- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163901312
作品紹介・あらすじ
過去と現在の間に立ち現れる存在「都」と「陵」はきょうだいとして育った。だが、今のふたりの生活のこの甘美さ!
「ママ」は死に、人生の時間は過ぎるのであった。
感想・レビュー・書評
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素敵な装丁に惹かれて。
時間がいったりきたりだけど、視点は主人公のままなのでわかりやすい。
テーマに対して、さらさらと綺麗な表現。
「人間は、人間であるかぎり、それほど違っちゃいないよ」 -
静かに空気が流れて、時間はいつのまにか過ぎていく。
母の影響がやはり強いのかな。背徳の正当化。 -
こうゆう作品は苦手です。
オブラートで包んだような、はぐらかされているような、つかみどころのない作品でした。
年子の姉弟、父、癌で亡くなる母!
こんな家族、気持ち悪いです! -
"私"は弟の陵と一緒に暮らしはじめた。ママのいた、家で。ママと、ママの兄であるパパと一緒に暮らしていたあの家。そこはママの死んだ家でもあった。
紙屋の娘だったママ。美しい顔立ちというわけではないのに、魅力的で、男を引き寄せ振り回す、心に思えば口をついて、気遣いなんて遠回りはしないママ。私、都はママが大好きだった。そして弟の陵も。
淀みなく、浅瀬を澄んだ水道水が流れていくみたいなお話しだった。文章が一続きの流れのようで美しかった。 -
(2015.03.21読了)(2015.03.18借入)
熊がアパートに引っ越してきて、近所にあいさつ回りしたりする話しを平気で書いてしまう人ならではの小説と言えるかもしれません。
戸籍のこととか考えたらこのような話はありえないと思うのですが、平気で書いてますね。
死について、家族について、親子について、兄弟姉妹について、生きることについてのいろんなことを盛り込んでいる感じですけど、深刻で暗くなるわけではないですね。
川上さんは、この作家ならこんな話を書く、というふうには決めさせてくれない作家かもしれません。あんまり、こだわりのない作家なのかもしれません。
1986年頃に、ママは50と少しでなくなった。1935年頃に生まれたということでしょう。
主人公は、都(みやこ)さんと陵さんです。一歳違いの姉と弟です。
地下鉄サリン事件、日航ジャンボ機墜落事故、東京大空襲、チェルノブイリ、等の話題が所々で出てくるので、死について何となく気にしているようです。
パパとママ、みやことりょう、二代にわたって身内だけで暮らす人たちは、何を意味しているのでしょうか。現代社会の生きにくさでしょうか。川上さんの解説がほしい漢字です。
都さん:イラストレーター
陵さん:会社員
奈穂子さん:ママの幼馴染の子。11歳のときに5年間過ごしたアメリカから帰国。
満寿子さん:奈穂子さんの母親。
薫さん:満寿子さんの姪。菜穂子さんの従姉妹。
武治さん:ママの実家の使用人? 都さんと陵さんの実父。
パパ:ママの同居人。武治さんのところで働いている。ママの兄。
七帆子さん:陵さんの友人。
【目次】
1969年/1996年
ねえやたち
ママの死
パパとママ/奈穂子
家―現在
夢
女たち
父たち
1986年前後
1986年
2013年/2014年
●虫くさい(62頁)
陵はキャベツを好まない。虫くさいじゃない、キャベツって。そんなことを言って、皿からよけようとする。
●意味(160頁)
おれたちは、起きた事がらの意味からできあがっているわけじゃないでしょ。ただずっとふらふら存在してきて、それで今たまたま、こうなってるだけでしょ。
「じゃあ、起ったことに、意味はなかったの?」
「意味なんて、ないでしょ。あるわけが、ない」
●悲しいのは(166頁)
人が死んで悲しいのは、死んだこと自体よりも、会えなくなること喋れなくなることなのだった。
●水から(215頁)
「あたしたちは、水からできているから」
「水のものを飲みこむと、体が迎えて音をたてるの」
陵がわたしの体にはいってくるおりに、最初にふれあうのは、陵とわたしの体そのものではなく、わたしたちの体の中に蔵された水と水なのではないか。その時、水と水とは、どんな音をたててまじりあってゆくのだろう。
☆関連図書(既読)
「パスタマシーンの幽霊」川上弘美著、マガジンハウス、2010.04.22
「機嫌のいい犬-句集-」川上弘美著、集英社、2010.10.30
「ナマズの幸運。東京日記3」川上弘美著・門馬則雄絵、平凡社、2011.01.25
「天頂より少し下って」川上弘美著、小学館、2011.05.28
「神様2011」川上弘美著、講談社、2011.09.20
「なめらかで熱くて甘苦しくて」川上弘美著、新潮社、2013.02.25
「晴れたり曇ったり」川上弘美著、講談社、2013.07.30
「猫を拾いに」川上弘美著、マガジンハウス、2013.10.31
(2015年3月22日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
都と陵はまたこの家で一緒に暮らし始めるのだった。人生の最も謎めいた部分に迫る長編小説。死が揺さぶる時間。 -
誰かに秘密を打ち明けられたような気分。そして、私が永遠にできないようなことを疑似体験し、少しだけ悦に入るこの背徳感…読書の醍醐味です。
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あぁ、川上弘美だなぁ、としみじみ。
見た目はさらさらとしているのに手が触れるとざらざらとしている、見た目は透明なのに潜ると濁っている、そんな不思議な水のような。
どうしようもなく、ただお互いに必要であった。ということなのだろう。ただ、どうしようもなく。
「何かを、してもしなくても、後悔はするんじゃない?」-
2015/01/31
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読み終わったあと「水声」というタイトルがさらさらと体の中を走り抜けて、なんとも清々しいきもちになった。ていねいに、ていねいに、自分の、そして誰かの「好き」のきもちを大切に抱いて生きていく話。人や物はもちろん。景色や想い出や時間や言葉。自分が「好き」と感じたものに正直に、緊張感を忘れずに寄り添っていく。その想いさえあれば少しのつらいことや哀しいことは乗り越えていけるのかもしれない。
川上弘美さんの文章を読んでる時間がたまらなく好きだ。ファンタジーのなかに真実があって、やさしくてかなしくて。この本を読みながら年を越せてしあわせだった。