいいのかもしれない。

  • 瑛太と松田龍平が常に頭に浮かんでしまいますが、イメージがずれることはなく、笑ったりほろっとしたりしながら物語は進みます
    シリーズでおなじみの面子が登場してそれぞれが蒔いた種が最後で一気に刈り取られて大団円

    でもラストは仕掛けが派手すぎて雑、バタバタしすぎと感じました
    ちょっと残念かな

    でも次の作品につながるような種も蒔かれてるし、三浦さんさえ書いてくれたら読んでしまうと思います
    三浦さん絶好調ってことかな

  • 行天の頭の中はいったいどうなっているんだ、と今回も思いました(笑)でもさらっと、心に刺さること言うんだよね。おかしくて、騒がしくて、でもすごく人らしい。

  • ニヤニヤが止まらない。

    多田と行天の相変わらずの軽快で珍妙な掛け合いに、何度も笑う。
    やっぱりこの二人ってば最高。
    行天をはじめ星(「べーんーりーやー」の言い方が好き)や岡などの毎度お馴染みのお騒がせ連中に、振り回される多田が可愛いったらもう。30過ぎた無精ヒゲのおっさんに可愛いって言うのもおかしな話だけども。いつも周りに一方的に驚かされ、頭抱えて嘆き、どうしようとアタフタする多田の姿がなんとも言えず可愛いんだよなぁ。私もこういう人を困らせてみたい、なんて不埒な事を思ってしまう程。

    今回は行天の語られなかった暗い過去が浮き彫りになったり、多田の恋愛にまさかの進展があったりと、読みどころ満載。
    普段はへらへらしている行天の、ふいに見せる憂いを帯びた顔にドキッともさせられる。
    笑えるんだけど、きっちりと締めるところは締めてくれて。笑いの中にあるシリアスな要素に、ジンとくる。やっぱりそのへん著者はうまいよなぁ。すごいツボにハマるわ。
    分厚いけれど読み出したらあっという間で、読み終わるのが惜しくなるくらい。

    普段は文句ばかりで貶し合ってるようなところがある多田と行天だけど、なんだかんだでお互いを信頼し合っているんだなっていうのが伝わってきて、良かったな。
    友人というよりは、相棒という言葉の方がしっくりくる。

    南口ロータリーの事件はもはやカオスとしか言いようがなくて、いくらなんでもごちゃごちゃし過ぎだろと、そこで若干冷めてしまったり、ラストも私的には不満の残る感じで、手放しで良かったと終われなかったのは残念ではあるけど。

    とまあ不満は多少残るものの、結局のところ私この二人(というか主に多田)がすごく好きで、いつまでも読んでいたいみたい。

    「『いざってときにはるを痛めつけるためじゃなく、守るために体が動いた。それがなんだか俺は・・・』
    しあわせなんだ。
    とても小さな声だったが、多田の耳には届いた。
    『あたりまえだろう』

    『俺には最初からわかってた。何度も言ったはずだ。おまえはだれかを痛めつけたりしない。絶対に。そういうやつだって、俺はちゃんと知ってたよ』」

  •  まほろ市の面々は元気だ。一見何事もないような平和な街であるまほろであれ、内部にドラマを抱え込む人間がいる限り、いくらでも新しい出来事は起こり、人と人の利害はぶつかり合い、出会いと別れは繰り返される。そんな風に世界が滾り続ける限り、小説家はそこに起こり得る物語を掬い上げ語らねばならないとでも言うように、三浦しをんのペンはまたも語る。これまで書いたことのある人間たちのその後の物語を、しかも一人二人ではなく『まほろ駅前多田便利軒』と『まほろ駅前番外地』に登場したすべての魅力あるキャラクターらの新しい物語を。

     否、新しい物語は、古い物語でもある。過去のできごとからタイムスリップしてきた物語であり、心の奥の方に巣食っておりながら未だ日の目をみることのなかった情念の物語であり、さらには、これまで出逢うことがなかったのに、ここに来ていやがおうでも向かい合わざるを得ない運命の交叉する物語であったりもする。かくしてまほろ駅前シリーズとしては最大スケールで描かれる長編小説がここに登場したのである。

     映像と小説と合わせるだけでも、十分に仮想まほろ市の住民を沢山獲得したであろう本シリーズであるが、それらの期待に答えてサービス満点の作品を作ってくれた三浦しをんのプロフェッショナリズム精神に脱帽である。さほどに本書は、エンターテインメント性に溢れ、面白さ抜群の一気読み小説となっている。

     これまでの作中で何だか怪しげだなあと思われていた無農薬販売の駅前宣伝の一団や、いつまでも収まらない岡老人の横中バスへの疑念や、少年・由良のその後の物語や、仰天の血の父子関係のその後の物語などなど、極めて好奇心をそそられる題材がまだまだ豊富に残されていたのが、まほろ駅前サーガとでも言うべきこの一冊なのだ。それぞれを短編作品にしても良かったようなそれぞれの物語なのだが、これらを同時並行して走らせた上、大団円とでも言うべきクライマックスに収斂させてゆく小説ならではの醍醐味を、とうとうやってくれたとの喝采の思いがぼくには強く残るのだ。

     今でもこんなに面白く、愉快で、しかも手に汗握る、オフビートな作品が書ける作家が日本にもいるのだな、とほっとする。このシリーズ、今後どうなってゆくのか? これが最後なのか、さらに物語は、多田・仰天ともに成長を遂げてゆくのかはわからないが、まほろの街のことはぼくは忘れることはできないだろう。魅力的なキャラクターたちでいっぱいの、穏やかな皮相の内側にひしめくエネルギーの豊穣さにこそ、もっともっと期待してよいような気がしてならないのだが。

  • 厚めの本だったので、読み始めるのに少し勇気が必要だったのですが読み始めると面白くて面白くて最後まで一気読みでした。
    行天の言動はなんであんなに面白いんだろう…。途中何度もクスクスと笑ってしまいました。
    これで完結、といった雰囲気ですが続編もまた期待してしまう、満足の一冊でした。

  • 行天の生い立ちが明らかになり、多田の恋も進展して、まほろシリーズも一区切りを迎えたようだ。前に読んだ作者インタビューによるとこれで終わりらしいが、あのラストは新たな展開もアリだよねえ。ちょっと期待してしまう。

    このシリーズが著者の最高傑作とは決して思わないけれど(これで直木賞っていうのがいまだに解せん)、なんだかんだ言ってもやっぱりキャラクターが魅力的で面白い。スピンオフ的なものがいくらでもできそう。星とか、ルルとハイシーとか、亜沙子さん、岡さん、凪子…、あらあら、あげていったらほとんど全員だ。あらためて、さすが、と思う。

  • +++
    まほろ駅前で起きる、混沌と狂乱の大騒ぎ!
    まほろ市で便利屋稼業を営む多田と行天。ある日多田は行天の元妻から子供を無理やり預けられて困惑する。待望のシリーズ第三弾。
    +++

    行天はもはや松田龍平で脳内に登場し、多田はもちろん瑛太だが、まぁそれもありか、とも思う、多田便利軒最新作である。行天の元妻の娘で、遺伝子上は行天の娘でもあるはるを預かることになったり、無農薬野菜を作る団体の胡散臭さや、横中バスの横暴に憤る老人パワーに翻弄されたりと、相変わらずヘンに忙しい多田便利軒であるが、今回はそれだけでなく、多田の恋愛話があったり、行天が過去の傷と対決したりと、ふたりの真髄に迫る場面もあって、読み応えがある。ラスト前は、多田と一緒にほろりと寂しい気持ちにもなったが、ラストは今後の波乱を予感させつつもめでたしめでたしで、続きを期待させる一冊である。

  • まほろ駅前多田便利軒シリーズの第3弾のこの作品は多田、行天コンビがそれを取り巻くおなじみの登場メンバーとともに騒動を巻き起こす(巻き込まれる)ストーリーとなってました。
    今回は行天の過去や多田の新たな恋愛といったあたりがテーマでもありますが、行天の遺伝子上の子供である「はる」との絡みも面白かったです!
    いずれにしても相変わらずの展開ながら微笑ましく読める安心できる娯楽小説でした。

  • いいですねぇ。多田が前を向いて進み出して、行天も自分自身を認めることができたみたいで。これからもずっと、彼らとまほろの人々を見ていたい。

  • 行天は切ない。表向きは、だらしなくて自分勝手で、いい加減なやつなのだが、それが全部、内側にある「弱くてもろくて儚いもの」を守るためのプロテクターになっているということが、全編を通してにじみ出てきているから。
    多田はそのことをわかっている。だから、行天に振り回されながらも、気づけば彼のことを待っていたりしてしまうのだろう。
    そして、そんな自分に舌打ちしてしまう多田もかわいい。
    行天は誇り高い野良猫のように見える。本人はきわめて真面目に考えているのだろうが、それが周囲とはずれてしまうあたりに可笑しみが出てくるんだろうな。
    本作は「狂騒曲」というタイトル通り、いろんな人の思惑がからみ合って、最後のドタバタにつながる楽しい作品である。
    あの人もこの人も、おなじみのキャラクターで事態を引っ掻き回していくから、読んでいてニヤニヤせずにはいられない。
    合間合間に、行天の底知れぬ心の傷や、多田のゆっくりとした再生の様子が語られていて、ふいに冷水を浴びせかけられたようにぎょっとしてしまう。
    帯にも書かれていたやりとり『「怖いもんなんかあるのか?」「あるよ。記憶」』は、本文中にもそこだけ温度が違っているように思えた。
    行天の子供嫌いの理由が痛ましく、それだけに最後の方で、それなりの関わり方ができるようになっているのを読んで、心底ほっとした。

    ひとつだけ、疑問というか、ひっかかるところがあるのだが、多田っておっさんなのか? 30代後半というのは、ここまで老け込まなくてはいけないような「おっさん」の年代なんだろうか。
    映画で瑛太さんが演じていたこともあって、私の中の「多田」はまだ青年なのである。30代後半だろうと青年だ。
    だから、やたら彼が「おっさん」を自称するところは、「おいおい、そんな年寄りぶるなよ」と思わずにはいられないのである。
    行天だって、イメージは松田龍平さんなので、決して「おっさん」ではないのである。
    まあ、、おっさんと思いたいなら思ってもいいんだが。やってることは、なかなかに「ワカモノ」である。

  • 三浦しおんの直木賞受賞作、「まほろ駅前多田便利軒」の続編第三弾。

    まほろ市を舞台に、町の便利屋を営む多田と雇われの行天、このふたりを取り巻く人々の騒がしい日々が描かれている。
    一作目、二作目とたくさんの個性的・魅力的な人達(またの名を“愛すべき変わり者”)との出会いと交流を重ねながら、ふたりの関係にも変化が訪れ、今作でひとつの区切りを迎える。

    「まほろ駅前」は、いわば“家族でもない老若男女との程良いくされ縁小説”だ。

    そして私は、人が生い立ちや家族の中で負った傷と痛みを、新たな出会いと関わりの中でやわらかく回復していくこの手の話が、どうしようもなく好きだ。

    人生で一度も傷を負わない人間なんて、多分きっといない。
    そしてひとたび深手を負えば、いくら見ないようにしたって、いくら時間をかけたって傷跡は残る。それでも、その傷跡の痛みが癒され、それを穏やかな気持ちで撫でて懐かしむ日が来る。そう信じて歩めることこそが、人に与えられた静かな希望ではないか。
    静かに静かに、少しずつ。新たに出会った人達が吹きかけてくれるやわらかい吐息を受けて、自分の指で祈りながら、撫でるように傷を癒す。
    自分も多少、多田に似た経験をしたからなのかはわからない。でも、そんなことを感じた。

    家族との哀しい別れを経て、今作で新たな女性との1ページを開いた多田が、自分の幸せが図々しい、と自嘲する。
    行天が、俺はそうは思わないと言い、再出発を静かに喜ぶ。
    本当に、人の心に寄り添うとはこういうことなのだと、心で泣いた。

    最後はこれまで紡いできた便利屋ファミリーが一堂に会しての、ビバまほろ大団円。
    とても温かい気持ちが満ちる。
    そして、幸せを追いかけていたのに、幸せが訪れたことへの一抹の寂しささえ感じさせるラスト。
    三浦さんは徹頭徹尾、とにかく優しい。

    三作を読んで思い出したのは、bump of chicken のrayの歌詞。

    「あまり泣かなくなっても 靴を新しくしても 大丈夫だ あの痛みは 忘れたって消えやしない」

    あと、本作がハマった方は、ぜひ「3月のライオン」も読んで欲しい。

    新しい年も、便利屋事務所に程々にトラブルが舞い込むことだろう。
    多田と行天には、まほろのみんなを巻き込んで(むしろ巻き込まれて?)、町を賑やかに走り回っていて欲しい、と切に願っている。

  • 番外地のフリを丁寧に一つ一つ拾っていく内容。ドキドキ感はないが安心して最後まで読めました。ラストは予定調和な感じ。

  • 三浦しをんにオッサンやジジイを書かせたら天下一品。

  • 狂「想」曲ではなく狂「騒」曲であることに途中で気づいた。笑い有り涙有り、エンディングは新喜劇か思えるほどw。ドタバタであるように見えながらも表現はとても素敵である。決して難しい言い回しではないけれど、言葉の組み合わせがドンピシャって感じる。 行天の言葉「正しいと感じる自分が本当に正しいのか疑う」が印象深い。 凹んだ時になんとなく再読したい1冊だ。 ★★★★

  • 挿絵がついているというのに、瑛太と松田龍平で脳内再生余裕です。多田と行天が過去の呪縛から逃れてもいいのではないかと思えるようになっただけでも本当に良 かった。行天とはるの関係を血縁神話に囚われた親子としてではなく、人と人とのつながりの結果で救われたり変わることができるとしているところが感動的。行天 みたいなろくでなしな生き方に憧れる。冷静になって考えてみると、ヤツが許されている理由の何割かは ※ただしイケメンに限る なわけだが。

  • もはや私にとっては内容は二の次なのかもしれない。
    「多田も行天も相変わらず元気そうで良かった!」
    きっとそんな気持ち。

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まほろ駅前狂騒曲の内容

まほろ駅前で起きる、混沌と狂乱の大騒ぎ!
まほろ市で便利屋稼業を営む多田と行天。ある日多田は行天の元妻から子供を無理やり預けられて困惑する。待望のシリーズ第3弾。

まほろ駅前狂騒曲の作品紹介

2013年に瑛太、松田龍平のコンビでテレビドラマ、映画化された「まほろ駅前」シリーズの第三弾!
前二作に引き続き、今回もまほろ駅前周辺で事件が起きます。

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