火花

著者 :
  • 文藝春秋
3.27
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902302

作品紹介・あらすじ

笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説売れない芸人徳永は、師として仰ぐべき先輩神谷に出会った。そのお笑い哲学に心酔しつつ別の道を歩む徳永。二人の運命は。

感想・レビュー・書評

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  • 3分の1程度読んで断念。文学的な表現、ストーリーで自分には合わなかった。
    この作品は本職のお笑いが題材になっているので、全く違う分野の緻密な取材を重ねた作品だとどうなるのかは興味がある。

  • 最近読了した『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』の中で、又吉さんの別の作品が紹介されていて、そういえばまだ『火花』読んでいなかったということに気づき、早速読んでみた。

    普段、純文学にはあまり触れていないこともあり、最初は文体に慣れるのに少し時間がかかったものの、純文学の中では比較的読みやすい作品だったのかなと思う。
     
    私は劇場に通ったり毎回の賞レースをリアルタイムで観るほどのお笑い好きではないけれど、お笑いはそこそこ好きで、芸人さんたちが語る裏話も結構好きだから、本作で芸人の裏側を垣間見ることができたのも良かったし、物語もラストまで純粋に楽しめた。
    特に笑ったのが、徳永の姉のピアノのエピソード、蠅川柳、ベージュのコーデュロイパンツ。
    スパースクの引退ライブもすごく良かった。

    また、p114「神谷さんが相手にしているのは世間ではない。 いつか世間を振り向かせるかもしれない何かだ。その世界は孤独かもしれないけれど、その寂寥は自分を鼓舞もしてくれるだろう」、p120「自らの意思で夢を終わらせることを、本気で恐れていた。全員が他人のように感じる夜が何度もあった。月末に僅かなお金を持ち寄って酒を呑み、不安を和らげ、純粋な気持ちで一切の苦難を忘却の彼方に押しやるネタをそれぞれが考え練り実行した」
    この部分は純粋に芸人さんたちに対するリスペクトの気持ちが湧いた。
    仕事で嫌なことがある時、ふと寂しくなったり落ち込んだりする時、笑いで救われることは多々あって、その度に、芸人さんの笑いを追求する姿勢は本当にかっこいいなと思うし、芸人というお仕事は本当に素晴らしいと思って観てきたが、やはりその裏にこうした滲むような苦難があるんだということを、文章を通して改めて知ることができたのは良かったと思う。
    又吉さんの他の作品も読んでみたい。

  • 面白いのに進まないという小説だった。テレビで拝見するお笑いを職業としている人達の世界なので、興味深かったし、その裏側を覗くような気分で読み始めたけれど、なかなか深かった。けれど何か残ったかと言われれば?だ。

  • こんなにも期待を裏切ってくれた本は初めてかもしれない。芥川賞作品は自分に合わないと信じ込み、1年間ほったらかした自分を恥じた。主人公・徳永は漫才コンビ(スパークス)の一人。彼には奇抜な天才である先輩のお笑いコンビ・あほんだらのメンバー神谷がいつもそばにいる。徳永は神谷の常識破りな芸に心酔し、神谷に褒められたい一心で芸を磨く。芸人は常に孤独と戦い、戦う姿勢を示し、自分を成長させないといけない。スパークスの解散ライブ、集大成の漫才の出来栄えにジーンときた。神谷の最後の温泉ダイブでの乳房は最高のオチだった。

  • 一本やられた、又吉に。
    この本は最後まで読まないと全く良さが分からない。
    予想外の結末に茫然自失。まいったまいった。
    こんなオチが待っていたなんて!

    読み始めはバリバリの純文学・・・、なるほど芥川賞だもんね、そりゃそうだよと読み進める。
    主人公は売れないお笑い芸人の徳永。その徳永の先輩である神谷が強烈なキャラクターでこの小説の肝となる。

    一貫して徳永目線で描かれる世界はどこまでも内向的で、主観的でへたれだ。このへたれキャラだけでもお腹いっぱいだけれど、それにもまして神谷の特異さに辟易とする。
    この二人の会話は、キャラの対比と言うよりも又吉が二人に分裂して延々とひとり言をつぶやいているような気分にさせられてしまった。
    なんだろう、読んでいて気色悪い。
    自己陶酔のような、自己否定のような・・・。

    でも途中でやめなくてよかった。
    まさかの展開。まさかのオチ。
    いやはや予想外に面白かった。これを面白いと言わずして何と言えばいいのだろう。
    どう考えてもお笑いのオチじゃないか!
    やっぱり又吉は芸人よね。
    芸人魂、あっぱれ!

  • 話題の本は積極的に読もうとは思わないタイプなのだが、この作品に対しては興味津々であった。これまでも芸人がテーマの小説をいくつか読んだことがあったので、又吉がどんな切り口でお笑いを描くのだろうかと。
    読み終えてみて、想像以上の面白さであった。多少荒削りな部分は多々あるけど、純文学というフィールドで、エンターテインメントである「お笑い」の悲哀を痛々しく、時に滑稽に描くとは。
    売れない芸人徳永と、破天荒という言葉では収まり切れない先輩芸人の神谷。神谷の強烈な個性に心底惹かれ、時に、生きるのに不器用すぎる彼を否定し。地道に活躍の場を広げつつある徳永に対し、あまりにも無茶苦茶な神谷のキャラが濃すぎてついていけないときもあるのだが、時々神谷の吐き出すセリフがものすごく心をえぐる。ネットで誹謗中傷をする輩に対し、「ちゃんと言うたらなあかんねん。一番簡単で楽な方法選んでるでもうてるでって。でも、時間の無駄やでって。ちょっと寄り道することはあっても、すぐに抜け出さないと、その先はないって。面白くないからやめろって。」という神谷の言葉に、胸を突かれた。
    少しずつ徳永と神谷の生き方にズレが生じ始め、もしかしたらこうなるのか…となんとなく展開を予測してみたら、それを裏切る意外な着地にものすごく驚いた。賛否両論あるだろうけど、これが又吉だからこそ導き出せる、神谷の生き様なのかなぁと。今までにない心の締め付け方をする小説だと思いました。
    読了後も心がざわつき、まだこの内容をうまく咀嚼しきれてない感は残っているのだけど、読んでよかったなと思う。オンリーワンの世界観。

  • 芸人として食ってゆく事の難しさをよく表現している。この本を読む迄は芸人の世界の厳しさなど、向き合ったことがなかった。今後漫才の見かたが変わってしまいそうに感じた。夢を追う事は素晴らしいが、自分や周りの人まで不幸にしてしまう前に、諦める決断も必要なのかも知れない。

  • うーっ、芥川賞の呪いが・・・難しい。読後感が、推し、燃ゆに似てる。不完全燃焼で、いつまでも、うつうつと引っ張って、何がが気になるんです。
    二足歩行は向いてなかった、みたいな。
    どういうこと??みたいな
    又吉さんは、洞察力がすごい、情景は浮かんでくる。自分らしく生きるって時として、狂喜だよな、世の中から逸脱してしまうこともある。
    人は、枠組みの中で生きることが必然と分かっていて窮屈だから自分らしくいきるという言葉に憧れる
    のかも。周囲の意見を聞くことも大切。

  • これまで余り馴染みのない純文学に興味を持ち、ネームバリューのある著者の作品を手にとってみた。
    序盤はなかなか波に乗れず…読み続けるのに苦労して挫折しかけたけど、ページを捲っていくと、いつの間にか神谷と主人公のやり取りが癖になってくるのに気がつく。

    お笑いに対する神谷と主人公の感性の違い…神谷は面白ければどんな表現も厭わないが、主人公は誰かを傷つけてしまう可能性がある場合は、ネタにすることを躊躇してしまう。いつまでも自分の理想に辿り着けない主人公の葛藤を、神谷が面白いか面白くないか以外の尺度に捉われるな、と諭す場面が印象的。理想に対して1ミリの迷いやブレがないところが凄い。
    他人に迷惑をかけるのはダメというのが前提だけど、どちらかといえば主人公寄りで迷いがちな思考の自分には耳が痛い。

    ラストで神谷の理解を超えた行動にリアルにドン引きしてしまったが、「笑いとは」というテーマを突き詰めたり、終盤の主人公のライブに胸が熱くなったり、深みもあり、心に刺さる台詞やシーンも多く、著者ならではの世界観を堪能できた。

  • 定期的に最初から最後まで読み直してしまうのは、又吉さんが人生の中で本気で考えたり感じたことを、真摯に文章に落とし込んでいて、あらゆる部分に刺さるフックがかかっているからだと思う。
    何度読んでも読み応えがある。

    神谷さんの言う「偽りのない純正の人間の姿を晒す」ことで「本物の漫才師」になれる者は、きっと一握りの天才だけで、その面白さが世間にまで届く超天才は、更に砂粒いくつかだけなのだろう。
    紛れもなく天才で、けれども世間には認められない神谷さんと、その輝きに憧れながらもがく徳永。2人の足掻きは滑稽で、切ない。

    太宰治は『一つの約束』という作品で、例えば難破した遭難者が、必死に燈台の窓縁につかまり、けれども窓の内の団欒を見て叫ぶのを躊躇し、波に飲まれてしまうような、誰も見ていない「美しい行為」を小説にしたいと言っている。
    『火花』は、まさに芸人の日の目を見ない一瞬のきらめきや、目視できない懸命さを、渾身の力で文章にした作品のように思う。

    • mayutochibu9さん
      ロッキーさん
      私の拙い備忘録的な感想を見て頂き、ありがとうございます。

      当時、「火花」が芥川賞を受賞したことにちなみ、太宰治の講義を...
      ロッキーさん
      私の拙い備忘録的な感想を見て頂き、ありがとうございます。

      当時、「火花」が芥川賞を受賞したことにちなみ、太宰治の講義を受けました。
      太宰治は「剽窃」の天才的な才能の持ち主であることが、知れば知るほど
      分かりました。社会人大学文学講座「盗用と剽窃」というテーマで5コマ
      ほど、老(若)男女問わず、講義を受け、Q&Aや最後に講義で得たものを先生が次回の講義の冒頭に読むというものでした。
      有名な「走れメロス」は自分の体験談と外国作品を上手くまとめ感動的な話になっていますが、事実はとても馬鹿馬鹿しいコミカルな体験談を重ね合わせ作品にしたものです。

      大学の先生はみな変わっていて、学部生には冷たいが、マスターやドクターにはとてもフレンドリーです。
      このとき教わった教授たちも、すごい質問をする方やレポートに関心していました。やはり受講生は太宰治好きの年配なの方が多いので、今の学生と比べると、新鮮な気分になったと言ってました。
      人生経験の浅い現役学生と還暦老人を比べるのは酷だなと当時を思い出す作品です。
      太宰の作品と「剽窃」された作品を読むと太宰の才能は凄いと感じます。

      「火花」で思い出しました。
      2021/11/09
    • ロッキーさん
      コメントありがとうございます!

      太宰治の「盗用と剽窃」の講義、とても興味深いです。
      「走れメロス」の体験談、宿賃が払えなかった旅館に檀一雄...
      コメントありがとうございます!

      太宰治の「盗用と剽窃」の講義、とても興味深いです。
      「走れメロス」の体験談、宿賃が払えなかった旅館に檀一雄を人質として置いて東京にお金を借りに行き、そのまま戻って来ずに将棋を指していたエピソードでしょうか(笑)

      「火花」、又吉さんが太宰ファンということで、どこか太宰の作品や、まつわる自分の思い出のイメージも喚起され、それもまた面白いですね。
      2021/11/09
    • mayutochibu9さん
      おまけ
      「津軽」は唯一だけ剽窃が100%ないと思います。自信ありません。と
      言った教授が笑えました。
      手紙なども剽窃したようで、叩けば...
      おまけ
      「津軽」は唯一だけ剽窃が100%ないと思います。自信ありません。と
      言った教授が笑えました。
      手紙なども剽窃したようで、叩けば埃が出てくる作家です。
      おばあちゃんの質問に汗かきながら、1週間調べた教授も凄かったです。
      withコロナの時代なので、来年度に好みの文学講座がオンライン視聴できるかもしれませんね。
      不真面目なのか?真面目なのか?ウナギのような人だったのに檀一雄さんは他にも敗戦処理係をたしかしたので、まねできないなと思いました。
      ではまた。
      2021/11/09
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著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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