明治乙女物語

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906928

作品紹介・あらすじ

ときは明治21年。東京・御茶ノ水の高等師範学校女子部(女高師)に通う夏と咲、2人の女学生が主人公です。いまだ男尊女卑の風潮がはびこり、「女が学問なんて」と一部からは白い目で見られつつも、彼女たちは、時に挫折を経験しながらも、溌剌と教育者への道を歩んでいました。そんな彼女たちは、鹿鳴館の舞踏会で踊り手が不足したため、招かれることになります。そこには伊藤博文枢密院議長、森有礼初代文部大臣、各国の大使など、要人が集っており、それは暴徒たちの格好の標的でもありました。彼女たちも生命の危機に晒され、そして――。 世の荒波にもまれながら、新時代に逞しく羽ばたこうとする、女学生の青春を描く傑作。選考会で圧倒的支持を受けた第24回松本清張賞受賞作です。

感想・レビュー・書評

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  • 明治中期の高等師範学校女子部で学ぶ咲と夏。
    女性が学問をすることに対して圧力がある中、のびのび自由に学問を楽しむ咲と常識にとらわれてしまう夏。
    学校の講堂での舞踏会の日の爆弾騒ぎから一気に物語は緊張感が増し、ミステリ色が強くなっていきます。
    犯人は、目的は、咲や夏は大丈夫なのか。
    明治の著名人が多数登場し、リアリティにあふれた物語は鹿鳴館で終結を見ます。最後は緊張の連続です。
    巻末の参考資料を見れば、作者が念入りな下調べをした歴史の中に物語を描いていることがわかると思います。
    明治の雰囲気を味わうとともに、ミステリを味わえるお勧めの一作です。

  • 維新の元勲がチラホラと実名で登場。鹿鳴館時代に彩りを添えた女学生の群像劇。先ず設定が面白い。この時代の彼女たちを描いた小説は少ないだろう。しかもミステリーだ。
    設定は新鮮だがミステリー部分は弱い。
    其処だけ残念。

  • 文明開化も進み、西欧化から国粋主義へと少しずつ空気感が変わり始めた明治時代、高等師範学校女子部の学生である少女たちを描いた物語だ。
    といっても、きらきらしく瑞々しいだけの青春小説ではなく、女性に教育を受けさせることを良しとしない世風や、貧しく教育を受けられない者が多くいる現実、西欧人と関係した女性を悪し様に罵る世間、女性が道具でしかなかった旧弊な時代と向き合っていかざるを得ない「新しい時代の女性」たちの姿が描かれている。
    実在の人物たちが多数登場し、(主人公である少女ふたりも、実在の人物をモデルにしたようだ)どこまでが史実でどこまでがフィクションかと読んでいてわくわくする。
    描かれているのは決して楽しく明るい世界ではなく、どちらかというと、これから軍国主義へ傾倒していこうとする風潮すら感じる、不穏さの残る日本であるにも関わらず。
    誇張して描かれているにしても、自分より数世代前の女性たちには似たような体験をしたり、心をくじかれたり、志を新たにしたりしたのだろう、と思うと、読み終えたとき気持ちが熱くなった。

  • 2017年度松本清張賞を受賞しているが、ミステリーというよりは青春小説。高等師範学校女子部(お茶の水女子大の前身)に学ぶ二人の女生徒が主人公。この二人、野原咲と駒井夏には実在のモデルがいて、野原が野口幽香、駒井が安井哲。さらに、造形上のモデルがいる。ハロプロ ℃-uteの矢島舞美が野原、中島早貴が駒井とのこと。アイドルグループには詳しくないのだが、わかる人には読めば、ニヤリとする描写があるらしい。

  • 時は明治21年、鹿鳴館時代。時の文部大臣森有礼の旗振りで、学制の整備が一気に進み、特に女子教育の充実が図られた。尋常師範学校から高等師範学校に格上げされたばかりの御茶ノ水の高等師範学校女子部・通称「女高師」で希望に燃えて学業に励む乙女たちがいた。
    「女に学問はいらぬ」という世相に抗いながら、「戦う」咲と夏。そんな時、政府の欧化政策に異を唱えるものによる女高師の爆破事件が起こる。

    ミステリーの要素を主軸に、時代の空気感をふんだんに織り込み、近代国家としての黎明期である明治の魅力とひずみを描く良作。以前読んだ「明治銀座異変」の登場人物、大川捨松やイケメン人力車夫・久蔵らが登場するのも嬉しい。
    家庭的にも社会的にも順風とはいえない環境で、咲や夏のような女性たちが真摯に、そして生き生きと学問を修める姿勢が眩しい。
    江戸から明治へ、時代の変遷にあって戸惑い、湧き立ち、そして力強く前進する人々の姿を描くこのシリーズ、これからも期待してます。

  • 2017.09.24
    東京女子高等師範学校の生徒と初代文部大臣森有礼、鹿鳴館を巡る物語。私の大好きな時代のお話。女子教育を強く進める森大臣の真意は。現在憲法改正で賑わっているご時世だからこそ、考えさせられる一冊でした。

  • 女に教養は必要ない。今の時代では考えられない事です。でも、この時代は日本だけでなく欧米諸国も同じようなもの。今の時代に生きている私は当たり前過ぎて、勉強なんてやっても意味がないとか言ったこともあるけど、教育を受けられる事は幸せな事なのだと感じた。

  • 朝ドラと時代がリンク。

  • 明治の鹿鳴館時代。女に学は必要ないと言われる中で、女学校に通う夏と咲はそんな世論と戦いながら勉強している。時の有名人も登場していてワクワクした。松本清張賞を受賞しているけれどミステリー要素はそこまで強くなく、夏と咲の青春シスターフッド的な作品として楽しめた。

  • おとめたちがちょっと今様すぎるというか、浮いてなさすぎというか。よく調べているとは思うのですが。楽しいからいいか。

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