モダン

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著者 : 原田マハ
  • 文藝春秋 (2015年4月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902425

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モダンの感想・レビュー・書評

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  • ワイエスの「クリスティーナの世界」をスマホで検索するとどこかで見たことある。って、MoMAで見たんだよね(^_^;)
    『楽園のカンヴァス』に登場するルソーの「夢」もそうだったけど、全く覚えていない。
    ウォーホルのモンローだとか、宇多田ひかるのPVに登場するロボットだとか、前衛的な理解不能なアートだとか、そんな印象しか残っていないMoMA。
    MoMAに行く前にこの本読みたかったなぁ。そしたらもっともっと楽しめたのに・・・。

    MoMAにまつわる5つの短編が収められた本書。
    9.11や震災にまつわるお話、ちょっとファンタジーめいたお話などなど。
    その中でも印象に残ったのが最後の「あえてよかった」。
    マハさんのご自身の体験が一番投影されているだろうこの物語は極めて短いけれど心に残った。
    日本から研修でMoMAに派遣されている麻美と、パートタイムで働くパティの交流が描かれる。
    上を目指し続けるパティの生き方が良かった。

    全体としては小ぶりな印象の作品で、同じく短編集の『ジヴェルニーの食卓』に比べるとどうしても劣る。ねらってる感も鼻につくし。
    でも単純にMoMAの歴史、裏事情、展示作品などを知るうえでは興味深い作品だと思う。
    もういっそのことマハさんには絵画にまつわるエッセイもしくは解説本を書いてほしいなと思うのですが、いかがでしょう。

  • MoMAにかかわる人々の短編5編。

    『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』が大好きなので、
    絵画もので今度はどのような物語なんだろう
    と思ってましたが…。
    この2作と違った趣向で、またまたすっかり
    物語の中に入り込んでしまいました。

    どの作品もとっても面白かったのですが、
    私は断然『ロックフェラー・ギャラリーの幽霊』
    が好きですね。

    マハさんのおかげで、美術館に行くようになった私。
    絵画がわからないので、とりあえず聞いたことのある
    大人気の作品展にしか行かないからか、
    チケットを購入するのも、中に入って作品の近くに行くのも大変な人・人・人の大混雑。

    作品をじっくり鑑賞することがなかなか困難であるのに、
    なぜ人々は美術館に足を運ぶのか。
    その理由は「ハリーの店」の会話にありました。

    そうか、私は目撃者だったんだ!

    そしてこの本の前に読んだ『若冲』で感じたことも
    ピカソの絵の表現の中に書かれていてうわっとなりました。

    もっともっと絵画を鑑賞したくなる一冊です。

    MoMAへの憧れが強くなります。
    『クリスティーナの世界』『ベアリング』
    ああ、この目で目撃してみたい・・・。

  • ニューヨーク近代美術館(MoMA)にまつわる5つの短篇が収められています。
    各短篇の主人公はキュレーターだけでなく、MoMAの警備員や幼い頃にMoMAの展覧会に魅了された女性など、立場はさまざま。
    かつてMoMAで勤務されていた原田マハさんだからこそ、さまざまな人々の視点から見るMoMAや所蔵作品を鮮やかに描き出せるのでしょう。

    特に好ましかったのは「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」。
    主人公のスコットは警備員で芸術作品に詳しいわけではない、ということにちょっと親近感が沸いたのかも。
    仕事帰りに馴染みの店で店主や常連たちと、MoMAの作品やアートについて彼らなりに話している感じが好きです。

    またMoMAのマシン・アート展をテーマにした「私の好きなマシン」も面白かったです。
    当時、機械部品を芸術作品として展示した試みは画期的だったのでしょう。
    自分がこれまでアートとデザインをちゃんと意識して区別したことがなかったことに気付かされました。
    まったく予想できない物語の結末に驚きと満足感を味わいました。

  • 「この絵画が意味する所は…」
    なんて説明そっちのけで

    >絵の声を直かに聞きたいものだね。
    自分の、ここでね。
    なんて胸を挿している様な熱い人達に
    きっと絵画は
    じ~~~ん、としていると思う。

    語り部は絵画かも知れない。

    MoMAで働く人達を見て。

  • 作中に出てくる作品を見たくなる。
    あまりにも気になるので実際に検索して「こんな絵なのね」と納得しながら読んだ。
    芸術に疎いけれど、読むとどこかむずむずしてくる。
    美術館に行きたいな。

  • マハさんも勤めていたMoMA、ニューヨーク近代美術館を舞台にした絵を愛する人々の連作短編集。モダン・アートの王国へ、ようこそ、と帯にありましたけどホントに未知の世界を旅した気分でたっぷり楽しめました!


    ・ボストン生まれ、ボストン育ちの日本人展覧会ディレクター・杏子、
    ・ 不審者を監視する役目のスコット、
    ・デザイナーのジュリア、
    ・アシスタント・キュレーターのローラ、
    ・日本から派遣された学芸員・麻美

    の5人がそれぞれの短編の主人公。

    マハさんの「楽園のカンヴァス」や「ジヴェルニーの食卓」のおかげで、美術館内で働く人たちの仕事内容(というか、ヒエラルキーとも?)を知りました。
    ここでも、杏子が展覧会ディレクターからキュレーターという

    “施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門職、管理職”(ウィキより)

    を目指しているからこそのあれこれが・・・。

    3・11や、9・11が大事な背景として出てきますが、その扱いがとてもリーズナブルでよかった!
    それぞれあまりに惨い天災・事件だけに、どうしてもフィクションがその事実に引きずられてしまい、感傷的すぎたり、言い方は悪いけど、ヒステリック、あるいは、スピリチュアル方向に傾いたり、というお話を多々読んできてしまっているので、書き手がきちんと消化して物語にしてくれました、という今作は気持ちのいいプロの業を見せてもらった思いです。

    モダン・アート(いえいえ、古典だって)には全然詳しくない私ですが、デザインや機械までも包括するMoMAの姿勢には、うんうん、そうなんですか、そういう美術もあるんですね、とストンと納得。
    楽しんで読むことができました。

    私が好きだったのは、監視員のスコットの話かな。(#^.^#)
    美術品ではなくて、終日、観覧者を見るのが業務である彼の元にやってきた“幽霊”の正体は?
    その幽霊が残した足跡になぜ美術館の人たちは舞い上がったの? 

    全編を通してキーパーソンが登場し、彼を知る人たちから語られる逸話の興深いことこと、優しいこと、そして哀しいこと・・・。

    現実の美術館を背景にしているだけに実在の人物たちも登場し、これってどこまでがホントのことなの?と、目くらまし状態になるのも、うん、これはこれで面白い!

    大作ではないですが、今までのマハさんの美術界ものの中で一番好きかもです。(#^.^#)

  • MoMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台にした短編集。

    実在の人物に、著者の他の作品に登場するおなじみの人物も加えた、5編の作品たち。

    美術館というと敷居が高く、一部の愛好家の人々のものだとおもわれがち。実際、私自身がそう思っていた。
    だが、その敷居を著者はグッと下げてくれる。
    「美術なんてわかりっこない」--そんな逆差別というか、偏見を、簡単に打ち砕いてくれる。


    「中断された展覧会の記憶」
    2011年3月11日。東日本大震災。
    この悲劇の後、MoMAから貸し出し許可を取り消された「クリスティーナの世界」(アンドリュー・ワイエス)を引き取りに、ふくしま近代美術館に向かう杏子。

    「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」
    MoMAの警備員スコット・スミスが、閉館間際に出会う不思議な青年。
    「彼女たちが体現しているのは、人間の心の奥深くに潜む闇だ。真実だ。人間は汚い。ずるい。醜い。だからこそ『美』を求める」(『アヴィニョンの娘たち』(ピカソ))

    「私の好きなマシン」
    機械の部品が、芸術作品として、MoMAの展示室に並べられた。
    「ここにあるものは、ジュリア。僕たちが知らないところで、僕たちの生活の役に立っているものなんだ。それでいて、美しい。それって、すごいことだと思わない? 僕は、そういうものを『アート』と呼んでいるよ」(MoMA初代館長アルフレッド・バー)

    「新しい出口」
    2001年9月11日。ニューヨークを襲った同時多発テロで、ローラ・ハモンドは大切な友人を失い、心に深い傷を残してしまう。友と企画した「マティス ピカソ」展の幕が開く。

    「あえてよかった」
    日本の私立美術館からMoMAに派遣された森川麻実。
    彼女の面倒を見てくれるパティに、帰国前ある悩みを相談する。
    MoMAのデザインストアの「ニュー・ジャパネスク」という小規模フェアでのウィンドウ・ディスプレイ。塗り箸が「×」の形にクロスされているのだ。

    スマホを片手に、登場する作品群を画像検索しながら読み進めていく。

    あの名画にこんなドラマが。そして、画家たちが、美術館員たちが、強く思いを入れて、大切に大切に育て育んできた芸術文化。そこに迸る情熱。

  • モダンアートの殿堂ニューヨーク近代美術館(通称「MoMA」)を舞台に、MoMAの美をそれぞれの立場から愛し、守り、時に発展させるために日々を過ごす人々の人生の断片を、 MoMAが所蔵する作品やその画家、そして同じく美を愛する人とのつかの間の交流と絡めて描いた短編集です。

    「中断された展覧会の記憶」
    3.11東日本大震災によって原発被害を受けた福島の美術館へ貸し出しをしていたワイエス作「クリスティーナの世界」を、会期途中で返還してもらうために日本に来た日系アメリカ人の展覧会ディレクター・杏子と、現地の学芸員・伸子との交流。そして、福島の子どもたちのための次の展覧会への強い意志と希望。

    「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」
    MoMAで監視員として働くアフリカ系アメリカンのスコットと、ピカソの作品を食い入るように見つめる謎めいたインテリ風の若い男性来場者との短いやりとりと、後日の予想外の事件。

    「私の好きなマシン」
    幼い頃にMoMAで観た、工業部品を美として展示した「マシン・アート」展をきっかけに機能美の虜となり、工業デザイナーとなったジュリアと、その斬新な展示を作ったMoMA初代館長アルフレッドとの交流。そして、ジュリアの機能美をめぐる新たな挑戦への参加。

    「新しい出口」
    9.11アメリカ同時多発テロにより、好敵手でもあり親友でもあった同僚・セシルを失ったことをきっかけに、PTSDを患うアシスタント・キュレーターのローラの選択と再生への希望を、作風は全く違いながらも好敵手で親友でもあったピカソとマティスの交流と彼らの作品に絡めて描いた作品。

    「あえてよかった」
    研修生としてMoMAに来た日本人女性・麻美と、彼女の世話役をするMoMAのパート職員でシングルマザーのパティとの交流と、美術館の付属ショップでみせたパティの真摯な対応。

    短編集なので、どのお話も当然短いのですが、それでも、MoMAの美を愛する彼らがそれぞれの立場でその美を守り、それを誇りにしていること、そして、そんな彼らが直面している人生の岐路や悲しみなどが、慈しむような視点で書かれており、とてもいい読後感でした。

    原田さんは、一時期MoMAへ勤務されていたそうなので、もしかしたら、実在のモデルがいるのかもしれない、と思ってしまうほど、登場人物たちの個性が際立っています。

    美術館って、色々な人の努力があって成り立っているんだな、というのも、よくわかりました。これから美術展に行くときは、もっと携わる人に感謝しながら鑑賞しようと思います。

    ちなみに、この作品は、スピンオフキャラやエピソードの関連性から、原田さんの「楽園のカンヴァス」と「ジヴェルニーの食卓」を読んだ後の方が、より一層楽しめると思います。

  • MoMAを舞台に、著者のキュレーターとしての経験をふんだんに取り込んだ(おそらく実際に、MoMAで勤務しながら体験し感じていたことだったに違いない)短編5編。

    実在の人物や事件も各編に出てくる中で、秀逸だったのは、福島原発の事故を美術作品の展示という視点から描いた「中断された展覧会の記憶」だろう。被害そのものだけでない、原発事故が抱えているものの大きさに、改めて思い至らせられた。

    全体としては、美術に疎い人(私とか…汗)にはあまりピンとこない部分があっても、それなりに楽しんでさらっと読める作品集だったかな。

  • ☆4つ
    著者も務めたことが有るニューヨーク近代美術館(MoMA)にまつわるお話数編。
    ちょうど同時に読んでいる沢木耕太郎の近著『キャパへの追走』とかなり接近した内容があって「おお」同じ史実なのね、などと思いながらよめました。
    良かったよかった。

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モダンの作品紹介

ニューヨークの中心、マンハッタンに存在し、1920年代から「ザ・モダン」と呼ばれたモダンアートの殿堂。それが「MoMA」ニューヨーク近代美術館。近現代美術、工業デザインなどを収集し、20世紀以降の美術の発展と普及に多大な貢献をしてきたこの美術館を舞台に、そこにたずさわる人々に起きる5つの出来事を描いた自らの美術小説の原点にとりまくんだ美術小説短編集がついに刊行。『楽園のカンヴァス』で、山本周五郎賞を受賞、本屋大賞三位を獲得した原田マハが、半年間勤務し、『楽園のカンヴァス』でも重要なモチーフとなった〈ルソー〉の「夢」も所蔵する「MoMA」が舞台。『楽園のカンヴァス』とは、世界観を共有し、その作中人物も登場。「新しい出口」は、マティスとビカソ、そしてある学芸員の友情と別れを描いた作品。そのほかにも、アメリカの国民的画家〈アンドリュー・ワイエス〉と〈フクシマ〉の原発事故について描く「中断された展覧会の記憶」、MoMAに現れる一風変わった訪問者にまつわる監視員の話「ロックフェラーギャラリーの幽霊」、初代館長アルフレッド・バーと、美しきMoMAの記憶を、インダストリアルデサイナーの視点から描いた「私の好きなマシン」、美術館に併設されたデザインストアのウィンドウにディスプレイされた日本に待つわるものについての意外なエピソードをつづった「あえてよかった」など、著者ならではの専門的かつ、わかりやすい視点で、芸術の面白さ、そして「MoMA」の背景と、その歴史、そして所蔵される作品群の魅力を、十二分に読者へと伝える待望の「美術館」小説集。

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