ほんとうの花を見せにきた

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著者 : 桜庭一樹
  • 文藝春秋 (2014年9月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901275

ほんとうの花を見せにきたの感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んだ桜庭作品はそんなに多くはないけれど、ベスト5には入る勢いで読み終えてしまいました。好きです。

    テーマは愛と死。家族。そして姉と弟ら辺かな。

    何も知らない、若い、未熟ということは恐いもの知らずで、残酷なことでもある。経験する、知ることによって成長し人として成熟していく。生きるって継続していくこと。心の火を消さずに灯し続けることなんだと…しみじみ思いながら、久しぶりに居間で号泣状態になった本。

    ムスタァに救われ、洋治も合わせて3人でひっそりと暮らす梗。思春期になり、自分の将来(行く末)を知り自暴自棄に…。そして行動の歯止めがきかず、どんどんエスカレートしていってしまう。そして「小さな焦げた顔」で梗ちゃんは、取り返しのつかない大きな罪を犯してしまう。

    「ほんとうの花を見せにきた」の茉莉花はマツリカ(茉莉花・ジャスミン)の花のように散ってしまう。哀しいけれども美しいタイトル回収に、ほぉ…とため息が出た。

    類類がなぜあんなにも冷酷無慈悲なのか、心の傷が垣間見られた「あなたが未来の国に行く」

    出来ることならば、ムスタァと洋治の出会いら辺を、もっと詳しく。類類たちの長旅の話も見たかったなぁ…。続編とか出ないかな~と拝んでしまう。

    「桜庭一樹短編集」の中の「五月雨」という世界観に似ているので、「五月雨」借りてきて再読しようと思う。

    こんなに泣きながら読んだのは久しぶりだと思う。桜庭さんやっぱり大好き!

    だけど私…代表作と言われている「私の男」「ファミリーポートレート」読んでいない。…というか借りて、数ページめくって受け付けなかった。「バラバラ死体の夜」もダメだったし、「少女七竈と七人の可愛そうな大人」も挫折。好きなんだけど挫折率が高い作家さんでもあるんだな…。

    色々読んだので、そろそろ「私の男」いけるかなーと思ってしまう今冬です。

  • バンブーという中国からやってきた吸血鬼・・・というよりは吸血する竹の妖怪たちと人間たちの係りを描いた連作。表題作よりむしろメインは長さ的にも「ちいさな焦げた顔」のほうで、あとの2作はそのスピンオフ程度の印象。

    内容も「ちいさな焦げた顔」が一番良かった。『ポーの一族』の一編に「リデル森の中」という小品があるのだけれど、それを彷彿とさせられた。リデルは幼い頃エドガーとアランに育てられ(この場合両親はエドガーとアランの餌食にされたのだろうけど)10歳で祖母のもとへと送り届けられた。「ちいさな焦げた顔」の主人公・梗ちゃんは、マフィアの抗争で家族を殺され一人で隠れていたところをバンブーのムスタァと洋治に助けられ、素性を隠すため女装して一緒に暮らすことになる。しかし高校生となった梗ちゃん=南子が、茉莉花というはぐれバンブーの少女と関わったことで、平和な日々は終わりを告げ・・・。吸血鬼に育てられた人間の子供、疑似家族、その喪失、人間として生きることを選んだ梗ちゃん、そして再会、と描き出される時間が長い分、不老のバンブーの悲しみなどが胸に迫りドラマチックだった。

    「ほんとうの花を見せにきた」は茉莉花のその後の物語。「あなたが未来の国に行く」は中国から日本へバンブーたちがやってくる前の王族の話。彼らは吸血鬼だけれど救いがあるとしたら、永遠に生きなくてはならないわけじゃなく、竹の妖怪らしく120年で花を咲かせて消えられること。吸血鬼というとヨーロッパ由来の話が多いので、中国由来の、しかも植物性吸血鬼という設定は面白いと思った。

  • 優しく孤独なバンブーたちに、しっかり生きろ!と言われたような気分です。

    『小さな焦げた顔』
    『ほんとうの花を見せにきた』
    『あなたが未来の国に行く』

    竹の吸血鬼バンブーをめぐる優しく悲しい物語。
    ムスタァも洋治も茉莉花もとても愛しいです。

    『小さな焦げた顔』
    悲しくて切なくて…涙がところどころで溢れてしまってもう…
    あんなに幸せな日々を送っていたのにどうしてこんな結末になってしまうの、と…
    ムスタァと洋治が梗ちゃんを慈しみ、愛し、一生懸命育てる姿がほほえましいです。2人が注ぐ梗ちゃんへの愛の深さといったら!
    人間の成長に感動し、「生きる」こと、「火」に憧れるバンブー。
    人間は死んでしまう、だからこその、人間の価値があるということに気付けなかった梗ちゃん。
    バンブーの純粋さと優しさ、人間のあさはかさ、愚かさ。
    『あなたが未来の国に行く』を読むと、洋次の最後の言葉が繋がります。さらに切なく、苦しい気持ちになりました。

    ムスタァと洋治の朝の日課がとても美しく描かれている一方で、その行為はバンブーという生き物の孤独さをなんとも象徴していて…吸血鬼ものってこんなに切ない要素が満載なのですね…。
    自分の相棒は洋治だけと言い、孤独の道を選んだムスタァの誠実さと優しさにも心打たれました。

  • バンブーが愛おしくてならない…。洋治…ムスタァ…茉莉花…。
    ぜんぶ良かったけど、やっぱり「ちいさな焦げた顔」が大好き。小さな男の子を育てる人外男性二人とかそんな…定番のパターンじゃないですか!ずるい!好き!しかも女装させて育てるんですか!もう!ばか!
    やがて人間として生きる日々の逞しさの前に消えてしまうものもあって、でも決して消えないものもある…現実離れして甘美な日々と、変わらない愛おしいものたち。

  • バンブー話3編。やはり「ちいさな焦げた顔」がとにかくそそられた。長い間二人暮らしだったバンブーのムスタァと洋治の、お互いの衣服や髪などを整える仕草。たまらない。それにひたすらムスタァを慕う人間の男の子が加わって、冷たかった生活に火が入る。人であれば当たり前の成長や変化に、ムスタァ達が一々感動するのが、可愛らしく切ない。この終盤もほんともう・・・。「ほんとうの~」は女の子達。茉莉花凶暴だけどピュアで、人には害ある者だけど、憎めなくて。最後の描写がまたきれい。
    「あなたが未来の国へ行く」はバンブー族と人との決定的な別離で前2編の過去。名前出てこないけどちらっと出てくる詩集持ってるの洋治ですな。この時点で「全てを受け入れよう」とすでに決意している、この冷め方。終盤の、姉が弟を未来へと押し出す、その命がけの叫び。
    3編通して、バンブーと人の関わり、バンブー同士の関わりが、とにかく良い。不老で人よりずっと強いのに、人の持つ生命の火に引き寄せられるムスタァと洋治。自分を守り、慕い、信頼してくれた親友を殺してからの、百年の孤独を生きた茉莉花の、最期のほんとうの花。生まれた意味を、役に立ちたいという心からの願いを、ちいさな弟に託した姉。この頼りない末っ子王子が、最初の「ちいさな~」でああなる、と・・・。 そういえばやたら姉と弟、というキーワードがあったな。

  • 「ちいさな焦げた顔」
    「ほんとうの花を見せにきた」
    「あなたが未来の国を行く」
    の3篇が収録されている。
    世界観は繋がっているのだが、「ちいさな焦げた顔」のクオリティーが群を抜いている。

    吸血鬼と人間の子供との荒唐無稽なストーリーだが、何の説明もなく突然修羅場で始まる冒頭から一気に惹き込まれ、気が付くと読み切っていた。
    美しく哀しく、そして心温まる話。
    ムスタァ、洋治、梗、3人で暮らした愛にあふれた幸せな日々はもう戻らない。涙が溢れた。

  • 少年「梗」を死の淵から救ったのは、竹から生まれた吸血鬼バンブーだった。心優しきバンブーと、彼に憧れる梗との楽しくも奇妙な共同生活が始まる。だが、バンブーにとって、人間との交流は何よりの大罪であった。
    「BOOKデータベース」より

    儚く哀しい、でも少しだけ心が温かくなる物語.
    人間は、哀しい生き物である.人でない生き物もまた哀しい生き物である.
    命を「火」と表現し、憧れ慈しむ吸血鬼の方が「生きている」感じがした.人間は人間以外のものの存在を否定したり、踏みつけていいものだと思ったりしがち.でも、そうじゃない.いろんなものを受け入れることができれば、もっとみんなが豊かになるのに.そう思いながら隠れて共に生きなければならない境遇に哀しさを感じ、最後の時を受け入れて消滅する潔さに心打たれた.

  • 涙が止まらない。
    桜庭小説の集大成と感じるくらい今までのいろいろな小説のいろいろな要素を持っていて、でも今までになかった要素もたくさん持っている。

    一章が濃くて重くて惹かれ過ぎて二章、三章の印象が薄らいでしまったのが残念。
    一章が本編で二章、三章がサイドストーリーという扱いだったら納得できたのになぁ…。

    洋治が切なくてつらい…。
    主要キャラがほぼ全員男性って珍しいなぁと思った。女の子に化けてたといえ男の子主人公でも桜庭節炸裂してたので男の子主人公もいけるんだなぁ…。これからの作品が楽しみ。

    しかし時代設定というか世界観が良く分からない…。

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    なんだろうね
    一樹の書く作品は胸に響くよ
    特に一樹が描く家族には

    『ちいさな焦げた顔』は号泣しながら読んだよ
    洋治はきっと満ち足りて燃えたんだろう
    愛するものを守れる誇りで
    長い間生きてきてムスタァと暮らして、梗ちゃんを育ててさ
    ムスタァも梗ちゃんを愛して愛して、暖かくなったんだろう
    幸せだったんだろう
    梗ちゃんと離れるのも寂しくなかったんだろう
    それは火だから
    最後に燃え続けた火に再会してムスタァはどんなに嬉しかっただろうか
    自分が拾って何よりも大事に育てたから
    人間の家族以上に愛に溢れてた
    泣いたよ
    久しぶりに


    他の2編はバンブーの話だった
    類類は洋治を処罰した
    国を出る時からの仲間だったのに
    類類にとっては姉の考えは絶対だったのかな?
    大好きな姉の代わりをし続けて変わってしまったのかな?
    洋治は類類のことも類類の姉のことも知っていた
    自分たちが作った法で裁かれるのは本望だったのかな?
    洋治の寿命は近そうだったけど

    少し、萩尾望都のポーの一族に似ていると思った

  • 児童文学の臭いもする作品。
    3つの話からなる。
    「ちいさな焦げた顔」
    ある組織の人間に家族が殺されるシーンから始まる。身を隠していた少年が、そこに現れたバンブー(竹の妖怪で食肉植物)に助け出され、そのムスタァと相棒の洋治と暮らし始めることに。
    少年「梗(きょう)」は組織に狙われるのを恐れ、少女「南子(なこ)」として生きることになった。呆気なく死んでしまう人間を嫌い、自分もバンブーになってムスタァ達とずっと一緒にいたいと願うが「共に暮らせるのは18歳まで」と言われてしまう。
    ある夜、茉莉花というバンブーに出会い仲良くなる。しかしバンブー一族に捕まり、茉莉花は拷問され身体に大きな損傷を受け、梗は掟を破り一緒に暮らしていたバンブーを明らかにするように迫られる…。

    「ほんとうの花を見せにきた」
    茉莉花と、共に行動する人間の女の子「桃」のお話。
    協力して人間から血を奪っては食料とする毎日。ある日初めて人を殺してしまった茉莉花と、人間の男の子に恋をしてしまった桃。この町に残りたいという桃と、それを許さない茉莉花。茉莉花は昔飼っていた犬について語り出し…。

    「あなたが未来の国に行く」
    バンブー一族がまだ中国の山奥にいた頃の、王族の話。
    5人目の子供・第3王女が主役で、優秀だが周りに必要とされない毎日をもてあましていた。人間達に囲まれるようになってしまい、王族はさらに山奥に逃げる決断をしたが、王女は一部のバンブー達と日本に移動する話に魅力を感じていた。王に許しを乞うている間にも人間が攻めてきて…。

    3話共通して、いかに生きていくか、愛する人を想っていかに行動するかがせつな~く書かれていて、ほんと桜庭ワールド。
    そんなに時間を書けないで読めたけど、心に残る作品でした。

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植物性吸血鬼バンブーとの許されぬ友情物語

竹から生まれた吸血種族バンブー。固い掟で自縛し、ひっそりと暮らすバンブーが、ある日、人間の孤児を拾った。禁じられた絆の物語。

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