量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語

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制作 : Leon M. Lederman  Christopher T. Hill  青木 薫 
  • 文藝春秋 (2016年9月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905235

量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語の感想・レビュー・書評

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  • 前半は初心者にも優しい口調で話しかけてくれてとても嬉しかったが、後半に行くにしたがって理解できない専門用語が多くなり、そのうちには初心者への説明を放棄してしまったように感じた。しかも最後には研究費削減への恨み節。
    政治も科学も経済も、もっと一般人に興味を持たせるような伝え方ができないのだろうか。もっと分かりやすく説明をすることはできないのだろうか。と、自分の頭が悪いのを棚にあげて言ってみた。
    内容が理解できたとはとても言えないけれど、量子論は本当に興味が尽きない。まだまだ挑戦するぞ!
    で、結局は、ヒッグス粒子がプラトンの言うエーテルだった。てことじゃないんですかね?

  • レーダーマン著,青木薫訳ということで,これは読まなくちゃと思ってた。
    冒頭,目次裏に“本書を、税金で基礎研究を支えてくださっている国民のみなさんに捧げる。”とある。著者が伝えたかったのは,「加速器は強力な顕微鏡」という大変シンプルな主張。超ひも理論だ何だじゃなくて,「加速器は凄い顕微鏡!」ってシンプルに報道してくれさえすれば,SSCのときのように納税者から無用な反発はないはずだ,とのこと。
    実際はそんな単純な納税者ばかりではなくて,やはり金かかるのに実用性ないって嫌がられるような気もするが,実験素粒子物理学者としての矜持が感じられる本だった。
    一貫してアメリカの基礎研究への投資が少ないことに警鐘を鳴らしてて,LHCの欧州やスーパーカミオカンデの日本や,中国に置いていかれることを危惧みたいな論調だったけど,えっ…日本が潤沢…?ってちょっと違和感だったのは否めない。

    SSCの打ち切りを嘆き,多様な基礎研究への投資を呼びかけるレーダーマン。結構激しい
    “経済を成長させているのは科学だという、ほとんどの人にとって…わかりきったことを、頭でっかちの経済学者たちが自分たちの専門用語で理解するまでに、なんと二百年以上もかかったというわけだ。”p13

    90年代素粒子物理学コミュニティで起こった極めて対照的な出来事。
    欧州ではwwwが産声を上げた。これは急速に輪を広げ,その後の世界を変革し大きな経済成長につながる。
    一方,アメリカでは研究者たちの必死の努力にもかかわらず,巨大加速器SSCの計画が潰えた。大西洋を挟んで明暗。

    “経済成長を駆動するのは科学研究だという新しい経済理論、というよりむしろ言うまでもない事実は、アメリカ連邦議会では何の影響力も持てなかったし、今に至るも持てないでいる。”p.17
    えっとこれトランプになる前に書かれてるんだけど,アメリカでそうならいったい日本は…?

    LHCの陽子ビーム,1つのパルスに細胞1個ぶんの原子の数くらいの陽子があるらしいんだけど,その運動エネルギーが時速百キロで突っ走るトラック一台ぶんだとかすごすぎるよ…。
    光速の何%とか言うよりはるかに加速器のやばさを感じた。

    こういうところに理論家への反発が垣間見えるの良い。
    “衝突型加速器を作るのは、非常に小さな距離スケールで、この自然界で何が起こっているかを明らかにするためだ。あれこれの理論家の派閥が提唱するどれかの説に、証拠を与えるためなどではないのである。”p.264

  • ヒッグス粒子について、これまでいくつか本を読んだが、存在の明確な予言とどうして質量が生まれるのかをここまで明確にしたものはなかった。弱荷が保存されることで質量が発生するということで、メディアが発信しているヒッグス場の表現が多少なりとも正確性に欠けることがわかった。

    また、科学への投資に対して必要以上の干渉はやめて欲しい。それは科学の発展を妨げるだけではなく、将来の経済への影響も大きいのだから。特に資源の乏しい日本に於いてはなおさらである。

  • 素粒子物理学に関する一般向け書籍としては珍しく、実験屋さん(と言ってもアメリカの大御所であり著名なノーベル物理学賞受賞者)による物理の本。翻訳本の名前が「量子物理学の発見」となっているのは誤解を招くと思う(現代は「神の粒子(=ヒッグス粒子)を超えて(Beyond the God Particle)。あくまで”素粒子物理学”、それも実験を中心とした話なので何を観測しているのか、という話。2012年のヒッグス粒子の発見という発表を受けて、ヒッグス粒子とは何なのか、ヒッグス粒子が質量の起源とはどう言う意味なのか、そもそも”質量”とは何なのか、ということを量子力学や相対論の歴史と初歩的な説明を行いながら、さらに著者たち自身の実験と結果について分かりやすく解説しながら解き明かしていくという内容です。本書の前半の解説は実験家らしく非常に分かりやすいと感じた。さすがに後半のヒッグス粒子と質量の話になってくると、一般読者には理解するのはちょっと難しくなる気もするが、頑張ればついて行けるレベル。量子物理学とか素粒子論の一般向け解説書というと”ひも理論”だとか”宇宙の誕生”だと”余剰次元”だとか、理論家による書籍が多いのだが、本書はそのような話は基本的に排除され、あくまで実験家として視点を集中にシンプルな解説がしあって非常に分かりやすい。基礎科学の重要性を経済学的にも主張しつつ、アメリカ政府の基礎科学への予算削減に対する辛辣な言葉が随所にあふれるところも面白い。本書はそのような政府や国民に対して素粒子物理学というビッグサイエンスへの理解を促し、基礎科学への予算投入を促すように書かれているとも言えそうです。

  • 著者の一人であるノーベル賞受賞者のレーダーマンは、これまでも一般向けの量子論の本を幾つも書いているようで、研究者であると同時に著述家・解説者としても一流のようだ。超ミクロから超マクロまでのスケール感を、もの凄く大きい(小さい)というのではなく、分かりやすくて理解しやすい数字を使って解説している。
    本書のタイトルからは、量子論の歴史の本かと思っていたが、必ずしもそうではなく、最近話題になったヒッグス粒子というか、物質(究極的には素粒子)が質量を持つ仕組みを解説している。その際、粒子のスピンと対象性の破れという重要な概念を取り扱うが、残念ながら、ここが十分には理解できなかった。もう少し色々な本で経験地を積んでから、再度挑戦してみたい。

  • 量子物理学の発見というよりヒッグス粒子とは何かを開設する。論点に的を絞って話が構成されており、変に素人に迎合するようなこともなく読みやすく面白い。

  • 青木薫さん翻訳による物理学もの、となれば何をおいても読まざるをえない。翻訳者の紹介で「理論物理学のみならず、数学、宇宙物理学、脳科学など幅広いジャンルで科学書を美しく訳す訳者としてファンは多い」と紹介される翻訳者を今まで見たことがない。

    筆頭著者のレーダーマンは、大型加速器による素粒子理論に関する実験物理学の第一人者である。このような基礎物理学のための実験設備には多額の費用がかかるが、「経済は科学への投資によって成長する」ので経済的にも充分なリターンが得られるというのが著者の主張だ。かつてアメリカの議会が超電導超大型加速器(SSC)の計画を止められたことを心の底から恨んでいるようで、本書の中でも何度も苦言を繰り返している。議会の無理解がなければ、ヒッグス粒子は十年早く発見されていただろうと残念がる。実際にはジュネーブにあるCERNのLHC実験場でヒッグス粒子は確認され、2012年7月に発表された。本書は、ヒッグス粒子/ヒッグス場により質量がどのように生まれるかを解説したものである。

    「神の素粒子」と呼ばれたヒッグス粒子は質量を産む素粒子と言われるが、果たしてその仕組みはどのようなものなのだろうか。そもそも「質量」とは何かという問いに当たる。著者は「質量(mass)とは、物質量(quantity of matter)の尺度である」という。まるでなぞかけだ。「質量は、より深く、より根本的な何かから、「生じ」ているのだ」という。そこには対称性の破れが大きな役割を果たしている。

    「宇宙が始まる前、すべてのものは無であり、質量はなかった。完全な対称性が成り立つ世界だった。その対称性が崩れる引き金を引いたもの、それが「ヒッグス粒子」だ。「ヒッグス粒子」が質量を生み出し、われわれの宇宙を生み出すことになった。」

    質量が生じる仕組みについては、たとえば次のように説明をされる。
    「真空は、弱荷を満たした壮大な溜め池のようなもので、弱荷を持たないR粒子は、真空から弱荷を吸い上げてL粒子になる。弱荷を持つL粒子は、その荷を真空に吐き出してR粒子になる。弱荷で満たされた溜め池、すなわち真空を満たすヒッグス場は、あらゆる時刻に空間の至るところを満たしており、素粒子の質量は、あらゆる時刻に空間のいたるところで生じる。弱荷の保存に関係するゲージ対称性は、やはり微視的なレベルで成り立っているのである」
    ついでに質量がない光子が静止できない理由なども解説されるのだが、わかったようで、きっとわかっていない。

    ちなみに質量がない(光速で動いている)と思われていたニュートリノに質量があるということが示されたのは、電子、ミュー、タウのあいだを「振動」することがカミオカンデの実験で確認されたからである。

    著者は大型加速器のことを、超高性能な顕微鏡だという。光学顕微鏡から電子顕微鏡になってより微細な原子構造が観察できるようになったように、より小さなものを見るためには、量子的波長を短くするためにより高いエネルギーを必要とする。そこでは今まで見ることができなかったものを見ることで新しい発見が得られるのだ。レーダーマン自身は新しい「大強度」のビームを用いた実験を新しいものを見るために今も推進中だ。

    実験家で一般向けの本を書くのは珍しいと本人はいうが、日本でも多田将氏など実験物理学者でも素敵な本を書く人はいる。 レーダーマンの他の著作を読んでみたくなった。


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    『すごい実験 ― 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』(多田将)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781606245
    『すごい宇宙講義』(多田将)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781609910
    『宇宙のはじまり』(多田将)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781680038
    『ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器』(多田将)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4781680054

  • 2012年にヒッグス粒子が発見され、ノーベル賞をとったとき、メディアで解説を読んだが、どれも???であった。
    本書はヒッグス粒子を中心にした量子物理学の本。門外漢が一読しただけでは、とても理解したとは言いがたい。それでも分かりやすい例えが豊富で、量子物理学のまか不思議さ、巨大な加速機を顕微鏡に例えて、何をしているのかを生き生きと描いてくれ、好奇心を刺激してくれる。
    いつもながら、訳者の翻訳も読みやすい。

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量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語の作品紹介

ギリシャ以来、物質の最小の構成単位への人類の探求は、原子核とそれをまわる電子というモデルまでいきつく。しかし、1912年のある日、物理学者のニールス・ボーアは気がつく。なぜ、電子は原子核に墜落しないのか?まったく新しい物理学が誕生した瞬間だった。人類の極小を探る旅は、加速器というものさしを得て進歩する。それは宇宙の始まりを解き明かす旅になった。アメリカのフェルミ研究所で加速器を使い、極小の世界を追い求めたノーベル賞物理学者が、この新しい物理学の誕生から現在そして未来を綴る第一章 宇宙の始まりを探る旅2012年に世界の新聞の一面を飾った「ヒッグス粒子」の発見。本書では、その発見にいたるまでの人類の歴史を、ノーベル賞量子物理学者が綴る。それは、この世界の極小の構成単位を探る旅でもあり、同時に宇宙の始まりを探る旅でもあった。第二章 その時、ニュートン物理学は崩れたギリシャ以来、物質の最小の構成単位への人類の探求は、原子核とそれをまわる電子というモデルまでいきつく。しかし、1912年のある日、物理学者のニールス・ボーアは気がつく。なぜ、電子は原子核に墜落しないのか? 全く新しい物理学の誕生。第三章 世界は右巻きか左巻きか水の分子を鏡に写しても左右対称で変わらない。しかし、変わってしまう分子もある。例えば、われわれの世界の食べ物は右旋体の糖でできている。さてでは物理法則はどうだろうか? その対称性が破れていることを発見したのがこの本の著者だった。第四章 相対性理論の 合法的な抜け道エネルギーは光速の自乗にそのものの質量をかけたものに等しい。E=mc²。アインシュタインは、物質の質量はエネルギーに転換できることを示した。しかし、光に質量はないはずだ。とすれば、光はエネルギーに転換できないのか?第五章 初めに質量あれ宇宙が始まった時、すべてのものは無であり、質量はなかった。完全な対称性がなりたつ世界だった。その対称性が崩れ去る引き金をひいたものがいる。それが「ヒッグス粒子」だ。「ヒッグス粒子」が質量を生み出し、宇宙を生み出すことになった。第六章 何もないところになぜ何かが生まれたのか?ではどのようにして何もないところからヒッグス粒子が生まれ質量が生まれるのか?10の マイナス25乗の非常に短い時間では不変と思われたエネルギー保存則がなりたたない瞬間がある。その「量子ゆらぎ」とよばれる時間のことから説明しよう。第七章 星が生まれた痕跡宇宙誕生時にできた原子星の内部で、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、鉄などの重い元素がつくられる。しかし、これらの元素があまねく宇宙に行き渡るためには、崩壊による解放が必要だ。その痕跡がいまもふりそそぐ「ニュートリノ」という粒子だ。第八章 加速器は語る著者らのフェルミ研究所は、標準理論のその先を探索する新加速器「プロジェクトX」を進めている。それは高エネルギー追求から転換してコストは抑え、膨大な数の粒子を観測して珍しい現象を探す新たなアプローチだ。第九章 ヒッグス粒子を超えて量子物理学はまだ道半ばだ。ヒッグス粒子は物質に質量を与えるが、それ自身の質量がどこから来るかはわかっていない。宇宙のほとんどを占める暗黒物質も検出できていない。未知の物理現象を求める実験は続く。

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