ブルース

著者 :
  • 文藝春秋
3.50
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本棚登録 : 393
感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901794

作品紹介・あらすじ

外道を生きる孤独な男か、それとも女たちの「夢の男」か――釧路ノワールの傑作、誕生。没落した社長夫人が新聞の社告の欄に見た訃報、それはかつて焦がれた六本指の少年のものだった。深い霧たちこめる北の街の「崖の下」で生まれた男が、自らの過剰を切り落とし、釧路の夜の支配者へのしあがる。男の名は影山博人。苛烈な少年時代を経て成熟していった、謎めく「彼」をめぐる八人の女たちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • うーん、どうだろう。
    面白ことは面白いんだけど内容が薄っぺらいかな。
    レビューでも桜木紫乃の新境地と書かれていたりするけれど、主人公が男性になっただけでこれと言って目新しいこともない。
    桜木さんお得意の連作短編集で安易に話をつなげたポルノ小説まがいのような・・・。
    まあ、帯にも写真入りの壇蜜が載っていると言う時点で予想はつくので仕方ないか。

    両手両足に六本指を持つ謎の男、影山博人。
    8編の短編それぞれでは彼を取り巻く女たちの姿が時系列で描かれる。
    彼女たちの目線を通じて博人がどんな生い立ちだったのか、どのようにして釧路の街を牛耳るフィクサーに成り上がって行ったのかつまびらかにされていく。

    桜木さんの連作小説はいつも巧いなと感心するけれど、今回はなんとも中途半端。
    博人の内面が描かれていないせいかなぜ女性達がここまでこの男に惹かれてしまうのか理解できず。
    要するに見た目が良くてセックスが上手いってことなんだろうけど。

    そう考えるとこの小説は大人の女性の願望がつまったファンタジーなのかもしれない。
    それが前提で読めば良かったんだ。
    「ラブレス」のように人の生きざまを壮大に描く作品を期待するからがっかりしてしまうのだろう。
    次作に期待。

  • 感想
    読後はう〜ん、なんだかなぁ。という感じ。博人がどのようにしてのし上がったのかは分からないが、女性を惹きつけ、その才を使ってのし上がったのだろう、と推測する。

    何にでも熱中する訳でもなく、どこか冷めている、しかし見放さないそんなところに皆惹かれるのだろうか。

    あらすじ
    六本の指を持つ男、影山博人。寡黙で暗い印象を与えるが抱かれた女は彼のことを忘れられない。ある時は娼夫、詐欺師、仲介屋などと名乗る彼は謎めいた存在。やがて男は釧路の街のフィクサーへと成り上がっていく。

  • 先に続編を読んでいたので、ヒロトがどんな風に頭脳を駆使して成り上がったのかに期待して読んだ。でも駆使してたのは頭脳では無く専ら下半身というオチ。死後に美化されすぎた感が否めない。

  • もんでんあきこさんによって漫画化されている作品という事で読んでみた(^^)こういう闇を持つ男って、もんでんさん得意そうだわ~(^o^)そんな男に惹かれる女の気持ちも少し分かるわ~(*^^*)っていうか、ただ単に「すごく巧い」からか?(^^;)

  •  前からこの作家に興味を持っていながら、直木賞受賞作すら読んでいない状況で、先にこれはと思う本が出てしまった。連作短編という形を取りながら全体が長篇小説としても読めるこの本、なんとキャッチコピーが<釧路ノワール>。

     釧路を舞台にした小説と言えば、高城高。彼の時代を超越した短編小説群は秀逸で、ぼくはとても好みである。何よりも、感情移入を見せない距離を置いた淡々とした文体に、日本ハードボイルドの始祖の一人と言われる意味を感じ取ることができる。

     さて本書の桜木紫乃も、その意味ではただものではなかった。8作の短編で、8人の女性を通して、一人の男を語らせる一冊となっているのだが、この男の生涯が凄まじい。一作一作の短編に凄みがある。異なる種類の凶器が並べられた危険な陳列台のようだ。それらを通して表現された男が、どのような修羅の人生を送ってきたのであるか、はっきりと表現することはせず、その断面断面だけを、切り口のように見せてゆく。

     男の生い立ちも(おそらくその親の生い立ちも)、小説の中で徐々に露わにされてゆく修羅の道だったのだが、釧路の底の底のような生活から脱け出し、いくつもの怪しげな職業を経て、裏社会の一大人物にのし上がってゆくという、おとぎ話のような成功物語も、陰影の濃いこれら短編作品群の連なりを通して見てゆくと、男の内側の闇の深さばかりが反映されているようにしか見えない。

     こういう不思議なモノトーンのノワールを書き切れる作者の筆力と、敢えて言えば、妄想力とに脱帽させられる。この方向性でさらなる凄みを追及してほしいと思うのは、きっとぼくだけではないだろう。

     ちなみに釧路や札幌の地理を知っていると、楽しみが倍々になると思う。それほど、釧路を知る作家の良さは、この遠き街の独特の匂い、音、港から湧き出す霧、寒さといったものすべてを小説に自然に写し込んでいるので、実は釧路という街がハードボイルドやノワールによく似合う、という新たな発見をかしこに見つけることができるのである。

  • 劣悪な環境に育った少年が力を付けて社会を裏で回して行くという怪しくぞわぞわする話。彼と出会う女性たちのオムニバス形式で、彼の態度の変化や生活環境が見えてくる。冒頭で死亡したことが明かされているが、読み進めると段々応援したくなってくるので悲しくなる。ブルースRedもぜひ読みたい。

  • 著者の最新作『ブルースRed』が本作の続篇だと知り、慌てて追加した。昭和から平成の北海道・釧路を舞台にした8篇から構成されたノワール。6本指を持つ影山博人が、己の才覚のみを武器にして成り上がっていく姿を描く。……のだが、影山と関係する8人の女からの目線なので、彼が女達になにをしたのか以外どのようなことをしてきたのか定かにはわからない。相当な性技の持ち主であることは確かだが(笑)。

  • 大好きな桜木さんの作品だが、今回は切ない感じだった。幼少期からいろんな辛いことも乗り越えて生きてきた博人に、もっと違う生き方をしてほしかった。

  • 「星々たち」に続いてまた桜木ワールドへ。
    主人公は美貌の男性ですが、登場する女性のテイストはやはりみんな似ていると感じてしまうのは私だけか。
    しかし桜木さんが影山を楽しんで書かれているのが伝わります。

    映画化は難しいんでしょうけど何だか映画で観てみたいようなストーリーです。女は指がきれいな男に惹かれる…流石だな~と思いますね。ただ単に指がきれいなんてものじゃなくその指の物語が男の人生について回る…それぞれの章の街の空気感も登場人物たちの背景から滲み出てくるような文章です。
    読み進めていくと、釧路のしっとりとした濃い霧に包まれているような気持ちになってきます。

    女としては影山のような男に出会ってみたいですねぇ。
    一生で会うことはなさそうな人種なだけに。

  • 女たちの口から語られる影山のすがたは陽炎のように曖昧なのに、様々な時代のどの影山も確かな存在感があり、強烈な魅力を放っている。
    哀しみと引き換えに女の欲望を叶えてきた影山の失われた6本目の指は、もしかしたら私のなかにあるんじゃないかと錯覚しそうになるほどの生々しさ。かなしく、切なく、とても美しい物語。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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