後妻業

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900889

作品紹介・あらすじ

「色で老人を喰う」裏稼業を描く戦慄の犯罪小説 妻に先立たれた後期高齢者の耕造は、六十九歳の小夜子と同居しはじめるが、夏の暑い日に脳梗塞で倒れ、一命を取り留めるも重体に陥る。だか、裏で小夜子は結婚相談所を経営する前科持ちの男、柏木と結託していた。病院へ駆けつけた、耕造の娘である尚子、朋美は、小夜子の本性を次第に知ることとなる――。結婚相談所の男と、結婚したパートナーと、死別を繰り返す女につきまとう黒い疑惑。恐るべき“後妻業”の手口と実態。「黒川節」炸裂、欲に首までつかった人々が奔走する。犯罪小説の手練れが、身近に忍び寄る新たな「悪」を見事に炙り出す。『カウント・プラン』をはじめとするコンゲーム小説、『文福茶釜』などの美術ミステリー、『悪果』などの警察小説、そして直木賞を受賞した『破門』をはじめとする桑原&二宮の「疫病神」シリーズなど、関西を舞台にした数々の作品で、オリジナリティに溢れたテンポある会話と、リアリティに満ちた描写、そして一気に読ませるストーリーテリングの妙で、他の追従を許さない犯罪小説の第一人者・黒川博行による直木賞受賞第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 生き物は
    どうしたって他者の命を奪って食わねば
    生きてはいけぬものだけど、
    同じ種同士の
    食い合い(共食い)にはさすがに
    (わっ…!)
    と、目を覆いたくなってしまう。

    同じ種族だからこそ生まれる
    絆、愛情、信頼、尊厳…
    なんてもんは命の前では取るに足りないものなのか。
    そうなんだろうな。

    ところで後妻業なんて職業(?)本当にあるのかな。
    資産を持ってる老人を狙って後妻に入る。
    で、その老人が死んだら遺産を相続する、なんてお仕事。
    人を食いモンにして生きる様は、まさに共食いの様だった。

    死んだ耕造の妻の座に収まっていた小夜子は
    いわゆる後妻業のプロ。
    耕造の世話や家事なぞ何一つしない事に
    罪悪感など感じる様子も無く、
    ただひたすらに
    (はよ死ね。はよ死ね。)
    と、金が手に入る事にしか興味の無い女。

    人を食いモンにする彼女の姿は
    目を覆いたくなる、というより
    腹たって腹たってもうーしょうがないほどの毒婦として著者が描いてくれたから
    耕造の死後、
    正体を現した小夜子に2人の娘が突きつけた挑戦状には
    (よ~しっ!!)と、思わず熱くなってしまったが、
    その後、娘2人はほぼ登場せず。

    法律を巧に利用し、
    騙された方は泣き寝入りするしかなかった抜け目の無い悪事の牙城を崩壊できたのは、
    やはりそれなりの人物。
    私利私欲の為に悪に立ち向かって行くヒーロー、
    なんて
    キレイごとじゃあ片がつかない感じが、リアルで面白かった。

  • 何故か、この本のレビューを書いてなかった。

    読後、結婚相談所で紹介された老人を次々に殺害して財産を増やしていくなんて、恐ろしい世界だなあ、でも不思議とリアリティがあるなあ、現実の世界であってもおかしくないなあ、と思っていたが……。
    まさか、実際にこんな婆さんが存在するとは。

    先週からのニュースを見てびっくりです。
    六人?か、死んだ相手?
    しかも結婚してない相手に対しては“財産贈与の公正証書を作成”をして遺産を貰う方法は、まさにこの小説の内容と同じやり口。
    だとすると、まだ警察が解明できていない青酸化合物の入手経路は、結婚相談所に共犯者が絡んでいるんじゃないの?
    まあ、そこまでは小説通りじゃないかもしれませんが。
    それにしても、黒川博行さん、すごいです。
    この悪女のニュースに関心のある方は、是非この小説を今すぐ読むべし!!

  • 「後妻業」を読んでいる。こんな商売が本当にあるのかと驚いたのは無理もない。
    年増の女が、年寄りの財産目当てで男に近づき悪事を働き、表向きは結婚相談所で裏稼業はそれを仲介する業者と結託し金を巻き上げる。
    この小説について百田尚樹氏は、一頁目から面白いとは良く言ったものだ。本当に熱中してしまった。でも男向けの大人の小説かなっとふと思う。
    BS11のTV番組「宮崎美子のすずらん本屋堂」のゲストに黒川博行氏が出演していた。司会の宮崎美子は、本当にこんな商売があるのか?と著者に質問していた。
    黒川氏は創作で書いたと言っていたが、実際に裏社会でありそうな物語、リアルでスリリングな設定は読者を惹きつける要因かもしれない。とにかく面白かった。
    一気読み。この作品は売れますよ。

  • 69歳の小夜子は、91歳の男性の後妻に入る。ほどなく夫は脳梗塞で死去。そして遺産を相続する。小夜子は、結婚相談所を経営する柏木と結託して関係を結んだ何人もの老人を“ごく自然な形で”死に追いやり、そのつど莫大な財産を手に入れる“後妻業”を続けていたのだ。
    「爺を騙すのは功徳や。たとえ一月や二月でも夢を見られるんやからな」という柏木のセリフが恐ろしい。独り身の寂しい男は、優しく接してくれる女性に簡単に騙されてしまうという……。
    やがて、金の匂いを嗅ぎつけた人間がこの事件に集まってきて、物語は加速度的に転がっていく。
    最後に誰が何を得たのか。ややあっさりとした結末にも感じたが、ルポルタージュのような圧倒的なリアリティがあった。

  • #3582ー1ー13

  • 悪者しか出てこない話だった。最後が駆け足過ぎて、無理やり終わらせた感じがした。

  • 小夜子と柏木のテンポのいい会話が恐ろしいとか腹が立つとかよりコミカル。
    小夜子には死んでほしくなかったなー。小夜子の死以外にも最後の方の展開は好みじゃなかったけど面白かった。
    著者の経歴に京都で美術の先生してたとあったし、表紙の絵は同じ名字の黒川さんの手によるものということで奥さんか娘さんなのかな?美術の先生という経歴が、作中で小夜子の餌食になる元教師の設定がリアルなものに思えて面白かった。建築というか内装の話なんかが多いのもなにか関係あるのかな。
    あとやたら「ショートカット」の女性が多いんだけど、こういう年齢の男性が言うショートカットってほんとにショートカットなのか?ただ単に短いって意味で「ショートなカット」なんだと思ってないか甚だ疑問。
    「きりっと冷えたビール」やパスタやアイスコーヒー、お寿司、ベトナム料理などなどいろんなものが食べたり飲んだりしたくなった。神経図太いな私

  • 京都の資産家夫連続殺人事件が話題になったときにこの本が紹介されたので、図書館に予約、7か月待ってやっと読みました。

    黒川博行さんて、京都府立芸術大学美術学部彫刻家を卒業、高校美術の先生だったそうです。
    そういうかたがこのような小説を書くって、いったい何があったのでしょう?

    思い出したのはギリシャ彫刻。その多くが失われ、ローマン・コピーによってその姿を想像することができます。
    ローマン・コピーは大理石ですが、ギリシャ彫刻の多くはブロンズでできていたので、戦争のときに溶かされて武器にリサイクルされることもあったそうです。

    彫刻を勉強されて美術を教えられた黒川博行さんが、こんな悪人ばかり出て来る暴力的な小説を書く人になったことに、共通するのではないでしょうか?

    黒川博行さんが高校教師をやめて小説家一本でやっていくことができたのは、奥様が中学美術の先生だったおかげではないでしょうか。
    しかも表紙の絵、奥さんが描いたものです。
    このご夫婦は、京都府立芸術大学で知り合い、学生結婚したそうです。

    今こうしてご主人の本が売れて、奥様にはお金が入ると同時に、彼女自身の作品を世に公開する幸せも得ているのです。

    この本は『後妻業』以外にもあまり美しくない男女関係を描くと同時に、黒川さんの理想の夫婦っぷりも、実は披露しているのです。

  • 後半の疾走感は流石の黒川作品。大変楽しめた。

  • 内容が面白くてスピード感もあり、あっという間に読み終わった。
    後妻業というのはありそうな話。家族にしてみればこんなに悔しいこともないだろう。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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