堤清二 罪と業 最後の「告白」

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著者 : 児玉博
  • 文藝春秋 (2016年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904948

堤清二 罪と業 最後の「告白」の感想・レビュー・書評

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  • 「不思議、大好き」「おいしい生活」というコピーを始めとしたセゾングループの文化戦略に身を浸しながら価値観を形成してきた世代なので、堤清二が日本人の生活に描いた物語を理解したい、という気持ちをずっと持っています。たまたま先日NHKの「あの人に会いたい」という番組でも、柔らかい淡々とした口調で自らの挑戦と挫折を語る生前の姿が放送されていました。同じ世代の著者によるインタビューを縦糸に構成されている本書で見せる語り口も映像の雰囲気と重なり丁寧な雰囲気なのですが、でも改めて特に強く感じるのは自尊心。例えば義弟、義明に対する気持ちとして屈辱という言葉を著者が投げかけることに対する反応。絶対、認めようとはしません。セゾングループの物語は父が一代で築き上げた西武グループを舞台にした血の繋がらない兄弟の物語であり、それぞれの実母、操と恒子の代理の愛情戦争なのでありました。そのエモーションを経営者という枠の外で発散したのが辻井喬というコインの裏表の文学者としての顔。でも清二の情念というかクレイジーな天才性が発揮されるのはやはり、堤というファミリーネームを背負った時なのだと思います。文学者というもうひとつの顔を持った稀なる経営者ということで認識していましたが、堤清二のクリエイティヴが発揮されるのは政治的動きであり、それは共産党時代から変わらぬものであり、さらには衆議院議長の父から受け継いだものであるという宿命。堤清二は堤「政治」なのだという感覚を得ました。

  • 西武・セゾンの堤家をテーマにしたノンフィクション。
    20年前ならともかく、今更、堤家かと思っていたが、大宅賞受賞作ということで読んでみた。
    清二氏へのインタビューを軸にし、愛憎、因縁が交わる康次郎氏からの歴史をたどる。
    作家兼経営者で、ある種天才的な清二氏の語り口、心の揺れを巧みに綴る著者の力量は、さすが大宅賞受賞作。

  • 一気に読んだ。

    まるで映画やドラマのようなエキセントリックな登場人物とストーリー展開。これがフィクションではないのだから、驚きだ。

    誠二氏へのインタビューのみで綴られているので、そういう意味では他の堤家の人物に対してフェアではなく、バイアスがかかっているとは思う。それから、本書には著者の主観も含まれている。そういったものがなるべく排除された文献があれば読んでみたい。

  • セゾングループの功績は大きいんだけど。ちょっと構成が雑かな。ハービーが出てくるとはびっくり。

  • 堤義明氏は知っていても堤清二氏はまったく知らなかった。かつての西武百貨店を成長させ、セゾングループの代表を務めた人なんだ。西武と言えば義明氏で、西武ライオンズ球団のオーナーになられた際に初めてテレビで見て、まあいかにも……失墜した方への言葉を慎まなきゃ。清二氏も相当ワンマンで難しい人のようだけど、よくもここまで重ねてインタビューに応じてもらえたなと感心する。東急の五島家にしても同じで、あまりに莫大な資産と権力を相続しても、決して世襲はかなわない。どこまで儲けようと欲望は青天井で、まして守勢は難い。清二氏の告白は精一杯抑えているふうで、最期を迎えるまで復権を夢見ていたことを窺わせる。

  • 「堤清二」というか「辻井喬」は好きな作家である。その作品はほとんど目を通している。
    しかし本書で評価できるのは、堤清二の最晩年に長時間のインタビューをしたことぐらいと思えた。
    堤一族の周辺エピソードは殆どが既に知られていたことばかりだし、辻井喬の感性や知性を際立たせる取り上げ方も週刊誌的手法の匂いが漂う。
    これでもかと無理に「伝説」に持ち上げなくとも、辻井喬は「良い作家」で十分ではないかと思った。

  • タイトルからして重すぎるが、予想に反して短くかつ読みやすい。死の直前の堤清二本人へのインタビューをもとに構成された本である。
    セゾンが栄華を誇った頃、とっくに物心もついていた年齢にもかかわらず、私は「狂気の拡大」をした「異能の実業家・堤清二」をまったく知らなかった。私の中の堤清二のイメージはなぜか、「破天荒な父と弟に振り回されたナイーヴな文学者で、メイン事業の鉄道は異母弟にかっさらわれ百貨店のみの社長となったが、それもあっさりと放棄した、なまぐさい実業界には徹底して興味のない人」だった。聞きかじりのニュースを適当に繋ぎ合わせたにしても、今回初めて知った堤清二の実像とはあまりにかけ離れていて、我ながら苦笑を禁じえない。
    直話から窺える堤清二という人は、とにかく頭が切れる。かてて加えて、紛うかたなき紳士である。どう贔屓目に見ても庇いようなくどこかが破綻している父や弟とは、その点一線を画している。
    だが、弟を「(凡庸な)義明君」と「くん付け」で呼び、「何もわからない子供」と言って憚らないあたり、この人もやはり「堤家の血族」なのだなと思わせた。「何もわからない」はともかく、当時30も過ぎていた男を「子供」と呼ぶことが周りに与える違和感に頓着しない、気づかない。「文学者・辻井喬」として父をひたすら憎み忌避していたという世間の(私の?)イメージとはうらはら、堤清二は憎と同じくらいの愛と執着を、父に対し抱いていた。
    「それでも父に愛されていたのは、私なんです」 こう言い切る85歳の堤清二は、弟を評した時とは違って、その科白が聞く者に与える印象を知り尽くしている。その上であえて背すじ伸ばしてそう言い切った、死病を抱えた(事実それからいくばくもなく死んだ)老人の姿は、鬼気迫る——そのひとことに尽きるだろう。
    それを考えるだに、堤清二/辻井喬ほどの傑物にここまで深き業を刻んだ堤康次郎という人物に、慄然たる思いを覚えずにはいられない。

    2016/10/1読了

  • 実業家"堤清二"としての顔と文学者"辻井喬"としての顔を持った天才・堤清二と、華麗で業にまみれた堤一族のお話。
    堤清二のインタビューをもとにした本なので、主に清二視点で話が進む。

    清二の父・堤康次郎をはじめ、堤一族のことはよく知らない。
    西武グループの創業者と言われて初めてピンときた程度。
    そんな私が読んでもとても分かりやすく、楽しめるドキュメンタリーである。骨肉の争いや帝王学など、ドラマのような話の連続で、小説を読んでいる感覚だった。

    明治から昭和、めまぐるしく変わる時代。彼らのような豪傑な実業家が世の中を引っ張っていったのだろう。
    彼らのことをより理解するために、他の関連書も読んでみたいと思った。

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堤清二 罪と業 最後の「告白」はこんな本です

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堤清二 罪と業 最後の「告白」の作品紹介

第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。月刊「文藝春秋」の連載『堤清二の「肉声」』に大幅に加筆したもので、セゾングループの総帥だった堤清二氏が死の一年前、父・康次郎氏そして弟の義明氏との関係をじっくり振り返った一族の物語です。 清二氏が、著者の児玉さんに10時間以上も語った堤家の物語は、愛憎と確執に満ちた肉親相食む世界でした。大宅賞の選評で、選考委員の後藤正治氏は「インタビューを重ね、その足跡をたどるなかで、入り組んだ内面を宿した人物像を浮き彫りにしている。読み物として読み応えがあった」とし、奥野修司氏は、「筆力、構成力ともに群を抜いている」と評価しました。 康次郎氏は西武グループの礎を築いた実業家であると同時に、強引な手法で「ピストル堤」の異名をとり、異常な好色でも知られていました。清二氏ら七人の兄弟姉妹の母親だけで四人、そのうち二人とは入籍をしませんでした。関係を持った女性はお手伝いから看護士まで相手選ばず、清二氏の母・操さんの姉妹とも関係を持ちそれを操さんも承知していたといいます。その異常な環境で、清二氏・義明氏兄弟は静かな“狂気”を身の内に育まざるをえませんでした。 フォーブス誌の世界長者番付で世界一位に輝いた義明氏と、セゾン文化で一世を風靡した清二氏は、一転して凋落し、軌を一にするように堤家も衰退の一途を辿ります。 西武王国について書かれた本は数多くありますが、清二氏が初めて明かした一族の内幕は、堤家崩壊の歴史であると同時に、悲しい愛と怨念の物語であり、どうしようもない定めに向き合わなければならなかった堤家の人々の壮大な物語です。

堤清二 罪と業 最後の「告白」のKindle版

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