風のベーコンサンド 高原カフェ日誌

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901831

作品紹介・あらすじ

“空腹警報絶対注意”の高原カフェを舞台に奇跡が起こる――。百合が原高原に一軒家カフェ「Son de vent(ソン・デュ・ヴァン)」を開業した奈穂。かつてペンションブームに沸いたこの高原も、今はやや寂びれ気味。東京の女性誌編集部で働いていた奈穂が、冬には雪深く寒さの待ち受けるこの地へ移ってきたのには、深刻な理由が――エリート銀行員の夫・滋のモラスハラスメント(精神的虐待)に堪えかねて極度の自律神経失調症に陥り、これまでの生活すべてを変えるためだった。 夏は美しい自生の百合の花が咲き、秋は紅葉が見事なこの高原には、「ひよこ牧場」のバターやミルク、ソーセージやベーコン、「あおぞらベーカリー」の自家製天然酵母のパン、村役場に勤める村岡涼介の口利きで手に入るようになった有機野菜など、自然豊かな恵みがいっぱい。「高原のチーズクリームシチュー」「ひよこ牧場のベーコンサンド」「百合が原ポークソテー」「野生きのこのオムレツ」など、当日の仕入れでメニューを組む奈穂の料理は地元客からも好評で、観光シーズンにはお客を集めるようにもなる。 そんな奈穂のカフェを訪れるのは、ひとりの作業員風の男(『風音』)、離婚に決して応じてくれない夫(『夕立』)、ご近所の農家のお嫁さん(『豊穣』)、海外帰りの美しい経済アドバイザー(『融雪』)ら、それぞれが事情を抱えていた。奈穂の料理は彼らの人生を何か変えることができるのか? 実は奈穂自身が抱える現実も厳しい。スキー場が閉鎖され、新規ホテルに客が集中する状況で、奈穂は初めての冬を凍れる高原に留まって奮闘する。そして二度目の夏の訪れを前に、カフェ「Son de vent」に奇跡が訪れる! 女性を主人公に多くのベストセラーを輩出してきた著者が、自らレシピを試して「絶対においしいものだけ」がぎっしり詰まった連作集は、読者に栄養をたっぷり届けます。

感想・レビュー・書評

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  • 融雪の章で
    男女の恋にスポットを当てて
    融雪の季節、春が訪れた。と、
    恋と季節をかけ合わせているのが素敵でした。

    凝ったお料理好きです。
    小洒落た料理って難しいから
    目の前のことしか考えれなくなる。
    そんな何も考えたくない時にレストランのようなご飯を作ることがあります。
    それにしてもアイディアがすごい!

    そして、モラハラ夫。
    愛なのか執着なのか分からないけど
    菜穂の事は歪んだ形だとしても愛していたのでは。
    1人になりたくない、とても分かります。
    菜穂を自由にしてあげたとき元夫も自由になれたと思う。
    手放す、逃げるって時には大事なんですね。

    とても良いお話でした。
    続きも読みたいです♪

  • 高原のカフェの風が心地よい雰囲気の中、少し寂しい気持ちや切ない気持ちも伝わる。静かな場所で読んだからかな。
    初めて読んだ柴田よしきさんの本。続編も読もう。

  • 高原に自分の目指すカフェをオープンする奈穂。
    それを支える高原の農家を中心とする住民との友情物語。
    奈穂は脱サラで、出版社の副編集長だった。離婚申請中。
    訳有りで、トラウマ抱えながら懸命にカフェを切り盛りする。研究熱心な頭の良い健気な女性。かなり好感度が高いです

  • 冬は雪に覆われる。それは外の人間にはわからない苦労があるものなのだろうな。

    『この世界のどこかには、自分にとっていちばん居心地のいい豊かさがあるのかもしれない。その豊かさにならば飽きることもうんざりすることもなく、ただただ、それにひたって幸せだと感じられるような…そんな幸せが。』

    登場人物の一人の言葉。
    この一言は胸に残りました。

  • 地方創生、料理小説、恋、仕事、人生。

    力強く様々な場面を生きぬく女性たちの姿をみれる本。
    厳しい自然の中を生き抜く、自分のビジネスに真っ向から勝負する、閉鎖的な人付き合いの中からの脱出、築いてきたものを手放し本心に従う生き方、自分がいいと思える恋愛、……。登場人物がどのキャラも素朴だけど魅力的です。身近にいるような人たちという感じで、感情のトレースがしやすかったです。

    主人公の、、今生きている土地への愛情というものが、力強く伝わってきます。私もいつか、心奪われる土地と出会って、全力でその場所やそこに住んでいる人のため何かに取り組む、ということに憧れを抱きました。

    料理の描写、美味しすぎました。その土地で生まれた素材や旬のものをアイデアや知恵、工夫で美味しく最高な状態でいただく。それこそ贅沢な食事なのかもしれないなと思いました。

    引き続き美味しいものが出てくる小説読みたいです笑

  • 30代の女性が一人で切り盛りしている高原カフェ。
    地元で採れる豊かな食材と、地元牧場の乳製品やベーコン等を生かして作られる、ひと手間かけた美味しいランチ。
    建物もペンションを改装したもの。
    これは特に女性に好まれるカフェに違いない。

    私の地元にもこれに似た高原カフェがあり、以前よく通っていた。
    料理の味はもちろん、周りの景色や店の雰囲気も含めて楽しめる憩いの場。
    それは自分のためのご褒美と癒しの時間だった、とあの頃を懐かしく思う。
    心地よい空気と、心地よい時。
    日常に疲れた人もほんのひと時幸せになれるはず。
    田中さんご指定のさくさくのベーコンサンドを私も食べたい。

  • 高原カフェを舞台としたお話。この中の『融雪』は先日読んだ『和菓子のアンソロジー』にも収録されています。

    美味しそうなものが沢山出てくるので、読んでいてお腹が空くかなーと思ったけど、あまりにも料理がお洒落すぎて(普段食べているものとかけ離れすぎていて)、私には味が想像しきれませんでした(;´∀`)
    ひよこ牧場のベーコンや乳製品、あおぞらベーカリーのパンなどは「うわー、美味しそう」と思ったんですけどね(素材がいい=美味しい、というイメージから)。
    あ、でもベーコンサンドはそそられたというか、作ってみたくなりましたよ(スーパーで売っている普通のベーコンでも美味しくできるかしら・・・?)。

    全体的にはふんわりと優しい雰囲気のお話ですが、暗かったり、切なかったりする場面(や展開)もあり。だからこその良さが結末には待っていて、読後はほんのりと温かい気持ちになれました。

  • ブクログのフォローしている人が登録していて興味を持った。
    もっと軽い感じの高原でカフェを開いた人の話かと思いきや、主人公の設定が思いのほか重たくてちょっと面食らってしまった。
    高原の冬の厳しさや、スキー場が閉鎖してしまう地域の状態が垣間見れた。近くにこんなカフェがあったら行ってみたい。

  • またまた
    おいしい 本 ブックリストから
    皆さんのおすすめ本を読みましたヨ

    主人公の生活はきっと大変だろうけど、
    やっぱり憧れます。

  • 表紙がとても素敵で、作者を調べてみたら、なんと、ミシンで刺繍されたものだった。

    わたしも主人公みたいに、自分を守るためならば、仏心は出さないで、鬼になろうと思った。

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著者プロフィール

 小説家、推理作家。
『RIKO-女神の永遠』で第15回横溝正史賞。
 猫探偵正太郎シリーズ、花咲慎一郎シリーズ など。

「2021年 『猫日記 Cat Diary』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柴田よしきの作品

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