オールド・テロリスト

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著者 : 村上龍
  • 文藝春秋 (2015年6月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902395

オールド・テロリストの感想・レビュー・書評

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  • 村上龍氏の作品「オールドテロリスト」を読了。文芸春秋に連載されていた作品が単行本化された本だが、よもうよもうと思いながらもテロリストというタイトルに気がひけ読む野を躊躇していた作品だ。

    今回北海道へ戻って働くという転機を迎え、思い切って読んでみた。

    村上龍氏と古市憲寿氏の『この国の希望は何処にある』という対談のなかで古市氏の氏である小熊英二氏が若者、大人、老人の定義を「未来で評価される人が若者、現在で評価される人が大人、過去で評価される人が老人」としているというくだりがあったのだが、その定義にしたがうとこの物語に出てくるテロリスト達は歳は60、70、80代だが決して老人ではない。過去の実績などにはしがみついてはおらずいまもしっかり自分の基盤を持っている年齢は高いがしっかりとした大人達だ。

    彼達がテロを起こし、その真意を世に伝えるべく彼らから選ばれるのが主人公のセキグチだ。高齢のテロリスト達はどうやって未来に関与できるかを考えたあげくテロを起こすのだ。

    主人公セキグチは村上龍の以前の作品「希望の国エクソダス」にもでていたのだがその作品で独立国家を作ろうとする中学生の集団のリーダーが「この国にはなんでもあるが希望だけがない」という印象的な言葉を発していたのだが、その作品から15年後に書かれたこの「オールドテロリスト」の世界でも希望はまったく感じられない世の中であり、その現状打破の為に高齢のテロリスト達が立ち上がったというストーリーだ。

    作品のなかでのマスコミの凋落具合に関する表現も鋭く、「いまのマスコミの当事者が自分たちが真実を伝えていないという事自体に気付いていない」と切り捨てているが、元老の不自由さを海外から指摘されていてもいまだ何も変わらない今の状況を憂う筆者の嘆きの具合が深いのもよく伝わってきた。

    この作品を東京を離れるという転機の今に読んだのはとてもラッキーだった。希望を見つけにくい今の日本をあきらめてしまい自分を老人として世の中への関与をしなくなってしまうのではなく、危機感をなくす事なく何らかの社会への寄与が出来るような生き方をしなくてはとの思いを強くした。

    色々な人たちと仕事をしたなかで得た経験・知恵を国を形作る小さな部品である地方でそれらを生かすという事にチャレンジしたみたいと思わせてくる作品だ。

    セキグチとこうどうを友にする和風美人セキグチの愛に関するコメントもぐっとくるものが大いので、高齢の人たちだけではなく色々な人が楽しめると思う。

    そんな大人と老人ということを考えさせられる作品を読むBGMはTuck&Pattiの"Tears of Joy"だ。Time after Timeの名演だと思う。
    https://www.youtube.com/watch?v=N4ahjXagmWI

  • お久しぶりの村上龍。春樹より龍派。

    表紙からして,はっちゃけた武装爺さんたちがはちゃめちゃなテロ事件を起こしまくる話かと思ったら,思いのほか重苦しかった。

    舞台はほぼ現代の日本。大震災後,原発事故後で東京オリンピック前というどんぴしゃの設定。そして閉塞感ましましのいつもの村上龍ワールドは変わらず。

    主人公は「希望の国のエクソダス」で中学生らを取材したあの人で,今は落ちぶれきったただの無気力なおじさん。

    対する爺さんたちは,年は取ってるけど社会的地位も高くて意志の力にあふれててよっぽどしゃんとしてて,ましましの閉塞感みたいなものを打ち壊したいテロリスト。

    爺さんたちの計画に主人公が巻き込まれていって,爺さんたちの主張に心揺れたり,でもテロはだめって思ったりと葛藤してゆくのですが,物語の読者としてはどうしても爺さんたちに肩入れしたくなる。

    主人公はほんと駄目人間で,吐いたり精神安定剤のみまくったり震えたり泣いたりばかりしているので,さわやかな読後感は感じない笑

    でも続きというか,その後がどうなったのかが気になる本。やっぱり村上龍はいいなあ。

  • いや~久しぶりの村上龍さんです。
    コインロッカーベイビーズ以来か?そんなわけないか。
    なんか久々に骨太の小説を読んだ、という感じです。
    そうか世のお年寄りは怒っているのね。
    いい加減なメディアに、ルールを守らない自転車乗りに、その他いろいろ・・・
    まあお年寄りじゃなくても、ルール違反は困りますけれど、それらを罰していくという少々過激なお年寄りと、そのお年寄りに指名された三流週刊誌の記者(廃刊により失業、妻子に逃げられホームレス寸前)のバトルというか、テロリスト集団の核心に迫っていくというお話です。
    ちょっと残虐で、ちょっと考えさせられる一冊でした。

  • 2015.11.2開始
    2015.11.9読了
    「希望の国のエクソダス」に登場したライター・セキグチが主人公。

  • すでに社会の中枢から(表面的には)外れた老人たちによるテロという着想がおもしろいし、現実社会とのシンクロも見事で、あながち荒唐無稽と思わせない。気になったのは主人公セキグチのグダグタ振り。グダグダ過ぎてリアリティがそがれる。ここさえなんとかすれば、もっとスピード感のある小説になったと思う。惜しい。

  • 珍しく中盤からなかだるみに感じたのはあたしが劣化したからか?ともあれ2011年にこのテーマで書けるのがすごいと思う。できればポンちゃん絡めて完結編が読みたいけど、そんな類ではないこともわかってる。

  • トップダウン型のテロ組織ではなく、
    ネットワーク型のテロ集団?が
    何の罪のない人達相手に無差別なテロを繰り返します。

    そして実行犯は誰かに洗脳されています。
    洗脳している人間は今のところ罰せられる様子がありません。
    そんなこの物語の中で元官僚のセリフが印象的だったので抜書。

    『テロの実行犯は、静かな怒りとは無縁です。衝動的に通行人をナイフで刺すような人にあるのは、甘えなんですね。もちろん彼らにも怒りという感情はあります。ただ、静かな怒りではなく、現実が思うとおりにならないというという幼児的な怒りです。そういう人は、甘えられる対象を常に探しています。自分をコントロールできない、また問題が何かもわかっていないし、見ようとしないし、認めようとしない。だから現実が思い通りにならないのは自分自身のせいではなく社会や他人のせいだと決めつけていて、誰かに、頼りたい、服従したい、命令されたい、そう思っているんです。今、そういう人間は社会に溢れかえっているので、探しだして、洗脳というか、誘導するのは、そう難しいことではないでしょう。何がすばらしいのか、何に価値を置くのか、わかっている人間のほうがはるかに少ない世の中です。』p334

    最近の現実世界でのテロのニュースとリンクする言葉で刺さりました。
    2016/03/28 10:46

  • 現代の日本を憂える老人たちが、次々とテロを起こす。その一連の事件に巻き込まれることになった中年男性が、主人公。

    表紙の絵から、コメディタッチかと思いきや、重めの作品だった。テロの理由は、日本を廃墟にする必要があるということ。戦後の焼け野原から復興したように、いったんリセットしなければ腐りきった日本に未来はないという訳だ。
    突拍子もない理屈だし、無差別の大量殺人は許されるものではないのだが、主人公同様老人たちを応援したくなる一面もある。
    また、司令塔が存在する訳ではなく、共感する人たちにより拡散していくアルカイダ型のテロ、というとらえ方は興味深かった。
    ただ、安定剤とアルコールに逃げ込み続ける主人公には、いい加減うんざり。周囲の人間のほうが魅力的で、もう少し成長してくれてもいいのにと思う。
    執筆に3年以上を費やした作品であるため、同じ内容を繰り返している部分が多く、そこは単行本化にあたり整理してほしかった。

    今まで、読まず嫌いだった村上龍。思ったより癖がなく読みやすかった。
    たぶん、バブル期のトーク番組のイメージが強かったせいかな(あの番組自体は、ゲストのチョイスも含めおもしろかったので結構見ていたけれど)。今さらだけど、さかのぼって読んでみたくなった。

  • 舞台は東日本大震災から7年後の日本。妻子に逃げられ、仕事に
    もあぶれたフリー・ライターのセキグチの元に、以前仕事をしていた
    出版社の編集長から連絡が入る。

    某国営放送でテロを起こすとの電話があった。電話の主は高齢の
    男性。そして、彼はセキグチにルポを書くよう指名して来たと言う。

    当日、取材との口実を設けて国政放送のロビーに潜り込んだ
    セキグチの目の前で、実際にテロが起こる。しかし、実行犯は
    どこにでもいそうな青年だった。

    編集部に電話をかけて来た高齢男性の目的はなんなのか?
    セキグチは徐々に事件に振り回され、背後にいるであろう
    じいさまたちの思惑に絡めとられて行く。

    いや~、「村上龍」って感じの作品でした。『希望の国のエクソダス』
    も好きな作品なんだが、あれは中学生たちが自分たちだけの「国」
    を作る物語。

    本書はその対極に位置するのかな。セキグチの一人称で物語は
    進むのだが、そのセキグチを振り回すのが社会的にも成功し、、
    経済的にも安定したじいさまたちだ。

    腐り切った日本を、もう一度焼け野原に戻す!じいさまたちの憤怒が
    テロに結び付く。どんな動機でもテロはいけないと思う。でも、じいさま
    たちの憤怒には共感できてしまうのだな。

    特にじいさまのひとりが語るマスコミについてなんて、読みながら
    頷いてしまった。

    「年寄りの冷や水とはよく言ったものだ。年寄りは、寒中水泳などすべき
    じゃない。別に元気じゃなくてもいいし、がんばることもない。年寄りは、
    静かに暮らし、あとはテロをやって歴史を変えればそれでいいんだ」

    なんか、分かるんだよね。こういう気持ち。あ、でも私はテロはしません
    よ。本書の中のじいさまたちのように、満州からこっそり持ち帰った
    ドイツ製の兵器なんて持ってませんから。

    500ページ超の大作だが、じいさまたちの動きが気になってさくっと
    読めた。

    難点なのはセキグチの心理描写と、セキグチをサポートする美女・
    カツラギのキャラクターが途中で変わっていることかな。

    ラストは続編が出るか?と思えるような終わり方だ。でもね、こんな
    じいさまたちが実際にいたとしても不思議じゃないよ、今の日本。

  • 老人たちがテロを起こした動機が弱い。
    日本の閉塞感を打破するためか。
    その割には、日本を焼野原にしては逆効果の気がするが。
    外に敵を作って、国民の一体感を醸成することが、国内の暗部を隠すには手っ取り早いとは思う(特亜が現実にやっていること)。
    それを取らずにテロをしたのは何故だろう。危機を煽って、国難を打破しようとしたのか。それこそ焼野原からやり直そうとしたのか。一般人に犠牲が出ているし。考えれば考えるほど分からなかった。
    サイドストーリーが多いので3つのテロが起きてからが長かった。いつまで隠れ家で安定剤を飲んでいるのか。
    主人公が記事を書けるとも思えなかった。トンデモ本にはなるかもしれないが。

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オールド・テロリストの作品紹介

日本はもう一度、焼け野原になるべきなのか?経済の衰退した近未来の東京。「満州国の人間」を自称する謎の老人達が、次々に凄惨なテロを仕掛け始めるが…。著者の新たな代表作。

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