サイレンス

著者 :
  • 文藝春秋
3.49
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本棚登録 : 448
感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905914

感想・レビュー・書評

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  • 最近読み始めた秋吉理香子さん。
    普通のミステリーだとばかり思っていたら謎はありましたが、この作品では殺人事件は起こりません。
    軽く読める恋愛ミステリーとでも言ったらいいのでしょうか。

    子供の頃歌手になるのが夢だった、新山深雪34歳。
    20年前暮らしていた雪之島、一番の美少女でアイドルのオーディションに合格しますが父親に上京を反対されてあきらめます。
    東京の大学に合格するのと同時に芸能界への未練がつのり、バイトをしたりしてきましたが、年齢的に無理があり、芸能プロダクションでアイドルの宮原かおりのマネージャーの仕事をしています。

    深雪には広告代理店に勤める恋人の藤崎俊亜貴がいますが、6年間つきあっても結婚しないので、周りの先輩女性から注意され「この年末年始に実家に一緒に行ってくれなければ別れましょう」と言ったら、俊亜貴はなんとOKで、島に行くフェリーの中で結婚指輪まで渡されます。
    俊亜貴はなんか胡散臭いなあ、地元の幼なじみの達也の方がずっといい男だよなあと思って読んでいたら、やっぱり。
    俊亜貴は1000万円以上の借金の返済のために深雪が必要だったのです。しかも本命の女性までいて、深雪とはカモフラージュのために付き合っていたのがずるずると。そして深雪の預金をあてにした借金返済のための結婚。


    以下ネタバレです。ご注意ください。


    大丈夫です。深雪は深雪のことが大好きな島の女の子風花ちゃんが、島の守り神「しまたまさん」に一生懸命お願いしてくれたおかげで幸せをつかむことができます。
    島の生活は濃い人間関係など厳しいところもありますが、スマホだけでつながっている都会の生活は怖いということを実感しました。

  • ★3.5

    私は絶対、この島を出るのだ。
    結婚の挨拶のため、故郷の雪乃島に帰省した深雪だが、
    婚約者は突然の失踪…。

    新潟からフェリーで2時間、人口300人ほどの孤島雪乃島。
    深雪はアイドルを夢見て島を離れ、東京の芸能事務所でマネージャーをしている。
    34歳の深雪は結婚を焦っていたが、広告代理店勤務の俊亜貴は、
    付き合って6年なのに結婚の話を全然しない。
    業を煮やした美雪は意を決して迫り、年末に二人で雪乃島に住む両親に挨拶に行くことに。
    だが、美雪の実家へ泊まった後、俊亜貴は失踪してしまう――。

    信号も交番も病院もスーパーもコンビニも何もない。
    何か起これば直ぐに島中に話が広がっていく…。
    結婚の挨拶に、本家や分家や親戚一同がやって来る。
    余りにも島ならではの因習や慣習…凄い(゚Д゚;)
    レベルが違い過ぎて、ビックリです。

    俊亜貴友人の望月の父母の話が印象的。
    父親が東京の人で母親は生粋の五島のひと、それでちぐはぐな結婚生活…。
    二人の感覚が違う。だから二人とも別に間違っていないし、悪くない。
    ただ、お互い異星人同士…。

    いつもよりイヤミス感は少な目でしたが、いやいやじんわり効いてくる怖さ。
    島の閉塞感・息苦しさ・陰鬱さ・島ならではの風習・しまたまさんの存在。
    嫌な感じがゾワゾワする感じが続き一気読み(笑)
    最初からスーツがとっても着になっていましたが、
    幼馴染の朋子の連れて来た彼も、深雪が連れて来た俊亜貴もそうだったんだね…。
    島の守り神しまたまさんは、そうだったんだね…。
    秋吉さんらしくゾワッとさせられました。
    それにしても俊亜貴の酷さめっちゃ腹立ったー(*`Д´*)酷すぎるよ。
    でも深雪が幸せになって、本当に良かったです。

  • 新潟本土からフェリーに乗って二時間の雪之島で生まれ育った深雪。
    島では評判の美少女で芸能界に憧がれるが、オーディション最終審査まで残るも、両親は上京を認めない。
    しかしその後も東京に強い憧れを抱き、大学に通いながら芸能界を目指す。
    夢は叶わなかったがアイドルのマネージャーとして再出発する。
    そんな中大手広告代理店のクリエイティブプロデューサーの俊亜貴からアプローチを受け付き合うことに。
    俊亜貴との婚約が決まり、島の両親に会いにいくのだが、、、

    本の装丁と、「わたしは絶対、この島を出るのだ。」のコピー。

    サスペンスかホラーなのだろうと予想し、読み進めていった。

    あー、しかしこれは何というジャンルなんだろう?私も田舎育ちだが、ここまでの田舎ではない。この田舎の世界観が自分には衝撃的だった。

    文章はとても心地よく、すーっと頭の中に入ってくる。適度な情景描写と、人物の心理描写がしつこくなく、とても読みやすい文体。

    読んでいる間は、自分も吹雪の中を歩いているような、そんな不安がつきまといつつも、あっという間に読めてしまった。

    私はなかなか好きな作品だ(*^^*)

  • 最後がぞっとする展開。なんで俊亜貴みたいな人を好きになってしまうだろうな…。俊亜貴が深雪のことを、好きではないけど必要なんだと。要は都合のいい女と言っているくだりが、本当に嫌になった。それに対して、地元の竜也はいい。ようやくその良さがわかって良かった。この平和が続くといいが…。

    怖さの余韻が残る小説だった。

  • 決して直接的な描写はないものの、そういうことなのか・・・と理解する瞬間のゾクリ感がたまりませんでした!

  • 単純に言うと、ダメ男に尽くす田舎の島出身女性が捨てられて、地元の幼馴染たちに助けてもらう話。
    ダメ男がダメすぎる。ただ、これは小説だから俊亜貴側のダメっぷりが分かるけど、知らなかったら甘い言葉に騙されれるのも分かる気がする。好きになったらあばたもえくぼ。違和感があっても、それをひっくるめて好きなんだろうな。
    でもさ、深雪も自己中。どっちもどっち。あぁでも、人って結局基本自己中だから、誰が悪いって言うのではなく、価値観の違い。
    価値観って、育った環境が大きい典型的な例だろうな。偏見かもしれないけど、よくも悪くも田舎は人間関係が濃い。合う人は合うし、合わない人は合わない。
    話の流れは、なんとなく予想ついてたけど、朋子から深雪、たっちゃんの妹の話まで繋がっていく不気味さ。何が幸せかは分からないし、それぞれの言い分も分かる気もする。はたから見れば、ダメ男も、はたから見ないと分からない。

  • 新潟の離島で生まれ育ち、田舎が嫌で上京し、東京に固執し、東京生まれの男性と結婚を夢見る深雪。相手を想うというより自分の理想を叶えてくれる俊亜貴に尽くす深雪にも、都合のいい女の深雪ととりあえず結婚し、他所で好きな女と楽しもうという俊亜貴にも共感できず、前半はイマイチかなぁと読み進めてたけど、スーツやスマホの下りでゾッとしました。そういえばイヤミスだったわ。それにしても、知らないうちに疎ましく思う生まれ育った環境やらに強く影響って受けてるものなんですね。

  • 読みやすいミステリーだった。こういう感覚って都会生まれ、都会育ちの人にはイマイチピンとこないのかな?
    地方出身者にとっては、あー!あるある!と共感させられました。そう!ほんと煩わしい笑笑 そして必ず生まれ故郷の呪縛からのがれられないのもアルアル!

  • こんな島は嫌だ。新潟地方にある、人口300人程度の『雪之島』。浜風で吹雪吹きすさぶ、田舎の閉鎖的な島。島出身の深雪は、都会へ憧れて上京し、婚約者トシアキを連れて帰省する。トシアキはどう見てもクズ男だが、深雪は彼に執着するー。はっきり言って、クズ男のトシアキよりも深雪の方が好きになれなかった。トシアキはクズだが、田舎独特の風習に付き合わされる場面には同情した。深雪は大層ウェットな女で、重い。美人でも不幸になる典型である。物語としてはミステリーというよりはサスペンスか?よくわからない部分もあったがイッキ読み。

  • 2019.03.19
    初めての著者。ささっと読めた。まどろっこしいけど、こんな女性もこんな田舎もあるでしょう。よく調べたのか自分の経験からか。凍ったスマホがあるのに幸せになれるのかねえ?そこが引っかかるわ。みんな「しまたまさん」のせいにしてるのかな?

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学院で映画・TV製作の修士号を取得。2008年、短編「雪の花」で第3回「Yahoo!JAPAN文学賞」を受賞、翌年、同作を含む短編集『雪の花』で作家デビューを果たした。ダークミステリー『暗黒女子』は話題となり、映画化もされた。他の作品に『絶対正義』『サイレンス』『ジゼル』『眠れる美女』『婚活中毒』『灼熱』などがある。

「2021年 『息子のボーイフレンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

秋吉理香子の作品

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