ネットで「つながる」ことの耐えられない軽さ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900100

作品紹介・あらすじ

メール、ツイッター、FACEBOOK・・今やネットを介したコミュニケーションを避ける事は不可避であり、紙媒体や活字は消えゆく運命となっている。ネットによって「軽く」なった言葉が生み出す、政治家や官僚たちの暴言、失言の数々、そして、ストーカー殺人や無差別殺人の原因さえ作り出す「出会いサイト」や「掲示板」。そんな風潮の中で、はたしてネットを通じて「つながる」ことは本当に必要なのか。ネットで人間の孤独な思考は深まっていくのか。あえて「つながらない」ことに価値を見出す選択肢はないのか。「暴走老人!」の著者が放つネット文化、ネット言葉に懐疑を抱く中高年待望の書。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルと中身はそぐわない。書きことばとネットことば≒話しことばの3つのことばを軸にしたエッセイです。「つねにおなじ『画面』でさまざまなことばに接するうついに、ことばにおける『私』と『他人』という壁が崩れているのです。簡単にいえば、ネット上で出会うことばはすべてみんなのものであり、私のものでもあるという感覚です。私と他人のことばの壁が曖昧化して、私のことばにたいする所有意識もやはり曖昧化する」と書かれた第四章は一読の価値ありだと思います。よくある「ネット隆盛による思考力低下」への単純な嘆き本ではないです。

  • 本の題名と内容がいまいちマッチしていないようで、前半は特に著者の意図が見えない構成。
    3章、4章になって、日本語の危うさ、ネット言葉の危険性が浮き彫りになってきて、書き言葉の大切さが伝わってくる。

  •  うーん………書いてある事に齟齬は無いのだけれど、思考は理解できるんだけれども、私にはタイトルの「つながる」がイマイチ見えなかったなぁ。
     コミュニケーションというよりは、ネットでは、まとまった文脈の伝達に欠けるという趣旨ではないかと感じた。
     しかしながら、結論の出る話でもないし、出されても納得は出来ないだろうから、いろいろな事を考えるきっかけにはなった(本の内容とは全然違うけどね)。
     そういう意味では興味深い本でした。

  • ネットという時代を迎え、そのことに戸惑いを隠せなく、違和感を募らせた想いを書かれているように感じました。序章ではその違和感というものを具体例を挙げて書かれています。その後、現代に至るまでに言葉に何があったのかを、過去のグーテンベルクの印刷革命を挙げて、著者として納得のいくように書かれています。ここの部分は、社会の基礎部分がどのように作られていったのかがわかり、面白かったです。そのあと、現代の言葉に何が起こっているのかを、ネット言葉と書き言葉の違いを挙げて書かれています。話し言葉でもなく、書き言葉でもない、新しいネット言葉というものについて考えさせてくれます。
    最後に、言葉が自己の基礎となるものであるがゆえに、内省を促す書き言葉を捨てる事ができないし、それが生きる力であるがゆえに「怖いものは何もありません」というセリフを書かれています。この言葉は個人的にも勇気付けられました。

  • 文字を記すという行為にかかる時間と労力は、言葉を声として発するよりはるかに大きく、かつての社会では、書き言葉は話し言葉に比べ圧倒的に力を持っていた。ところが、デジタル技術により誰もが日常的に文章を発表できるようになると書き言葉の権威は急速に失墜する。言葉のデジタル化は、検事による証拠改竄を引き起こし、政治家の言葉を幼稚化させ、失言を繰り返させる。ネット時代の到来により言葉の根幹が揺らいでいる。国家を揺るがし経済を揺るがし社会を揺るがしている。そんな中にあって、大切なのは自己を支える言葉の軸足をどこに置くかであり、自らの立ち位置のありようである。

  • 大きな時代の流れは変えられない。

  • ○ネットによる本離れ・活字離れを前提に、今後の「日本語」の進む道を危惧した本。
    ○一面では正しいと思うところもあるが、全体を通じて、少し前時代的な古さを感じた。

  • 音声言語は時間操作という点で発信者に有利で、文字言語は受信者に有利

  • 話しことば、書きことば、ネットことば.それぞれの歴史的な変遷と特徴を詳細に考察してきて、最終的には「ネットことば」の軽さを憂いている.また「絆」の欺瞞性も指摘している.解決策として提言しているのは、「書きことば」を体現している「本」を読んで、自分自身の考えを自分自身で把握することの重要性だ.まさに同感だ.

  • ネットばかりやってるとバカになるという著者の指摘は間違ってはいないと思うのだが、だからと言って生きていけないという事はないし、新聞過信もどうかと思うし、本ばかり読んで思考している人間よりも、コミュ力高くオシャベリが上手な人間の方が生き残る可能性は高いと思う。自分なんてモノは捨ててしまってバカになった方が生き易いだろうし。
    但し、内省は減るし、他者依存的にはなるので、アイデンティティーに問題が生じたり、お友達との関係が壊れたときにイッキにヤバクなる可能性は高まるけど、そもそもそんな事気にしない人の方が多いのでは?まあ生き方の問題であり、良し悪しはないかな。
    が、言語が試される受験勉強をせずに、AO入試で大学入ったリケジョが思考もせずに言葉を軽視し、コピペで人生乗り切ってきたというのは、象徴的な事件だなとは思う。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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