デブを捨てに

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901992

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの平山作品。タイトルから表紙のポップさから楽しみになってくる。
    「いんちき小僧」金が無くあまりの空腹で、キャラメルを盗んだ男と知り合った、親子。
    父親のジュンイチローと、12歳の息子キチザに誘われて始めた偽ヤクの売人の仕事。それがバレた時に...。「嘘でも良い、嘘でも良いんだ!ぼくは」ジュンイチローとの親子ごっこを辞めたキチザの言葉が切なかった。

    「マミーボゴボゴ」生き別れた娘からきた、手紙をきっかけに再会すると、娘は子沢山の大家族になっていた。何となくモデルになっている大家族は...と考えとしまった。
    「顔が不自由で素敵な売女」ヤク中の彼氏に尽くす為に売女を生業にするチョチョミ。
    マンキューの店で働く俺と、三人は次第に仲良くなる。ある日ウチダという人物が来てから、マンキューは壊れて行った。
    チョチョミが良い女過ぎて泣けてくる。

    「デブを捨てに」一年前に腕を折られた俺は、一年後にまた同じ場所を折られる場面に出くわす。
    「デブか腕か」選べと言われて選んだデブ。
    車に乗り約束の場所へデブを捨てに行くまでが仕事だったが...。
    いつもの平山作品にしては、グロと暴力は少なめだったが、1短編を読み終わる頃には、登場人物の誰かを好きになる。
    冒頭、嫌悪感さえあったデブも、終盤はいとおしくて仕方なく、何とも言えない中毒性のある話だった。
    森に消えた彼女には幸せになって欲しい!

  • タイトルと見た目が面白くて手が伸びた。さくさく読める短編集。貧しくて綺麗!みたいなフィクションは、貧しさを消費させるポルノ作っとけばウケるだろって魂胆がいけ好かない。一方、貧しさ自体の扱われ方は軽くて、面白いフィクションはだいぶ好きだなと気付かされた。好きな作家さんかも。いんちき小僧は、悲観と悲哀の反対で生きて終わる孤高小僧が出てくる話。マミーボコボコは、貧乏大家族をdisってくれる話。顔が不自由で素敵な売女も悲惨で明るくて、私にとっては読了感が爽やかなお話。デブを捨てには文字通り。2,3が特に好きかな。

  • 面白かった!ビッグダディのパクリ「ジャンボパピー」、大丈夫これ?と思いながらも見るたび感じるモヤモヤがバッサリ斬られてスッキリ!表題作もほんわか終わって微笑ましいです。登場人物の行く末を思うと微笑ましいどころではないけれど。グロテスクな描写も多いですが、ユーモアでうまく救われている気がします。「いんちき小僧」だけがちょっと可哀想だったかな。平山さん初めて読みましたがクセになりそうです。

  •  破格の税込1000円で登場した、平山夢明さんの新刊である。売る気がまったく感じられない、ペーパーバックの装丁。らしいといえばらしいが…。

     「いんちき小僧」。薬の売人を手伝うことになった男。だが、薬の中身とは…。親子って何だろうと考えさせられる事件が多い昨今。君はそれでも本望なのか。意味はよくわからないが、「なんくるないさあ」の不穏な響きがやたらと印象に残る…。

     「マミーボコボコ」。マミーポコというオムツの商品名を思い出すが、関係ありません。平山夢明版ビッグ・ダディと言ったら怒られるだろうか。キラキラネームならまだましだぜ。局側もビッグ・ダディ側も、持ちつ持たれつだったんだろうねえ。

     「顔が不自由で素敵な売女」。タイトルからしてちっとも素敵じゃねえ。行きつけの店にあの客が現れてから、店主は変わってしまった。客の正体は…。客の気持ちは正直わかる。そして結末も救いがねえ。でも、何だかほっこりした話じゃないか(どこが)。

     表題作でやや長い「デブを捨てに」。これまた酷いタイトル。借金を返せない男が命じられたのは、タイトル通りデブを捨ててくることだった。運命を承知しているデブが健気じゃないか。クソのようなラーメン店での頑張りは泣けてくるぜ。

     でも、和菓子屋の店名の方がもっと酷え。デブの身の上話はさらに泣けてくるぜ。最後の最後の大勝負は手に汗握ったぜ。デブデブ書いてあって不愉快かもしれないが、すみません、そういう話なんです。2人ともいいことあるといいね。

     以上、装丁通りにクソでF◯◯Kな平山節全4編。今回はどこか切ない路線でまとめてきたか。ただし、本作に切なさを感じるのは平山フリークだけだろう。安いからって一般読者が手を出すのはお勧めできない。読んでふざけんなと思っても知りません。

     昨年は新刊が出なかっただけに、新刊を安く読めたのは嬉しい反面、複雑でもある。ご本人の意向かもしれないが、ファンとしては正当な対価を払いたい気がする。

  • キャッチーで読みやすい地獄。こんなに鮮やかに「嫌な感じ」をエンタメとして読ませる人もなかなかいない。

    『おれはクリスマスの靴下の中に〈参考書〉を発見したような顔になり』(p9)
    『厭なことがあった顔だった。他人の鼻血で真っ赤になったおにぎりを喰わされたらこんな顔になるのかもしれない。』(p99)

    などが特にお気に入りフレーズ。

  • 実話怪談と狂人の話が面白い筆者の小説はイマイチと思ってたが本作は面白い。大家族の異常な暮らしを描く物語は悪意に満ちてて絶品。悪賢い子供の策略で破滅に向かうホームレスも。表題作の妙にハートウォーミングな展開も良い。

  • 基本的に全てが面白かった。
    印象に残っているのは、「マミーボコボコ」と表題の「デブを捨てに」。
    「マミーボコボコ」は大家族のドキュメンタリーを皮肉ってる感じ。ラストが胸糞悪かった!

    基本的に平山さんの描く世界は、低俗でクソみたいなどうしようもない世界なのに、嫌いにならないというか。そんな中で登場人物が築いていく人間関係は、すごく低俗で自分なんかとは全然住む世界が違うと感じるのに、清々しいもののように思える。

    あと、平山さんの作品に登場するデブキャラは、どこか愛すべきところがあると思います。この作品のデブといい、他作品「Ωの聖餐」のデブといい。

  • 短編なのに読み応え十分。

  • 2016/4/26

    最高!
    荒唐無稽なようでなかなか奥の深いお話たち。
    時間が経ってもタイトル聞けばすぐ内容思い出すと思う。
    とんでもないけど、愛がある。好きです。

    いんちき小僧
    マミーポコポコ
    顔が不自由で素敵な売女
    デブを捨てに

  • 平山夢明作品で、初めて涙が出るかと思った。ヤラレタ…。
    平山夢明初体験の人にオススメしたい作品。どうにか反芻が出る惨たらしい場面を耐えに耐えて読み切ってほしい。

    なんて爽やかな気分。愛おしさ満点。なんだこりゃ。

著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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