コンビニ人間

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著者 : 村田沙耶香
  • 文藝春秋 (2016年7月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906188

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コンビニ人間の感想・レビュー・書評

  • 著者の作品は二作目。
    初めましてだった『しろいろの街の、その骨の体温の 』で大打撃を受けたので、
    恐る恐る読み始めたんですが、意外と読みやすかったです。

    ただ、中盤からのお風呂場で餌~押し入れになったとき、やや危険信号。
    なぜか吸い寄せられ、ページをめくってしまう感覚に、また振り回されそうになりました。

    そして、主人公はこのままでいさせてあげればいいのに。
    と思う反面、難しいんだろうな…とも。
    何が普通で、何がそうじゃないのか、とか、
    あちら側とこちら側、自分も知らず知らず区別してはいないだろうか…。とか、
    頭の中がぐるぐる。

    それでもやっぱり、彼女からコンビニを取り上げて欲しくはないかな。

  • 読後、自分の立ち位置がぐらぐらと揺らぐような感覚に襲われた。淡々とした文章が読み易く、一気に読了したものの、何とも複雑な感情が渦巻いて、簡単に面白い/面白くないとジャッジできないような余韻を今も引きずっている。そういう意味では、これまで読んできた芥川賞受賞作ではインパクトの強い作品だと言える。
    コンビニのバイトを18年続けている、未婚36歳の恵子。「普通」であることがわからないから、何とか世の普通に合わせようと振る舞う彼女の行動に、結構共感しながらもチリチリと痛みも感じた。完璧なマニュアルの存在するコンビニでの仕事に安らぎを感じる、というところにも。私自身コンビニ仕事の経験はないけれど、事細かに描写されるコンビニのシーンが一番好きで、職場が自分の居場所…のような感覚がすごく理解できる。
    バイトの新入り男性・白羽が現れてから、恵子の歯車が狂っていくが、同時に自分の価値観も引っ掻き回され、何が正しくて何が間違っているのかがわからなくなっていく。白羽がなかなかに曲者で、彼と関わっていく後半は個人的には引く部分もあり。村田さんは初読みだったが、ここまで描いてしまうのかという彼女の思い切りの良さというかストレートさに戸惑いつつも、読むことを止められなかった。
    色んな角度から心をえぐられたにもかかわらず、もっと村田さんの作品を読みたいなという気になっている。

  • ★3.5

    36歳未婚の古倉恵子。
    大学一年の時から始めたコンビニのバイト。
    大学卒業後も就職せずに、コンビニのバイトは18年目。
    日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニの仕事をしている。
    完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な
    「部品」にしてくれ、安らかな日々を過ごさせてくれていると思っている。
    ある日、婚活目的の新人、白羽君がやってきて…。

    芥川賞受賞作は面白くないという偏見をもっていました。
    この本は、軽快で面白くとっても読み易かったです。
    主人公の恵子はまさにとっても「変わった人」
    喜怒哀楽という感情が乏しく、他人の感情や心理理解も不得手。
    そして、目的を達成するためにとる行動が非常識に思われる。
    子供の頃から普通でない考えと、行動をする恵子。
    自分の何処が変なのかわからないものの、
    親に迷惑を掛けないため、無口を通す。
    コンビニでも細心の注意を払って言葉を紡ぎ、顔の筋肉を動かし続けている。
    とっても生き辛いだろうなぁ。苦しいだろうなぁって思った。
    しかし、甥っ子も他の赤ん坊も「赤ん坊」という種類の同じ動物にしか見えない。
    その甥っ子が泣いて、妹が慌ててあやして静かにさせようとしているのを見て、
    小さなナイフを見ながら静かにさせるだけならとても簡単なのにって、
    思っている姿はゾッとした。
    白羽くんは、最低最悪のとんでもなくクズ。
    もーーー読んでて凄く嫌で、モヤモヤした~(*T^T)
    彼に取り込まれ、世界との葛藤の中良かれと思ってした一つの選択がきっかけで、
    彼女の世界が崩れてしまう…。
    その混乱した様子が凄まじい。どうなってしまうのか凄く心配した。
    でも、彼女は逞しかった。失ってしまったものをもう一度選ぶ。
    それこそが存在する意味で、生きてゆく理由だと。
    本当に良かったです。

    普通から外れている彼女の生き辛さが随所から伝わってきた。
    100人いれば、100の個性、それぞれ一人ずつ違ってて「普通」って何だろうって思った。
    普通に生きるってどういうことかについて、考えさせられた作品でした。
    社会性がなく不器用で、他者の心理状態が読み取れない人は、
    現代社会の中で沢山いらっしゃると思います。
    一人でも多くの人がこの問題に興味を抱き、
    ムラが全ての異質を飽和できる社会になると良いんだけどなぁ…。

  • 芥川賞受賞作品。クレイジーじゃなくって読みやすかった。読みやすすぎて肩透かしを食らった。

    白羽を風呂場で飼って餌をやって…というあたりで、ぞわっとしたけど違う方向に進んで行ったのでホッとした。(けど正直物足りなかった…狂気が足りない)

    「白羽さん!今は現代ですよ!」で吹き出してしまったし恵子と白羽のやりとりが他人事とは思えず、共感したしホッともしたけど客観的に見るとやっぱり普通じゃないという怖さも感じた。

    アンソロジー『ラブレターズ』に収録されている村田さんの「コンビニエンスストア様」も読むとさらに楽しめると思う。

  • 社会の一員だと“認識”するためにコンビニで働く――少し癖のある36歳未婚女性の生き方。

    企業に勤めて、恋人を作って、結婚して、子供を産んで…大多数の人が歩む、あるいは歩もうとする道を「普通」と呼ぶのであれば、そこから外れたら「普通じゃない」のでしょうか。
    主人公の恵子は現状に満足しています。しかし周りがそれを認めようとしません。恵子の今を「変えるべきだ」と意見し、「変わりたいだろう」と決めつけ、「変わりたいのであれば」と勝手に手を差し伸べてきます。自分と周囲との考え方のギャップに板挟みになりながらも、どうにか周囲に、社会が良しとする「普通」に近づこうと模索する恵子をとても健気だと思うし愛おしくも感じます。
    結末の幸か不幸かはさておき、進むべき方向を自ら見定めた人は強いと思います。そしてあっさりとした平和なラストだと思いました(個人的にラストは掃除用具のモップを振り回しての警察沙汰もありうると予想していただけに…でもそこは流石「コンビニ人間」です)。

    私自身も普段、何気なく“こちら側”と“あちら側”との境界を作ってはいないか。人の考えも生き方も十人十色。日頃の自分を振り返るきっかけになる本でした。

  • 生きづらさを抱えた人の側から見る世界。無意識に世の中に適応している人たちが、気づかないふりをしている歪さを、まっすぐ分析していく主人公。自分が「普通」からずれていると分かりながら、理由は分からなくて、でも周りを悲しませたくないから「普通」に見えるように努力している。でもその普通って、もしかしてとんでもなく気味の悪いものなんじゃないかと思わされた。
    私も「変じゃないって自分のことを思っている人」になってしまっていないか、いや、過去には確実にそうであったのだけど、未だにそんな言動をしていないかと省みてしまう。もしかしたらその言動は誰かを傷つけていたかもしれないから。

  • 正常な人間は異物を排除する。
    人間はいつの時代もムラのオトコとオンナ。
    この2つがこの小説の軸となっている。
    なんとなく感じていた生きづらさがここに起因するものではないかと感じた。結婚適齢期に独身男女に向けられる目。男女間の色恋沙汰になると途端に目を輝かせる人間の存在。恋愛至上主義。一昔前のように誰しもが当たり前のように就職や結婚がしづらくなってきた現代だからこそ成立する小説だと思う。それと同時に普通とは何か。なんのために就職、結婚をするのかを考えさせられる小説だった。

  • 「コンビニ人間」ってなんだろう、と思って読んだら「コンビニ人間」だった。

    あまりにもいろいろな所でプッシュされていたので、芥川賞受賞後もなんとなく読まずにいました。
    良くも悪くも万人受けする作品なのか、だとするとあまり期待はしないでおこうと思っていたけれど、読んでみるととても面白かったです。舞台設定がコンビニでのアルバイトなのと、文章が読みやすい。
    コンビニでのアルバイトの描写が結構細かく書かれていて、主人公・恵子のプロフェッショナルなコンビニバイトぶりが伝わってきて、楽しかった。バイトにここまで責任感を持って働ける人が世の中にどれだけいることだろうか!と感動さえしてしまった。
    そして自らがコンビニそのものとなってしまう、その異様なまでの没頭ぶり、常識から逸脱した価値観。
    気味が悪い部分も沢山あるけれど、淡々と進む会話がおかしくて、笑ってしまう。
    白羽もよっぽど気持ち悪いけれど恵子はそれをさらに越えて気味が悪い。
    一番おかしかったのが妹がアパートにのりこんで来たときの、妹と恵子の会話。狭いから風呂場に住まわせてる、とか餌、とか『ああああ…!もう…だめだ…!』と読んでいてゾワゾワする。でもあくまで恵子は淡々としているので、そのシュールさがおかしくて仕方がない。
    あとは白羽の態度や言動が「ネットで見る偏った価値観の人」で、こんな人周りにいたらと思うとゾッとしてしまう。でも実際には存在する。恵子のような人もきっと。
    そんな現代のリアルな描写が面白くて、この作品は人気なんだろうなと思いました。本当に面白かった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

    まず、芥川賞作としてはトップクラスに面白かったです。正直芥川賞作はさほど好みではないので。これは良かった!
    この主人公の女性は発達障害なのでしょうね。普通の人の言う普通が理解出来ず、合理的に説明が付く事はつつがなく出来るが、情動的な事は一切理解出来ない為、普通と言われる表情や行動や慣習を学習するというなかなかにハードモードな人生を歩んでおります。
    マニュアル化されたコンビニ店員がまさに転職で、コンビニ店員で有るが為に生きているのであります。
    そんな中で年齢によって世間の普通から再び乖離していくのがなんとも痛ましく、ただただマニュアルに従っていたいのに・・・。という気持ちがひしひし伝わってきますね、架空の人物なのに。
    みんなほっといてやってくれよ!と読みながら思っておりましたが、自分の周りにいたとしたら同じような反応になってしまうだろうなあ・・・。
    とにかく面白かったし、普通ってなんぞやというのを考えさせられるいい本だと思います。誰も彼も就職結婚出産というルートを辿る必要はないであろうと、この本を読んだ人は思うのではないかな。

  • 落ち込んでいる時に読むべきじゃないんだろうな、と思いながら読んでいました。
    普通ではないという決めつけが、誰かのプライベートに踏み込む免罪符になっていなかっただろううかと、我が身を恥じるばかりです。

  • マイノリティには、生きづらい世の中だ。
    相手のためとよかれと思って助言する「まっとうな」人間たちのことばが痛い。自分も同じようなことを無意識にやっているのだろう。本当に、余計なお世話だと辟易する。
    多様性を受け入れる、ということばが薄っぺらく聞こえるくらい、リアルさを感じる。異物と出会ったときには、この小説のおかげでワンクッション置いて接することができそうだ。

    青いかわいい小鳥が死んでかわいそうと、泣きじゃくりながらその辺の花の茎を引きちぎって殺している子どもたちに対する矛盾の思い。花の死体。若干シュールで恐ろしさもあるけれど、これは金子みすゞさんの大漁の発想と似ている。発想は飛び抜けて斬新だし、とても賢いし、この能力を上手に昇華させることができたらとても有益なのにな、と思った。治すではなく、押し込めるでもなく、昇華。この主人公は、自力でコンビニ人間という、自分らしい生き方を見つけ出した。とても賢明な処世術だと思った。
    —————————————
    何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好戦的な光が宿っている場合もあれば、無意識に見下しているときは、優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。
    —————————————
    正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ。家族がどうしてあんなに私を治そうとしてくれているのか、やっとわかったような気がした。

  • コンビニ店員の古倉恵子がまわりから結婚しないのとか、就職しないのとか言われ続け、それらから解き放つために無職白羽と同棲を始める。そして、あるときコンビニをやめ、就活を始める。しかし、やはり自分はコンビニ人間であることが一番だと思い、もとにもどる。

  • 面白かったけど、芥川賞らしくはなかったかも。読み手の想像力を必要としない。

  • 幼い頃から、家や学校での生活に馴染めない主人公古倉恵子がコンビニ店員となることで、自身の居場所、アイデンティティを見つけるまでの過程が描かれる。途中で何度も周りが期待する自分(アルバイトではなく正社員として職につく、恋人を作る、結婚をする等)に当てはめるため、元同僚の白羽と同棲するが、彼の望む自身の姿と自分の望む姿とのギャップに気がつき、一度辞めたコンビニ店員に帰っていく。

    社会に適応できない者を主人公にすると、同じような境遇の者との出会いや、関わり、共感によって、アイデンティティに気づいて、新しい生き方を見つけていくような気がするが、彼女は最後まで誰とも共感しあったりせず、独りで自身の生き方に気づいていくのが、すごいなあと感じた。

    しかし、周りの人間の「普通」を強要する描写はなんか怖い気がした。同じように社会に適応できない白羽でさえ普通を強要する存在として描かれる。主人公にとっては白羽も他のみんなも、同じ暴力的な存在なんだろうなあ。

  • 2016年上期、第155回芥川賞受賞作。
    コンビニに勤め続ける女性が主人公。

    古倉恵子は36歳、独身。
    子供の頃から変わっていて、周囲に驚愕されること度々。
    できるだけ普通のふりをしているのだけど、家族には心配されてきました。
    わかりやすい文章で、大げさなこともなく、読みやすいですね。
    変わっているエピソードと、普通のふりをする方法が芥川賞的かも。

    幸い、恵子はコンビニのバイトが性に合い、大学卒業後も就職せずにバイトを続けて、18年目になります。
    マニュアルが決まっているとはいえ、プロとして有能なので、読んでいて、いいじゃないの~何が悪いの?って気分に。
    発達障害というタイプに相当するのでしょうが‥
    そう一口に言っても、それぞれ個性が違うわけで。

    新入りの男性・白羽がやってきて、これがなんとも理屈っぽいけうえに、店員としては困ったやつ。
    あっさり切り捨てることなく、白羽の話を聞く恵子さん。
    恋愛経験のない恵子は、男性と暮らしていたら周りを安心させられるかと、同居することを思いつく‥
    おいおい?

    ここまで変わってはいないにしても、恋愛経験の少ない女性が見合いしたり、ふとしたきっかけで付き合い始める時ってねえ、周りからのプレッシャーやその場の成り行きかもしれない。
    自分だって、変わっている部分だけをより出して書いたら、けっこう通じるものがあるのだろうか?などと考えてみたり。いやタイプはぜんぜん違うけど。

    社会への同調力圧力は、どこにでもあるだろうけど、おそらく日本は強い方なのでは。
    いろいろ考えさせられる、芯になる部分があり、どことなく仄かな明るさもあり。
    多くの人が読むことになる賞にふさわしい作品だと思います☆

  • この世の中は、いかに、型にはめられていることが多いことを思い知らされた。しかも些細な型ばかりが寄せ集まっている。その些細さに気が付かずに生きていければ苦にならない事でも、その些細なことに順応できない人々にとっての生きづらさが気の毒に感じた。この主人公は、コンビニが作る世界(型)が自分に上手くハマった。お金よりも結婚よりも、行きていく世界を見つけることが最も重要である、そんな人々がいることを忘れてはいけない。

  • 「治る」って言葉がとても気持ち悪いですね。
    その人の特性を異常なものだと捉えているから、それはつまり「治る」ものだと思ってしまう。正常がどこかにあると思ってしまう。
    しかしその人にとっては、特性ごと自分なのだから、それを「治せ」と言われるのはつまり、自分を自分ではなくしてしまえと言われているのと変わらない。
    理解がないことの不幸。白羽氏もまたその不幸を身に受けてる人間の一人なんだけど、二人の特性は違うものだから、交わらない。コーディネーターがいないのだ。

    世界は異物の塊なのに、異物を認めない。
    不幸だな。

  • たぶん私に合う本だな、と思い、読んでみたらその通りだった。
    気持ち悪い、というのがこの本への褒め言葉だと思う。なんの間違いもない家庭で普通に育ったはずなのに、なぜか社会に適合できない36歳女性。決して馬鹿ではなく、だからこそ面倒を避けて「普通」に生きるために無機質に周りの人を真似ている、という気持ち悪い人物描写がたまらない。そして彼女に唯一正しい日常をもたらすのが、コンビニという無機質でマニュアル通りの世界、という舞台設定もとても皮肉で気持ち悪くていい。
    思えば私自身もずーーーっと、自分が普通じゃないことを考えて生きてきた。この本の主人公と比べると、もうちょっとだけ自分のおかしさに理由付けができて、もうちょっとだけ見栄とプライドと自意識過剰があったからコンビニ人間にならなかっただけ。この本を読んで、自分も排除されないように色んな人を真似してきたこと、色んな人の切り貼りなキャラクターになってることを思い出して少し気持ち悪さを思い出した。まっとうな人間が私に会うと、こいつやべえなって感じると思うんだけど、それはこの切り貼り感にあるんだと思う。とりあえず面倒だから、人見知りのオタクなんですいません、って言って片付けるけどね。

    でも、意外とみんなそうなのかもしれない。意外とみんな何かのマニュアルに従って、誰かの真似をして、コンビニのレーンのように社会で整然と生きているだけなのかもしれない。
    みんなコンビニの商品と一緒。期限が過ぎたり、列を外れたり、カテゴリ分けができなくなったら排除されるだけ。そうならない人は全部わかっていて上手くやる頭の良い人か、あるいは逆に何も考えなくて済んでる能天気で幸せな人たちなんじゃないかなあと思う。
    という気持ち悪い考えを呼び起こしてくれる面白い本でした。

    できることならもう少し長くこの女性の気持ち悪さを味わっていたかった。後半から登場する人物が彼女の不気味な整然とした世界を壊すのだが、その後の描写は普通になってしまって、ちょっとつまらなくなった。
    たぶん私がこの女性と似てるからだろうな。うわー、わたし、気持ち悪っ。

  • 第155回芥川賞受賞。筆者もコンビニでアルバイトをしているとのこと。
    ものの考え方や、人間に適合できていない感じが自分と重なった。軽くて(物質的にも、内容も)読みやすかった。
    私自身コンビニで働くことを馬鹿にしている節があり、しかし調理・レジ・品だし・携帯代の支払い・荷物の受け渡しなど多岐にわたるコンビニエンスな場所に、そんなにイロイロなことは私には出来ないなと思っていた。
    新商品・品揃え・棚。普段意識していないところまで気を配っているのだな、と思った。
    ここの本屋すき!平台の感じが良い!ということは思うけど、お気に入りのコンビニってないな、と思い日々利用する場を今一度じっくり見てみたく思った。

  • 2016年上期芥川賞、日常的な言葉を用いているがベタベタしたところがない、かといって淡々とというのも違うリズム感のある少しコミカルな文体が魅力。

    主人公はちょっと変わった子、というか人間関係をうまくこなしていくことが苦手なタイプなのだが、コンビニ、という規律とマニュアルで統率されている小さな世界にぴったりとはまっている。
    その目で見た、いわゆる普通の人間関係や、コンビニで起こる出来事は、 新鮮。
    きちきちしたマニュアルが気持ちいい人って、こういう感覚なんだなぁ......

    自尊心ばかり強くて何もできない・しない男が登場して、主人公と同居を始めちゃうのだが、この手の男性はいるよなぁ...という感じ。
    非常に厄介。
    人、というものが分からない主人公は、それがゆえに彼のペースに引きずり込まれていくのだけれど、18年間働き続けた蓄積に助けられる。

    体を動かす、手を動かす、って大事だ。
    いや、そういう話ではないんだろうけれど。
    コンビニ、おもしろいね ....

    p.s.
    この主人公、人間関係が苦手で社会不適合、ダメ人間、みたいに描かれてて、そのまますんなり読んでしまったけど.....ほんとは、変だ。
    ちゃーーんと働いてる、働けてる人だ。
    こういう人が非正規で?セイフティーネットもなく?結婚してない正社員じゃないと否定的な目で見られる?
    変だ。
    それって、おかしいでしょう?

    じゅうぶんに普通に働いてる人を、蹴落そうとするいまの社会。
    それって、とっても、変だ。

  • 今更ながら読んでみた。
    あまりピンと来ず。
    共感できないのは仕方ないとして、なぜこの作品が評価されるのかもあまりよくわからなかった。

    コンビニの描写はさすがに細かいとこまでよく描いているなと思った。
    ただ、現代社会が、そこまで結婚してなかったり子供を育てていない人間を異物扱いするのかが疑問であった。
    自分がやや特殊な環境にいるのかなとも思った。
    また、他人の口癖や癖がそんなにうつるものかも疑問であった。

    人間としては、自分自身は、この筆者と似た部分もあるのかなとも思った。
    だからこそ読んでもそこまでハッとさせられることもなかったのかな。

  • 夢がない。全く読者に媚びてないのがいい。

    本作の主人公は、コンビニ店員として「世界の歯車になれる」ことを何よりの喜びとしている。
    これまで「社会(会社)の歯車にならざるを得ない」というのは、「部品の一部として扱われてしまう人間の苦痛」として表現されることが多かったと思う。
    しかし、そのような形で人間が阻害され続けた結果、逆に、「歯車としてでも世界に接続できる」ことを嬉しく思う人が出てくるまでになったのかと衝撃だった。

    おそらく、本作の主人公が、今もう一度カウンセリングに行ったなら、その病院のお医者さんが「自閉症スペクトラム」だと診断する可能性が高い(主人公が小さかった頃は、まだその概念が広まっていなかったので見逃されたのだろう)。
    自閉症スペクトラムの人が全員まったく主人公の通りというわけでは勿論ないが、診断名としては恐らくそう付くだろう。そうすれば、主人公の妹や両親も少しは、主人公のことを「説明可能」なものとして安心できるのだろう。

    しかし、本作を読んでいると、「一般人」こそ、「ふつう障害」にかかっているのではないかと唖然とする。
    30代後半にもなれば、「正規の職員になっているか、結婚しているか(さらには子供がいるか)」状態しか、受け入れきれない。
    当然、「36歳女性でアルバイトとしてコンビニ店員をやっている」主人公は、溶け込もうと涙ぐましい努力をしているにも関わらず、異物として、奇異な、理解できないものとして認識されるのである。

    それでもやはり、主人公が「働くコンビ二店員」は完璧にこなせることが、主人公の基盤となり、主人公を強くしているのだと感じた。
    だから最後、主人公が見せた「コンビニ店員」としての矜持は、狂気と威厳と共に美しくすら感じるのだと思う。

  • 皆と同じような恰好して、恋愛して、就職して、結婚して、出産して、
    同じが普通。同じじゃないは気味が悪い。

    自分がいつから?
    こんな恰好して、こんな話し方して、こんな考え方をして、こんな人生を送ってる?
    いつからか?
    こっち側、あっち側

    気味が悪いのは誰か。
    気味が悪いのは何が。

    彼女だって結局は"同じ"に依存している皆のように"コンビニ"に依存して生きてるので。
    単純にコンビニの店長・オーナーになれば話は解決するのではと。

    あと、この本すごく軽い(重量が)

  • コンビニで働く人間味のない古倉さんの話。
    図書館で700人待ちという大人気ぶりに驚いたが、まさかこんなに面白いと思わずさらに驚いた。
    芥川賞はいつも難解でクセが強く、面白さを求めていなかったので最後の方で吹き出しすほど笑わされるとは思わなかった。
    作者の作品は授乳、しろいろの街の〜、消滅世界を読んだことがあったが、読み切ったのはしろいろの街の〜、だけだった。わりとねっとりした文体だという印象があったが、コンビニ人間はひたすらに淡白で読みやすい。コンビニの無機質さと古倉さんの感情のない機会的な無機質さが相まって、淡白な印象を強めている気がする。
    古倉さんは合理的の塊で、サイコパスと呼ばれてもおかしくは無い。しかし登場人物たちは何の変哲も無い人間で、その対比がとても自然で違和感がない。古倉さんという主人公が周囲の言う普通に染まろうとして染まらない様が書かれている。
    白羽さんという変人を家に住まわせて妹に泣かれるシーンは最高だった。とにかく古倉さんが論理的で合理的で、理解はできるのに共感はできない。その理解はできるのに共感はできないという感覚をうまく表現してくれている。
    いくつかの作品を読んだ中で作者の興味は「子孫を残すことに対する意味」にあるのかなと思った。それが簡潔に落とし込まれている。消滅世界もセックスがいらなくなった世界で子孫を残すことについて触れられている。消滅世界が冗長だったことに比べれば、このコンビニ人間はかなりまとまりが良い。
    そして村田沙耶香さんは人間としてかなり面白いということがひしひし伝わる作品だった。

  • アメトーーク読書芸人で紹介されてて、図書館で予約して借りた。

    面白そうな話ではあるんだけど、読み進めていくうちに、太宰の『人間失格』をはじめて読んだときの、震えがくるような恐ろしさが脳裏を過った。
    と同時に、星新一のショートショートの精密に構成された無機質な触感と同じものも感じた。

    可笑しくて、いろんな意味を含んだ言葉がアチコチに出てくる。

    「 気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。
    ・・・・・私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです。」

    コンビニの日常的な風景は現実そのままに描写されてるけど、これは現実そのもの、というより、現実の世界で起きている現象をより明確にするために、現実を一度解体した後で再構築された、寓話的な文章だ。

    今じゃ、35才以降で結婚してない人はいっぱいいるし、正社員じゃない人もいっぱいいる。
    最近の統計データでは、男女ともに、配偶者や恋人がいない人や、配偶者や恋人がいなくても別にかまわないと感じている人の割合も増えている。

    日本社会も多様化してきたとはいえ、この小説のように「なぜ、そういう状態なの?」って、しつこく突っ込んでくる人は、いる。
    メンドくさいけど。

    世界はたしかに、こんなふうかもしれない。
    表面を覆っている情報は目まぐるしく移り変わっていくから、現代人は、新しい世界に生きる新しい人間のつもりでいるけど、縄文時代のムラにいるのと同じ枠組みはやはり残っている。

    非正規雇用がどんどん増えて、格差が広がっていく今、主人公のコンビニ人間に共感する人は多いはず。
    将来が見通せないんだけど、今はそれをやるしかないという状態。年取って腰が痛くなったら、どうするんだろう?なんて思いながら。

    こういう不安な感じって『蛇とピアス』を読んだときもあった。
    バブル崩壊後の失われた20年以降、不景気やデフレの中で生まれ、育った世代が抱えている共通の感覚だと思う。

    太宰の『人間失格』の主人公は異常に暗くて、オレは恐怖のどん底に突き落とされたけど、コンビニ人間である古倉さんは、社会と調和できないながらも、表面的には調和するように気を使っていて、前向きだし、明るくも暗くもない。
    こういう人って実際にいるよね。
    脳の機能性の問題だと思う。
    発達障害とか。アスペルガー症候群とか。

    大量の情報に溺れて、プライドばかりが肥大化してしまった白羽さんは、IT起業家になるという誇大な妄想を拠り所としながら、現実は、自分が「底辺」と見下すコンビニ人間にさえなれず、沈んでゆく。
    被害者意識はすごいのに、他人に対して加害者になっているという意識はない。
    こういう人も実際にいる。

    主人公の古倉さんが白羽さんをペットのように飼い始めるシーンは笑えるけど、ちょっと恐い。
    白羽さんに餌を与え、彼が文句を言いながらも、味のついていないヘンな餌を食べるシーンは可笑しい。

    ベトナム人のダット君、トゥアン君がチョイ役で出て来るカンジなんかは、とても良かった。
    たしかに、都市部のコンビニにはいる。

    古倉さんの友達のミホの家でのお茶会での古倉さんとのやり取りは、微妙な空気が流れている。
    オレはまだ会ったことないけど、人口の1~3%はいると言われるアセクシャル(男性も女性も好きにならない性)の話題まで出てくる。

    小道具として出て来る、ヘコ缶も、面白い。

    何もかもが、今日の風景を、正確に切り取ってる。

    そもそも、コンビニという、誰にとっても近しい場を舞台に選んだところが、この作品の成功の始まり。

    キャッチーだよね。

    でも、オレにとっては、何かしら恐ろしいお話だったなー。

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コンビニ人間の作品紹介

第155回芥川賞受賞作!36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

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