- Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163903248
作品紹介・あらすじ
女性作家の再生の物語過去に性的な傷をもつ千紘の前にあらわれたのは、悪魔のような男性編集者だった。若手実力派による、鬼気迫る傑作心理小説。
感想・レビュー・書評
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うーん…。
文章はすごく良いのだけどテーマのわりに今ひとつ心に突き刺さるものがない読後感というか。
主人公は女性作家・千紘。
男性編集者の柴田と出会い、精神的に支配されて翻弄されていく。
彼とのいざこざが終わる夏。亡くなった祖父宅で書籍をデータ化するために本を裁断する作業を負う。
鎌倉の自然に囲まれた祖父宅で、作家が本を切るという自傷にも似た行為を繰り返しながら、柴田との関係に想いを馳せ、出口を模索する。
柴田は、気を引かせるような素振りで迫ってくるのに、距離が縮まると相手を突き放すタイプの男。遊び人の一種に、こういうサイコパス気質の男が確かにいる。深追いするとこちらが大火傷を負う恋愛になりがち。以前、島本先生はこの作品について「意地悪な男の人が書きたかった」とおっしゃっていたが、まさにそんな話。
現在と過去の回想が入り交じりながらストーリーが進んでいくが、時系列的にそれほどややこしくなく理解できる。が、「まだ回想が続くのか…」と途中で思ってしまいました。
文章が感性の塊なので、一語一語を味わい考えながらページをめくる手もゆっくりになりがちで、それが良いところなんだけど、すこし冗長で退屈でした。
後半、西藪のおばあちゃんとお守りを買いにいくあたり「このおばあちゃんは何のために登場するのかな…主人公のセンチメンタルを説明するためなのかな…」とか思ってしまいました。あと大学時代の同窓会の誘いとかも「これ要る?」と思っちゃいました。主人公の心理の流れ的には必要かもしれないけど、なんか、失礼な言い方だけど「よくできた日記みたい」とか感じちゃいましたすみません。私が歳を重ねて感性が鈍くなった結果、恋愛に病んでいる女性の心理についていけなくなったのかもしれませんけど…。
幼い頃に性的虐待を受けたような記述も出てきますが、物語にあまりうまく作用していないような? 結局、何だったのという感じでした。
『ファースト・ラブ』は、なるほどなぁと性的虐待の被害者の心理に寄り添えたのですが、今回はあんまり。伝えたいことはわかるけど…
『裁断』というタイトルから滲み出ている残酷さに惹かれて読んだのですが、期待していたほどの闇でもなかったかなぁ。
前半はおもしろく読めたので★3つです。
余談1
最初のほうに主人公が裁断をためらった小説が福永武彦先生の『夢見る少年の昼と夜』だったところ、福永ファンの私としてはときめきポイントでした!
余談2
私だけかもしれないけど、柴田さんって出てくるたびに、アンタッチャブルの柴田さんの顔が浮かんでしまった…柴田さんはきっとイケメンなはずなのに最後までアンタッチャブルだった…
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ん~~~~~~~~~~
島本さんの良くないところが詰まったような本だな…
初期の身勝手な主人公に近いような。。迷ってるのかな。なんか色々気負ってるのと投げやりなのが混ざった文章。
私はもう島本さんは自分の書きたいものを書ききるのがいいと思うよ、どろどろしていても、身勝手でも、あの人が芯から書いているものには魂がゆれる瞬間がある。今までも、主人公にいらっとしながら、それでもぐらぐらゆれる瞬間があった。それで時々軽いのも書いてみたらいいよ。それで、よだかみたいな本をもっと書いてほしいな。
今回はゆれる瞬間がなかったし、「夏の裁断」というタイトルにそぐわない。もっと裁断を生かしてほしかったな。そしてもっと島本さんらしい、じめっとした深い暗闇に連れて行ってほしかったな。変に人工的な暗闇に連れだされたような不自然な一冊だった。勿体ない。
雑音は聞かないで、書くことやめないでね、本当に。 -
2016/12/01読了
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教授のことばひとつひとつが心に刺さる
「選別されたり否定されす感覚を抱かせる相手は、あなたにとって対等じゃない」
私もなんだかんだで柴田みたいな男に弱くて、勝手に好きになって、勝手に傷つくタイプだからなぁ
201511 -
理解し難い。
特殊な状況すぎるのか?
過去に何かがあり傷を抱えた人間が苦しんでいることはわかるけれど、どう対応していいものか。
自分一人では立ち直れないだろうから、他人に甘えることも必要だとは思う。 -
今めっちゃハマっている島本理生先生。
面白かったけど、時系列がわかりにくかった。
柴田さんが女の敵なのは分かったけど、主人公もコラコラって突っ込みたくなる場面もチラホラ。
次の作品に期待w