フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

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制作 : Michael Lewis  渡会 圭子  東江 一紀 
  • 文藝春秋 (2014年10月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901411

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フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たちの感想・レビュー・書評

  • 図や表でまとめてほしい。

  • 面白かった。超高速取引について。衝撃的なのは、あとがきにも日本の実態が書かれてるが、情けない限り。同じような取引所がないと、日本の株取引は海外にカモられるばかりだ。

  • 株式市場におけるHFT等、「捕食者」の捕食活動から投資家を救うべく、RBCのトレーダーという身から転じてIEXを創設したBrad Katsuyamaの話を中心に展開していく、マイクロ秒を今や争うようになった、そしてその結果目に見えないところで株式市場が"rig"されていることを克明に記録している本。
    自分のしている仕事の社会へのインパクトを改めて考えさせられる本である。これまた非常に面白い。

  • ○この本を一言で表すと?
     アメリカの超高速取引をとりまく利害関係者の動きを書いた本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・市場にシステムを通じて迅速に取引をする業者がいるということはかなり前に聞いたことがありましたが、現代的なそのやり方や実態についてある程度理解でき、すごいことになっているのだなと思いました。

    ・この本で登場する人物それぞれに癖があり、通常と異なる行動を取る人物の話が複数書かれていることで、ノンフィクションなのに小説のような面白さがある本だと思いました。

    ・取引所間を真っ直ぐに光ファイバーで繋ぐことで他のルートよりも速く情報を伝達できることは当然だと思いますが、その差は微々たるもので大したことがないと思いきや、そのわずかな差が超高速取引の勝敗を分けるほどだというのは面白いなと思いました。そのわずかな差を生み出すための工事の過程がかなり緊張感のある描写で書かれていました。注釈で取引所が移転したとありましたが、この本では触れられていなかったものの、取引所が移転することでその努力が無駄にもなりえるのかなと思いました。(第1章 時は金なり)

    ・先の章でも重要人物として描かれる、ブラッド・カツヤマの経歴のカナダロイヤル銀行(RBC)の部分が描かれ、その中でシステムトレードのRBCとは異なる文化の者が入ってきたこと、取引注文を出してもそれがなかったことにされる現象が度々起きたことなど、それまでと状況が変わってきたことが伝わってきました。規制緩和や証券取引委員会の決まりごとのスピードの観点での抜け穴などが揃うことで超高速トレーダーが原因だと分かったことが述べられていました。(第2章 取引画面の蜃気楼)

    ・通信システムの専門家ローナンの視点でRBCのブラッド・カツヤマやロシア人の超高速トレーダーの技術者、超高速トレーダーが設立した証券市場BATSなどについて書かれていました。2010年に起こった急激な株価の低下と直後の高騰を引き起こしたフラッシュ・クラッシュについても触れられていました。(第3章 捕食者の手口)

    ・証券取引委員会が超高速取引について規制できない理由として、1秒単位のスピードで考えるレギュレーションNBSが全く超高速取引を想定していないことが挙げられていました。ダークプールやフラッシュオーダーなど、不公正な取引に関わる内容にも軽く触れられていました。(第4章 捕食者の足跡を追う)

    ・リーマンショックより後になって、ウォール街で唯一起訴されたゴールドマン・サックスのセルゲイ・アレイニコフに焦点を当てて書かれていました。ゴールドマン・サックスのシステム技術者として勤務していて、オープンソースを利用したのでその改善点等をアップしたり、自宅PCに送ったりしたことで訴えられ、セルゲイが行ったことを訴えたゴールドマン・サックスの担当者や裁判官が理解していなかったためにあやふやなままに有罪にされてしまったことなど、訴える側と裁く側に知識がなければまともに裁判されるはずがないという事例について書かれていました。(第5章 ゴールドマン・サックスは何を恐れたか?)(第8章 セルゲイはなぜコードを持ちだしたか?)

    ・不正を行う取引所を回避できない構造の証券取引の仕組みに対抗すべく、ブラッド・カツヤマが自身で証券取引所を立ち上げる話が書かれていました。証券取引所を管理できる人材であるドン・ボラーマンやパズルマスターのフランシス・チャンなどの人材を集め、証券取引の構造全体を明らかにすることや新しい仕組みをどう運営するかなど、検討と運用に必要な人材が集まっていったのはすごいなと思いました。investorsexchangeがそのままURLにすると卑猥な言葉に捉えられかねない... 続きを読む

  • 速読ざっと読み。

    渡会圭子訳シリーズを読んでいるためついでに読んでみた。
    彼女の役は比較的読みやすい方だ。読むに耐えない翻訳本では読む気がなくなるので。

    簡単に要約すると株式市場では出来レースがはびこっていたということ。やはりプレイヤーとして参加している時点でギャンブルは負けが確定ということですね。
    勝ちたいのならルールを作る側に回らなければ不可能だと。

  • 2階書架 : 338.15/LEW : 3410159181

  • 上司におすすめ頂き、今更ながら読了。
    アメリカ株式市場における「後出しじゃんけん」を暴き、それに対抗する仕組みを作る一連の流れを小説化したもの。
    金融用語は飛び交うものの、ストーリー仕立てのドキュメンタリーなので楽しく読めました。ナノ秒では読めなかったけど(笑

    読後RBCへの印象が相当良くなります。GSは…したたかだなぁ、という感じでしょうか。

  • 安心と信頼のマイケルルイス。アメリカは良くも悪くもダイナミックだなあ、とか、やはりこうなると少なくとも時間単位以上のスパンで取引しないと勝ち目は薄いんだろうなあ、とか、ぼんやり思いながらも、圧倒的勧善懲悪現代版七人の侍面白いいいと読める。

  • 100ドルの売り注文があったときに、100.5ドルの買い注文が入ったとする。
    普通は100ドルで約定しておしまい。
    だけど、ここに超高速取引業者が入るとどうなるか。
    100.5ドルの注文が入った後、瞬時に100ドルで買った後、100.5ドルで売るのだ。
    そうすればリスクなしに0.5ドル儲ける。
    ある超高速取引業者は5年間で1度しか負けてないらしい。しかもその1度は注文ミス笑
    超高速取引のためには取引所から物理的距離が近いことがすごく重要で、取引所は近くの場所を高値で超高速取引業者に売りつけている。
    そういうサービスをコロケーションと呼ぶ。
    しかも超高速取引業者の取引は全部プログラムがやってくれてるってさ。なんてことだ。

  • アメリカはウォール街。欲望渦巻く株式市場。21世紀現在は、コンピューターが支配する魑魅魍魎なブラックボックス。
    コンピューター回線の速度、万分の1秒、億分の1秒、というミクロな時間のズレを利用して、一般投資家を食い物にする「フラッシュ・ボーイズ」という悪党ども。
    その「フラッシュ・ボーイズ」を相手に、一介の日系カナダ人の銀行員が、徒手空拳で戦いを挑む。
    ノンフィクションなんです。実話です。

    2014年にアメリカで出版された本です。つい、最近の本ですね。
    マイケル・ルイスさんは、友人に勧められて「マネー・ボール」を読んで大感心。

    「フラッシュ・ボーイズも面白いですよ。株式市場の話です」
    「株に詳しいの?」
    「いえ、まったく知りません。でも、面白かったです」

    という友人のオススメで。

    自慢じゃありませんが、株式のことはテンで判りません。正直、興味もありません。人生で一度も買ったことがありません。ぜんぜん、何にも知りません。
    高速インターネットとか光回線についても、同じくです。
    それでも、矢鱈と面白かったです。

    本文中でも触れられていますが、<ミステリー>と<七人の侍>なんです。

    どういう仕掛けで「フラッシュ・ボーイズ」たちがずるをしているかというと、実を言うと読み終えても詳しくはわかりません(笑)。
    なんとなく分かったのは、つまり、「後出しじゃんけん」なんです。
    本文で触れられていますが、「絶対負けないジャンケンロボット」というのが存在するそうなんです。
    人間相手にジャンケンをして、ゼッタイに勝つ。
    どうしてかというと、当然からくりがあります。
    そのロボットのコンピューターは、相手が出したのが、グーチョキパーどれか、視認してから、それに勝つように出してるんです。
    なんだけど、その認知判断動作が、人間の感覚では早すぎて、後出しと認識できないんだそうです。

    まあつまり、そういうことなんです。

    まず、そういうことでずるをしている奴らがいるらしい、という気づき。
    カナダの二流の銀行の日系人、ブラッド・カツヤマさんが気づきます。
    そして、ほとんど個人的な捜査を続けていくと。
    なんと、その「フラッシュボーイズ」たちは、株式市場そのもの、あるいは投資銀行と実質上結託してるんですね。
    だから、年金などを投資しているいたいけな投資家たちは、ゼッタイに勝てない。
    それも、複雑怪奇な仕組みの上に、キワキワながら合法の砂上に立っている楼閣なわけです。

    ただ、それを誰も知らない。
    知っている人は言わない。

    さあ、ここからブラッド・カツヤマさん。

    彼らと結託すれば良いわけです。
    勝ち組に入れば済むわけです。

    けれども。釈然としない。

    独り、真相究明と糾弾、そして広報と対策に立ち上がる訳です。

    この蟷螂の斧のような戦いに、徐々に仲間が集まってくる。
    ここのところの見せ方が実に上手い。書き方、読ませ方ですね。
    もう、完全に「水滸伝」や「七人の侍」の世界なんです。
    奇妙奇天烈、個性横溢、変人奇人な金融マンや証券マンやSEや理系の天才などが集まってくる訳です。

    そして、とうとうブラッドさんは「新しい株式市場を作る」という最終勝負に出る訳です。
    大手の圧倒的な迫害や妨害に晒されながら、「フェアな株式市場」を立ち上げる。
    誰もが、あっというまに潰れると予想していた…。
    もう、この辺のワクワク感は、「プロジェクトX」なんです。風の中のすーばるー。

    最後は、ハッピーエンド。

    もちろん、「フラッシュ・ボーイズ」的なずるい手段や、それを覆い隠す不要に複雑な仕組みやら、と言うこと自体は解決しません。
    それは日本でも、企業でも、行政でも、僕... 続きを読む

  • リーマンショック以降、アメリカの株式市場では巨大な詐欺が行なわれていた。
    銀行家ブラッド・カツヤマは、ある日市場の購入ボタンを押すと、商品が蜃気楼のように消えてしまうという現象に遭遇した。
    不思議に思い、このからくりを解き明かすうち、ナノ秒といったわずかな時間で、投資家達を貶めるフラッシュボーイズの姿が見えてきた。

  • 会社の方に紹介されて。
    コンピューターによる高速取引がなされていることは知っていたが、ここまでとは思わなかった。
    通常の取引が損をする、という極論まではいかないが、高速トレーダーは100%勝てる。僅かな差額でも大量に且つかなりの回数をこなせば、大きな儲けになるわけで。
    そんなトレーダーの存在を許す、つまり彼らにその武器を提供する人達がいる訳で、それが実はそうだったとは…。
    違法ではない。しかし、神の見えざる手ももはや演繹的な証明にはなり得ない世界になっていて、低金利なので投資に回せと言われても、正直者が食い物にされる世界。
    もしかしたら、金融の世界、もっと言えばお金という価値観の崩壊が近いかもしれない、なんて感じてしまう内容だった。
    しかしながら、いかんせん読み辛い。同じ内容が何回も出てくるし、キャラクター付けもよく分からないまま登場人物も多いし、もう少し翻訳に腐心して欲しかったな。

  • だいぶ冗長な構成になってしまっているが、まぁ読み切れないことはない。
    続編に期待。

  •  ノナ秒で先回りして大金をせしめている奴らがいる。そのナノ秒のために大金を投資する奴もいる。そして、大金を支払わされているのは一般の善良な投資家たちである。証券取引所も投資銀行もグルで善良な一般投資家を騙している。証券市場のこの不公正に立ち向かい、公正なシステムを作り上げる、そんな人々の物語である。とんでもない不公正を告発した本である。
     しかし いまひとつ入り込めなかった。こんな「大事件」が、一般的に大したニュースにもならなかったのは、大半の人々にはどうでもいいことであったからに他ならない。大金をせしめられていたのも決して「善良な」「一般」投資家ではないだろう。長期的に企業の利益に貢献しようとか、企業の社会的な存在や価値に貢献しようとか、そういう人たちがカモられたわけではない。結局カモにされた「投資家」もまた、うまくいけば他を出し抜いて一儲けしたいというそんな人たちなのである、と思うのだけど違うのか?

  • 2015/07/18
    移動中

  • 概念としては知っていた内容が具体的になった感覚だった。(とはいえ、お話し仕立てになってることからテクニカルな内容については色々と現実とは違いがあるのだろうけど)

    通信事業者が自分たちの資産の価値を知らないとか、スプレッドネットワークスをしらなかったこととか、2009年くらいの自分の認識だったりとか、いろいろと反省させられることも多い内容だった。

    今度は本書に対する批評とかを読みたい。(ツッコミが甘いとかそういうのじゃなくて、たとえばIEXが良く描かれすぎとか)

  • いまや資本主義の心臓部たる株式市場は、資本を生産的事業に投じる仕組みではなく、投資家を食い物にする八百長の現場であり、頭のいいプログラマーにとっての解くべきパズルでしかない。
    この悪質な不平等も、実は善意と良識から生まれた規制の一つの穴を突かれたことで制度化されていて、新たな監督や規制でどうとなるものでもない。
    面白いのは、超高速取引の仕事に従事している人たちにロシア出身者が多い理由で、彼らはソ連崩壊の混乱をくぐり抜ける中で、システムの欠陥にはためらわずつけ込むように家族ぐるみで教えられて育った熟達者なのだ。
    もう一つ面白かったのは、トレーダーが自分の使っているテクノロジーを実はほとんど理解していないこと。もちろん彼らは、ナノ秒に価値があることさえ知らない持たざる者とは違い、価値があると認識しナノ秒のために金を払うのだが、仕組みや危険性を熟知しているわけではなく、同業者に遅れを取るまいと「もっと飛ばせ」とタクシー運転手に檄を飛ばしている乗客に過ぎない。

    何度か著者は超高速トレーダーをギャンブラーに例えている。
    曰く、顔の筋肉を読むのではなくルーターのもたつきを手がかりとする"ポーカープレーヤー"であり、あらかじめ結果を知ってすべてのゲームにベットしてる"カジノプレーヤー"...。
    だが、リスクを負うことも、市場に利益をもたらすこともないくせに、市場から大金を抜き取る彼らを"プレーヤー"と呼ぶことはためらわれる。

    アメリカの株式市場で、超高速取引業者の取引量が占める割合は半分にすぎないのに、発注数で占める割合が99%以上にのぼるのも、彼らが変動性に大きな価値を持っているためだ。
    変動性が新たな価格を作り出し、最初に新価格を目にできる高速トレーダーがそれを利用する。

    「金融仲介業は、資産にかかる税金だ。資産を持つ人間と、それを有効に運用する人間から支払われる手数料だ。税金を減らせば、経済のほかの部分は潤う。テクノロジーはこの税金を減らすはずだった。さらに投資家は人間のブローカーの助けがなくても取引相手を見つけられるようになったのだから、税金は全面廃止になっても良かったはずだ。ところが実際には、市場のど真ん中で新種の獣が起き上がり、税金は高くなった。しかもその額は何十億ドルにものぼる」

  • マネーの競争はソフトから結局ハードへ。いかに取引マシーンに物理的に近づけけるか、光の速さが勝負を決めるなんてのは思いもしなかった

  • [光陰矢のごとし、売買光のごとし]売買を確定させようとした瞬間、目の前から株が消える。そんな摩訶不思議な現象に悩まされたトレーダーのブラッドは、その背後関係を調べるのだが、彼が突き止めたのは儲けをめぐる想像を絶した「マイクロ秒」をめぐるレースと、食い物にされる一般投資家の面々だった......。その内容があまりにショッキングだったために、米国司法長官が調査指示を出すことにもなった作品です。著者は、『世紀の空売り』などの優れた金融ノンフィクションを手がけているマイケル・ルイス。訳者は、2014年6月に逝去された東江一紀と、氏からバトンを受け継いだ渡会圭子。原題は「Flash Boys -A Wall Street Revolt-」。


    とんでもない儲けの手口、そしてそれを支える規制や技術の進歩がわずかここ十数年の間に起こっていたという事実に衝撃を覚えました。10億分の1という人間が知覚し得ない時間をめぐったレースがそのまま個々人の財布の中に影響を与えていると考えると、すさまじいというか呆気に取られること間違いなしです。この問題に気づいたブラッド氏を始めとする関係者やマイケル・ルイス氏の着眼点は本当に、本当に鋭い。


    投資家や銀行、ファンドといった面々に加え、見逃されがちな(故に常に「公平・正常」であると思われがちな)取引所の存在に焦点を当てた点も評価ができると思います。金融という「ゲーム」を行うに当たり、そもそもそのゲームの会場の公平性や安全性はどのように担保されているのかという、考えてみれば慎重な考慮が明らかに必要なところが今日においては往々にしておざなりにされていたんだと気づかせてくれる一冊でした。

    〜人はもう市場で起こることについて責任を持てない。コンピューターがすべてを決めているのだから。〜

    脳みそがちゃぶ台返しされる快感を味わいました☆5つ

  • ☆2(付箋6枚/P346→割合1.73%)

    超高速取引、というコンセプトを聞いて思い浮かべたのは、裁定取引で価格差を検知し、それをやり取りするのに他の業者と競う為速度を競う、というイメージだった(意味分かります??)。

    実際はそんな優しい物じゃない。
    「証券業者は一番いい条件で顧客の為に取引しなければならない」という法律を逆手に取って、一般の証券取引所と逆に取引に手数料を“払う”。そこで少額のオファーを多数の株に関して出しておいて、そこに売買取引が来た時点で他の証券取引所に出ている同銘柄の株を買い占めてしまうのだ。最初取引しようとしていた業者を後から追いぬくため(&他の同業者に勝つため)に超高速が必要になる。
    これって毎回インサイダーがいるようなものですよね。注文が生じるのが分かってから買い占めて値段を吊り上げるのです。そこにSEC(アメリカの証券取引委員会)が絡んでいるというのだから、世も末だ。。

    ・BATSでリストに載せた株が常に100%売買できたのは、彼らの注文を最初に受けるのがそこだったからだ。RBCの売買の情報が他の市場に行き渡る時間はなかった。「『なんてこった、BATSがいちばん近いからだったのか』とそんな感じでした。あのでかいトンネルを抜けたすぐ先ですからね」。
    BATSの中では超高速取引業者たちが、ほかの取引所で使える情報が入ってくるのを待っている。彼らはまずBATSで公開株すべてに対してそれぞれごく小さな―たいていは百株の―ビッドとオファー(買いと売り)を出し、情報を手に入れる。そしてX社の株の売り手と買い手を洗い出したあとで、別の取引所を目指すレースを開始し、売買を順番に行っていく。
    …あるブローカー(あなたが仲介料を払う相手)に、XYZ社の株を1株25ドルで10万株買うことを依頼する。市場には折よく25ドルで10万株分が、1万株ずつ10の異なる取引所で売りに出されていた。それらの取引所はどこも、あなたの代理であるブローカーに対し、手数料を要求する。しかしほかに100株分が同じく25ドルで、BATSに売りに出されていた。違うのはBATSがブローカーに報奨金を支払うということだ。この場合、シークエンシャル・コストエフェクティブ・ルーター(効率を自動判断するルーター)は、まずBATSへ行ってその100株を買う。するとこの動きがきっかけとなり、先の10万株は超高速トレーダーの手中に消えてしまう。超高速トレーダーは、すぐさま売りに転じて、XYZ社の株をさっきよりも高値でオファーしてもいいし、ほんの2、3秒だけ手元にとどもて、さらに値をつり上げてもいい。

    ・やがていわゆるフラッシュ・クラッシュが起こった。2010年5月6日、2:45、これといった理由もなく、市場は10分足らずで600ポイントも下げた。その後、数分間で、前より高い水準まで反発した。まるで酔っ払いが金魚鉢につまずいてペットの金魚を殺してしまったのを、必死で隠そうとしたかのようだ。目をこらして見ていなければ、気づかなかったほどの、あっという間の出来事だった。もちろん特定の銘柄を売買していた人は別だ。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、その間に最低1ペニー、最高10万ドルで取引された。ほんの一瞬前より60%も下げた株価で、2万回も取引された銘柄もあった。その5ヶ月後、証券取引委員会(SEC)は報告書を発表し、この大参事の原因は、カンザスシティーの名もない投資信託会社が、先物取引での大口の売り注文を、シカゴの取引所に誤って出したことだと糾弾した。
    …ニューヨーク証券取引所のCEO、ダンカン・ニードラウアーが投資家へのあいさつまわりを始めると、一流投資家のほとんどがそれに反応したのを、ブラッドは見逃さなかった。ニードラウア... 続きを読む

  • テクノロジーがここまで市場を食っているのか非常に驚いた。金融においてもアルゴリズムやコンピュータの支配が段々増えつつあるらしい。

  • 超高頻度取引業者の手法を暴いた、ノンフィクションである。

    章立ては、
    序:幻想のウォール街
    1:時は金なり
    2:取引画面の蜃気楼
    3:捕食者の手口
    4:捕食者の足跡を追う
    5:ゴールドマン・サックスは何を恐れたか?
    6:新しい取引所を作る
    7:市場の未来をかいま見る
    8:セルゲイはなぜコードを持ち出したか?
    終:光より速く

    といった流れである。

    米国でのレギュレーションNMSの実施後、数多くの取引所が乱立し、そのサヤを抜く超高頻度業者が登場。
    その後、シカゴとニューヨークを直線で結ぶ穴を掘り、光ファイバーで結んでしまう。果てはマイクロ波により、さらに高速のデータ通信が可能になるなど、米国の超高頻度取引業者の実態を暴いた本である。

    日本株の場合は、おおよそ1つの取引所に取引が集中しておりあまりこのような事態にはならないと思うが、それでもATSやダークプールは存在している点や、FX会社が乱立する中で、為替の世界では似たようなことが起こっている可能性はある。

    しかしながら、今回の本で登場した超高頻度取引業者は単なるアービトラージ業者であり、独自のアルファを持たない。速度競争に負けた会社から消えていく厳しい世界であると、改めて感じた。

    一方、このような業者が跋扈したとしても、確固たるアルファを持つことが出来れば、変わらずこの業界で生き残れるとも感じた。

  • 本書は、小説という形式をとって、米国株式市場で起きたこと、そして、日本の証券市場で起きつつあることを暴露している。

    証券会社に入社した時に、最初に教え込まれることは、証券会社は直接金融市場において、公正な取引を確保し、健全な市場運営を行うために、大きな市場仲介者としての役割を果たしていること。
    そして、それを担保するために、市場や市場関係者には、様々な行為規制が課せられている。その中の一つが、フロントランニングの禁止。

    フロントランニングとは、顧客から有価証券の買付け若しくは売付け(略)取引の委託等を受け、当該委託等に係る売買又は取引を成立させる前に自己の計算において当該有価証券と同一の銘柄の有価証券の売買(略)取引と同一の取引を成立させることを目的として、当該顧客の有価証券の買付け若しくは売付け(略)取引の委託等に係る価格と同一又はそれよりも有利な価格で有価証券の買付け若しくは売付け(略)取引をする行為。
    フロントラニングは、金融商品取引法により禁止されている。
    ただし、他の業者の注文の兆しを掴んで、それより先回りして、自己に有利な取引をする行為は、法では想定されていない。

    何度も形を変えて発生する(させる)好景気、ブラックマンデー、リーマンショックといったクライシス、そして、そして公設市場の合理化。技術革新、中でもコンピュータ分野におけるそれは、証券市場を劇的に変化させてきている。
    当然、市場参加者の顔ぶれ、そして、市場参加者のマインドも変化している。

    証券市場の発展が、業界を盛り上げ、国を繁栄させる。そして市場参加者の繁栄も約束される。そんな、健全な市場の発展よりも、直接市場の繁栄をポケットに突っ込んだほうが儲かる。そう考える業者もいるということ。
    そして、それは、フリーフェアグローバルといった耳障りの良い言葉とともにやってくる。
    法令等に書いていないことはやっていいこと。
    本書は、顧客のために健全な市場を取り戻そうとする主人公と、その戦いを描いている。
    その戦いを起すものは、日本の市場にも現れるのだろうか?
    「市場プレイヤーとしての証券会社の自己規律の維持について -論点整理-」(金融庁)
    http://www.fsa.go.jp/singi/mdth_kon/siryou/20060601/00.pdf

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フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たちの作品紹介

これは凄い本。 2008年のリーマンショックで、ウォールストリートは規制が強化され健全になった、と信じられてきたが、その規制と民主化によって逆に、市場は、本当のイカサマ市場になってしまった、ということを白日の元にさらした本だ。 証券市場の民主化によってニューヨーク証券取引所とNasdaq以外の証券取引所が乱立するようになった2009年ぐらいから、ディーラーたちは不思議な現象に悩まされる。コンピュータスクリーンが映し出す各証券市場の売値と買値で取引しようとすると、ふっと売り物や買い物が消えてしまうのだ。その値が消えて、買う場合だったらば、必ずそれより高い値で、売る場合だったらばそれより低い値で取引が成立してしまう。 ウォール・ストリートの二軍投資銀行に務めるブラッド・カツヤマは、ドンキホーテのように、単身調査に乗り出す。 するとそこには、私たちの注文を10億分の1秒の差で先回りしていく超高速取引業者「フラッシュ・ボーイズ」の姿があったのだ。 取引所も、SECも大手投資銀行もすべてぐる。簒奪されるのは、善良な一般投資家。 日本での「フラッシュ・ボーイズ」の跋扈を解剖したFACTA発行人阿部重夫の特別原稿も収録。。

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