ガーデン

著者 :
  • 文藝春秋
3.24
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本棚登録 : 639
感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906447

作品紹介・あらすじ

植物になら、惜しみなく与えられるのに。花と緑を偏愛し、生身の女性と深い関係を築けない、帰国子女の編集者。異端者は幸せになれるのか。幸せにできるのか。著者会心の感動作。 男は必ず間違える。 知っている女の声が頭で響く。誰が言っていたんだっけ。思いだせない。思いだせないけれど、頭の片隅で思う。 女は花なのかもしれない。愛でられたいという本能だけで咲く花。 これは謎かけなのだろうか。僕は答えをださなくてはいけないのだろうか。(本文より)【著者プロフィール】一九七九年、北海道江別市生まれ。立命館大学文学部卒業。二〇〇八年、「魚」で第二一回小説すばる新人賞受賞。受賞後「魚神」と改題。〇九年、「魚神」で第三七回泉鏡花文学賞受賞。一三年、「あとかた」で第二〇回島清恋愛文学賞受賞、第一五〇回直木賞候補。一四年、「男ともだち」で第一五一回直木賞候補、一五年、「男ともだち」で第三六回吉川英治文学新人賞候補。他の著書に『桜の首飾り』『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』『からまる』『あやかし草子』『眠りの庭』『森の家』『西洋菓子店プティ・フール』『夜に啼く鳥は』など。

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な雰囲気の漂う小説。

    観葉植物であふれる部屋で暮らす独身男性の羽野。
    お洒落なファッション誌の編集者。
    植物の健康状態ばかりが気になり
    人との距離は、嫌われない程度に保って暮らす。
    そんな羽野の周りに様々な女性が現れる。
    彼が大切にするのは、あくまでも「淡いつながり」。
    ひとまわり年下の女性にこう言われる。
    「羽野さんはね、植物に囲まれて眠っているお姫様よ。
    あの部屋には先がない」
    羽野は前に進もうとするのですが…。

    どのページからも植物たちの息づかいが伝わってくる。
    ユッカ、オンシジウム、デンドロビウム、パキラ、
    そして アンスリウムに月下香。
    様々な匂いが纏わりつく感じ。

    特別な事件が起こるということはではない。
    むしろ、淡々とした日常が語られる。
    それなのに、文章には飽きさせない魅力がある。

    そういえば、去年の暮れに買ったシクラメン。
    4月まできれいな花を楽しませてくれて
    すっかり葉っぱだけになっていたのに、
    今月また、鮮やかなピンクの花が三輪咲いた。
    そして根元には 小さな花芽を十数個 発見!
    こんなこと、初めて!
    愛おしくなって肥料を追加。
    ベルガモットさんの観葉植物はお元気かしら?

    • yyさん
      ベルガモットさん、おはようございます。
      お邪魔、いつでも大歓迎ですよ~♪☆彡
      「永遠をさがしに」、いいですねぇ。
      原田マハさんの音楽小...
      ベルガモットさん、おはようございます。
      お邪魔、いつでも大歓迎ですよ~♪☆彡
      「永遠をさがしに」、いいですねぇ。
      原田マハさんの音楽小説って珍しいですよね。
      ベルガモットさんのレビュー、楽しみにしてます。
      2023/07/08
    • しずくさん
      九州、我が家のシクラメンもまったく同じように咲き始めました。以前もありましたが、今夏みたいに厳しい環境で、しかも8輪も鮮やかなパープルピンク...
      九州、我が家のシクラメンもまったく同じように咲き始めました。以前もありましたが、今夏みたいに厳しい環境で、しかも8輪も鮮やかなパープルピンク! せっせとお水をあげて見守っています。
      隣家にも咲いたと聞いて驚いていたのに、yyさん家もと知りおもわずコメントしました。
      2023/08/06
    • yyさん
      しずくさん

      コメントありがとうございます☆彡
      そうなんですね! びっくり。
      うちは本州、中部地方です。
      しずくさんのおっしゃるよ...
      しずくさん

      コメントありがとうございます☆彡
      そうなんですね! びっくり。
      うちは本州、中部地方です。
      しずくさんのおっしゃるように、
      「今年みたいな厳しい夏に!!」ですよね。
      最近のニュースでこんなことを耳にしました。
      「地球は温暖化ではなく沸騰化している!」
      と、国連総長がおっしゃったとか。
      まだ小さい芽が出ているのだけど、ひ弱な感じで
      この子たちは育つのかどうか…。
      2023/08/06
  • 不思議な雰囲気。
    なんかこの人のお話は独特の世界観で、静かに進んでいくんだよなぁ。
    しっとりとひっそりと。
    でも心に響く表現が多々ある。

  • 植物が沢山出てくるのだけど、描写が丁寧で生き生きとした植物に脳内で囲まれて楽しい。聞いたことない植物の名前が多いけど、沢山のイメージが瞼の裏に浮かぶ。

    毎日が淡々と続くようで、だけど少しだけ変わっていくような、本当に人の日常みたいな感じで読みやすかった。
    フラットな感じがとても心地良い。
    私は主人公みたいな人を見ているのは好きだ。少し似ている部分も感じる。時々男性特有の物言いがあったりして少しイラッとするけど、そんなもんか、と思う。
    きっと彼は変わってしまった。
    それが"幸せ"だとは別に思わない。今までの世界も幸せだっただろうし。
    少し淋しさもあるし、これからの彼を見てみたい気持ちもある。


    なんの前情報もなしに、図書館でなんとなく装丁が気に入って読んだけど、いい出会いだったと思う。
    キャッチコピーもあらすじも何も知らない状態で読めて良かった。

  • 色んな花が出てきて…知らない花が出てくる度、ネットで調べながら読んでいました。
    ひとつひとつの花、景色の表現が細かく豊かで、文字だけでも自然を感じることができました。
    その時々に出てくる花は、主人公の心境や
    そのシーンにリンクしている気がします。

    主人公の狡がしこさや…事なかれ主義なところが、なんとなくわかる。
    でもそれは、結局自分のためにも相手のためにも
    ならないんじゃないかな。

  • 苦手だし絶対近寄らないタイプの主人公
    めっさ優しいので世渡り上手なのは確か。

  • ずっとなんかぼんやりした世界を覗いてるような小説やった気がする。
    なんとなくこんな温度を感じない人もいるんやなぁと思ってしまった。
    理沙子さんにもう1度会えはったらいいなぁ。
    きっともう少し、体温が上がって生きていけはるんちゃうやろか。
    そして、タナハシさんが、元気になりますよぉに。
    なんか難しい本でした。

  • 雑誌編集者の羽野は花と植物を愛でて生活している。
    アルバイトのミカミさんは優しくて気配りができるし、同期のタナハシは三十五を過ぎて相手がいなかったら結婚しようなんて言ってくる。以前一緒に暮らした緋奈とはいまも兄妹のような関係でいるし、モデルのマリちゃんはお誘いのメッセージを送ってくる。ニューヨーク育ちの理沙子さんは好意を持ってくれているみたいだ。
    花と植物が最優先の羽野の周囲には、イケている女性がたくさんいた。

    けれど彼女たちはみんな、彼の前から去っていった。

    頭のなかにある、自分の庭。そこでは何でも自分の思い通りになる。逆に言えば、自分の頭の外(現実)は思い通りなんてならない。だから、期待もしない。
    羽野は魅力的な男だけれど、彼の眼はいつも花と植物しか見えていない。自分の見たいものしか見ようとしていない。

    ”幸せはもしかしたらすごく不自然なことなのかもしれない。”
    ミカミさんが同僚の森田くんと結婚することを知り、羽野はそんなふうに思う。
    生まれてくる子どものために飼い猫の爪を取る手術をしたミカミさん。自分の部屋で自分に愛でられている植物たち。仕事を頑張り過ぎて入院してしまったタナハシ。

    何が自然で、何が不自然なのか。そして、誰にとって何が幸せなのか。
    そんなことわかるわけはないけど、羽野が理沙子さんと再会できたとしても、二人の関係はうまくいかないんじゃないかな。彼は花と植物が最優先なわけだし。

    誰かと暮らすことや生き物(猫や植物)を飼うことについて、たくさん考えることができた。味わったことのない感覚の小説だったように思う。

  • トップオブザ草食男子が主人公。自分も何も求めないから相手にも自分に求めて欲しくないスタンス。でも最後は怒ったり怯えたり手を伸ばしたりしていたから変わったのかな。庭や育った環境でかれがそうなったわけではなく、元からの性質のような気がするなあ

  • 羽野くんみたいな独特で当たり障りのない、自己完結した男前はモテるけど、それだけって感じがする。
    自分が何を求めているのか無自覚と言うか。
    沢山の魅力的な女の子達が出てくるけれど、植物ほどは愛せない。
    特にヒナちゃんは美しいだけでなく、中身も伴い魅力的。
    羽野くんには勿体ないかな。
    少し消化不良。

  • この作家さんの作品は、いつもひんやりとした質感が漂っていて、読んでいて心地よいことが多くて、好き。

    この作品はあらすじから想像していたものとだいぶ違っていた。
    「仕方がない」と達観し、植物に愛情を注ぐ羽野くん。周囲の人との距離感もほどほどに。
    彼の回りの女性は結果的に皆離れていくことに。

    ちょっとよくわからなかったけど…
    植物に守られた世界から一歩踏み出そうとしたということかな?

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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