のろい男 俳優・亀岡拓次

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903590

感想・レビュー・書評

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  • 今作でも、主人公は犯罪者に扮したり、台詞もなくただ無惨に殺されたり…、特異な役を嬉々としてこなす。そう、現場での亀岡拓次はすこぶる男前。業界の評価はうなぎのぼり。カルトなファンは多く、その中には外国人監督もいたり。

    読み飽きさせないプロットとドライブ感。仕組まれた構成。なのに前作の方がはるかにオモロい。原因は明確。とにかくはっちゃけすぎ。前作に垣間見れた主人公の哀愁さ・小心さ・下心さはすっかり影を潜め、大胆で能動的過ぎる。躁気質なキャラになってしまっている。人物造形の振り幅の大きさに首をかしげてしまう。著者は続編を想定していなかったんだろうな。ゆえに過剰なケレンさを生んでしまった。今作から読んだ人には陽気なバイプレーヤーの奔放な振る舞いにくすくす笑いの連続であることは保証します。

  • 俳優・亀岡拓次の素朴なようで強烈な日々。彼の毎日は、いつまででも読んでいられるなぁ。

  • 長年、独り身で、自分勝手にやってきた俳優亀岡拓次。貫禄もなければ生活感もない。普段ギャンブルをやっているわけはやらないが、昼間の競輪場へ行き、わけのわからないおっさん達の仲に入り「ああ自分もこんな感じでいいんだ」と安心感を得るのを小さな楽しみとする。背中には哀愁漂う間抜けさがある。生ぬるいビールを飲まされ、興奮もときめきもないお婆さんの胸を揉まされ1万3000円をぼったくられる。それでも名女優の乳房を思い出させてくれたからと寛厚温藉をみせる。浮かれた世相の裏側にある社会の暗部を浮き彫りにする。いかがわしさと猥雑が寧ろ救ってくれる。

著者プロフィール

1971年東京都生まれ。劇作家・小説家。97年「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げ。2009年小説『まずいスープ』で第141回芥川龍之介賞候補、14年『すっぽん心中』で第40回川端康成文学賞受賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で第38回野間文芸新人賞受賞。

「2022年 『沓が行く。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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