さよなら神様

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901046

感想・レビュー・書評

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  • 「犯人は○○だよ」俺、桑町淳の前で神様は宣った。……凡ての話がこの書き出しで始まる連作短編集。前作の鈴木ってこんなに格好良かったっけ? なんか地味~なアリバイ崩しの話が多いな(2話目なんてタイトルそのまんまだし)、仮寓とか肯するとか小五で使うか?? などと野暮な感想を抱いていられたのも前半三つまで。後半三作の怒濤の展開そして驚愕(!)のラストはまさしく麻耶節。各話のタイトルに捻りが無いので、さほど派手なエピソードは無いのかな、と不安に感じていたが、そんなものは全くもって杞憂でしか無かった。またもやったか!
    メルとは違った意味で無謬の存在"神様"の託宣を冒頭に据えることで、当初は倒叙の一変種みたいな読み方を読者に強いているのかなと思ったが、やがて"神様"の機能を利用する輩まで現れ始め、最終的にあのラストに収束するという凄まじいプロット。真の悪魔は作者様だよね絶対。
    あと、ラス前の記号に舞城を想起した方が多かったが、自分が思い浮かべたのは流水大説。舞城は『九十九十九』書いてるし、両者とも確実にポスト麻耶世代だよね。総裁が遂に!って感じで微笑ましかったな。

  • 神様の宣託によって真相が決定付けられ、そこに向かって推理を重ねて行くといった、一風変わった倒述ミステリ6篇で構成された短編集。
    ただ、短編集と言ってしまうには、(とある仕掛けも相成って)個々の話の繋がりが深い気はするが…

    ベストはやはり「バレンタイン昔語り」
    神様設定を最大限に利用して、今まで見てきた世界を根底から覆してしまうような真相は「さすが麻耶雄嵩!」と叫びたくなるほど。

    タイトルこそ「さよなら神様」となっているが表題作を読めば分かる通り、この先も神様シリーズは十分続く可能性があるので気長に待っていようと思います。

    「化石少女」は今年中に発売されるのかな…

  • ある意味本格という中で、人間を描いたのかなあ…それも恐ろしく醜悪な仮面の下を。そして、神様は答えしか言わないからこそ、人間はロジックで補強する。ある意味麻耶だあとしかいいようがない。読んでないけど、ある意味麻耶版イニシエーションラブ?

  •  帯に「神様探偵」って文句があるけど、やつは神様であって、神様は神様以外の何ものでもないから帯の文句考えた人は分かってないな、って思ったけど、「衝撃的な展開と後味の悪さで」っていう文句も並んでたので許します。許します(大事なことなので二度(ry

    「犯人は○○だよ」
     ミステリーランド「神様ゲーム」の続編。神様、鈴木太郎、再び。
     「神様ゲーム」ほどのグロさ、衝撃さはない、けれども、全体的な雰囲気の悪さ(褒め言葉な)は似たり寄ったり。六本の短編集。短編集っていっても時間は繋がってるので一つの大きな長編とも読める。中心は小学五年生の子たちなので、このあたりは前作と同じ。ただし神様鈴木の外見スペックが跳ねあがっててイケメンになってたのにはふいた。
     個人的には「ダムからの遠い道」「バレンタイン昔語り」が好き。前者は、ラストになるほどな、と納得したから。後者はラストにそうくるか、と驚いたから。半分くらいはちゃんと現実的に解決しているんだけど、半分くらいは犯人の名前と推定犯行過程が提示されただけで、これが正解です、っていうのが読者に(登場人物たちにも)提示されない系。唯一神様だけは全部知ってる、と。
     主人公の淳ちゃんね。一人称俺の女の子ね。ほんと、何もできないのね、この子。全体的に何もできてないよね。頑張ろうとしているのは分かるんだけど、でもそこがもしかしたら周りの男の子たちからは魅力的に見えるのかも。俺が助けてやらなきゃ、的な? 先生も含めてね。男と逃げたっていうお母さんが美人だったんだから、淳ちゃんも可愛いいんだろうね。だから最後の方「悪魔」っていう悪口はある意味あってるのかもしれないなって。本人にその気があろうとなかろうと周りを狂わせる、的な意味で。
     そんでさほんと、ラスト、なんだ、リア充自慢か。あの小学五年の数ヶ月間はなんだったんだって思ったわ。いや、いいんだけど。面白かったけど!
     抜粋。神様のお言葉より。

    「人の不幸に大した魅力などないよ。そう思っているのは、地球上では人間だけだ。(後略)」

     ひとは己を特別だと思いたがるよねってさ。


    追記。ちょっとふと思った。
     神様鈴木、全知っていうけど、彼自身の行動すらも予測できるのかな? 自己言及。彼が見る未来って、彼が口を出した未来なのかな? その未来って一通りしかないのかな。たとえば淳ちゃんから質問を受けて、答えないと選択したとしても、それはそう決まっているだけのことなのかな。自由意志と決定論の議論を神様鈴木に聞いてみたい。

  • 設定が小学生とは思えないほど、思考力、行動力が大人びでいる。小学生の周りでこんなに立て続けに人が死んでいくかな?って感じ。
    でも、恋愛感情で殺しちゃったり、ラストの主人公の「まっ、いっか」とうやむやにしちゃうあたりは、恋は盲目といいますか、幼さが際立つ終わり方で、妙に納得してしまった。

  • 小学生らしからぬ言動に心で都度ツッコミ入れてしまうし、フラフラふわふわな主人公にイライラするし、種明かしがされても事実なのかという点でも後味の悪さでも爽快感がなく、で読んでいて疲れた。
    淳が女の子なのは1話時点でなんとなく察せられるが、それがトリックに利用されるでもなく普通に話の途中で明かされるし…

    前作は後味の悪さが良い意味で衝撃的だった。長編なのでモヤモヤ×話数という負荷がないから良かったのかも。低学年向けレーベル故なのか、キャラ達も今作よりはちゃんと小学生をしていた気がする。

    鈴木という神様が冒頭に犯人を宣っちゃう点、上記のように現実味?物語性?が低い点、ミステリとしては純度が高い作品と言えるのだろうか…(感情に左右されずに論理だけ追える)。分からないけど。作者さんもワザとやってるところがあるのかなー。
    とりあえず、前作の方が私は好みだ!

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00530847

  • 「犯人は〇〇だよ」。鈴木の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。衝撃的な展開でミステリー界を震撼させた神様探偵が大復活。



    自称「神様」の鈴木くんは、転校前に起こったリコーダー紛失事件を解決したり遠足の列にトラックが突っ込んでくる事故を未然に防いだりして「神様」の地位を築いてる。それもイケメンの小学生だから、いつの世にもいる取り巻きの女子も多い。


    一方、主人公の桑町淳はクラスからも少し線を引かれていて、あまり友達もいない。幼なじみの小夜子ちゃんと市部くんぐらいしかいない。あるとき、大好きな担任の先生が殺人の容疑がかけられていることを知る。犯人は先生ではないと信じている桑町。そして、少年探偵団は真犯人を探す。まぁ、その前に「神様」に犯人の名前を聞いてしまう。


    このパターンで桑町の周りで事件が起こっていって、桑町は「神様」に犯人を教えてもらう。「神様」は、犯人の名は伝えるが、「なぜ、その人物が犯人なのか」は教えてくれない。それを少年探偵団は推理していく。


    結局、この犯人は伝えれれる→少年探偵団が調査する。しかし、小学生の力では限界がある。そして、事件の真相はモヤモヤして終わる。この繰り返しだった。少しもスッキリしない。桑町は、市部などにもう神様と関わるなと再三の注意をされるのに、事件のたびに聞きに行って、傷ついての繰り返しで、まるで暴力振るう彼氏に依存する彼女かと言いたくなった。



    もうモヤモヤするし、スッキリしないし、主人公にもイライラするしであまり好きではなかったかなぁ。もっとスッキリする推理劇が起こるなら面白かったかもしれない。シリーズ物らしく、続編から読んだからなのか?


    2023.7.24 読了

  • 犯人は最初に明かされるのに、謎はうやむやになったままの新しいタイプのミステリだった。余韻を楽しむのが良いかもしれないが、物足りなさを少々感じた。

  • 読ませる。
    いろいろ気になるし、引っかかるのにとにかく読ませる。これは面白いとしか言えない。
    すごい。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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