ままならないから私とあなた

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904344

感想・レビュー・書評

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  • ◆レンタル世界◆
    人間関係をレンタルすること

    お金を払って、結婚式に友達として出席してもらうことはおかしくて
    お金を払って、性的な接触をすることはおかしくない、っておかしい?


    ◆ままならないから私とあなた◆
    何でも効率を考えて、無駄なモノは排除していく薫。
    作曲家を夢見て、コツコツ頑張り、初恋を実らせていく雪子。
    薫が開発した【過去のデータを分析して、ゼロからイチを作るプログラム】はすごいけど、コツコツ努力してゼロからイチを作り出した雪子が、、、雪子は薫にズバリ伝えたらいいのになっておもっちゃった

    何が便利なもので、何が無駄なものなのか、【便利なものを受け入れること】【自分を脅かしそうな新しいものを拒否すること】境界線が、確かに難しいのかも。

    うん、ままならないんだね。

  • 昔にはなかった新しいライフスタイルに焦点をあて、賛否両論やら疑問やら課題などを浮き彫りにするような小説2編でした。まず『レンタル世界』こちらは結婚式の披露宴に呼ぶ友達がいない時、友達に成りすました人たちをレンタルして場を丸く収めるというレンタル業があるというお話し。アニメ『おそ松さん』でレンタル彼女を視聴していて笑劇だったのでそういうのがあることは知ってました。利害が一致して危険性が無いならこれもありかも…と思えましたがおかしいでしょうか?それより主人公が高松さんにレンタル業やめて俺と真剣に付き合え云々と説教しているのがイラッときました。風俗利用してるあんたがその口で言うかい!?
    そして2作目の『ままならないから私とあなた』。なにゆえにこのタイトルなのか考えながら読んでましたがなるほどの結末でした。
    合理性を追求して便利になることそのものは悪いことではないかもしれませんが、行き過ぎは人間らしさを損ないますよね。薫の行動はそういった意味で違和感MAXで、う~ん…としばし考えてしまいました。作曲家を目指す親友雪子に向かって、これならあなたが楽にあなたらしい曲が作れるよ。どうかな?って。え、これ、喜べますか?私が雪子の立場なら猛反発です。怖いのは雪子が何故反発するのか薫が理解してないところです。こういう人、現実にいるのでしょうか?いたとしてもクリエイターの領域を侵害しないでほしいですね。
    現にAIを利用して、星新一さんの作品を分析してショートショートを書くプロジェクトなんかもあるそうですが、あくまでそれは星新一っぽいショートショートであって亡くなった星新一の新作ではないんですよね?あくまで星新一っぽいだけ。イラストやデザインなどでも今はコンピュータで作れてしまう時代ですけど、だからデザイナーやイラストレーターはいらないのかというとそうではない。そうではないけどコンピュータで作れれば便利だと思う人がいて使う人がいる。クリエイターと人口知能の共存というか棲み分けが、まだその駆け出しである今の時代に課題になっているので、このような作品を朝井リョウさんは生み出したのかもしれませんね。
    もやもやしましたが、ラスト少しに希望を感じました。雪子と薫がうまくわかりあえるといいな。

  • 2019/07/02
    レンタル世界
     レンタル家族、レンタル友達、レンタル彼女・彼氏。置かれた状況次第ではレンタルの人間関係を求めることもあるのかもしれない。でも、やっぱり私はそういう手っ取り早い人間関係じゃなくて、時間をかけて信頼関係を築いた人たちとこれからも過ごしていきたい。ただ、主人公が言うように全部をさらけ出す必要はないと思う。お互いが話したいときに話したいことを話せればそれでいいんじゃないかな。だから主人公が風俗?の女の子から先輩の秘密をお金で買ったのは納得がいかない。隠したいと思った先輩の気持ちを汲んでほしかった。

    ままならないから私とあなた
     無駄なものを嫌い効率をとことん追求する薫と、個人のアイデンティティを大切にしたい雪子。雪子が何年もかかってやっと作曲した曲と同じものを薫が自分のプログラムで作りあげたのには、予想はしてたものの鳥肌が立った。でも既にそういう世界になりつつあるから怖い。どこまでAIでよくて、どこから人間じゃないとだめなんだろう。これからできないことがどんどん無くなっていく世界で、自分はどう生きていきたいかが問われている。

  • なんとも・・・・笑

    主人公が寛容ですごいなと思った。私なら中間の時点で親友に物申すだろうな。

    ラストは、「世の中こんなもんだよね。ほんと、ままならない」

    あんまドロドロしていなくてサクサク読めた。
    レンタル世界も面白かった。

  • どちらが正しい正しくないかの話ではないのかもしれない。
    これはイイこれはダメだなんて一人の人間がきめるのはちょっとまっただ。
    人にはそれぞれ時々の感情があるし環境の違いだってあるんだから。

    古臭いことを言いすぎても浮きすぎたことを言いすぎてもバランスがとれないんだったら真ん中を探すしかないのかもしれないと思った。

    まだ子供っぽい自分が恥ずかしい。

    どこまでいっても理屈っぽい自分もいるしお節介が過ぎる自分もいるからややこしいんだよなー。でもそれがないと人間じゃないからめんどくさいし。

    ややこしいな〜。

  • どちらの作品もおもしろかった〜!
    「レンタル世界」は主人公が綺麗事ばかりで好きになれず、読み進めるにつれてイライラが募っていったけど、ラストはスッキリ。
    痛快、そしてそうくるか〜という展開。

    「ままならないから〜」は雪子と薫、どっちの言い分も共感できて考えさせられた。これからどうなるのかなぁと想像するのも楽しかった。
    朝井リョウさんの作品は読みやすいし、細かいところがリアルなので想像しやすいなあ。

  • 私は人間らしいユッコの考え方が好きで、そちら側の視点からこの物語を見ていた。
    そうしたら、薫ちゃんがどんどん合理的な考え方で色々なものを作ってしまって、その力はすごいけど、最後のところではユッコと一緒に「そうじゃないよー!なんでこんなことするの〜」と思ってしまった。
    でも、薫ちゃん視点から見るとまた物語は変わる。

    価値観の違い。人間らしくて、ままならないときがあるから面白い。

  • 朝井作品を読むのはこれで2作目。
    二編からなる本。
    まず始めの『レンタル世界』。
    序盤からオチの予想はついたものの、文字で読んでみるとやはり衝撃を受ける。

    次の『ままならない〜』はどうにも悩ましい作品。
    合理性を追求する友人と、人間らしさ、心など人の内面を大切にしている主人公。
    かなり両極端に書かれているけれど、どちらも大切だと思う。
    ただ人との関わりは、顔を見て、手で触り、温度や匂いを直接感じたい。私は。
    それすらも必要なくなっていくのかなぁと思うと
    何だか薄ら寒くなってきますね。

  • 「レンタル世界」
    自分の人間関係構築の流儀を正しいと信じて疑わない男がレンタル業で働く女の子に一目惚れしたことがきっかけで、
    いままで自分が「本物の絆」だと信じて疑わなかったものが剥がれていく話。
    終盤に先輩の驚きの秘密というか、本物の先輩像が判明して驚き!
    ミステリー要素があって面白かった。

    「ままならないから私とあなた」
    なんでこんなタイトルなんだろう?と思って読み始めたけど、ものすごくシビアなものを突きつけられた。
    主人公がいう、
    「意味とかがなくったって、単純に楽しい、楽しいだけ、それ以外何の意味もないみたいなことが、意味のあるすべてのものを一気に飛び越えていく瞬間ってあるんだよ。
    そういう瞬間こそが、どれだけ意味のあるものよりも気持ちを明るくしてくれたりもするんだよ。
    誰でも何でもできるようになったら、皆同じになっちゃうから。ままならないことがあるから、皆別々の人間でいられるんだもん。」
    っていうのは本当にその通りで、
    薫が考える効率のいい世界には、多分なんの意味も面白みもないと思う。
    そう思った矢先の薫の反論と、「ままならない」現実に襲われたユッコ。
    朝井リョウは、みんなが無意識のうちに見ないようにしている、見えない現実をえぐり出すのがとにかくうまい。
    ただ結局その差し出された現実をどうしていいのかわからないから、
    せめて小説の中だけでも、彼なりの答えを見せて終わってほしかったな、、、

  •  テクノロジーの進化で、できないことができるようになってきた。いろんなことが。
     それを突き詰めていくと、全部のことが誰でもできるようになるということだ。なんでも、かんでも。
     そうなったとき、人間と機械の違いはあるのだろうか。

     「ままならないことがあるから、皆別々の人間でいられるんだもん」

     私とあなたを隔てることは、私にできないこと、あなたにできないこと、できないことがあるからだ。
     そこでタイトルが生きてくる。ままならないから私とあなた。

     今まで、テクノロジーが人から仕事を奪うとか、技術革新で生活の質は向上しているとか、そういう議論は尽きない。
     それが良いとか、悪いとかを身近に落とし込んだ小説は読んだことがない。

     技術革新は敵か味方か。このまま進化の速度に身を任せていいのか。

     「レンタル世界」では、お金で人間関係を見せかけることの是非について、
     「ままならないから私とあなた」では、小学校からの薫と雪子の友情を通して人間と機械の違いについて考える。

     読みやすく考えさせられる二編。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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