満映とわたし

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  • 文藝春秋 (2015年8月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903149

満映とわたしの感想・レビュー・書評

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  • 戦前に満州で映画製作に携わった女性、岸富美子さんの自伝。
    数奇な運命に驚くとともに、よくぞ95歳まで長生きされているなと、なおさら驚いた。
    戦後の中国での混乱期を良く耐え抜いたと感動した。

  •  日独合作映画『新しき土』で最新の映画編輯技術を学び、満映では李香蘭の隣室に住んだこともあったという著者の自伝。しかし、本書の記述と関心の中心はむしろ日本敗戦・満映解体後にある。長い曲折と苦労の果てに、「新京」から「長春」に名前が戻った旧満映撮影所にもどり、草創期の中国・北朝鮮映画の編集者兼技術指導者として活躍、陳凱歌の師・祖述志らを育てていった。大きな資本が必要で、ゆえにその見かえりとしての宣伝効果を求められてしまう映画は、《自由に作ること》が基本的に許されないジャンルでもある。《好きな映画を撮り続けること》がいかに困難だったか。李香蘭=山口淑子とは異なるかたちで20世紀の東アジア映画史の生き証人となってしまった筆者の文字の行間から滲み出てしまうものは少なくない。とくに、戦後の「精簡」のプロセスと、それに対する日本人幹部の関与の話はいま読んでも生々しい。
     アシスト役の石井氏は、著者の言葉を生かし整えることに徹していて、映画編集者という《舞台裏》の人物を舞台の中央に据える上で、好ましくも見事な仕事ぶりとわたしには映った。

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岸富美子の作品

満映とわたしの作品紹介

今年95歳になる岸富美子。女性映画編集者の草分けであり、「満映」(満州映画協会)の最後の生きた証言者でもある。15歳で第一映画社に編集助手として入社し溝口健二監督の名作「浪華悲歌」「祇園の姉妹」の製作に参加、その後、原節子主演の日独合作映画「新しき土」の編集助手も務める。映像カメラマンだった兄の渡満に従い、1939年、国策映画会社だった旧満州映画協会に編集者として入社。赴任当時の甘粕正彦理事長の姿を記憶にとどめている。1945年8月敗戦直後に甘粕は自決する。指導者を失った満映社員とその家族たちはソ連侵攻にともない、朝鮮への疎開を図り奉天まで移動するが、脱出かなわず、再び新京の満映に戻る。国共内戦の勃発と共に、岸一家(夫も映像カメラマン)は日本人技術者として貴重な映画機材を守り、中国人技術者を教育するという決意のもとに中国共産党と共に松花江を渡り、鶴岡に赴く。ここで記録映画の製作などを始めるが、多くの日本人が人員整理の対象となって松花江近くの部落で過酷な重労働を強いられる。1949年、苦難を経て三年ぶりにかつての満映、東北電影製片廠に戻り、中国映画の編集をしながら、中国人スタッフに映画編集の技術を教える。1953年にやっと日本に帰国するが、レッドパージで日本の映画会社には就職できず、岸にはフリーランスで働く道しか残されていなかった。その歴史に翻弄された苦難の生涯と国策映画会社「満映」の実態を、ノンフィクション作家・石井妙子の聞き書きと解説によって描きだす、戦後70年の貴重な証言本。

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