2011年の棚橋弘至と中邑真輔

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907567

作品紹介・あらすじ

2000年代半ば、危機的な状況にあった新日本プロレスの人気が復活するためには、多大なる努力と、長い時間が必要であり、常にその先頭に立っていたのが、ふたりのエース、棚橋弘至と中邑真輔だった。総合格闘技とは異なるプロレスの魅力をアピールして、新しいファンを呼び込もうとする〝100年にひとりの逸材〟、棚橋弘至。総合格闘技と関わることで、プロレスの強さを見せつけようとする〝キング・オブ・ストロング・スタイル〟こと中邑真輔。まったく異なる方法論を持つふたりのライバル関係は、2011年に転機を迎える。棚橋弘至が断然たる新日本プロレスのエースとなり、中邑真輔はエースの座から追い落とされてしまったのだ。だが、中邑真輔の真の魅力が開花するのはここからだった——。棚橋は言う。「僕が太陽なら、中邑は月のような存在だった。ふたりのうちどちらかが欠けても、いまの新日本プロレスはなかった。棚橋と中邑は一対の存在なんです」と。新たなプロレスの世界を作った、「太陽と月」の物語を丹念に描く。

感想・レビュー・書評

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  • 「私は躊躇した。棚橋弘至は自分で本が欠けるからだ。著書も複数ある。とっさに”棚橋弘至ひとりの本は難しいが、棚橋弘至と中邑真輔ふたりの本なら書けると思う“と返事をした。新日本プロレス再生の主役は、じつは棚橋弘至と中邑真輔のふたりではないかと感じていたからだ」

    1976年のアントニオ猪木、1993年の女子プロレス等、過去の記事とインタビューを丹念に読み取り、エポックメイキングな出来事のあった年を中心にプロレス史を書いていった著者。過去の著作と異なっているのは、本人たちへのインタビュー記事の割合が多いことだ。共に現在進行形の人物のためだろうか?今の彼ら自身が過去を語ることで、当時の状況がより鮮やかに描かれる。

    「棚橋は思想家であり革命家であり、それゆえに孤独だった」
    確固たるビジョンを持ち、自己プロデュース能力に長けた棚橋。その歩んできた道は、理不尽な誹謗中傷や罵倒に耐え抜いてきた厳しい道だった。愚直にプロレスを続けることで、世界を変えた。

    一方、デビュー直後から“神の子”と言われ、期待された役割を果たすべく、もがき続けた中邑。ストロング・スタイルの後継者たるべく、IWGP最年少戴冠、総合格闘技での実績を積んできたが、どこか殻を破り切れない。しかしある時、ふと我に返る。
    「今こそ、会社が自分に求めるレスラー像を離れ、自分自身に立ち返る時ではないか」棚橋弘至の最大のライバルが、最大の理解者にもなった時だった。総合格闘技の経験、アントニオ猪木との葛藤など、過去の経験全てを昇華させ、中邑真輔でしか作りえないレスラー像を磨き上げる。ゾーンに入った中邑が全世界でブレイクするのに時間はかからなかった。
    「戦う姿勢や自分の感情をお客さんに伝えるプロレスは、言葉を超えて世界中の人に届くんです。」

    そして今、次世代へのバトンタッチも果たした後も、棚橋弘至は“エース”として新日本プロレスに君臨している。一方中邑はWWEのスーパースターとして、USベルト・ICベルトを戴冠し、世界のプロレスを牽引する存在である。

    そんな棚橋ももう43歳、中邑も39歳。彼らはどこに行きつくのだろうか?この先、どこまで行くのだろうか?いや、どんな結末でもいい。彼らが進む道、それ自体が正しい道だ

  • 棚橋頑張ったなあ。見る目が変わりました。

  • 猪木の作り上げたプロレス最強幻想に憑りつかれていた日本のプロレス界。総合格闘技の登場で、その呪縛が強くなり、それから解き放たれるために、プロレスラーが総合のリングに上がっていた00年代前半。
    皮肉なのは、総合格闘技を呼び込んだのが、プロレス最強をうたい上げた猪木の異種格闘技にある、ということです。

    その呪縛を振りほどいて、エンターテイメントとして新しい日本のプロレスを作り上げた二人のレスラー。棚橋弘至と中邑真輔のレスラーとしての前半生。
    「新」日本プロレス所属というのも、運命的な感じがします。言葉遊びの面で。
    とはいえ、そういう言葉遊びもプロレスの魅力の部分かな、と思います。そこで観客が妄想したストーリーも、ひっくるめてリング上で魅せてくれるのがプロレスラーと思っているので。
    夢を見て夢を見せてくれるのがプロレス。

    「2000年の桜庭和志」を読みたいなぁと思ってるんですけど、だめですかね。馬場・猪木・UWFと来たら、日本格闘技バブルの時代と思うんですけど。
    あ、石井館長一代記でもいいです。お金の問題ありましたが、あの人がいたから猪木がパラシュートで国立競技場に降りたつ大会できたと思うんですよね。
    だめかなぁ。

  • プロレス好きの旦那から「読め」と渡された本です。
    皆様、イロイロな思いをもってプロレスをされてるんですね。
    だから、棚橋さんは『アメトーク』に出演されてたんですね。
    と、すみません。プロレスさっぱりの私の感想です。
    プロレス好きの方なら、楽しめるハズ!

  • 著者は柳澤健はこれまで、『1976年のアントニオ猪木』『1985年のUWF』など。プロレス界においてターニングポイントとなった年を軸に、そこへ至る過程を本人や関係者へのインタビューでエビデンスを集めながらまとめていく形を確立してきた。
    本書は、今のに続く新時代のプロレスの形と、中心人物である二人の進む道が明確になった2011年に繋がる流れがまとめられている。
    カリスマの影響から脱出し、自分を作り上げて唯一無二の存在となる中邑真輔の行動が心を打つ。

  • 面白かった。
    柳澤健のこのシリーズは本当に打率が高い。

    本作がこれまでの作品との違いは、主役の二人が未だ、現在進行形の存在であること。

    猪木も馬場もクラッシュギャルズもUWFも過去のものだったけど、棚橋と中邑には、まだ先が有る。

    僕は本書で主に描かれている新日本プロレスが本当に低迷していた時代に、プロレスから離れていた。ゴングの休刊もあってプロレス雑誌も読まなくなったし、ネットで毎日、プロレスの記事を追うのもやめてた。一方でPRIDEやK−1の会場には何度か行った。

    なので、棚橋と中邑が新日本プロレスを再生させた物語をリアルタイムでは追えてなかった。後追いで本とかを読んで知識を得た感じ。本書を読んでますます思うのだけど、今にして思えば本当に勿体なかった。リアルタイムで体感したかった。

  • 新日本プロレスを再び見るようになったのは、ちょうどオカダが戻ってIWGPを取ったくらいの時期からなんだけど、この本を読んで一時期低迷していた新日本プロレスがどのように再生・復興してきたのかがよく分かって面白かった。
    棚橋の話は知っている件も多かったんだけど、中邑がどうしてあのようなスタイルになったのか(そして、あの独特の脱力の意味はなんなのか)が、本人の苦悩も含めて良く理解出来た。
    また、当初ベルトの位置づけが不明瞭だったインターコンチネンタルのベルトの価値が、中邑の試合を通じて高まっていく様も肌で感じていたので、中邑のすごさを改めて再認識できて良かった。
    この本を通じて、棚橋・中邑って猪木・馬場に匹敵する位の二人だな、というのを改めて感じたりもした。最近の新日本プロレスが好きな人は読んで損なしの内容だな、と思ったりした。

  • 棚橋が昭和プロレスのファンを切り捨てて、新規ファン(主に女子供)の取り込みに成功して今日の隆盛を築く話。猪木からの脱却。

  • どん底だった新日本プロレスが、再び人気を取り戻すための棚橋の奔走…!偉大です。大ファンになること必至。もちろん中邑真輔もかっこいいです。

  • 読み終わった後、とても寂しい気持ちになりました。「××××年の〜」シリーズが発散していた、現状にもがき苦しむ人々の狂おしい一瞬の眩さ(一瞬だから、××××年の、という切り口が成立してたのに…)がまったく感じられなっている自分に対する寂しさ?まるで企業のペイドの広報みたいな印象で、お仕事頑張っている人のインタビューを読んでいる気分になりました。もちろん、ユークスの新日からプロレスと距離をとってしまっている自分の棚橋弘至や中邑真輔に対する愛情の無さがそう思わせるのかもしれません。だけど、クラッシュギャルズやブル中野に愛情なくても、著者の切り口には心揺さぶられたんだけどなぁ…予兆はありました。前著「1964年のジャイアント馬場」のあたりから、心の闇を表現のエネルギーにする人々の一瞬の煌きではなく、普通の人の大いなる頑張りの顕在化に著者の興味がシフトしている感じ、ありました。でも、こんなこと言っているから古いプロレスファンって言われるんだろうな。まあ、いいや。テレビつけてW杯サッカーでエムバペやモドリッチの「一瞬の煌き」堪能しよう、っと!

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「Sports Graphic Number」編集部等に在籍。2003年に退社後、フリーとして活動を開始。デビュー作『1976年のアントニオ猪木』が話題を呼ぶ。他著に『1993年の女子プロレス』『1985年のクラッシュ・ギャルズ』『日本レスリングの物語』『1964年のジャイアント馬場』『1974年のサマークリスマス』『1984年のUWF』がある。

「2017年 『アリ対猪木』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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