オールド・テロリスト

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902395

感想・レビュー・書評

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  • 閉塞感を暴力的に打ち破りたい衝動。

  • 久々の一気読み。『半島を出よ』のような「ありえる話」が面白く、恐ろしく、小説に入り込んでしまった。

  • 563ページの分厚さ。最初はその厚さにたじろいだが、読み進めるうちに没頭した。
    オールド=老人、という理解で考えてもらえば良いのだが、老人による日本をターゲットとしたテロ、のお話。
    背景には著者も書いているが戦争体験をした老人の中にも、経済的に成功して日本の社会に憤慨を覚えてる連中がネットワークで結束したら何ができるか、という実に面白いテーマだ。そしてその本当の目的が第三者である50代の主人公とその関係者で解き明かされるのだけど、それがまさに村上龍らしいというしかない。テレビに出演し、経済界の人たちと意見を戦わせ、社会問題にも切り込む彼らしい、内容。
    ちょっとネタバラシをすると、老人たちは日本をリセットしたいわけだけと、原発を破壊するという準備をしながらも、実際にはそれが目的ではない。本書を読んで「なるほど!」と膝を打った次第です。

  • 日本国内における連続テロの可能性を描いている点はおもしろいが、その他は特に取りあげるほどでもない。というか冗長。

    愛と幻想のファシズム、五分後の世界、希望の国のエクソダス、の焼き増し小説です。
    「戦後民主主義の総括および精算」はもういいから、次にいきましょう。

    「カンブリア宮殿」では何人もの骨のある日本人と絡んでいるのだから、その財産を生かした小説を書いて欲しい。

  • NHKのテロ、町中での首切りテロ、そして、映画館テロとニシグチとカツラギがテロリストの老人と最後の原発テロを防げるか。
    結局、老人たちは本望だったのだろうか?

  • 「70代以上の老人男性」というと、認知症とか介護とか、そんなイメージしか浮かばなかったけどハタと気づかされた。第二次世界大戦当時10~20代、実践的な軍事訓練を受けていた世代だということに。実際、特攻隊という自爆テロで仲間を何人も失っている。日本の将来のためになると信じていればこそ同胞は散っていったのに、その結果の今日の日本が、経済格差が広がる一方で、アメリカの顔色ばかりを伺う国になってしまったとしたらどうだろうか。年を取ることと引き換えに人脈と財力は手に入れた「老人男性」たちが心身ともにまだまだ元気だったなら、「こんな日本はもう一度全て破壊して焼け野原にしよう」と思う人が出てきてもおかしくない。そして、日本には何十基もの原発が存在する…

    なんかすごくリアリティのある話でした。さすが村上龍。それにしても主人公は精神安定剤飲んでばっかりだな。
    村上春樹と村上龍はどちらも大学の頃初めて読んだけど、それから約20年、村上春樹は私からどんどん遠ざかり、村上龍は寄り添ってきたという感じがする。

  • 希望の国のエクソダスの続編でしょうか。
    年寄りが、この世を動かしている、というプロットに、歌うクジラに、似た世界観を感じます。
    妙に元気な年寄りたちが淡々と事件(テロ)を起こす、という世界は、とてもリアルであります。

    オールドテロリストは、五分後の世界、以来、作者が追いかけてきた、戦う日本の一つの形、なのかもしれません。

    お金は、目に見えないところを流れている。例えば、銀行、企業、時に政府、あちらに行ったり、こちらに来たり。 信用の大きさで、扱えるお金も大きくなる。
    お金は、たくさんの川のように分かれたり、合流しながら、ぐるぐる回っている。流れているものを、つかむだけです。お金が流れが見えてくると、素手でお金をつかみ取れるようになります。
    私が、どの流れを掴んだのか、それは、聞かないでください。

    たぶん、そうなんだろうな、と思うわけであります。

  • 「オールド・テロリスト」
    奴らがやって来た。


    キャッチーな表紙に騙されてはいけない。中身は、残酷な小説である。しかし、何処か残酷だから読む必要なし!とかそんな意見は野暮ではないかと思わせる。


    主人公はある記者であり、敵役は老人です。只の老人ではなく満州を生きた老人や事業で成功した老人、一回事業を失敗した老人。彼らは、確固たる意志を持っているし、何不自由してる訳でもない(一回事業を失敗してる人も)。彼らは、やらなければならないという意志を以って悪役になるのです。それも単なる悪役ではなく、テロリストというクソ悪役。


    もちろん、テロリストはクソ悪役であり、同調するべきとこはないです。しかし、この小説の老人達は、全てが悪だとは思わせない所があります。だからこそ、記者は、彼らを悪とは思いきれない部分があります。何を以って悪なのかを今一度問うとこですね。


    主人公が、振り回される点もよいです。テロリストという振り切れた存在に相反する立場として、とても読者側に近い。感情移入しやすいとこがありますね。


    悪だけど悪とは決め付けれずに最後を迎えることになりますが、最後の最後で次への伏線があるような。


    長編ですが、なかなか良かったです。

  • 週刊誌の廃刊に伴い、仕事を失うとともに妻子と誇りを失い、鬱屈した日々を暮らす元フリー記者セキグチが主人公。ある日、元職場の上司より、取材依頼の電話が舞い込む。それは爆弾テロ予告に対する取材!?。その後何度も予告を受け取り、テロ現場に居合わせた事により、謎のテログループを追う事となる。追う過程で知り合った人々は、なぜか幸薄い、現実感のない人物ばかり。テロリストと彼等との関係は。。アルカイーダ型分散組織、応用システム工学、社会のリセットなど途中脈絡のない言葉がちらほら出てくるが、最後にそれらのキーワードが突然意味をなして集結する。エンタメ小説かつ異色ではあるがかなり引き込まれる作品です。

  • この小説は、すべてのページをスキャンして、すべてiPhoneで読んだ。紙の本にペンでハイライトするように、「ここは」と思った箇所はスクリーンショットを撮った。その数は10枚を超えている。こう言った類の小説で、ピンポイントで後から読み返したいと思う箇所がこれほどあるのは稀有だと思う。

    村上龍の書く小説なので、テロや戦闘のシーンには圧倒的な密度の濃さを期待したのだが、本書では「五分後の世界」ほどのそれは無かった。少し残念にも思ったが、これは主人公のセキグチの視点で描かれたものだし、作品のコンセプトによって描写の密度が変わるのは当然だと読み終わった後に気付いた。それでも密度の濃い文章を読みたかったけど。

    ただ一点気になったのは、主人公のセキグチは様々なシーンで自分なりの分析や解釈で物語が進むのだが、彼にそこまで鋭い視点が持てるのだろうかというシンプルな疑問はずっと消えなかった。シャープな観察眼を通した描写に当たる度に、これはセキグチの視点ではなく、村上龍の視点で描かれているとの思いがよぎってしまう。

    それにしても、オールド・テロリストの太田は最後に何と言おうとしていたのか。女に戦争させられるわけがないじゃないか、しかもだな、の後に続く言葉が気になって仕方がない。

    あと、カツラギは吉高由里子のイメージしか出来なかった。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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