フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

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制作 : Michael Lewis  渡会 圭子  東江 一紀 
  • 文藝春秋 (2014年10月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901411

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フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たちの感想・レビュー・書評

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  • ウォール街で今何が起きているのか。フェアであるはずの証券取引所、投資家に利益をもたらすように動くはずの投資銀行やブローカーが実際に行っている事は何か。
    ニューヨークの証券取引所の規模が拡大し、2008年にはその数が13に増え、証券取引所は電子取引を促進した。取引が人の手からコンピュータに移った時、何が起こったのか。
    カナダロイヤル銀行ニューヨーク支店のトレーダー、日系カナダ人のブラッド・カツヤマが目にしたのは、目の前に表示されている株を表示価格で買おうとすると、取引成立直前に瞬時に売り株が無くなったり株価が変動して高値で買わされて損をしたりするという不思議な動きだった。これこそが「超高速取引業者=フラッシュ・ボーイズ」の仕業だ。超高速取引業者は、いくつもある証券取引所の情報を集め、取引の先回りをして莫大な利益を得ているのだ。そして彼らの犠牲になって得られるはずの利益を失っているのが、何も知らない一般投資家だ。それはナノ秒という人間の感覚では全くわからない瞬時の出来事で、しかも、テクノロジーの進化に追いつかない現行法の下では違法行為にはならない。ナノ秒単位のスピードを競うため、サーバーセンターでの場所取り合戦や、取引所からサーバーセンターへまっすぐ光ファイバーをひくために何千万ドルもの投資がなされるという異常な状況だ。
    ブラッドはこの事実を突き止めた時、「超高速取引で銀行に大きな利益をあげ、自身の年収アップを図る」ではなく、「証券取引を正常な状態に戻し、証券取引の公平性を取り戻す」戦いに出ることに決めた。年収200万ドルの仕事を捨てて。
    本書は、ブラッドが証券取引の異変に気付いてから、公平な証券取引所を作ることを決意し、各方面から志を同じくする一流のプロフェッショナルを集め、超高速取引業者に対向し公平な取引を可能にする証券取引所を立ち上げるまでの戦いの記録だ。ノンフィクションだとわかっていても、その進展にハラハラ・ドキドキさせられ、まるで優れた小説を読んでいるようだ。
    読み終えてから実際にブラッドが立ち上げた証券取引所「IEX」のウェブサイトを開き、メンバーの紹介欄に本に出てきた人物の名前を見つけ、やはりノンフィクションなんだと妙に感動したりメンバーの写真を検索して、ブラッドってこんなに天才で実行力があり優れた人物なのに、その辺に居る普通の日本人の顔をしているな、と変な感心をしたり、色々な楽しみ方もできるのがちょっと面白い。
    ところで、日本の証券取引所はどうなっているのだろうか?本書の最後に解説が加えられているが、それによると東京証券取引所も大阪証券取引所も、既にニューヨークと似た様相を示しだしているらしい。これから社会の至る所で様々なテクノロジーが進化していくことだろう。しかしテクノロジーの進化は社会構造を複雑にし、時としてそれに精通している人達とそれ以外の一般人に恐ろしいほどの不公平をもたらすかもしれない。本書は、それを目の前に突きつけた1冊だ。見えない所で何が起きているのか、そんな事に興味をかき立てられる。

  • 100ドルの売り注文があったときに、100.5ドルの買い注文が入ったとする。
    普通は100ドルで約定しておしまい。
    だけど、ここに超高速取引業者が入るとどうなるか。
    100.5ドルの注文が入った後、瞬時に100ドルで買った後、100.5ドルで売るのだ。
    そうすればリスクなしに0.5ドル儲ける。
    ある超高速取引業者は5年間で1度しか負けてないらしい。しかもその1度は注文ミス笑
    超高速取引のためには取引所から物理的距離が近いことがすごく重要で、取引所は近くの場所を高値で超高速取引業者に売りつけている。
    そういうサービスをコロケーションと呼ぶ。
    しかも超高速取引業者の取引は全部プログラムがやってくれてるってさ。なんてことだ。

  • アメリカはウォール街。欲望渦巻く株式市場。21世紀現在は、コンピューターが支配する魑魅魍魎なブラックボックス。
    コンピューター回線の速度、万分の1秒、億分の1秒、というミクロな時間のズレを利用して、一般投資家を食い物にする「フラッシュ・ボーイズ」という悪党ども。
    その「フラッシュ・ボーイズ」を相手に、一介の日系カナダ人の銀行員が、徒手空拳で戦いを挑む。
    ノンフィクションなんです。実話です。

    2014年にアメリカで出版された本です。つい、最近の本ですね。
    マイケル・ルイスさんは、友人に勧められて「マネー・ボール」を読んで大感心。

    「フラッシュ・ボーイズも面白いですよ。株式市場の話です」
    「株に詳しいの?」
    「いえ、まったく知りません。でも、面白かったです」

    という友人のオススメで。

    自慢じゃありませんが、株式のことはテンで判りません。正直、興味もありません。人生で一度も買ったことがありません。ぜんぜん、何にも知りません。
    高速インターネットとか光回線についても、同じくです。
    それでも、矢鱈と面白かったです。

    本文中でも触れられていますが、<ミステリー>と<七人の侍>なんです。

    どういう仕掛けで「フラッシュ・ボーイズ」たちがずるをしているかというと、実を言うと読み終えても詳しくはわかりません(笑)。
    なんとなく分かったのは、つまり、「後出しじゃんけん」なんです。
    本文で触れられていますが、「絶対負けないジャンケンロボット」というのが存在するそうなんです。
    人間相手にジャンケンをして、ゼッタイに勝つ。
    どうしてかというと、当然からくりがあります。
    そのロボットのコンピューターは、相手が出したのが、グーチョキパーどれか、視認してから、それに勝つように出してるんです。
    なんだけど、その認知判断動作が、人間の感覚では早すぎて、後出しと認識できないんだそうです。

    まあつまり、そういうことなんです。

    まず、そういうことでずるをしている奴らがいるらしい、という気づき。
    カナダの二流の銀行の日系人、ブラッド・カツヤマさんが気づきます。
    そして、ほとんど個人的な捜査を続けていくと。
    なんと、その「フラッシュボーイズ」たちは、株式市場そのもの、あるいは投資銀行と実質上結託してるんですね。
    だから、年金などを投資しているいたいけな投資家たちは、ゼッタイに勝てない。
    それも、複雑怪奇な仕組みの上に、キワキワながら合法の砂上に立っている楼閣なわけです。

    ただ、それを誰も知らない。
    知っている人は言わない。

    さあ、ここからブラッド・カツヤマさん。

    彼らと結託すれば良いわけです。
    勝ち組に入れば済むわけです。

    けれども。釈然としない。

    独り、真相究明と糾弾、そして広報と対策に立ち上がる訳です。

    この蟷螂の斧のような戦いに、徐々に仲間が集まってくる。
    ここのところの見せ方が実に上手い。書き方、読ませ方ですね。
    もう、完全に「水滸伝」や「七人の侍」の世界なんです。
    奇妙奇天烈、個性横溢、変人奇人な金融マンや証券マンやSEや理系の天才などが集まってくる訳です。

    そして、とうとうブラッドさんは「新しい株式市場を作る」という最終勝負に出る訳です。
    大手の圧倒的な迫害や妨害に晒されながら、「フェアな株式市場」を立ち上げる。
    誰もが、あっというまに潰れると予想していた…。
    もう、この辺のワクワク感は、「プロジェクトX」なんです。風の中のすーばるー。

    最後は、ハッピーエンド。

    もちろん、「フラッシュ・ボーイズ」的なずるい手段や、それを覆い隠す不要に複雑な仕組みやら、と言うこと自体は解決しません。
    それは日本でも、企業でも、行政でも、僕らが安心している「世の中の仕組み」の隙間にゴキブリのように入り込んでいるんだと思います。
    それを黙認したり承諾したりすることで、利益を得ている人も大勢いるんだと思います。

    そんな現実の厳しい寒風も感じさせながら、エンターテイメントとしての読み物になっている。
    「マネー・ボール」もそうですけど、マイケル・ルイスさん、すごい。
    日本語の作家さんではありませんが、同時代にこういう人がいるっていうのは、わくわくしますね。

  • ☆2(付箋6枚/P346→割合1.73%)

    超高速取引、というコンセプトを聞いて思い浮かべたのは、裁定取引で価格差を検知し、それをやり取りするのに他の業者と競う為速度を競う、というイメージだった(意味分かります??)。

    実際はそんな優しい物じゃない。
    「証券業者は一番いい条件で顧客の為に取引しなければならない」という法律を逆手に取って、一般の証券取引所と逆に取引に手数料を“払う”。そこで少額のオファーを多数の株に関して出しておいて、そこに売買取引が来た時点で他の証券取引所に出ている同銘柄の株を買い占めてしまうのだ。最初取引しようとしていた業者を後から追いぬくため(&他の同業者に勝つため)に超高速が必要になる。
    これって毎回インサイダーがいるようなものですよね。注文が生じるのが分かってから買い占めて値段を吊り上げるのです。そこにSEC(アメリカの証券取引委員会)が絡んでいるというのだから、世も末だ。。

    ・BATSでリストに載せた株が常に100%売買できたのは、彼らの注文を最初に受けるのがそこだったからだ。RBCの売買の情報が他の市場に行き渡る時間はなかった。「『なんてこった、BATSがいちばん近いからだったのか』とそんな感じでした。あのでかいトンネルを抜けたすぐ先ですからね」。
    BATSの中では超高速取引業者たちが、ほかの取引所で使える情報が入ってくるのを待っている。彼らはまずBATSで公開株すべてに対してそれぞれごく小さな―たいていは百株の―ビッドとオファー(買いと売り)を出し、情報を手に入れる。そしてX社の株の売り手と買い手を洗い出したあとで、別の取引所を目指すレースを開始し、売買を順番に行っていく。
    …あるブローカー(あなたが仲介料を払う相手)に、XYZ社の株を1株25ドルで10万株買うことを依頼する。市場には折よく25ドルで10万株分が、1万株ずつ10の異なる取引所で売りに出されていた。それらの取引所はどこも、あなたの代理であるブローカーに対し、手数料を要求する。しかしほかに100株分が同じく25ドルで、BATSに売りに出されていた。違うのはBATSがブローカーに報奨金を支払うということだ。この場合、シークエンシャル・コストエフェクティブ・ルーター(効率を自動判断するルーター)は、まずBATSへ行ってその100株を買う。するとこの動きがきっかけとなり、先の10万株は超高速トレーダーの手中に消えてしまう。超高速トレーダーは、すぐさま売りに転じて、XYZ社の株をさっきよりも高値でオファーしてもいいし、ほんの2、3秒だけ手元にとどもて、さらに値をつり上げてもいい。

    ・やがていわゆるフラッシュ・クラッシュが起こった。2010年5月6日、2:45、これといった理由もなく、市場は10分足らずで600ポイントも下げた。その後、数分間で、前より高い水準まで反発した。まるで酔っ払いが金魚鉢につまずいてペットの金魚を殺してしまったのを、必死で隠そうとしたかのようだ。目をこらして見ていなければ、気づかなかったほどの、あっという間の出来事だった。もちろん特定の銘柄を売買していた人は別だ。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、その間に最低1ペニー、最高10万ドルで取引された。ほんの一瞬前より60%も下げた株価で、2万回も取引された銘柄もあった。その5ヶ月後、証券取引委員会(SEC)は報告書を発表し、この大参事の原因は、カンザスシティーの名もない投資信託会社が、先物取引での大口の売り注文を、シカゴの取引所に誤って出したことだと糾弾した。
    …ニューヨーク証券取引所のCEO、ダンカン・ニードラウアーが投資家へのあいさつまわりを始めると、一流投資家のほとんどがそれに反応したのを、ブラッドは見逃さなかった。ニードラウアーの目的は、ニューヨーク証券取引所がフラッシュ・クラッシュと無関係だとする理由を説明することのようだった。「何かあった。そう思ったのはこのときだ」。そう語るのは、株式市場での投資を専門とするヘッジ・ファンド、シーウルフ・キャピタルのダニー・モーゼスだ。モーゼスはブラッドとローナンの話を聴いたことがあった。「ニードラウアーが言おうとしていたのは『われわれを信用してください。あれはうちの責任じゃなかったんですから』ということだ。ちょっと待て、こっちはあんたらなんて思ってなかったよ。そんな心配をしなくちゃならなかったのか?まるで子どもが家へ帰ってきて、こう言うみたいじゃないか。『パパ、車をへこませたの、ぼくじゃないよ』。待った、車はへこんでたのか?」

    ・2007年以降、200人以上のSEC職員が官職を去り、超高速取引業者、あるいは超高速取引業者のエージェントとしてワシントンへのロビー活動を行う企業へ移っていることがわかった。そのうちの何割かは、超高速取引をどう規制するか、あるいはそもそも規制すべきかを決定する際に、中心的な役割を果たした者たちだ。たとえばSECのトレーディング・アンド・マーケット部の副部長、エリザベス・キングは、2010年6月にSECを去ってゲッコーに移った。SECまでもが、公共の証券取引所と同じように、超高速トレーダーの将来の利益という株を買っていたのだ。

    ・2011年秋、シュウォールはビジネス用SNS、リンクトインを自在に使いこなし、超高速取引の内部や周辺にいる人間の情報を集めていた。シュウォールは超高速取引の顔を、もっと言うなら二つの顔を明らかにした。「おれはこのゲームに参加しているやつの目星がつくようになっていた」とシュウォールは言う。「それで人脈をつかむために、そいつらとつながりを作ったんだ。その中で何が起こってるか、しっかり把握してる連中が、たぶん25人くらいいた。おれはそいつらを5番ピン(キングピン)って呼んでいた」。
    食物連鎖の頂点にいるのは40代の白人男たちで、その経歴は、多少の差はあれ、初期の電子証券取引所にまでさかのぼれる。時期としては、1987年の株価大暴落直後に規制が導入されたころだ。

    ・注文形式を検討するうちに、二人は株式市場における捕食行動をどう分類すればいいかもわかってきた。大まかに言って、おぞましいほど不公平で、膨大な量の取引につながる活動は、三つに分けられるようだった。一つ目は“電子フロントランニング”。投資家がある場所で行動を起こそうとしたら、その投資家と次の場所まで競争するのだ(ブラッドがRBCで取引しているときに起きたことだ)。二つ目は“報奨金さや取り”。複雑になった制度を利用して、取引所が払う報奨金を抜け目なく獲得する。報奨金は市場に流動性を呼び込むように設けられたはずだが、実際にそれを市場に提供することもしない。三つ目はおそらく最も広く行われている手口で“スローマーケットさや取り”である。これが発生するのは、ある株価が変動するところを見て、取引所が反応するより前に、超高速トレーダーがすかさずほかの市場に出ているその株式を取得することができた場合だ。たとえばP&Gの気配値が80ドル―80.01ドルで、すべての市場で売り手と買い手が取引の売買両サイドに存在したとする。大口の売り手がNYSEに現れて、気配値は79.98ドル―79.99ドルに下がる。超高速トレーダーはNYSEで79.99ドルで買い、相場が公式に変動する前に、その他すべての取引所で80ドルで売る。これが毎日、一日中行われ、ほかの戦略で生み出される総額よりも、さらに年間何十億ドルも多く生み出されるようになった。

    ・「みんな、複雑っていうのは“ややこしい”の進んだ状態だと思ってる。だがそうじゃない。車のキーは単純。車はややこしい。路上に出た車は複雑だ」

  • まさに虚業。
    フラッシュボーイズを他の世界で役立てられないか思案し始めている。

  • 図や表でまとめてほしい。

  • 面白かった。超高速取引について。衝撃的なのは、あとがきにも日本の実態が書かれてるが、情けない限り。同じような取引所がないと、日本の株取引は海外にカモられるばかりだ。

  • 著者は、マネーボールと同じマイケル・ルイス氏。

    何度かこの株式の課題について本で読んだことがありました。プログラムや不正の事象を書いたものばかり。

    この本では、実在の人物が描かれているので、リアリティを感じながら拝読いたしました。

  • 株式市場におけるHFT等、「捕食者」の捕食活動から投資家を救うべく、RBCのトレーダーという身から転じてIEXを創設したBrad Katsuyamaの話を中心に展開していく、マイクロ秒を今や争うようになった、そしてその結果目に見えないところで株式市場が"rig"されていることを克明に記録している本。
    自分のしている仕事の社会へのインパクトを改めて考えさせられる本である。これまた非常に面白い。

  • ○この本を一言で表すと?
     アメリカの超高速取引をとりまく利害関係者の動きを書いた本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・市場にシステムを通じて迅速に取引をする業者がいるということはかなり前に聞いたことがありましたが、現代的なそのやり方や実態についてある程度理解でき、すごいことになっているのだなと思いました。

    ・この本で登場する人物それぞれに癖があり、通常と異なる行動を取る人物の話が複数書かれていることで、ノンフィクションなのに小説のような面白さがある本だと思いました。

    ・取引所間を真っ直ぐに光ファイバーで繋ぐことで他のルートよりも速く情報を伝達できることは当然だと思いますが、その差は微々たるもので大したことがないと思いきや、そのわずかな差が超高速取引の勝敗を分けるほどだというのは面白いなと思いました。そのわずかな差を生み出すための工事の過程がかなり緊張感のある描写で書かれていました。注釈で取引所が移転したとありましたが、この本では触れられていなかったものの、取引所が移転することでその努力が無駄にもなりえるのかなと思いました。(第1章 時は金なり)

    ・先の章でも重要人物として描かれる、ブラッド・カツヤマの経歴のカナダロイヤル銀行(RBC)の部分が描かれ、その中でシステムトレードのRBCとは異なる文化の者が入ってきたこと、取引注文を出してもそれがなかったことにされる現象が度々起きたことなど、それまでと状況が変わってきたことが伝わってきました。規制緩和や証券取引委員会の決まりごとのスピードの観点での抜け穴などが揃うことで超高速トレーダーが原因だと分かったことが述べられていました。(第2章 取引画面の蜃気楼)

    ・通信システムの専門家ローナンの視点でRBCのブラッド・カツヤマやロシア人の超高速トレーダーの技術者、超高速トレーダーが設立した証券市場BATSなどについて書かれていました。2010年に起こった急激な株価の低下と直後の高騰を引き起こしたフラッシュ・クラッシュについても触れられていました。(第3章 捕食者の手口)

    ・証券取引委員会が超高速取引について規制できない理由として、1秒単位のスピードで考えるレギュレーションNBSが全く超高速取引を想定していないことが挙げられていました。ダークプールやフラッシュオーダーなど、不公正な取引に関わる内容にも軽く触れられていました。(第4章 捕食者の足跡を追う)

    ・リーマンショックより後になって、ウォール街で唯一起訴されたゴールドマン・サックスのセルゲイ・アレイニコフに焦点を当てて書かれていました。ゴールドマン・サックスのシステム技術者として勤務していて、オープンソースを利用したのでその改善点等をアップしたり、自宅PCに送ったりしたことで訴えられ、セルゲイが行ったことを訴えたゴールドマン・サックスの担当者や裁判官が理解していなかったためにあやふやなままに有罪にされてしまったことなど、訴える側と裁く側に知識がなければまともに裁判されるはずがないという事例について書かれていました。(第5章 ゴールドマン・サックスは何を恐れたか?)(第8章 セルゲイはなぜコードを持ちだしたか?)

    ・不正を行う取引所を回避できない構造の証券取引の仕組みに対抗すべく、ブラッド・カツヤマが自身で証券取引所を立ち上げる話が書かれていました。証券取引所を管理できる人材であるドン・ボラーマンやパズルマスターのフランシス・チャンなどの人材を集め、証券取引の構造全体を明らかにすることや新しい仕組みをどう運営するかなど、検討と運用に必要な人材が集まっていったのはすごいなと思いました。investorsexchangeがそのままURLにすると卑猥な言葉に捉えられかねないので略称のiexでドメインをとった話は笑えました。(第6章 新しい取引所をつくる)

    ・ブラッド・カツヤマとその仲間たちがIEXを立ち上げ、運用を始めるまでの流れが書かれていました。それ以外にもBATSやニューヨーク証券取引所が「技術的な不具合」を出して一時機能停止していたりすることがしばしばあり、解明もされないことなどが書かれていました。IEXが低調なスタートを切ってしばらく経ってから、ゴールドマン・サックスの良識的なパートナーの主導でIEXを大きく活用するように大きく方向転換し、他の投資会社も動きを変えていったことは、もちろん人的な要因だけでなく環境的な要因やその他の要因もあったのでしょうが、興味深いなと思いました。(第7章 市場の未来をかいま見る)


    ○つっこみどころ
    ・どの取引をどの手段で行った場合に明らかに不正なのか、その線引きが分かりづらかったです。超高速取引でそうではない取引者を出しぬける仕組みが存在し、それを利用する仕組みが導入され、その通りに動くことで不公正になっていることが問題なのだと思いますが、超高速取引自体が即不公正というわけではないようにも思えました。BATSのような抜け道が用意されている取引所やブラックプール(証券会社内証券取引スペース)のように先回りできる取引方法が用意され、それを経由せざるを得ない仕組みになってしまっていることが問題なのだと思いました。スピードで勝負が決まるということ自体もそれなりに不公平だとは思いますが、それだけであればある程度リスクを負っているのでまだましでしょうか。特に区別なしに超高速取引自体を不公正なものと思わせる記述はミスリードさせてしまうのではと思いました。

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フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たちの作品紹介

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