- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163906188
感想・レビュー・書評
-
突拍子もない主人公を通じて描く、現代社会の生きづらさ、でしょうか。
高校時代に受けた芥川龍之介の羅生門の授業を思い出しました。
小説は、極限状況を切り取って読者に迫るもの、と。
そういう意味では、まさに芥川的、なのかな?と感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会の中で生きる多くの"普通"つまり"多数派"の人間は、排除すべき存在を、というか自分に向かってくるいろんな人を都合のいいように解釈して(作り替えて)受け入れているんだなと、それも無意識のうちに。そもそもの主人公が社会でいう「ムラから排除される人間」だから、その視点で描かれるのが新鮮でおもしろかった。彼女の視点で見る社会はこんなにも自分と違うのか。
そもそもなんでみんなが自分を心配そうに見つめるのかわからないという主人公の視点に立つと、見つめる側への違和感を感じる。"結婚は当たり前" "就職は普通" というのは今まで一般論として受け入れていたけれど、本当にそうなの?と疑問を持たずにはいられなかった。彼女はずっと多数派の普通の人間に合わせて生きてきたのに、どうして合わせてもらった人たちが彼女を否定できるのだろうか。最終的に彼女が"コンビニ店員"という新しい生物として生まれ変わったのを、私は肯定したい。ゾッとするシーンが多々ありますが主人公が軽いのでテンポ良く読めました。最後に、改めてですが、コンビニ店員の皆さんいつもありがとうございます!! -
面白かった。
当たり前に自分の中に形成されてる「普通」。
そこから外れてる人を驚いたり、距離を取ったりする。
多分、友達に古倉恵子がいたら自分もそういう反応をしてしまうなと思った。
それと同時に人間の合理的ではないところ、何故か教えられてもない「世間の幸せの形」が決まっているのかなど、恵子の心情にたしかにとも思った。
現実味はないけど、恵子の気持ちも分かるといった不思議な小説だった。 -
さすがに行き過ぎだけど主人公に共感できる部分もたくさんあって引き込まれた。
-
受賞作でなくても私は好きだ。消滅世界の方がマイナーでこちらは読みやすかった。みんなの中に少なからずある(と思う…)他人からの影響が主人公にとっては全て、の変わり者。主人公に意思はない。淡々と過ごしていく生活は読んでいて私にとってモノクロのような世界、その中で唯一コンビニは虹のような多彩な世界の書き方だったと感じた。
-
再読。コンビニ店員であることが存在証明になってしまった女性の話。何度読んでも面白い。主人公である古倉と白羽、奇人どうしのかけあいが面白いし、一方で、普通であることとは何であるか考えさせられる。エンタメと純文学のバランスが絶妙だと思った。
-
第155回芥川賞受賞
帯より
36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、
清潔なコンビニの風景を「いらっしゃいませ!」の掛け声が、
毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが……。
「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。
人間の嫌なところ、怖いところをずっと読んでいるようだ、読後感も悪い… -
コンビニ人間 村田沙耶香
2016 7/30 初版
2016 11/25 第10刷 2019/6/1読了
昨夜のwakayama読書部にて
タカタカ顧問にお借りした本です。
読んでみたいと思っていたので丁度良かったけど、人に本を借りることがあまりない経験だったので戸惑いながら
一気に読んでしまいました。
この作者
素晴らしい才能の持ち主のようです。
陰鬱になりそうな重たい題材を的確に…
そうまるでコンビニの商品のように計算し尽くされて書き進められたんだろう。と思わせる筆運び。
着地点の真ん中を目指してきちんと着地したような
清々しさを感じさせます。
社会から弾き出された主人公がたどり着いた
「人間という動物の合理性に基づいた行動」というまさしく合理的な着地点に見事に着地した瞬間が素晴らしく清々しい作品でした。
2019年 芥川賞受賞作。 -
読後、振り返るのが怖くてなかなか感想を書けなかった。
なんだか身につまされるというか…
私自身も、恵子のようだったり白羽のようだったりするのだ。
世間基準では成人未満といえる。
自分のわかるものしかわからず、思想だけは一丁前風で、ちょっと差別の意識があることも自覚してる。自分のことは棚に上げつつ。
自分の精神が未成熟もしくは異質なことが、世間の枠から外れているかもしれないことが、周囲にバレてしまったら、きっと排除されてしまう…と思っているのは自分だけで、周囲はちゃあんと見てる、知ってる、私の未熟さ異質さを。
そういうことをズバリと表現されてしまっている作品だ。
恵子の自己肯定に至る物語と思えば少しは気楽に思えるけど、特に状況の解決にもなっていないし、恐らく周囲の人々の見方も変わらない。
いや、もしかしたら恵子が自己肯定したことで、周囲との関係も変わるのかもしれない。そう思わないと救われないし、やりきれない。
マジョリティはマイノリティを矯正する。治すともいう。
マジョリティになれなければ、排除される。
世間は「我こそはマジョリティ」と覇権争いを繰り返している。
マイノリティはもちろん、マジョリティに属している人も、いつ排除されるのかと怯えている人はいるに違いない。
救われるには、自己肯定しか道はないということなのだろうか。