火花

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著者 : 又吉直樹
  • 文藝春秋 (2015年3月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902302

火花の感想・レビュー・書評

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  • 一本やられた、又吉に。
    この本は最後まで読まないと全く良さが分からない。
    予想外の結末に茫然自失。まいったまいった。
    こんなオチが待っていたなんて!

    読み始めはバリバリの純文学・・・、なるほど芥川賞だもんね、そりゃそうだよと読み進める。
    主人公は売れないお笑い芸人の徳永。その徳永の先輩である神谷が強烈なキャラクターでこの小説の肝となる。

    一貫して徳永目線で描かれる世界はどこまでも内向的で、主観的でへたれだ。このへたれキャラだけでもお腹いっぱいだけれど、それにもまして神谷の特異さに辟易とする。
    この二人の会話は、キャラの対比と言うよりも又吉が二人に分裂して延々とひとり言をつぶやいているような気分にさせられてしまった。
    なんだろう、読んでいて気色悪い。
    自己陶酔のような、自己否定のような・・・。

    でも途中でやめなくてよかった。
    まさかの展開。まさかのオチ。
    いやはや予想外に面白かった。これを面白いと言わずして何と言えばいいのだろう。
    どう考えてもお笑いのオチじゃないか!
    やっぱり又吉は芸人よね。
    芸人魂、あっぱれ!

  • 話題の本は積極的に読もうとは思わないタイプなのだが、この作品に対しては興味津々であった。これまでも芸人がテーマの小説をいくつか読んだことがあったので、又吉がどんな切り口でお笑いを描くのだろうかと。
    読み終えてみて、想像以上の面白さであった。勿論荒削りな部分は多々あるけど、純文学というフィールドで、エンターテインメントである「お笑い」の悲哀を痛々しく、時に滑稽に描くとは。
    売れない芸人徳永と、破天荒という言葉では収まり切れない先輩芸人の神谷。神谷の強烈な個性に心底惹かれ、時に、生きるのに不器用すぎる彼を否定し。地道に活躍の場を広げつつある徳永に対し、あまりにも無茶苦茶な神谷のキャラが濃すぎてついていけないときもあるのだが、時々神谷の吐き出すセリフがものすごく心をえぐる。ネットで誹謗中傷をする輩に対し、「ちゃんと言うたらなあかんねん。一番簡単で楽な方法選んでるでもうてるでって。でも、時間の無駄やでって。ちょっと寄り道することはあっても、すぐに抜け出さないと、その先はないって。面白くないからやめろって。」という神谷の言葉に、胸を突かれた。
    少しずつ徳永と神谷の生き方にズレが生じ始め、もしかしたらこうなるのか…となんとなく展開を予測してみたら、それを裏切る意外な着地にものすごく驚いた。賛否両論あるだろうけど、これが又吉だからこそ導き出せる、神谷の生き様なのかなぁと。今までにない心の締め付け方をする小説だと思いました。
    読了後も心がざわつき、まだこの内容をうまく咀嚼しきれてない感は残っているのだけど、読んでよかったなと思う。オンリーワンの世界観。

  • 芥川賞、受賞おめでとうございます。

    熱海の花火大会のイベントに呼ばれた時に出会った
    芸人徳永と先輩芸人神谷さんの話。

    読み始めてすぐ思ったこと。
    私はもっと、純文学を読まないといけない
    ということでした。

    短い文章の中に、的確な表現が入っているものを好む私には、
    ごめんなさい、又吉さんの表現がちょっと苦手なんです。
    ただ、それって純文学に慣れてないからなんじゃないかと思うのです。

    ちょっと苦手な表現でしたが、物語は入り込めました。
    この先輩、面倒くさい神谷さんが私は大好きです。
    こんな人が近くにいたら、私も懐いてしまいます。

    徳永=ピース又吉さんというわけではなく、
    又吉さんの中には神谷さんも住んでいる、
    そんな感じが強くしました。

    物事を何でも突き詰めて考え込まない私。
    こんな風に深く深く考え込んでいくのって、
    しんどいのではと思ってしまいましたが、
    何かを創作するのには、特に人を笑わせるのには
    裏の裏の裏のそのまた裏で熟成させた表にすることも
    必要なのかもしれませんね。

    一気に芥川賞作家というプレッシャーをかけられて
    次をどんな作品にしていくのか。
    売れっ子芸人との両立も大変だと思いますが
    次回作も読んでみたくなる一冊です。

    次回作が出る前に、純文学も読んでおこうっと…。

  • 芸人としての又吉さんは好き。
    エッセイや歌集も
    又吉さんらしさが溢れていて(面白いなぁ)と好んで読んでいた。
    ただ、(小説に<らしさ>はいらないかなぁ)と言う気持ちはあった。

    未だに図書館では100人以上の予約待ちが続いていて(これは、当分読めそうも無いな~。)と諦めていたら、娘がプレゼントしてくれた。
    「お母さん、読みたがっていたから。」
    くぅ~!(泣
    う、嬉しすぎるぅ~っ。

    読む前から感動して開いた「火花」の中に
    又吉さんはいなかった。
    芸人さんの話ではあったが、登場人物の色が濃かったせいか、又吉さんの気配は皆無であった。
    (途中、出てくるネタの中にほんのちょっと感じたくらい?)
    お陰で私は、誰が書いたどういう作品という色眼鏡を外す事が出来、心から安心して「火花」の世界感に浸る事が出来た。

    漫才師である主人公の徳永は、純粋にお笑いが好きな根っから芸人。でも、義理堅く周囲の人間への気遣いや気持を汲む事も決して欠かさない、常識人的な好青年。
    そして彼が出会って惹かれるのが先輩芸人である「神谷」である。

    何よりもまず自分の好きな事を最優先にしてしまう、
    後先考えず、全てのものをおざなりにしても
    「おもろいこと」「人を笑わせる事」に
    人生を捧げて生きている男。

    バカげているだろうか?この神谷という男。
    例えばこの鍵括弧のなかの言葉を変えてみよう。
    「おもろいこと」を「微生物を研究すること」
    「人を笑わせる事」を「人を救う事」などなどに。

    するといきなり「バカ」から「天才」に変るから不思議だ。
    心からお笑いを愛する徳永が、神谷の事を心から信頼、尊敬していた気持が痛いほど伝わる。
    そして、
    ついでと言っちゃなんだが、おそらく又吉さんも…。

    読み終えてようやく(あぁ、又吉さんの作品だったなぁ)と思い出したのだから、おそらくず~っと後ろの方からそんな思いで見てたかも。(笑

  • 今まで読んだ芥川賞受賞作の中では、
    わりと読みやすく感じました。

    芸人としての道を探求し続ける徳永と神谷、
    延々と続く二人の苦悩と葛藤に、
    大げさかもしれませんが
    「あなたは今、自分と真面目に向き合っていますか?」
    と、問いかけられているようで…。

    話題になってから、又吉さんを意識してみるようになりました。
    いつも淡々としていて、変わらぬ表情からは、
    何を考えているのか想像もつかない。
    でも頭の中は常に夥しい数の活字が踊ってるんですね。

    何の先入観もなく読んでいたら、
    また違った感想を持ったかもしれないけれど、
    徳永(限りなくイコール)又吉さんになってしまうのは仕方がないですよね。

  • 知人が読み終わった本を借りて読む。
    テレビで見るピース又吉さんのキャラが好きで、しかも芥川賞受賞作で読みたいと思っていたのでラッキー!

    行間にも文字がみっちりつまっているような文章に、最初は読みにくさを感じた。
    が、読み進むにつれ、そのみっちり感が先輩神谷の持つ狂気や不器用さ故の切迫感と連動してきて、胸苦しい想いのまま一気に読み切ってしまった。

    常軌を逸しているとも思える神谷の生き方には共感はできず一種気味の悪ささえ感じたが、その狂気も、純粋さも、強さも、弱さも、優しさも、すべてひっくるめて天才のひとつの理想形なのかな、と感じた。

    しかし、どうしても徳永に又吉さんを映して読んでしまうので、では、神谷は誰をモデルにしているのだろうと、気になってしまう。

  • 情景の描かれ方がとても丁寧でした。

    読後はどうしようもない気持ちになり・・・とても胸が苦しくなりました。

    自分を貫いて生きる、それ故にうまく生きることのできない、世界に馴染めない神谷さん。
    神谷さんに憧れる後輩徳永。徳永は世界に馴染めないと自覚しつつも、生きるために神谷さんのようにお笑いの中で自分を貫いて生きることを選ばなかった。

    徳永の、好きなように生きる神谷さんへの嫉妬、蔑み、憧れ、尊敬という正反対の気持ちが混ざった感情にとても共感できます。

    「生きている限り、バッドエンドはない。」

    それでも、これからの神谷さんを思うと、なんだか途方もなく絶望した気分になりました。

    どうしても、又吉さんと徳永がかぶります。

    徳永と山下の最後の漫才は泣けました…。会話、ネタの掛け合いがやはり秀逸!

  • これまで又吉さんのエッセイや自由律俳句を読んでいたので、一体どんな小説になったのか、気になっていました。

    体温が低そうな淡々とした文章なのに、時折ハッとさせられる鋭いことや、ぶっとびそうなばかげたやりとりや、"笑い"に対する真摯な姿勢を感じさせる部分が入れ替わり立ち替わりやってくるので、終始胸がざわざわと波立つような感覚を味わっていました。
    1つのことに真剣に向き合い、もがいている彼らの姿は、どこかで自分とも重なる部分があり、彼らがうまくいかないほど落ち着かない気持ちになりました。
    ずっと泣き笑いみたいな表情を浮かべていた気がします。

    読後にタイトルが響いてくる小説でした。
    今回はストーリーを追うのが中心の読書だったので、もう一度、今度は又吉さんの哲学に注目して読んでみたい1冊です。

  • 言わずと知れた芥川賞受賞の話題作。
    売れない若手芸人が強烈な芸を持つ先輩に出会い‥

    スパークスの徳永は、熱海の花火大会で、聞く人もいない状況で漫才をさせられていた。
    この夜に先輩芸人の神谷と出会い、それからは毎日のように会って漫才論を語り明かす。
    素直に尊敬して影響を受けつつ、あまりに破滅型な神谷に、付き合いきれない面も出てくるのだった。
    しだいに徳永はテレビに出る機会も増えて、伸びて行くが‥
    徳永の内気で周りから浮きやすい、斜に構えていると誤解されやすいところなど、本人の経験から?
    本は読まない人という設定だけど。

    さすがに文章は丁寧でちゃんとしているし、まじめな雰囲気はテレビで見る姿とも違和感ないです。
    長年本を読んできた人らしい文学への愛情や尊敬も感じられます。
    芸人として培った感性や、おそらくモデルになった先輩だけでなく、変わった人物が身の回りに多かった経験も存分に生かされています。
    漫才のねたや、コントっぽい会話が混じるあたりは読みやすい。

    というわけで、基本は納得の合格点で、好感も持てます。
    個人的に★五つに出来なかったのは、お笑い論というか、そこまで極めようという気持ちに共感できなかったから。
    先輩の普通じゃないところ、このへんの濃さが、芥川賞の所以かな。
    ‥普通じゃない先輩なら知ってないこともない‥
    若い頃、出会うものかも知れませんね☆

  • 芥川賞おめでとうございます!
    ちょうど図書館で予約してたのが手元に来ました(買わずにすみません)。
    会話のシーンは大阪弁でとても読みやすいけど、さすが文章はもう落ち着いた作家さんの雰囲気かもし出してますね。
    今まで沢山の本を読まれてきたとよく耳にして、
    ふと私も子供の頃から沢山本読んできたけど、そんな私とはやっぱりどこか感じる事が違うんだろうし、言葉に置き換える事をキチンと出来るのって素晴らしい才能なんだろうなって素直に思えました。
    芸人さんとしても、これからも応援していきます!

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火花の作品紹介

笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説売れない芸人徳永は、師として仰ぐべき先輩神谷に出会った。そのお笑い哲学に心酔しつつ別の道を歩む徳永。二人の運命は。

火花の文庫

火花のKindle版

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