朝が来る

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902739

感想・レビュー・書評

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  • 苦しい苦しい話だった…

    ママ友トラブルから始まったと思いきや、息子の朝斗は養子で、夫婦の元へ産みの親が脅迫してきたところで朝斗を迎えるに至るまでの話になった。
    35歳になっても子供がいない夫婦のことを女親は無自覚に土足で踏み込み、心配している、あなたのためという印籠を見せて傷つける…
    読んでて苦しかった。
    次は、14歳で朝斗を産み、特別養子縁組に出したひかりの話。
    幼いなりに色々なことを考え、感じているのに、養子縁組の団体以外誰も寄り添わず、傷つける大人たち。子供を所有物のように、思いと逸れると失敗作のような対応をする母親。
    ひかりを心配しているのではなく、世間体を心配している…。そのことを責めて、ぶつかり合えばいいのに…ともどかしく思う。
    家出して、必死に働き、誰も頼れないのに、騙されて勝手に保証人にされ、相談する人がいないから逃げることしかできない…。

    でも、救われたのは朝斗を育てる夫婦がとんでもなく良い夫婦だったこと。朝斗の母は朝斗を信じておおらかに包んでいる。朝斗の父も朝斗を大事に思って、決して妻任せにしない。向き合い、寄り添い合う家族だったこた。
    そして、ひかりがそんな家族に脅迫しに行ったことが良かった。

    途中、あまりに苦しくて読むのやめようかと思ったけど、読み切ってよかった。最後の数ページで救われた。

  • 映画公開前の予習です。里親も特別養子縁組も諸外国から遅れをとる日本。そんな世間に押しつぶされることなくまっすぐに生きる栗原親子。中学生で出産することになったひかりのその後は...。河瀨直美監督がこの作品をどう仕上げたのか、10月23日が待ち遠しい...。

  • 4.3
    泣けました。
    自分の子供は娘ですが、もう一人欲しかったけど一人娘です。なので、
    ついつい重ねて読んでしまいました。
    守りたい親心と理想を求めたくなる親心も両方分かり、逃げたくなるひかりの気持ちも分かり、
    面白かったか?と問われれば微妙ですが、インパクトがありしばらく忘れられない一冊になりそうです。
    衝撃的ではありましたが、感想が上手く言葉にできません。
    一読の価値は大いにあると思います。
    ラストが好きです。

  • ハラハラしながら読んだ。10代には重すぎる現実を抱えて、必死に生きてきたひかりを思うと、涙が出た。彼女の心境はとってもリアルで心が痛かった…
    救いのあるラストのように思えたけど、どうなんだろう。これから先彼女が幸せに生きていけたらいいなと願わずにはいられない。

  • 立場の違う2人の女性の人生の葛藤の中にそれぞれ不妊治療から養子縁組、若年齢妊娠・出産という大きなテーマが盛り込まれており、大作な気がします。また、辻村深月さんの新しい一面を知ることが出来ました


  • 2つの家族の間の特別養子縁組の話。

    子を望む夫婦の子を授かれない苦悩は辛かったけど人としても親としてもできた夫婦
    幼稚園のトラブルは胸がキューっとなってしまった。我が子を信じる。信じるっていうのは正しいか正しくないかだけではなくて、もしかして正しくないかもしれない。でもそれごと受け止めて子や世間と向き合う覚悟。
    もう一つの家族、ひかりが望んでいたものが全てそこにあるんだなと感じた。

    ひかりパートでは、10代では色々なことに反発して大人びた行動していたにもかかわらず、終盤20代になったひかりの幼さ、惨めさに私がショックを受けてしまった。

    どちらの通ってきた道も辛く、そしてお互い別の方向から朝を迎えた。そのまま暗いトンネルに戻らず抜けて行って欲しい。リアルも間違った方向に進むことがあっても、人と人、助け合いながら暗いトンネルから抜けられる希望ある世の中であってほしい。

  • 穏やかに暮らす夫婦と子供一人の家族。日々ささやかな問題は起ころうとも平和といえる日常。そのさなかに掛かってきた一本の電話が、さざ波を立てる…

    という出だしで始まりますが、その電話によってもたらされる動揺や困惑が綴られる物語ではありません。電話を始点として、かかわる二人の女性の過去がそのまま綴られていきます。二人の生き様を丁寧につづった、物語でした。

    「現在」は幸せな家庭を営んでいる妻は、かつて結婚して不自由なく暮らしていたはずが、いつのまにか子供を持たなければいけない、という強迫観念に近いものにおびやかされる日々へと変わっていっていた。そのなかで出会った「特別養子縁組」によって、妻は、夫婦は救われていくことになる、という養子を迎えたほうの女性の物語。
    そしてもう一つが、電話を掛けざるを得なくなる、子供を産んだ実母の物語。中学生の身で身ごもった彼女にいったい何が起こったのか。彼女の視点から描かれるのは、あまりにも幼い自覚と、思春期ならではの周囲への反発、初めて覚えてはまってしまった恋愛の沼。愚かだと一言でいえるかもしれない彼女の行動はけれど、ではどこで引き返せば良かったのか、と問われると、どれもが繋がりあっていて、立ち止まるにはとても難しい大きな流れに彼女はいつしか、乗ってしまっていた。

    そのやるせなさがつらく哀しく、希望がはらはらと剥がれ落ちていくばかりな人生は、あまりにもむごい、と思わされました。

    そうして二人の人生が交錯して迎えた物語の終盤には、かすかな救いがもたらされます。といっても、それはほんとうに淡いものです。けれど、いつしかきっと、彼女にも「朝が来る」ことを祈ってやみません。

    そういう「祈り」を読むほうへもたらせてくれる、美しいラストシーンでした。

  • 子供を産んだけど育てられない母親と、特別養子縁組でようやく子供を授かった母親。両者のサイドから物語はつづられていく。文章は淡々と語られており、分かりやすく、この作者さんは学園物のイメージが強いだけに意外だった。
    ただ、「子供を返してください」のキーワードに自分が勝手に振り回されて、ミリテリーだと思っていたので、終わり方はちょっと微妙・・・

  • おすすめされて読んだ辻村深月さんの本

    テーマは重くともすらすらと読めてしまうのが辻村さんの凄いところ
    読んでいて
    最初から間違ったことをしていたわけではないのに周囲の道徳感情で決めつけられていくのが辛かった

    同時に自分自身とも重ねてなんとも言えない罪悪感にも駆られる

    染み込んだ価値観ってなかなか消えない

  • 長く、苦しい話だった。
    早都子とひかり、2人は全く異なる立場だけど、それぞれの苦しみや葛藤等、その心情が本当に実在する人物のように描かれているのがすごい。とてもリアルで、こちらの感情も彼女達に引き込まれていく。

    物語後半、ひかりの話は読んでいて辛かった。
    でも最後の最後、白くて強い光が、ひと筋差し込んだような情景が目に浮かんできた。まさに、朝が来たような。
    その後どうなるのかは分からないけれど、少なくともそのひと場面において、ひかりの気持ちは、確実に、少しでも、救われたんだと思う。そうであってほしい。

    読み返したいかは別だけど、苦しいながらもどんどんページをめくってしまう、そんな力がある話だった。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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