トオリヌケ キンシ

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 798
感想 : 158
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901459

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の絵からファンタジーかと思っていたけど、世間にあまり知られていない病気を持った人たちの短編集だった。場面緘黙症の少女と引きこもりの少年、そしてポチ。共感覚を持ち、四つ葉のクローバーの〈声〉が聞こえる女性と誘拐された赤ちゃん。脳腫瘍で人格が変わり偽物になってしまった母。相貌失認で人の顔の見分けがつかない僕と、醜形恐怖症の彼女。(「フー・アー・ユー」これが一番好きだった) 半側空間無視で左側半分が見えないおじいちゃんと座敷童子のような孫。無菌室で明晰夢を見る青年。

  • 短編小説,6編
    どの短編も,心に傷を抱えた人が奇跡のような出会や人の優しさに触れて,癒されていく物語.あるいは,不思議な力に守られているような,希望を実現していく物語.珠玉の短編集.

  • 2015/5/13

  • 久々に読んだ加納朋子。重篤な病気にかかり、すさまじい闘病生活を送ったことは耳にしていたし、その時のエッセイが話題になったのも聞いていたけど(いずれ読みたいと思ってるけど未読)

    元々読ませる文章を書く小説家だと思ってたけど、自らの闘病という経験を筆に託して、こんな短編集がかけるようになっていたとは、恐るべし加納朋子。

    色んな種類の病気や障碍と向き合う人々を描いた作品だから、凡百の作家なら筆の方向をもっと安易な「泣かせます」だの「勇気を与えます」だのに切るんだろう。この作品群もある意味涙も出そうになるし、なにより思いっきり勇気を与えてくれる。けど、薄っぺらい「世界中が泣いた」的なところに居座らない筆運びが、読者の心を刺激する。

    で、感動しまくって「上手いなぁ」と思ってるところにラストの「この出口のない、閉ざされた部屋で」がズシーンと来る。「甘ったれるな、きちんと生き抜け」と右頬にストレート見舞われる。背筋がしゃんと伸びて、明日から1日1日を大切に丁寧に生きようと決意する。

    何か哀しいことがあった時、読みなおそうと思った、元気出せ本コーナー常駐有力候補である。

  • よくある青少年の闇がグサグサくるけれども、トンネルをこえた光に触れると、その闇が愛おしく感じる。

  • 日常に紛れ込んできた不思議な事件の真相には、それぞれの人の事情が実は潜んでいた。その「事情」をバイアスに、不器用だったり純情だったりする人々のあいだの絆を描いた短編集です。
    どの短編にも、細やかに優しい作者の目線がいきわたっていて、しみじみとあたたかい心地にさせてくれます。中には悲壮な事件もあるのですが、それでも、打ち克つ人と人の愛情、親愛が、とても真摯に描かれていて、ほっとさせてくれます。
    勿論世の中は厳しいことも、うまくいかないことも多くあります。けれど、それだけでなく、どんな「事情」があろうとも、きっとどこかに救いは、幸福は、あってくれるのだと、そう思わせてくれるようでした。そんな、とてもとても、やさしい物語たちだと思えたのでした。

  • どれもいい人ばかりが出てくる、ふわふわした話、という印象でした。表題作の「トオリヌケキンシ」は、後半の展開が唐突な気がしました。

  • 短編6つ。「座敷童と兎と亀と」が好き。
    あぁ、読んでて気付かなかったけど、なんか医学的なテーマがあったのね。場面緘黙症、共感覚、人格変化、相貌失認、半側空間無視、明晰夢。

  • 6つのお話が最後に少しだけ交差する連作短編集です。
    どのお話も心にじんわりふんわり優しく効きます。
    主人公たちが抱える悲しみや生き辛さはそれぞれで
    どれも胸に迫るものがあるのだけれど、
    誰か一人でも本気で寄り添ってくれる人がいたら
    人はがんばって生きていける!
    読み終わった後、
    明日から、あたがんばるぞ~って思えました^^
    やっぱ加納さんの小説好きだ~♪

  • 派手な話じゃない。むしろ地味。
    だけど、私が好きなのはこんな空気なんだなーと、改めて実感。
    装丁から受ける印象と、読後の印象が見事に一致。
    秋の夜更けに一気に読みました。
    幸せな時間をありがとう。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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