- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163903330
作品紹介・あらすじ
「どうぶつ好き、あつまれ~!」 『デブを捨てに』の〈悪夢〉は、まだ終わっていなかった――。「こんな小説、みたことないよ!!」〈イエロートラッシュ〉シリーズ第二弾 「あんたら全員、ヤギより上、猿より下なんだよ!」真心山の麓にある売春宿『ホーカーズ・ネスト』にやってきたオランウータンのポポロと、ヤギの甘汁。動物たちの活躍ぶりに、人間の従業員たちが戦慄する……表題作の「ヤギより上、猿より下」をはじめ、〈シュール〉な設定、乾いた〈ユーモア〉と、エッジの効いた〈表現〉で、〈最悪の状況〉に巻き込まれた人々たち〈イエロートラッシュ〉の泥沼のような日常を、スピード感あふれる独特の文体で疾走するように描き出す全四編。・収録作「パンちゃんとサンダル」タクムのおとうさんは、いつもおかあさんをなぐっています。いもうとのアヤは、それをみて、いつもないています。でもある日、おなじアパートのアレキサンダルが、タクムたちをみかねて、あるていあんをしてくれました。「婆と輪舞曲」大高のババアは、探偵稼業の「俺」にとって暮らしの大黒柱だ。失踪し、見つかるアテのないババアの娘を探すフリをして金をもらっているのだ。だが、ある日別れた女房のアケミから「俺」の娘が行方不明になったと告げられ……。「陽気な蠅は二度、蛆を踏む」最高の殺し屋・エンジンの元に、新たな依頼が届く。それは、カミさんが臨月のグランのピンチヒッターで、城島という三十代の男を殺せという内容だった。対象者と親しくなるのが流儀のエンジンは、やがて意外な事実を知る。「ヤギより上、猿より下」真心山の麓にある売春宿『ホーカーズ・ネスト』にやってきたオランウータンのポポロと、ヤギの甘汁。動物に負けるはずがないと思っていた従業員の姐さんたちだったが、ポポロに指名が集中し、宿は大混乱に……。
感想・レビュー・書評
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平山夢明ワールド全開!!!!!の4つの短編集。
「パンちゃんとサンダル」
毎日のように母に暴力を振るう父に、怯えながら暮らす9歳のタクムと5歳の妹のアヤ。
毎晩聞こえてくる怒号に、クラスメートからは「ころしや」とあだ名をつけられる。暴力に耐えられなくなった母はタクム達を連れて無理心中をはかろうとする。みかねたアパートの住人の外国人アレキサンダルに、「お父さんを消してあげる」と持ちかけられるが・・・。
裏切られて知る自立。
「婆と論舞曲」
30年前に行方不明になった娘を今だに探しているババの話を聞き探偵まがいの事をして、生活しているバツイチのカイ。元妻から娘が家出をして行方不明になったと聞かされ・・・。
後味すっきり!
「陽気な蝿は二度、蛆を踏む」
ハードボイルド。洋画を見終わったような読了感。
出逢った時から死にたがっていた淫売のエミコは、何故か俺の子どもだけは絶対に堕ろそうとはしなかった。殺し屋が生業のウルマが、依頼されたキジマは、かつて愛したエミコが唯一産んだ子供であり、ウルマとの間に出来たであろう1人息子だった。
キジマの最期を見届けた、ウルマが車へ戻った時にメモ付きの最高級葉巻があった。
メモの「今までの、全ての誕生日に」に涙腺崩壊。
「ヤギより上、猿より下」
淫売宿に下働きに出された、おかず。個性的な姐さん達の世話をし、失敗を繰り返しながらも楽しく仕事をしている。売り上げが下がり、経営危機になった宿の女将が、苦肉の策として連れてきたのは、オランウータンのポポロとヤギの甘汁。
常連客達が人間と動物のどちらを選ぶのか、売り上げはヤギより上か?猿より下か?
内容は下衆い極まりないけれど、どんどん登場人物が愛おしくなる、それが平山ワールドの怖さであり、最大の魅力である。
ずっと1人で世話をしていた、おかずを身体を張って守るポポロ。最後にはウルっとするなんて、やっぱり平山さんは恐ろしい~!!
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[パンちゃんとサンダル]
父は母を毎日殴る。母はおかしくなって子供と死のうとする。学校では、ころしやとからかわれる。外国人のアレキサンダルに金目の物を渡して消してもらおうとしたが、次の日になったら消えていた。どうしようもなくて父が殺したことに見せかけて母を殺す。
あんまりな話だけど最後、警察に連れていかれる父に対して、出てくる頃には負けないほど強くなっていると思う。9才でこんなことがあったのに、前向きに考えられるてことはちょっとだけ未来は明るい。
[婆と輪舞曲]
仕事もなくて、30年前にいなくなった娘を探し続けている婆さんの手伝いをして小遣いを貰っている生活。そんな時に別れた奥さんから家出した娘を探してくれと頼まれる。
そこまで山場はなく娘は押し入れにいたし、婆さんの娘を攫った人はなぜかいつも話を聞いて貰っていた奴だった。
見所は婆さんのイカれっぷりかな。
[陽気な蝿は二度、蛆を踏む]
ハードボイルドな話。
エンジンはなるべく標的のことを知ってから殺しをする。轢き殺し、生命保険詐欺がいつもの手口。
コーエン兄弟のノーカントリーみたいに撮って欲しい作品だった。無機質でサッパリしているが、ちゃんと考えたら登場人物の絶望は凄まじい。エンジンもそうだが、キジマも殺されると分かって素直に来た。今までの人生が余程だったのだろう。
平山作品は無国籍な小説。この作品もアメリカの片田舎が合いそうな雰囲気だ。
一番いいシーンは、車の中にキジマからのプレゼントのコイーバと、メモには「今までの、全ての誕生日に」と書いてあった。
[ヤギより上、猿より下]
これは淫売たちのREDだ。ブルース・ウィリス主演のあの映画は元殺し屋のアクションだが、この作品は売春婦と敵と動物しかいない。売春婦だってどこにも行くところが無いような50過ぎの女たちだ。
あまりに仕事がなくて店が潰されそうになったので、店主のオバチャンが猿とヤギに客を取らせようとした。そうしたら猿にたくさん客がついて、他の女たちの売り上げを抜いてしまった。その猿のポポロを巡って話は回る。
表題を見て、まさかこんなぶっ飛んだ物語だとは思わなかった。全体的にコミカルに書いていて、終わり方も絵本みたいだが、もちろん子供には見せられない。
前作もそうだったが、やはり物足りない。独白する〜の時のような狂気の描き方が無くてシンプルだ。他の仕事が忙しいのだろうか。短編で書きなぐるなら、長編をじっくり書いて欲しい。 -
「これが読みたかった」
1つ目の収録作品である『パンちゃんとサンダル』を読み終えたときに感じたことである。胸糞悪さと絶望感が押し寄せてくるのと同時にやってくるやけくそとも取れる爽快感が、得も言われぬ快感をもたらしてくれる。久しぶりに読んだ平山氏の作品であったが、相変わらずの内容に安心してしまった。だからこそ、『婆と輪舞曲』の王道な内容に幾何かの落胆を覚えてしまったのは、私が平山氏に毒されている証なのだろうか。
その他の『陽気な蠅は二度、蛆を踏む』はハードボイルド風で格好良かったし、表題作である『ヤギより上、猿より下』はまさかのタイトル通りで恐れ入った。そして何よりも手に取る者を遠ざける表紙のインパクトが凄まじい。おそらく私も平山氏を知らないでこの表紙を見たとしたら、十中八九手にはしていなかったことだろう。初見がこの本でなくて本当に良かったと思う。
これからもこのスタイルでやりたい放題に作品を書き続けて欲しいと思う。 -
某テレビ番組で「読書芸人」がオススメしてたので読んでみました。
タイトルのお話が一番歩み寄れなかったのですが(アブノーマル過ぎる…。。苦笑)、総じてグロいけど面白い。グロオモ??
「陽気な蝿は二度、蛆を踏む」はラストで迂闊にも感動してしまいました。
初平山夢明でしたが、また読んでみよう。 -
虐待、探偵、殺し屋、淫売宿
平山先生の魅力を詰め込んだ短編集でした。殺し屋の「陽気な蝿は二度、蛆を踏む」は、まさかブロマンス?!と鼻息荒く読み進めましたが、容赦なしの『最悪劇場』に絶望させて貰えました。(これが三度の飯より好き)
なぜか満足度の高い単行本でしたが、おまけの表題作〈無修正版〉を改めて読んだら記憶通りで笑いましたw -
2019年、3冊目は、平山夢明の短編集、4編収録。
今回は、各タイトルに一言コメントを添えて。
パンちゃんとサンダル:お得意のDVモノ。展開はソレ程目を引くモノではないが、オチとラスト一行でヤられる。タクムみたいな少年が、もしかしたら、ボンベロやトゥエルヴのようになるのかもしれない。
婆と輪舞曲:金のあるヤツも、ないヤツも揃いも揃って、どっかネジがゆるんでたり、腹に一物抱えてたりする。一番マトモなのは、第一印象最悪のチョーズカ刑事かもしれない。
陽気な蠅は二度、蛆を踏む:個性的な殺し屋が登場する、平山流ハードボイルド・タッチ、ややライトver.。いい感じの、どぅしようもなさが漂うラスト。
ヤギより上、サルより下:最下層の売春宿を舞台にした、コミカル活劇。スラングと隠語だらけの下衆な会話回しの素晴らしさ。
もぅ、海外のペーパーバック・スタイルの装丁からして、凝ってる。下品で、グロで(平山作品にしては軽めだが)、最低&最悪だが、クソ面白い‼️
平山さん、DV体質、競馬で1500万以上女の金使い込む、ムード歌謡グループメンバー主人公、何ていかがでしょうか……(笑)。 -
相変わらず、誰にも真似のできない独創的な小説世界が展開される最新作品集。
一昨年に出た短編集『デブを捨てに』につづく〈イエロートラッシュ〉シリーズ第二弾、なのだそうで、アメリカン・ペーパーバックを模した製本も『デブを捨てに』と同一になっている。
内容は、『デブを捨てに』に比べると少し勢いが落ちた気もするが、それでも十分楽しめた。
凄絶な家庭内暴力を描きながらも、読後感は爽快ですらある「パンちゃんとサンダル」は、かつての傑作短編「或る愛情の死」(短編集『或るろくでなしの死』所収)を彷彿とさせる。書き方を少しチューニングすれば純文学になりそうな話なのに、それが「平山印」のブラック・ホラーに仕上がっている点が似ているのだ。
「陽気な蠅は二度、蛆を踏む」もよい。殺し屋を主人公にした、「ちょっと見はハードボイルド・アクション」な話でありながら、いびつなユーモアと読後の寂寥感がやっぱり「平山印」な短編だ。
表題作の「ヤギより上、猿より下」は、収録作4編中いちばん長い、唯一の中編。
読んでタイトルの意味を知ったとき、読者はみな、「こんな話をよく思いつくもんだよなァ」と驚き、半ば呆れるに違いない。なんというか、「想像力のタガが外れている」感じなのだ。
小説家が「想像力の商売」である以上、むろんそれは讃辞だが。 -
安定の夢ちゃん節。
内容もさることながら、この人の節回し(としか呼べない。文章のテンポというにはあまりにも唄に近い)は信じられないほど練りこまれていることに毎回驚かされます。
「パンちゃんとサンダル」
sinker~無垢の祈りの系譜に連なるやつ。相変わらずひどい。
「婆と輪舞曲」
出てくる奴らがどいつもこいつも糞。刑事がいい味出してました。
「陽気な蠅は二度、蛆を踏む」
タイトルに失笑したが、読了後タイトルに落涙。
「ヤギより上、猿より下」
娼婦たちの売り上げを発表する際に「ヤギより上!猿より下!」とコールするババアが最高。インコのくだりに目が点(ちょっと考えて意味が分かりました)娼婦たちのキャラクター造形が最低で最高。あふりかさんの「俺は5万だった」に腹が捩れました。 -
【『デブを捨てに』の最悪劇場、ふたたび降臨】最悪劇場は、『デブを捨てに』ではまだ終わってはいなかった。淫売宿に突如現れた動物たちに、戦々恐々となる表題作ほか、全四編。
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・表題作は金カムの姉畑先生こちらですよーでした。
・全世界観が好き。狂おしいくらい好き。
・次は『あむんぜん』に着手しよう。