男ともだち

著者 :
  • 文藝春秋
3.68
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本棚登録 : 1695
感想 : 259
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900667

作品紹介・あらすじ

関係のさめてきた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。仕事は順調、でも何かが足りない――29歳、イラストレーター神名葵。八年ぶりの電話を掛けてきた大学の二歳上の先輩・ハセオはいつも馬鹿笑いしてばかりの、女の切れない男だったが、決して神名には手を出さなかった。男ともだち。そういう呼び名以外はあてはまらない。でも、誰よりも居心地のいい相手だった。同じ種族を本能的に求めるように神名は彼と一緒にいた。男ともだちは恋人ではない。彼には親密に付きあっている女性たちがいるだろう。でもひょっとすると、男ともだちは女たちにとって、恋人なんかよりずっとずっと大切な相手なのではないか。いつまでも変わらずに、ふとした拍子に現れては予想もつかない形で助けてくれる――。29歳、そして30歳。仕事と男と友情の、熱くてビターな日常を描いた傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 最近気になっている千早さん
    図書館で順番を並んでいたら
    目に入ってきて思わず借りてました



    男ともだち。
    レビューがなかなか難しい。


    ハマる人にハマりそうな作品。


    私は共感はできず
    俯瞰して見ている感じで読みました


    あんな都合のいい男います??笑


    ハセオが近くにいたら
    ガッツリ頼ってしまいそう。


    でもそうしてしまったら
    もうハセオはハセオじゃなくなってしまうのか。

    私はクロエをもらう方の人間なのかな。。


    というか彰人側に立って考えてみると
    ちょっと辛すぎる。。


    ハセオ脅威すぎる。。



    でも共感できた人は
    めっちゃハマりそうー!!



    面白い!!!って感じじゃないけど
    なんかずっと浸っていたいような空気感というか。
    ハセオと神名のやりとりを見ていたいというか。

    不思議な作品でした。




  • 主人公は神名葵、29歳…恋人と同棲中の身でありながら、妻子持ちの医師の愛人、仕事はイラストレーターである意味順調ではある…。そんな神名のもとに大学時代の男ともだち、ハセオから突然連絡が入る…。大学時代から、ふたりとも恋人は切れることなくいたが、男女の仲には決してならなかったふたり…。そんなふたりが8年ぶりに再会する…。

    男ともだちっていいなぁ~特にこの作品に出てくるハセオ…!神名がさみしい時、困ったときにには颯爽と現れ、元気づけてくれる…!でもでも、こんな関係が実際に成立するのか?そう考えると難しいのではないかと思ってしまいます。性別関係なく、友達は大事だけれどそれより家族やら恋人を優先するんじゃないかと…そんな風にも思えてきて(汗)。今後もこのふたりの関係が続くものなのか、興味があります。

  •  恋人である彰人は、大事にしたい人。愛人である真司は奪う人。そして、男ともだちのハセオは与える人。新進イラストレーターである主人公の神名葵は、3人の男性の間を渡り歩くことで精神のバランスをとりながら、また貪欲までにそれを糧にして、自身の孤独や苦しみを、彼女が信じてしがみつくことのできる唯一のものである「仕事」にぶつける。
     また、主人公の「神名葵」は、恐らく作家「千早茜」の分身。主人公神名葵の、「たとえ、どんな姿になったとしても、焼け野が原にたったひとりになってしまっても、光る星影や登る太陽に美しさを見つけて立っていられる自分」であろうとし、「何を感じようと私にとっては正解だ」とする姿からは、「自分の脳内の景色を物語にして、全部誰かの脳に入れたいという欲がある。わかってもらうことや伝えることをあきらめきれないから、小説を書いている。」と語る作家千早茜自身の、作品作りに対する強い信念や覚悟が感じられた。

  • 男女間の友情
    桜と雪
    京都
    ロイヤルミルクティ
    クロエの香水
    眠る

    ハセオのような存在‥ありだと思う
    寝不足の気だるさとか変な高揚感を感じる作品
    図書館本

  • 男女比8:2の大学時代を過ごした私にとっては大共感の作品だった。
    いつも手を伸ばせる距離にいて、そばにいて安心できる存在。この関係性は恋愛というのか、友情というのか。兄妹という家族愛に近いかなとも思う。
    ひょんな弾み、きっかけで、いつでも一線を越えてしまうことができるこのギリギリの二人の関係が、読んでいてドキドキ、ゾクゾクして、一気読み。
    千早さんの作品の中でもお気に入りの1冊になった。

  • 彼氏、愛人、夫、知り合い、女友達、
    そして男ともだち。そういった様々な人間関係と、女性が仕事へ向き合う姿勢が詰まった一冊だったと思う。

    ●どんなに信頼が築けていると信じていようと、人間関係は不確実な気持ちの上に成り立っている。

    ホストのローランドさんが、男女の関係はグラスのようだと表現していた。最初はみんな楽しみたいと思っていて、グラスを割るつもりで乾杯する人はいない。しかし、乾杯してグラスが割れてしまうことがある。

    人間関係はいつ何が原因でヒビが入るかなんて分からない。ちょっとしたことで割れてしまうかもしれない危ういもの。

    大切な人をうっかり失ってしまわないように、神名とハセオみたいにどういう関係性でありたいかをしっかり自分の中で考えられるようになれたらいいなと思った。

    でも、美穂さんや露月さんは大切なものを失ってしまったからこそ、余裕のある美しい女性になったんだと思う。

    人間は、たぶん何かを手に入れて失って、それを繰り返しながら、その時々に自分に必要なものを理解できるようになるのかなと思った。

    また何が新しいものを得て、今よりもっと魅力ある女性になった時に、必ず読み返します。



    (それにしても、ハセオのような、どうしようもないけど甘く苦い雰囲気のある男性に女性は惹かれてしまいますよね、、、)

  • 151回(2014年上半期)直木賞候補作。
    前に「あとかた」という短編集を読んでいます。

    神名(かんな)葵は、29歳のイラストレーター。
    絵本作家を目指し、絵本で賞をとったこともあるので、仕事はまあ順調になってきた。
    だが本当に描きたいのは何だったか、やや見失いかけている。

    おだやかな性格の恋人の彰人とは同棲して5年。
    平等な関係を築いていると思っている。
    ただし、医師の真司とは不倫関係にあった。もともと奔放なカンナは、身体だけの関係も多かった。同棲相手には気づかれないように気をつかっているつもり。
    性格に問題ありの傲慢な医師とは、冷めかけてはいるが、強引な相手との方が合うのかもとふと思ったりもする。

    そんなとき、大学時代の2年先輩だったハセオとの間に、7年ぶりに連絡が復活。
    互いにいつも恋人は別にいたが、信頼できる男ともだちで、部屋に転がり込んで腕枕で眠ったことも何度もあるという間柄だったのだ。

    ‥おいおい?
    何を読まされているんだろうと、途中で一度やめました(笑)
    いやでもまあ~と読み進めると、やはり同棲相手とは破綻。向こうの気持ちも離れているのに気づかず、バッサリ切られるので、ああそういうことかと。
    カンナが自分のおろかさに気づかされる面もあります。

    カンナが困っているときに登場して助けてくれるハセオ。
    ハセオがやはり都合がよすぎるキャラですが、まあこういう人がもしいたら‥と、読んでいられないことはない。
    互いにモテまくりで、どっちも恋人にしたいタイプと違っていたら、肉体関係に及ばないということはあり得るでしょう。好意を抱いた相手全員と関係持つわけじゃないから。
    ただ、友達というよりも、この繋がりは兄妹的かな。
    心の奥に抱えた空洞(異性不信?)が、同類という意識を持たせていたという話のよう。

    30の女が一番悪いというのをいぜん持論にしていたことを思い出しました。
    大人しくしていてもダメだと考え始める年頃。
    恋愛も仕事もむちゃくちゃになっちゃうこと、あり得るんですよ‥
    タイプは違うけど、そりゃ若い頃はばかだったなーというか、予想と違うふうに転がっちゃうことってあります(苦笑)
    そういう意味では、読んであれこれ考えるのも、面白い作品かもしれません。

    このヒロイン、イラストレーターとしては、学生時代から作品が溜まると何かと展示をしていたというのだから、かなり真面目で果敢なところもあるじゃないですか。
    やむにやまれぬものが内面にあるのなら、男はこやし?的なところも‥
    成長過程の、けっこう華やかな時期だったということかも。

  • 女性だったらハセオのような男性がいてくれるのがとっても理想なのでは。
    人によってやっぱり違うかもしれないけど、私はそうだな。
    神名が羨ましい。
    いつも見守ってくれてる。何かあったら何も言わずに支えてくれる。
    くぅ~羨まし過ぎる~~

  • 今の気分にぴったりな本でした。

    ハセオみたいな人を嫌いな女の人いないでしょう。
    気怠げで悪い雰囲気を纏っていて、ダメだと思いながら何処か引かれてしまう。
    そんな人に女心はくすぐられるものです。


    男ともだちって非常に難しい。

    大学2年生の時、ずっと一緒にいた女の子と関係が崩れて居場所をなくした私を救ってくれた男の子がいました。
    本当に苦しい時に出会って、たくさん支えてもらいました。
    きっと彼なしでは大学を卒業できなかった、そう思うくらいです。

    授業を受けるのも、お昼を食べるのも、勉強をするのもずっと一緒でした。
    よく電話もしました。
    彼には彼女がいたので安心して甘えていました。
    私にとっては友だちで、それ以上の気持ちはなく予防線も張っていました。
    それでも近づきすぎてしまったようで、彼の気持ちは私の知らないところで揺らいでしまいました。
    ずっとあの頃の気の置けない関係ではいることはできず、勉強は一緒にしていたけど私から距離を取るようになりました。

    いまでもたまに彼の気まぐれで電話がなります。
    先日は久しぶりにご飯に行きました。

    彼は日本を飛び出していく人だと思います。
    私なんて目もくれなくなるかもしれません。
    彼が私を気にかけてくれる限りは、こんな関係もありなのかな。

  • 二十九歳、神名葵は器用だ。
    何年も同棲している彼には内緒で、妻子持ちの医者と浮気をして股を開いている。さらに大学時代のサークルの男ともだち、ハセオには彼以上に心を開いている(股は開いていない)。
    三人の男を使い分ける神名は、イラストを描く仕事も器用にこなす。相手のニーズを読み、自分が描きたいイラストではなく、相手が必要としているイラストを納品する。

    給料をもらうために毎日同じ職場に出社して、同じような毎日を過ごす会社員からすれば、クリエイティブで刺激的で羨ましがられることも多いが、神名は暴力的な焦燥感に襲われることもある。
    何もしていない、何もできていない、何も遺せていない。こなすだけの仕事もいつまでくるのか、保証はない。

    同棲していた彼とは衝突して別れ、不倫を楽しむ医者と過ごそうとしたら、偶然居合わせたハセオが神名を連れ出した。ハセオは都合のいい奴で、身体を求めてくることもない。同じ部屋に泊まっても、神名とハセオは男女の関係にはならない。

    好きなことを好きにできるようになるために生きている、自分の武器は自分だけ、と思い出した神名は新たな環境で自分のやりたい表現を続ける。
    大学時代の友人、美穂は神名のことを不器用だと言った。神名も美穂も口に出して言わないことはある。
    ハセオと神名もわかり合ってるからお互い言わない。秘すれば花、だ。

    ---------------------------------------

    同棲していた彰人も、浮気相手の真司さんも、都合のいい男ともだちのハセオも、みんな言ってしまえば神名のための存在で、必要がなくなればいなくなっても構わないのだ。
    好きなことを好きようにやりたい。
    浮気相手とのどうでもいいようなセックス、衣食住を保証してくれる保険としての同棲相手、話を聞いてくれる男ともだち。
    彼らだって同意しているようなものだし、許しているし、許容している。神名が自分勝手なわけじゃない。
    そうやって彼らの犠牲の上で、神名の表現活動が充実するのだ。
    倫理的には問題アリでも、バランスが取れている関係性で同意の上なら問題ナシ、ということかな。

    言いたいことは山ほどある。神名の行動にもハセオの態度にも、それちょっとおかしくないか、と言いたい。
    でも、ここには書かないで心のなかに留めておく。だって、秘すれば花だから。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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