コンビニ人間

著者 :
  • 文藝春秋
3.62
  • (967)
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  • (423)
  • (123)
本棚登録 : 17322
感想 : 2374
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906188

感想・レビュー・書評

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  • 「私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」ーーーとても斬新な切り口で面白かった。
    「普通」の人にとって理解できない・世の中に貢献できない人間は、ムラから干渉される・糾弾される・排除される・・・。

    冷静になって考えると、もし自分の身近に恵子みたいな人がいた場合、ミホやユカリのような対応をしてしまうかもしれない。そういった意味で、これは身の回りにありふれた現実なのだとハッとさせられた。
    「現代は機能不全世界なんですよ。生き方の多様性だなんだと綺麗事をほざいている割に、結局縄文時代から何も変わっていない。」白羽の言動は読んでいて腹立たしいものではあったけど、異物を認めない世界を嘆いている言葉は真に迫っているなと感じた。

  • 3.4
    かなり変わった設定でしたが、話の展開があまり好きではありませんでした。
    内容として、確かにそうだなと思う部分は多々ありました、楽しん読むというよりは、メッセージ性が強い感じがしました。

  • 冒頭、コンビニの圧倒的な描写に息を呑む。同時にそこには古倉の異質性も描き出されていて、ぐいぐい引き込まれてしまった。

    本作は、単なる古倉という異質な人間の異端な物語ではない。描かれているのは「あちら側の世界」と「こちら側の世界」のまごうことなき断絶である。
    社会はあちら側の理論でできており、いくらすり寄って「マニュアル」通りに動こうと、そもそもが誤りだ。そんな結論に至る古倉を通じて、本作は痛烈な社会批判を展開している、あるいは現代にある、とあるマイノリティの存在を悲痛なまでに描き出しているとも読める。

    古倉は本著において、あちら側=いまの私たちの社会における「通常」に対する異端として描き出されている。
    しかし、「あちら側のマニュアルに添えたら楽なのに、全て指示してもらえたらその通りにするのに」「私は周囲の人たちをコピーすることでできていて、周囲が変われば私は全く変わってしまう」といった古倉の内省には、「あちら側」への同調圧力をうっすらとでも違和感を持って受け止めたことがある人なら、共感を抱く人は決して少なくないだろう。

    その意味で、実は私たちの多くが、自身のなかに「古倉性」を保持しているはずだ。あるいは古倉の姿は、こうした「いまの社会における異端」であるこちら側、である私たちに対する、ひとつのメッセージであるようにも思える。いるんだろ、そこにも。君も古倉じゃないか。「あちら側」の人間だらけの世界で生きづらさを感じる私たちのための、これは聖典だ。

  • コンビニの音を聴きに行きたくなる。
    古倉さんの接客、きっと気持ちいい対応。

    異物にされる感覚の表現が秀逸。

  • 芥川賞受賞作品。基本、純文学を読まないのだが、読んだ人の評価が良かったので、読んでみた。テレビでも紹介されているように、「コンビニで働く女性の話」。どんな仕事でも、どんな雇用体系でも、プライドを持って働くことは大事だと思うから、私は主人公・恵子の生き方は素晴らしいと思う。なのに、それを受け入れられない周囲の人間たちがどうにも好きになれず、何とも読後が微妙…生き方なんて、人それぞれ。何か一つでもプライドが持てることがあるってことは素晴らしいことだと思わせてくれる1冊。

  • 八年近く前読んだが、もう一度読みたくなり、どんな内容だったか思い出しながら再読。
    当時と今で、自分の捉え方は異なった。

    基準

    人の数だけ考え方がある。時代によりルールが変わる。環境によって価値観が変わる。いろんな側面がある。角度によって見え方は全く異なる。本当の姿は誰にも分からないし、分かるはずがない。

    タイトル通りコンビニの話だった。
    基準とは何かを考えさせられる。自分の中の普通と他人の普通は異なる。一般的にこうだからとか押しつけるのは違う。しかし果たして今の日本、世界はどうだろうか。誰が決めたか分からない常識で価値観を基準に、見下し、蔑み、生きている。

    古倉恵子の生き方は世間から見たら、おかしいと言われるかもしれない。しかしその世間とは何なの、多種多様だろ。それこそ基準に戻る。それぞれ多種多様で基準がある。私は、とても格好良く、素敵で強い生き方をしていると感じた。おかしいとか言う人は、その人の、ものさしで決めてるだけだ。

    もう一つ大事なのが、白羽。
    白羽はクズとか、ダメ人間とか、もうしんどいとか思う人がいるのだろう。私も正直辛かった。しかしその辛いというのは、自分とどこか重ねてしまうところがあるからだ。人間は誰しも強そうで弱い。批判、悪口、見下す。そうしないと生きていけないからだ。白羽自身は果たして本当にクズなのか。白羽は怠けているわけでもないと思うし、うまく表現できないが、どこか周りと自分との葛藤を常に向き合いながら生きていて、そういう意味では辛かった。

    とにかく、誰からなんと言われようと、どんな価値観を押し付けられようと、自分は自分だけ。他人に干渉されようが、流して聞くなり、基準なんてクソ喰らえ。

    生きているだけで奇跡、自分の生き方をなんと言われようとほっとけ。
    偏見は必ず起きる必ず。

    飄々と生きている古倉恵子は素敵で格好いい。
    古倉恵子ほど、コンビニが人生の人間はいない。
    まさしくコンビニ人間だ。

  • 社会不適合者が自分らしく生きていくことの難しさ。勝手に型に嵌めようとしてくる周囲の人。それが偽りの姿だとしても型に嵌った風に擬態した方が生きやすいけれど…
    結局みんな、少しでも居心地の良い居場所を確保したくて、(程度の大小はあれど)擬態しているのでは?

    時代が変わって白と黒の境目が動いたとしても、場所が変わっただけでグレーの存在は消えないしそこに新たな生きづらさが存在するのだろうな。そんなことを思った。

    • コルベットさん
      nobikoさん、こんばんは。いつもありがとうございます。深いですね。一社会不適合者として賛同いたしますw
      nobikoさん、こんばんは。いつもありがとうございます。深いですね。一社会不適合者として賛同いたしますw
      2024/01/16
    • nobikoさん
      コメントありがとうございます!コルベットさんの選書のセンスが好きでたまに本棚を覗かせて貰ってます。
      私も擬態しまくりです…w
      コメントありがとうございます!コルベットさんの選書のセンスが好きでたまに本棚を覗かせて貰ってます。
      私も擬態しまくりです…w
      2024/01/16
    • コルベットさん
      返信ありがとうございます。嬉しいです♪私の本棚は、煩悩と人生の迷子感丸出しです(汗 nobikoさんの本棚こそセンス良くて憧れます!これから...
      返信ありがとうございます。嬉しいです♪私の本棚は、煩悩と人生の迷子感丸出しです(汗 nobikoさんの本棚こそセンス良くて憧れます!これからもよろしくお願いいたします_(._.)_
      2024/01/16
  • "普通"側の人達はどんな感想を持つのかな、とまず読了時に思った。奇妙で異質だけれど迷惑をかけない、他人に土足で踏み込まない。一方"普通"の人達の異質な人に対する土足での荒らしっぷりは本当に酷い。同調圧力の酷い日本ならではでもあるかな。この本は私にとって友人になりました。

  • コンビニで働いている気分になれる。
    普通とは何なのか考えさせられる。
    ページ数が少なくあっという間に終わってしまった。もう少し続きを見たかったが、これはこれで良いのかもしれないと納得もする。
    驚きは少ない。多種多様を見れる本。
    家族にも薦めてみたい。

  • みんな、それぞれの思う「普通」があるのに、勝手に他人にもその「普通」を求めてるところはあると思う。
    「普通」でありたい、「普通」になりたい。
    そう思う主人公の気持ちは分からなくもないが…

    自分は何も努力しようとせず、人に文句を言い蔑むばかりの白羽にイライラが止まらなかった。
    何度も読むのを中断しようと思った本は初めてです。

    人を見下す前にやるべきことがあるだろう!!!

    白羽に会ったら、そう伝えたい。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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