みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903460

作品紹介・あらすじ

東と西が出会ったとき、一体何が起きたのか多くの謎が潜む、キリシタンの世紀。長崎からスペインまで、時代を生き抜いた宣教師や信徒の足跡を辿り、新たな視点で伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 東西の出合い、少数者への温かい眼差し、自分の感情を簡潔表す文章、星野氏の著作で、先ず私が好感を覚える点である。

    自分の感情を簡潔に表すことは、やってみると意外と難しい。どうしても着飾ろうとするのが、人間の性だからだ。

    しかしそれ以上に、彼女の関心の広げ方には、畏敬の念すら覚える。
    とにかく、気になったことは知りたいと突き進む様子が、ページを繰るごとに手にとるように伝わってくる。だから、まだ読み終わらぬうちに、別の著作を入手したくなってしまう。

  • 日本にやってきた伴天連達は布教によって日本を植民地化する。これを読むと全く事実と異なる知識を植え付けられたもんだと、あゝ自分が情けない。ま、教科書ではそんなもんか。
    殉教を求めて日本へ、殉教、殉教、殉教することが神に近づく第一歩、もちろん神にはなれないが、福人、聖人にはなれる。拷問死こそが殉教、布教苦難があってその結果殺されて晴れて殉教、もうわけ分からん世界なんだけど殉教を求めてきたパードレ(伴天連)達の生き方を知ると涙が出る。泣いてないけどな。
    筆者のキリスト教を巡る紀行文と見ても面白い。個人的には日本史の復習にもなりました。ありがとうございます。
    ここ最近で1番嵌った本。最高の一冊。

  • リュートへの興味からどんどんキリシタンへの探求に分け入って行くその過程で,こちらもぐいっと引き込まれていきました.あまりにも知らなかったことが多く,それぞれの人々の生き方や,信仰の力といったものや,歴史に潜む裏事情など,圧倒されました.星野氏のたぐいまれなる文章力と執念とも言える探査能力によるところも多いと思います.面白かったです.これに地図や肖像画などがあればもっと良かったのですが.

  • 日経新聞 夕刊 1/23/2020
    こころの玉手箱 星野博美

  • #星野博美 「 #みんな彗星をみていた 私的キリシタン 探訪記」読了。星野さんの本は「転がる香港に苔は生えない」から時々に読んできた。星野さん自身と題材が骨絡みになっていく印象がありある意味、私小説作家なのではないか。美を削るように書いておられるようで、そこが少し気になる。

  • 私的キリシタン探訪紀という副題が本書をひとことで的確に表しているが、丁寧な取材からなる日本におけるキリスト教史に著者の日常や感性が絶妙に織り交ぜられて、彼女の数年間が手にとるように感じられる。500ページの大作だが飽きさせることがない。すごい筆力だと思う。リュートの”まろりんまろりん”という音色、長崎やスペインの風景と人々の描写がいい。

    [more]<blockquote>P209 昔はどれほどすばらしいことやひどいことがあろうと、ぽんぽん感情を切り替え、次に進んでいた。旅が下手になったというより、旅の必須条件である感情の切り替えが不得手になったのだ。旅の仕方に優劣などないけれど、あのころのような旅ができなくなったことだけは確かだった。

    P237 人の認識は、物量に圧倒的に左右される。情報量が多いことを重視し、少ないものを無意識のうちに軽んじてしまう。「都崩れ」は情報量の少なさで存在が埋没してしまった一つの例と言える。

    P287 キリスト教をファーストフードに例えるなら、日本に最も大きな影響を及ぼしたという点で、イエズス会はさしずめマクドナルドといったところだ。【中略】日本で起きた迫害には、日本側の思惑と各修道会の勢力争いが複雑に絡み合っている。それをできる限りひもといていきたいのだが、新しい味を広めたイエズス会の功績がとてつもなく大きいことを忘れるわけにはいかない。

    P429 はるばる遠くの異国からやってきた、肌も瞳の色も異なるこのパードレに、なぜ自分の言葉が通じるのだろう。【中略】そしてパードレもまたキリシタンから影響を受けていた。【中略】彼らはみな地上から姿を消し、天上の星となった。私は彼らが最後に迎えた殉教という惨い結末ばかりにとらわれていた。しかし天に召される前、互いに心を通わせる幸福な瞬間があったはずだと、その時思えたのだった。</blockquote>

  • 日本とキリスト教の関わりを、江戸初期、現代、長崎、東京、千葉、スペイン、香港など行ったり来たりしながら描く随筆。からりとした語り口であるが、客観的、冷静に事実を捉え共感を持ちやすい。キリスト教という、もっとも身近で、歴史や社会など学校の授業にもよく主要人物や事件が取り上げられるものありながら、実はよくわからないものを、ぐっと個人に近寄らせてくれるもので一読の価値あり。例えば現代人は長崎を「殉教の地」などと半ば美化して表現したりするが、殉教とは「異教徒として処刑されること」であり、もっと史実・事実に目を向けなければならないだろう。

  • 著者の足取りを追えるように書かれているのがとてもありがたい。おそらく、こういう話題だと追いつけないのだろうなあ。悲惨な話が多いので読むのはなかなか大変。最後がスペインなのはよかった。一度行って見たい。

  • 個人的興味をつのらせ過ぎて中世の楽器リュートを習い、長崎のキリシタンの足跡をとことん辿る旅。仏教の家庭に育ち、ミッションスクールに通った星野さん。歴史家でもなく宗教家でもない彼女ならではの、極めてフラットな視点から深く掘り下げた話がとても面白い。

  • レビュー省略

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著者プロフィール

1966年、戸越銀座生まれ。ノンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』(2000年、第32回大宅壮一ノンフィクション賞)、『コンニャク屋漂流記』(2011年、第2回いける本大賞、第63回読売文学賞随筆・紀行賞)、『戸越銀座でつかまえて』(2013年)、『みんな彗星を見ていた』(2015年)、『今日はヒョウ柄を着る日』(2017年)、『旅ごころはリュートに乗って』(2020年)など多数。

「2022年 『世界は五反田から始まった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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