私を通りすぎたスパイたち

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904276

作品紹介・あらすじ

ゾルゲ、ラストボロフ、レフチェンコ、瀬島龍三、秘密メモ全公開日本に侵入した様々なスパイたちの捜査秘話を含め、自らがアメリカでスパイ特訓を密かに受け、時にはスパイを操った事実を初告白。はじめに 私とスパイたちとの関わりを書く 第一章 父弘雄とスパイゾルゲはいかに関係したか小学生の時から、ゾルゲ事件で逮捕され処刑された、あの「尾崎秀実」を間近に観察し、父が連座して特高に逮捕されるかもしれないと怯えた日々……。戦後、警察官になったとたんにラストボロフ事件が発覚し捜査にも協力。香港では台湾系スパイを運用するかたわら英国MI5に監視される。その姉妹組織MI6のスパイでもあった作家フォーサイスと知り合えば、作中、実名で登場する羽目に……。佐々流の波瀾万丈のノンフィクション・スパイ・ストーリーの開幕─。 第二章 スパイ・キャッチャーだった私一流のスパイ・キャッチャーになるために、秘密裡にアメリカに「留学」。ジョージタウン大学の聴講生という触れ込みだったが、実際は、CIAやFBI仕込みの猛特訓を受ける日々。ピストルの撃ち方、スパイの尾行や追跡のノウハウから、警官ならではの俗語の使い方やら、見るもの聞くものすべてを実地で学ぶ研鑽の日々だった。唯一、ハニー・トラップに関する講義はあったものの、その誘惑に打ち勝つための実地研修がなかったことが心残りだったが……。 第三章 日本の外事警察を創る戦前の治安維持法、治安警察法、国防保安法などがGHQの命令のもと、一気に廃止された。父への弾圧を思えば、喜ばしい限りだったが、あまりの行き過ぎはかえって、日本の治安の混乱を招いた。それを見て、「治安回復(ピース・メーカー)」こそ、自分の人生をかけてやるべき仕事だと思い、独立後復活したばかりの「警察三級職試験」を受け合格し、キャリア警察官としてスタートを切った。だが、まずはエロフィルムの摘発。エロショーが最高潮というときに立ち上がって「そのまま動くな! 警視庁の風紀係猥褻班だ!」なんて叫ぶ羽目に。スパイ相手に、「そのまま動くな! FBIだ」と名乗るアメリカのようにはなかなかいかない……。日本の外事警察建て直しまでの長い道のりが始まった。 第四章 彼は二重スパイだったのか?聞いたこともない「〝ネグシ・ハベシ国〟大使」を名乗る詐欺師。実は、アメリカの諜報機関員員だ……ともささやく。ならば、外事課の分野だろうとお鉢が回ってきたりすることも。亡命を希望したロシア人を西ドイツに無事送ったものの、あれはもしかして「二重スパイだったのではないか?」と悩むことも。一方、中曽根首相のブレーンでもあった瀬島龍三が実はソ連のスリーパーでもあった事実など……。スパイの世界は謎だらけ? 第五章 ハニー・トラップの実際国際紛争を解決する手段として軍事力を放棄している弱いウサギ国家なら長い耳を持ち、あらゆる情報をなるべく(?)合法的に入手すべき。シハヌーク国王周辺の情報収集を、その愛人とねんごろになりながら入手した優秀な日本人外交官はなぜ主要先進国の大使にはなれないのか? とはいえ、首相から外交官までやすやすとハニー・トラップにかかる情けないニッポン。「美人局」から逃れるノウハウを伝授する。 第六章 私を通りすぎた「スパイ本」たちどこの国でも、「スパイ」「インテリジェンス」は学問の重要な一分野でもある。本章では「スパイの世界史」を学ぶために、半世紀以上前に拙訳で刊行したラディスラス・ファラゴーの『読後焼却 続智慧の戦い』をはじめ、どんな本を読めばいいか縷々紹介する。高度な学術書としてのスパイ本もあれば、「情交」を通じて「情報」を狙う女スパイの裏舞台を覗くような本もある。玉石混淆と思われるかもしれないが、これ、すべてスパイを知るために役立つものばかりだ。おわりに 一九六三年の危惧ゾルゲ事件関係者 ラストボロフ事件関係者 主要スパイ事件年表付き (装幀・坂田政則)__

感想・レビュー・書評

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  • 著者は佐々弘雄〈さっさ・ひろお:1897-1948年〉の次男である。弘雄は美濃部達吉と吉野作造の薫陶を受けた法学者・政治学者で、後に朝日新聞編集委員、参議院議員を務めた人物である。何よりも近衛文麿の私的ブレーン「昭和研究会」の一人として知られる。尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉とは朝日新聞社の同僚であり、尾崎を昭和研究会に招じ入れたのも弘雄であった。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/10/blog-post_11.html

  • 「はじめに」によると本書は、佐々淳行氏「最後の告発」とも言うべき書、とのこと。
    佐々氏の辿ってきた経歴も興味深く読んだが、「外事警察」そして「特定秘密保護法」や「インテリジェンス」とは何か、またこれを正しく作り上げ運用することが国家にとってどんな役割を果たすのかを、分かりやすく知ることができた。
    読んで良かった。

  • お固くて小難しいかと思いきや、読みやすかった。とはいえ、全然知らないことばかりでムツカシイっちゃムツカシイんだけど。
    ハニートラップにご用心!ということは分かりました。

  • 尾崎秀実を近衛を囲む昭和研究会に誘ったのが、著者の父親、佐々弘雄。
    著者の祖父は西郷軍で戦いに敗れ、政治犯として収監されたあと、国権党を率いた国権主義者であった。
    著者の兄より一年下の学年に、後の日銀理事となる緒方四十郎がいた。ちなみにこの妻が緒方貞子。
    ラストボロフが名前を挙げた、日本の対ソ連協力者の中には、宏池会の事務局長として活躍した田村敏雄もいた。
    東芝機械のココム事件では、そもそもソ連に機械を売る点で瀬島龍三が関与。
    新潮452016年3月号でも、防衛大学内部に中国の女性学生がスパイとしてハニートラップをしかけていることを暴露した。

  • 71

  • 今までは著者の著作でもあまりオープンにされていなかった「外事警察」に関わる話である。

    かなりスリリングな話もあり、危機管理を知る上では身に着けておきたいことも多い。

    佐々さんはもうかなりのご高齢だが、今後さらに執筆活動を続けていただくことを切に願う。

  • 【ゾルゲ、ラストボロフ、レフチェンコ、瀬島龍三、秘密メモ全公開】日本に侵入した様々なスパイたちの捜査秘話を含め、自らがアメリカでスパイ特訓を密かに受け、時にはスパイを操った事実を初告白。

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著者プロフィール

1930年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、国家地方警察本部(現警察庁)に入庁。「東大安田講堂事件」「連合赤軍あさま山荘事件」等に警備幕僚長として危機管理に携わる。86年より初代内閣安全保障室長をつとめ、89年昭和天皇大喪の礼警備を最後に退官。2000年、第四八回菊池寛賞を受賞。2001年、勲二等旭日重光章受章。著書に『東大落城』(文藝春秋読者賞受賞)等がある

「2016年 『重要事件で振り返る戦後日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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