静かな雨

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著者 : 宮下奈都
  • 文藝春秋 (2016年12月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (107ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905716

静かな雨の感想・レビュー・書評

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  • 「忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない」

    駅のそばのパチンコ屋の裏の駐輪場にたいやき屋があった。
    とっても美味しいたいやきを焼くこよみさん。
    こよみさんに憧れ、生まれつき足に麻痺があり松葉杖を使っていて、
    高嶺の花と思っている僕・行助。
    ある日、こよみさんは事故にあってしまい眠り続けている…。

    毎日病院に通い見守る事しかできない行助。
    三月と三日眠り続けたあと目覚めたこよみさん。
    高次脳機能障害で、短期間しか新しい記憶を留めておけない…。

    主人公の行助の一人称による文章は、気持ちの揺らぎや感情が
    とても静かに静かにシンプルに描かれている。
    ゆったりとした日常の描き方がとても好きです。
    静かで優しい世界が広がっていくのを感じます。
    人間って何で出来てるかという事を、毎日の生活の中での思いで
    人は出来てるって考え良かったなぁ。
    記憶を毎日失くしながら生きてゆくって…とても苦しくて辛いって思う。
    そんなこよみさんがとっても素敵。
    こよみさんが語る言葉の数々が彼女かこれまで歩んできた道や、
    考えや根っこの部分を感じさせられ、とても惹きつけられた。
    魅力的な人でした。
    行助の家族もとても素敵な人達だった。

    色々考えさせられるテーマでした。
    でも、美しい旋律のような文章で心地よく心に染み入りました。
    決して暗くならずに、清々しい気持ちになれました。
    諦める事は、受け入れて前に進むという事というメッセージが込められている気がしました。
    本当に短い作品でしたが、まさに宮下さんの原点という感じの作品でした。

  • デビューのきっかけとなった、宮下さんの原点ともいえる作品。
    どこか痛いものを抱えて生きる人同士の優しいかかわりを描く、宮下世界がもう構築されている。

    物語の中に出てくる本、こよみさんが2冊買ってしまった本のお話とずいぶんかぶっていると思うのだけれど、終わろうとしている人のお話ではなく、まだみずみずしく若い人のお話だ。

    全部忘れてしまったわけではない。
    こよみさんを作った「土台」は確かにそこにある。
    その土台の上に、今は毎日テントの張りなおしだけれど、いつか家が建つかもしれない。
    おいしいたい焼きが焼けるのなら、毎日焼いていけるのならそれでいいじゃない。

  • ここから始まったのだな、としみじみと思う。透明で繊細で優しくてしなやかで優しくて、だけどまんなかにしっかりとした芯のある宮下さんが紡いできた物語たちの源がここにある。
    世間から見ると少しだけ横に押し出されてしまった人たちの、普段の生活のなかにある小さなできごとが、どうしてこんなにもきらめいて見えるのだろうか。
    毎日たい焼きをやいているこよみさんが、ずっと松葉杖をついてきた行助の隣りで明日の夜には静かな涙を流さずにいられますように、とただそれだけを祈ってしまう。

  • 「本屋大賞受賞後の第1作」とあるが、初出は2004年6月号の「文學界」

     行助の勤務先の会社が解散し解雇されることになった日の帰りに、駅そばのパチンコ屋の駐車場のたいやき屋で買ったたい焼きがとても美味しくて、引き返して「これ、おいしい」と言うと、うれしそうにほおを紅潮させたこよみさん。
     行助は毎日買いに行き、やがて一緒に食事するようになるが、交通事故のとばっちりで、こよみさんは3か月も意識不明になる。意識が回復しても記憶に障害が残り、前の日のことは覚えていない。
     行助はこよみさんを支えるために一緒に暮らし始め、たい焼きを食べた行助の家族たちも、こよみさんを認める。

     こよみさんの少ない持ち物で2冊同じものがあった本はたぶん『博士の愛した数式』。どんな気持ちで読んだのだろう。行助のモノローグで語られるので、そこはわからない。行助は「人は記憶でできている」という考えを断固否定する。「毎日の生活の中の思いで人はできている」と思うのだ。

     ああ、うちにも前の日のことを覚えていなくなった母がいるんだった。

  • 渾身で焼く10匹のたい焼き。
    そういえば、渾身の力で一回通してからやってたな、あのころ。

  • ずっと穏やかな時間が流れる文章だった。
    こよみさんが、事故の巻き添えにあっても、
    店に若者がいちゃもんつけに来ても。

    ただ行助がブロッコリをきっかけに、こよみさんに覚えてないの?と言ってしまうシーンは動だった。それまでが静だったから。

    宮下さんの文章は心地いいな。まだ2冊しか読んでないから、早く他のも読まなきゃ。

    一丁焼きだったら、そりゃ美味しいよね。

  • 仕事を失った行助は、偶然立ち寄ったたい焼き屋の女性・こよみと出会う。行助は店に通い、二人の距離は縮まっていくが、ある日こよみは交通事故に遭う。後遺症により、事故以前の記憶はあるが、事故後のことは1日経つと記憶を失ってしまうこよみ。行助は一緒に暮らすことを提案するが。。。
    目新しいテーマではないと思うが、静かに、そしてやさしくゆっくりとした日常が描かれている。タイトルの静かな雨のように、ゆっくりと心に沁みていくが、雨とは違い心温まる一冊。

  • 事故で一日しか記憶がとどめられない彼女と生まれつき足が不自由な彼の話。
    さみしい読後。たい焼きはやっぱり一本焼きに限るよね。
    ☆2か3か迷う...

  • 行助と言う名前が出てきたときに『冬の旅』?と思ったら、
    ほんとうにそうだった。

    美味しいたい焼きにも心をひかれつつ読みました。

    話がぷつっと終わり、次の話がはじまる感じに慣れなかったけれど、
    それがこの独特な世界観を生みだしているのかもしれない。

  • このお話し嫌いじゃないけど、で?と思ってしまった。行助は重複のことについて言わないのかな?ブロッコリーは嫌いだからイラっとしたんだろうけど。

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静かな雨の作品紹介

「忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない」新しい記憶を留めておけないこよみと、彼女の存在が全てだった行助の物語。『羊と鋼の森』と対をなす、著者の原点にして本屋大賞受賞第一作。〈著者プロフィール〉宮下奈都(みやした・なつ)一九六七年福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒。二〇〇四年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。〇七年に発表された長編『スコーレNo.4』が絶賛される。一五年に刊行された『羊と鋼の森』が本屋大賞、キノベス第一位、ブランチブックアワード大賞の三冠を受賞。その他の著書に『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『ふたつのしるし』『誰かが足りない』『たった、それだけ』など。◯著者の言葉「静かな雨」は、人の可能性について書きたかったのだと思う。少なくとも自分ではそのつもりだった。でも、どうだろう。可能性の話というよりは、可能性をなくしていく話だったかもしれない。人はどんなふうに生きることができるか。その選択肢をなくした先にたどり着く場所について。(中略)とりわけ、『羊と鋼の森』にはまっすぐにつながっていた。まったく違う物語なのに、根っこがしっかりとつながっていた。読み返して一番感情を揺さぶられたのは、作者本人だったと思う。(月刊文藝春秋1月号より)

静かな雨のKindle版

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