羊と鋼の森

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著者 : 宮下奈都
  • 文藝春秋 (2015年9月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902944

羊と鋼の森の感想・レビュー・書評

  • 冒頭の一文を読み、感覚的に好きだと思った。はじめの1ページを読み、これは読もうと決めた。

    静かできれいな物語。
    日常と非日常が程よく入り混じり、読んでいて、違う世界に浸る心地よさと、自分に立ち返って考える現実感の両方を味わった。

    主人公の青年が、高校で調律師の仕事に心揺さぶられ、調律師を目指し、迷い悩みながらも自分の目指す調律を見つけていく真っ直ぐな物語。

    青年の成長だと「神去なあなあ」を思い出したが、こちらは心の静けさと厳しさがある印象。

    主人公の素直な性格が素直に好きだなと思えた。彼なりに悩んで受け止めて進んで行く姿は応援したくなったし、共感した。

    出口のない森をさまよって、自分の力で道を見つけてたどり着いたときの喜び。人と共有できたり共感できたときの喜びが静かにじーんと響いてきた。

    調律師がお客様のことを考えて仕事をするとき、あらゆること(お客様が求める音に応えるのか、ピアノに合った調律をするのか、弾く環境に合わせるのか等々)に配慮して、どの音がお客様に喜んでもらえるのか、主人公も先輩の調律師もそれぞれの考え方があり、どれも素敵だった。

    人に対して行うなら、私の仕事も子育ても、あらゆることにこういう悩みは共通するかもしれないと思った。

    タイトルも素敵だなぁと読んでいて納得。
    ピアノは弾けないけど、情景が浮かび、心地よく読んだ。

    2016年本屋大賞一位

  • この物語自体が深い森みたいに静か。読んでいると深く呼吸できるような気がした。
    熱心な調律師で、どうしたらもっと良い調律ができるのか、どのような調律をしたいのかが分からず悶々とする主人公だったが、彼が自分の使命に気づいてからの勢いがすごかった。

  • ピアノ調律師としての成長を目指す青年の物語。ピアノの音や彼の心象風景が、木々や野鳥などの自然を用いた言葉で表現される。まるで詩のよう。
    本屋大賞などとは気にせず期待せず、何気なく手に取った態で読むと、なかなかグッときます。

  • 静かで美しい調律の物語。タイトルもきれい。文章の情景が美しく、読んでいると涙が出てきます。本屋大賞っぽい作品だなとも思います。

  • 全編ピアノと調律の話でピアノ好きには大満足。
    でも自宅は電子ピアノだから、調律の奥深さがわからなくて
    真のピアノ好きとは言えない。
    調律に来てもらうのが面倒だから電子ピアノにしたのだけど、ピアノ教室のピアノとは全然タッチが違うのでいつも指が動かなくなる。アコースティックに買い替えようか迷ったが、結局大人のピアノで趣味だから調律の奥深さはこの小説でしか味わえないかも。
    森っていう感覚かあ。なんか森林浴で癒される感覚わかるなあ。羊のありがたさもわかった。

  • 著者の原体験をもとに紡ぎ出された物語。タイトルに秘められた思いは静かに全編を流れていく。主人公の学生時代に感じた純朴な憧れが、人生航路を決め、職場の先輩からの学び、語らいや双子の姉妹との出会い、ピアノへの向き合い方を通して、静かに増幅されていく。歯痒さを感じるほどにおっとりした性格が適性を磨き、タイトルに託された今後の飛躍を暗示する。羊と鋼で作り出される音楽の世界と、主人公の育った森から醸し出される自然の風景、その調和の先に前途が開けてくる、静かな物語。

  • (羊の森はわかるけれど、鋼の森ってなんだか工場みたい)と思って手に取った本。
    でも羊は牧場か高山にいるもので、森にはいないはず。
    宗教的な比喩か、心理小説かと思いましたが、実際はそのどちらでもありませんでした。

    茫漠とした空虚感を抱える少年が、学校にやってきたピアノ調律師との出会いを経て、自分もその道に進む決心をします。
    このファーストインプレッションの描写がとても印象的。形のない音楽を文章にするのはとても難しいことだと思っていますが、それまでのモノトーンの世界に色がついたような主人公の感激がはっきりと伝わってきます。

    そうして調律師としての道を歩み出した主人公。
    自分の耳と勘を頼りに正確な音に直していく仕事の重圧にさらされ、自分の資質を疑いながらも、彼は愚直なほどにその道を邁進していきます。

    様々に悩み迷う彼の思考の中に、羊と鋼の森は登場します。
    彼の中に常に存在している、出口の見えない深い森。
    その森はどれくらい深いのか、出口があるのか、正しい道を歩いているのかと考えながら、彼はこつこつと経験を重ねていきます。

    挫折がきっかけだったり救いを求めた結果だったり。
    同じ調律師仲間でも、抱えるバックグラウンドとこの職に就いたきっかけは、それぞれに違っています。
    でも誰もがプロ意識が高く、一音一音に対してすこぶる真剣。
    真面目だからこそのプライドと、理想と現実との妥協点が必要な職業なのだと知ります。

    こうした専門性の高い職業は、経験がものをいうため、新人は壁を乗り越えるのが大変。
    主人公が思いつく限りの勉強をして、生活のほとんどを調律の技術向上に捧げているのは、学生の時に知った果てしのない羊と鋼の森に、もっと深く分け入りたいと考えているから。

    彼が強い感銘を受けた瞬間は、作品内でニ度訪れますが、もう一つのシーンもまた、印象深く語られます。
    それは、顧客である双子の少女の片方の演奏を聴いた時。
    一般的にはもう一人の華やかな演奏の方が好まれるのですが、静かな方の演奏を糧に、主人公の仕事へかける熱はさらに高まります。

    依頼をする客も、それぞれの背景を持っています。
    ひと昔前の日本では、音楽のたしなみとして大勢の子どもたちがピアノレッスンを受けていましたが、そうした子どもたちも大人になると、忙しさに追われてなかなか続けられなくなってしまうもの。
    そうしたノスタルジーと共に、シビアな現実も織り込みつつ、物語は進んでいきます。

    依頼者によって、細かく音を聴きとれる人や、全く分からない人がいます。
    調律とは、正確な音に直すことだと思っていましたが、そうではなく、ピアノを弾く人に適した合わせ方をするのだと、初めて知りました。
    弾き手が違うピアノが10台のあれば、10通りの調律がされるということ。
    調律師はトータルバランスをみる、プライベートな職人さんだというわけです。

    ピアノ経験が全くない主人公であるため、演奏面での薀蓄いっぱいの専門的な記述がないのが読みやすい点。
    初心者の気持ちのままでピアノに向き合っている、ワクワク感と新鮮さが伝わってきます。
    その分、調律のシーンには専門的な記載がありますが、それでも大まかに説明されているため、わからないまま話の流れに取り残されることはありません。

    「昔のピアノは、いい羊を使っていたのでいい音がする」のだそう。
    いい時代とは、ビルが立ち並ぶ便利な現代ではなく、上質な羊が草をはんでいた昔だとする彼ら。
    音楽は、演奏者が奏でた時に生まれるものではなく、その楽器が出来上がるより前の、素材がまだ生きていた頃から、既に始まっているものだと気づきました。
    うーん、思っていたよりもずっとスケールが大きいわ。

    ひたむきな努力を続け... 続きを読む

  • つまらないと言って貸してくれた。静かに進む中にも熱情を感じておもしろく読めた。あまのじゃくなんかな。こういう小説のおもしろさもあるんやけどな。

  • 読了。

    情景がとても美しく表現されていて、頭に思い浮かべた時に癒される気持ちがした。

    あまりよく知らないピアノの調律師についての話とは読むまでわからずにいたので、読み始めは「あれ。これおもしろいの?」と思ってしまったよ。
    本屋大賞なんだからおもしろいんだろうけど。

    主人公の外村のコツコツと毎日調律の練習をする姿に感銘を覚える。なかなかできないことだし、私は絶対していなかったこと。

    一万時間ね。聞いたことある。今からできるかね。
    (170517)

  • 凄い本に出会ってしまった。
    「羊と鋼の森」なる程、羊のハンマーが鋼の弦を叩くなのか。

    本の醍醐味を十二分以上に感じる。物語の言葉から、音が匂いを感じる錯覚を起こすほど、イメージが膨らみ静かな森にいるような、コンサートを聞いているような感覚に包まれる。

    ピアノをこんなに世界を広げ表現するのか、することが出来るのか。

    今まで読んだジャンルに当てはめるのが難しい作品だな。読者を物語に引き込む世界の作り方と若葉がグングン成長していくのを感じる楽しさ。
    「強い軸となる言葉が有れば、逆境の中でも自分を取り戻せる」
    やはり成長の物語だと思う。

    あまり他人の書評を見ることはしないのだが、これは気になって読んでしまう。同じ様な感想の書評を見ると嬉しくなり、自分が書いた書評を再度読むと、ぜんぜん伝わらないなと残念な気持ちになる。

  • ピアノの調律という特殊な世界が舞台で特殊な言い回しだったり空気だったりで自分にはちょっとあわなかった。
    その業界からしたらそうなんだろうけど一般人の自分からしたらカーテンの具合で、とかホールの反響がーとか言われてもちょっとピンとこず、それにずっと引っ張られて物語に入り込めなかった。
    双子のエピソードなんかは良かったと思うけど、他には特に印象が残らなかった。

  • タイトルからは何の話か判らなかったので、読み進める内に楽しめた。登場人物達も押し付けがましくなく、皆好感がもてた。実際にピアノ演奏を聞きたくなった。

  • 調律師が成長していく話。
    繊細で緻密な世界。

  • 高校生の時に偶然、ピアノの調律に立ち会ったことをきっかけに調律師になった主人公を中心に、調律師やピアノの演奏者などの日常を描いた物語。

    帯にあるように、小川洋子っぽい雰囲気もあり、ピアノのことがよく分からなくても楽しめる、とてもやさしい雰囲気をまとった小説です。

    2016年の本屋大賞になったものも納得の1冊でした。

  • 羊と鋼、というのがピアノのことだとわかった時、なんて美しいのだろうと思った。調律師の話だが、それが静謐な文章で書かれている。最後まで読み進めたけど、読後はなんだか物足りないような気がしたのは私だけか。
    ほかの作品も読んでみようか。

  • とてもきれいに始まりそして読後はほっこりする。
    最近ミステリー続きでドキドキしすぎてたので、落ち着いて静かに読めた。

    読んでよかった一冊。

  • ピアニストではなく、調律師の物語なので、コンクールでのしのぎ合いや、激しい演奏の描写などは無い。
    森の中の空間、柔らかい草の上にピアノが置かれていて、妖精のような少女がピアノを弾いている…
    その上に光が差している…
    ありきたりだけれど、そんな風景が目の前に浮かびました。
    音楽をひたすら支える、ピアノを、ピアニストをひたすら支える…求道者?
    外村くんはまだまだこれからだけれど、いい場面でひと区切りがついたと思います。

  •  どこかプラトンのイデア論について話しているような、音楽とはどういうものか?という問いではなく、音楽とは何か?という問いへの答えを探す物語のように思いました。
     小学生のころ、しばらくのあいだピアノを習っていました。ピアニストや調律師にとってピアノの音がこんなにも繊細なものであること、オクターブにドレミファソラシドを振り分けるのに2つの方法があることなど、新しい発見がありました。
     ピアノの音に対してか、あるいは奏でる女性に対してかの淡い恋の始まりのようなものも描かれていてアクセントになっていました。

  • 4.0 ピアノの調律師の成長物語。音楽を文章で表現する様は中山七里氏の岬シリーズを彷彿させます。心が洗われる素敵な小説です。

  • ピアノ調律師の物語

  • 調律師ってこんなものなんだー、くらいの感想で読み進めて行って、淡々と気持ちのいい文章だけど・・・・
    って感じで読んでいったら。
    最後の方はぐっときた。
    「楽しんで一生懸命取り組めることが才能」って感じのセリフにじーーん。
    最後は本当に綺麗な終わり方だった。

  • 良かった。文体が合う。
    そしてここにもピアニストになれなかった人が出てきた。

  • ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

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